言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書)

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著者 : 酒井邦嘉
  • 中央公論新社 (2002年7月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121016478

言語の脳科学―脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書)の感想・レビュー・書評

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  • チョムスキーの言語生得説と左脳優位性を中心に 「脳はどのように言語をつくるか」を論証した本。脳科学と言語学を整理しているので わかりやすい。とにかく面白い。人口知能、手話、失語症、バイリンガル、第二外国語 に至るまで 言語というカテゴリーを広げて 論証している

    言語生得説について。言語生得説とは 人は先天的に言語機能を持っているという説。赤ちゃんにも言語機能があるということになる

    言語化までの「脳→心→言語」というプロセスについて。言語は 脳から直接指示されるのではなく、心を通じる。言語は 心の一部であり、言語は 心から生まれ、再び心に返る。自然科学の本で 心が出てくることが意外

  • 2002年刊行。

     人間の脳はどのようにして言葉を生み出すのか。確かにこれは究極の難問の一つである。
     本書はチョムスキーの「ヒト特有の言語能力は脳の生得的性質に由来」との見解を押し進め、言語の問題、例えば言語の獲得・学習、普遍分法の存在、言語に関する脳生理機構の分析方法、文法処理・入力・獲得のメカニズム等を解説していく。

     確かに難易度は高いと思うが、専門書ほどは難しくなく、何度も味読する価値のある良書と思われる。議論の対象も広範囲で、新書としては十分。
     お勧めの一書である。

     著者は東京大学大学院総合文化研究科助教授。

  • 脳はどのようにことばを生みだすか、チョムスキーは、「言語は心の一部である。人間に特有な言語能力は、脳の生得的な性質に由来する」と主張している。しかし、これを裏付けるための脳科学からの証拠が未だ不十分なため、多くの誤解や批判にさらされている。
    言語の能力は一般化された学習のメカニズムでは説明できないユニークな特徴を持っており、その秘密は人間の脳にある。この特徴が原因で、古典的なアプローチだけではなかなか突破口が開けなかった。流体力学や統計力学、量子力学は、古典力学を見事に発展させた。言語についても同じで、言語の研究は、近年の認知脳科学の発展に伴っう欧米を中心とした急速な発展や、他の新しいアイデア、手法、それらの組み合わせによって、これからどんどん面白いことが分かっていくであろう。

  • チョムスキーの生成文法の理論を最新の脳科学と絡めて解説した本。著者は東大総合文化研究科助教授の方。

  • 言語を脳科学から捉える。社会学的、哲学的、心理学的など様々なアプローチがあるが、そうしたものを合わせて脳科学で改めて言語を考えてみと、言語知識の原型がすでに脳に存在しており、母国語の獲得に能力が活かされるなど、改めて人間の面白さに気づかさせられる。

  • 本書は1964年生まれの理学博士が2002年に刊行した、著者の研究と大学での講義をまとめた本で、生成文法の立場からおもに著者の関心の「文法」に着目している。感想は保留。

     大雑把な内容を示す部分を「はじめに」から引用する。
    “ 生得説を裏付けるための脳科学からの証拠が未だ不十分なため、チョムスキーの革新的な考えは、多くの批判と誤解にさらされている。本書は、チョムスキーに対する誤解を解き、言語の問題を脳科学の視点からとらえ直すことを目的とする。”

    【出版社の内容紹介】
    言語に規則があるのは、人間が言語を規則的に作ったためではなく、言語が自然法則に従っているからである――。こうしたチョムスキーの言語生得説は激しい賛否を巻き起こしてきたが、最新の脳科学は、この主張を裏付けようとしている。実験の積み重ねとMRI技術の向上によって、脳機能の分析は飛躍的な進歩を遂げた。本書は、失語症や手話の研究も交えて、言語という究極の難問に、脳科学の視点から挑むものである。

