ニュース・エージェンシー: 同盟通信社の興亡 (中公新書 1557)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121015570

作品紹介・あらすじ

瞬時に世界を駆け巡るニュース。その多くはロイター、APなど欧米の報道機関の発信による。情報が国際世論を左右する現状にあって、通信社の役割はきわめて重い。しかし今日の日本には強力な発信力をもつ国家代表通信社がない。同盟通信社は昭和一一年、「日本人自身による情報管理」を夢見て、「聯合」と「電通」の合併から生まれた。悲願達成を前に、宣伝機関へと変質していった歴史を丹念に追い、通信社の使命を問う。

感想・レビュー・書評

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  • 2021年夏に出版された「言論統制というビジネス」で、日本のメディアの歴史の面白さに引き込まれ、著者・里見修の他の著書を探してたどり着きました。2000年の中公新書ですが、もはや新品で買うことは出来ないことにびっくり。でも図書館で借りることが出来ました。「言論統制というビジネス」から間をおかずに読みたかったので、近所の図書館に感謝。基本的には今年出版された本の母型となる本でした。ナショナル・ニュース・エージェンシーを目指した同盟通信社に焦点を当て、岩永祐吉、古野伊之助の成功と挫折を歴史から引きづり出しています。コロナ禍の中で、ミャンマー、アフガニスタン、そして中国など独裁的資本主義の存在感が高まっている中で、報道と宣伝の線引きが揺らいでいるような状況で通信社の役割を考えさせる新書でした。そういう意味で書名は、「ナショナル・ニュース・エージェンシー」の方がよかったかも。同盟が持ち得ず、ロイター、APが持っていたとされる「インテグリティ」(高潔)というキーワードの重要性を感じるとともに、逆に、その言葉の呪縛によって社会から乖離していっているのが戦後日本のジャーナリズムの困難なのかも、と妄想したりしました。民主主義はなくても資本主義は進んでいく、そのとき、報道の意味とは?

  • 共同通信、時事通信ってなに?だけでなく、電通って何だったのかがきちんとわかる。メディアについて何か考える人、働く人には必読。

  • 戦時中の国策会社として知られる「同盟通信」に関する本。国からの指示を受け、補助金をもらい、戦場の無線電信を独占し、他の全国紙からも嫌われた同社。しかも外電のほか外国放送を傍受分析し、「特別情報」という正確な戦況情報も持っていた。
    戦争協力の汚名は仕方ないとも思うが、ポツダム宣言受諾の方針をいち早く配信したり、ルーズベルト大統領死去の際の、鈴木貫太郎首相の哀悼の意を国外に示したり、一定の役割もあった。戦場で新聞を発行し、もっとも多くの従軍戦死者を出したのも同社であった。
    第一次大戦で国の立場を宣伝する機関として通信社は重視されたが、第二次大戦では、むしろ報道の独立性を保っていないとニュースが信頼されなかったという現実に直面したという指摘は、現在にも通じる。
    戦後、共同、時事に分割したのは、連合国の意向だと思っていたが、古野社長の「死中に活を求める」先手策だったと初めて知った。惜しむらくは「ニュース・エージェンシー」というタイトル。地味かつ内容不明で、最近までこういう良書が出ていると気づかなかった。

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