     【簡易目次】
    はじめに (i-v)
    第01章 脳‐心‐言語 003
    第02章 獲得と学習――人間はチンパンジーとどこが違うか 025
    第03章 モジュール仮説――言語はどこまで分けられるか 057
    第04章 普遍文法と言語獲得装置――言語学とは何か 091
    第05章 言語の脳科学――言語はどのようにして調べられるか 125
    第06章 言語の機能局在――言語に必要な脳の場所 153
    第07章 言語野と失語――左脳と右脳の謎 169
    第08章 自然言語処理――人工知能の挑戦 195
    第09章 言語入力の脳メカニズム――単語から文へ 219
    第10章 文法処理の脳メカニズム――文法は脳にある 239
    第11章 手話への招待――音のない言葉の世界へ 255
    第12章 言語獲得の謎――言葉はどのようにして身につくか 275
    第13章 感受性期とは何か――子どもは言語の天才 297
    おわりに 326
    索 引  340


    【詳細目次】
    第01章 脳‐心‐言語 003
    01-01. 究極の難問
    01-02. 何を明らかにすべきか
    01-03. 認知科学
    01-04. 言語と心の関係
    01-05. 言語は心の一部である
    01-06. チョムスキーという人
    01-07. チョムスキー革命
    01-08. 言語はサイエンスの対象
    01-09. 自然言語と人工言語
    01-10. 言語の曖昧さと普遍性
    01-11. 母語と第二言語
    01-12. 文字の発明
    01-13. 言語の特徴
    01-14. 言語の定義

    第02章 獲得と学習――人間はチンパンジーとどこが違うか 025
    02-01. 言語機能は解明できるのか
    02-02. 手話は別の言語体系ではない
    02-03. 類人猿の「言語」?
    02-04. 類人猿の「言葉」には語順がない
    02-05. 人間は特別か
    02-06. 言語の進化?
    02-07. 「言語野」の起源?
    02-08. ミラー・ニューロンの功罪
    02-09. 行動主義の終わり
    02-10. プラトンの問題
    02-11. 言語獲得の三つの謎
    02-12. コロンブスの卵
    02-13. 乳児は確率に敏感である
    02-14. 獲得と学習の総合的比較
    02-15. ピアジェの誤り

    第03章 モジュール仮説――言語はどこまで分けられるか 057
    03-01. 形式と内容
    03-02. 文法と意味の違い
    03-03. サピアとウォーフの仮説
    03-04. 意味論とは
    03-05. 哲学的意味論とパラドックス
    03-06. 翻訳の不確定性と発話傾向
    03-07. 生成意味論または認知言語学
    03-08. 音韻論と形態論
    03-09. 単語は「分子」ではない
    03-10. 音韻の法則
    03-11. 言語のモジュール仮説
    03-12. 還元論と全体論
    03-13. 脳機能としての言語モジュール
    03-14. 言語機能の内部モジュール
    03-15. 統語処理と意味処理の関係
    03-16. 言語とワーキング・メモリー
    03-17. 失文法
    03-18. ウィリアムズ症候群における言語と学習能力の乖離
    03-19. サヴァン症候群における言語天才

    第04章 普遍文法と言語獲得装置――言語学とは何か 091
    04-01. 言語学のはじまり
    04-02. 言語の起源?
    04-03. 共時言語学から構造主義言語学まで
    04-04. 生物の多様性と進化論
    04-05. 言語の多様性
    04-06. 多様性の中の規則性
    04-07. 文法とは何か――普遍文法
    04-08. なぜ英語がうまくならないのか
    04-09. 音韻の文法
    04-10. 語順の文法
    04-11. 言語の理想化
    04-12. 言語の中心的問題
    04-13. チョムスキー批判に答える
    04-14. 言語獲得装置
    04-15. 原理とパラメーター
    04-16. 言語の法則
    04-17. 言語理論の階層性
    04-18. チョムスキーの最新理論

    第05章 言語の脳科学――言語はどのようにして調べられるか 125
    05-01. 脳の決定論
    05-02. 言語の脳科学へ向けて
    05-03. 脳科学における言語の位置づけ
    05-04. 物理学との境界領域
    05-05. 物理学から言語学へ
    05-06. 物質と精神
    05-07. 言語と客観性
    05-08. 言語の脳研究の現状と課題
    05-09. 言語の脳科学の四つの柱
    05-10. 干渉法と計測法
    05-11. 時期刺激
    05-12. 頭蓋内記録
    05-13. 脳波・脳磁計測
    05-14. 人間だけの遺伝子?
    05-15. 化石人類の遺伝子を調べる
    05-16. 文法の遺伝子はあるのか

    第06章 言語の機能局在――言語に必要な脳の場所 153
    06-01. 脳は臓器ではない
    06-02. 脳の構成
    06-03. 大脳皮質の役割分担
    06-04. 大脳皮質地図
    06-05. 言語野
    06-06. ブローカ野
    06-07. 角回・縁上回
    06-08. 小脳の認知機能
    06-09. 小脳のメンタル・モデル
    06-10. 大脳基底核
    06-11. 視床


    第07章 言語野と失語――左脳と右脳の謎 169
    07-01. 電気刺激による失語発作
    07-02. 失語症とは
    07-03. 二重解離
    07-04. 言語の大脳半球優位説
    07-05. 半球優位説の基礎は言語にある
    07-06. 半球優位説の原因?
    07-07. 脳の半球優位説
    07-08. 脳の細胞分布の左右差
    07-09. 一卵性双生児の大脳半球優位説と言語
    07-10. 分離脳
    07-11. 不思議な失語症
    07-12. 漢字と仮名はどう違う?
    07-13. 読字障害

    第08章 自然言語処理――人工知能の挑戦 195
    08-01. 人工知能とは
    08-02. 脳はコンピューター?
    08-03. チェス・コンピューター
    08-04. チューリング・テスト
    08-05. 機械は心を持つことができるか/
    08-06. 人間と対話するプログラム
    08-07. 機械翻訳の難しさ
    08-08. 脳を創る
    08-09. チョムスキー階層
    08-10. チョムスキーの二つのアィデア
    08-11. 万能脳のパラドックス
    08-12. 言語野は万能ではない
    08-13. 言語獲得理論への最初の取り組み
    08-14. コネクショニスト・アプローチ
    08-15. ニューラルネットで何ができたか

    第09章 言語入力の脳メカニズム――単語から文へ 219
    09-01. 脳機能イメージング
    09-02. PETの方法
    09-03. f MRIの方法
    09-04. 光トポグラフィの方法
    09-05. 差分法
    09-06. 脳機能イメージングによる言語研究の問題点
    09-07. 語彙論主義の呪縛
    09-08. 聴覚野の言語に対する反応
    09-09. 脳の言語野は正直
    09-10. 単語から文の理解へ
    09-11. 文字が脳機能に影響を与える?
    09-12. 言語における脳の性差

    第10章 文法処理の脳メカニズム――文法は脳にある 239
    10-01. ブローカ野の機能は何か
    10-02. 規則か統計か
    10-03. 脳科学による検証の試み
    10-04. 複雑な文の処理
    10-05. 機能イメージングによる脳の言語モジュール
    10-06. 文法は脳のどこにあるか
    10-07. ジャバウォッキー文による意味と文法の分離
    10-08. 文法の脳研究の将来

    第11章 手話への招待――音のない言葉の世界へ 255
    11-01. 手話は自然言語
    11-02. 手話でどこまで表現できるか
    11-03. 手話は世界共通ではない
    11-04. 手話はジェスチャーとどのように違うのか
    11-05. 手話には語順がある
    11-06. 二つの手話
    11-07. ろう学校では手話を教えない?
    11-08. 手話の脳研究
    11-09. 手話を覚えよう

    第12章 言語獲得の謎――言葉はどのようにして身につくか 275
    12-01. 言語獲得の不思議
    12-02. 母語の不思議
    12-03. ピジンとクレオール
    12-04. 手話のクレオール化
    12-05. 幼児の言語獲得の特徴
    12-06. 言語入力の問題
    12-07. 母音の獲得
    12-08. 規則の獲得
    12-09. 文法の獲得
    12-10. 胎児の脳と言語発達
    12-11. 左脳優位性の発達過程
    12-12. 乳幼児の左脳優位性

    第13章 感受性期とは何か――子どもは言語の天才 297
    13-01. 臨界期での脳の可塑性
    13-02. 言語獲得の環境
    13-03. 言語獲得の感受性期
    13-04. 文法能力の感受性期
    13-05. 言語獲得と発生の共通点
    13-06. 言語獲得の多段階仮説
    13-07. 驚くべき言語能力の回復
    13-08. 言語のトレーニング
    13-09. バイリンガルの不思議
    13-10. バイリンガルの言語発達
    13-11. 第二言語の獲得に普遍文法は必要か
    13-12. ナチュラル・アプローチ
    13-13. 多言語性失語症
    13-14. もっとも不思議な失語症
    13-15. バイリンガルのイメージング実験

    おわりに 326
    索 引  340

  • 一応読み終わったけれど・・・あまり理解できていない。
    こんなに理解できなかった箇所が多い本は久しぶり。

    著者はチョムスキーの普遍文法の理論を擁護する立場のようだ。そしてそれを近年技術的にも発達を遂げた脳科学の手法で解き明かそうとする試みについて、述べられていた。
    分かっていないことはまだまだ多い、とのことだった。
    特に、文法が脳のどの部分で、どのように処理されていくかについては、個人的にも興味が惹かれる。

    この本が出たのが2002年。
    それから十年経っている。
    ということは、相当この分野の研究が進んだのではないかと思われるが・・・
    現在はどんなところまでわかったのだろう。

    さらに余計な一言。
    私はこの本を最近古本屋で買ったのだが、配偶者は新刊の頃買って持っていた。
    同じ本が家に二冊・・・。
    本の内容とは全く関係のないことながら、そんなことが妙に悲しい。

  • 今まで名前は知っていたものの、いまいち漠然としていた生成文法や言語学。この本は、タイトル通りではあるが、脳科学からそのようなものに触れている。言語学とはどのようなものなのか、脳科学にはどのような手法があるのかなどがまとめられているのはわかりやすい。

    ところが筆者の主張、というよりも筆者の意見に反する研究例に関しては、その批判がどこか曖昧な感じがした。私自身あまり本を読まないので、こういうものなのかとも思ったけれども、「方法が単純」など、少し単調な印象が残っている。「科学的にないと言うことは出来ない」と筆者が本書で述べている言葉であるが、そのためでもあるのだろうか。

    しかし、この本には様々な研究例が紹介されており、また、一つの章の中でもたくさんのトピックに分けられていて読みやすく、索引もついておりとても読みやすい使いやすい本となっている。私自身心理学を専攻しているので、参照のもとにしたい。内容的には少し難しい部分もあるが、全体としては比較的読みやすかった。

  • チョムスキーの生成文法理論、失語症、モジュール仮説の話は体系的にまとまっており読みやすかった。
    単純な文・理の区別だけでは割り切れない分野の話であり、これからの発展に胸が膨らむ。
    ただ、本書の半分ほどが結論のはっきりしない実験の羅列であり、文系の私がただ読み進めるのはかなり骨の折れる作業であった。

  • 言語については、-今も大部分はそうであるが―大学では人文学科がその役割を担ってきた。
    しかし、現在はMRI等の非侵襲的かつ定量的な手法が開発されており、理系分野の領域ともなっている。
    文系であろうが、理系であろうが中心的な課題は同じで、脳はどのように言語を理解し、学習しているのだろうか、ということである。

    本書はどちらかと言うとMRI等の知見から得られた結果をもって、過去の症例をあわせて脳の機能を解説している。

    が、MRIからの結果から、○○の理解は脳の△△の場所が活性化しているので、ここが担っている可能性が高いという議論が後半の大部分があてられている。
    正直、ウェルニッケ野といわれてもピンとこない。
    やはり、言語を学習するという人間独自の能力は後天的なものなのか、先天的なものなのかという論点を絞って、それらに対する過去の実験結果を示し、考察を述べてほしい。
    本書は内容は豊富であるが、反面、中心的な議論がぼやけているように思える。

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