言語の脳科学: 脳はどのようにことばを生みだすか (中公新書 1647)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121016478

感想・レビュー・書評

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  • 大いに感銘を受けた。
    ここからピンカーの本、チョムスキーの生成文法などのマイブームへと繋がっていった。

  • 5冊目です。

    いったい人間はどのように言葉を覚えていくのだろう、そもそも人間はなぜ言葉を覚えるのか―
    そんな素朴な疑問に答えてくれるのが本書「言語の脳科学」です。

    この本の面白いところは一般の人が思っているよう様な言語に関する理解と真っ向から対立していて
    そこがユニークでありおもしろいところでもあります。
    例えば「なぜ人間だけが言語を覚えるの?」と言われたら普通の人は「人間は言語を獲得していったからだよ。つまり成長するにしたがって
    言語能力が成長していったからさ。」と答える人が多いとも思います。ところが実際はそのような必要性から習得したのではなくもとから人間が言語を話す能力を有していたというのです。なぜかといえばこのような考え方(人間が言語を獲得していくこと、これを「学習説」と言うそうです)では
    「プラトンの問題」という難題を解決できないからです。「プラトンの問題」というのは簡単にいえば「なんで幼児は誰からも言葉を教わったわけでもないのにあんなに短時間でかつ大量に言葉を覚えていくのか」という疑問のことを言いますがもし学習説の立場をとるならば
    誰かに教わったわけでもないのに短時間のうちに言語を習得していくのは困難ということになります。また、言語能力が成長していくならば
    年をとるにつれ言語習得能力が上がっていくわけですが実際はむしろ衰えていきます(英語を習得する時の難しさを思い出していただければ良いと
    思います)。この疑問は言語を学習していくのではなく最初から人間に備わっていたのだ(これを生得説といいます)、と考えれば解決できます。

    もうひとつ本書のカギになるのは言語とはなにか、ということです。本書では言語を「文法をもった言葉」としています。
    ではなぜそのような定義になるのでしょうか?もし言語をただ単に言葉と定義してしまうと動物の鳴き声などまでもが
    言語に含まれてしまうわけです。したがって本書では前者のような定義をとるわけです。また、よくテレビなどで猿が言葉を覚えた
    とか言いますが、あれはただ単に言葉の羅列を覚えただけであって規則をもってなにかの意図を伝えたという例はありません。
    こういった間違いも回避できることがこの定義の利点でもあります。

    以上のこと以外にも多くの新しい知見を得られるのなかなかおすすめの一冊です。























  • 言語に規則があるのは、人間が言語を規則的に作ったためではなく、言語が自然法則に従っているからである―。こうしたチョムスキーの言語生得説は激しい賛否を巻き起こしてきたが、最新の脳科学は、この主張を裏付けようとしている。実験の積み重ねとMRI技術の向上によって、脳機能の分析は飛躍的な進歩を遂げた。本書は、失語症や手話の研究も交えて、言語という究極の難問に、脳科学の視点から挑むものである

  • おれがぴちぴちの高2のときNHKかなんかが「大学の講師に高校生相手に講義させよう」って番組を企画、それに行ったときの講師がこの酒井邦嘉さん、んで彼がただで配ったのがこの本。
    言語学は文系、脳科学は理系に分けられる今の日本の研究のあり方を憂えてらっしゃる。チョムスキーの言語生得説を推してる。
    中盤ちょこちょこと素人には難解な医学(?)用語満載だったけど、全体としては読みやすい。
    とにかく言語と脳ってのはおもしろいものだと思う。研究する上でいろんな制約はあれどこれから開拓される分野だろうし。
    ピジンやクレオール、人工知能の話、手話が自然言語だったり。

  • 脳科学とくに認知の専門書でちょっと敷居が高い本。特に中間あたりは難解。しかし言語習得のための臨界期(感受性期)、早期教育、幼児は言語の天才といわれる所以を知りたい方にはもってこいの本です。12章『言語獲得の謎―言葉はどのようにして身につくか』13章『感受性期とは何か―子どもは言語の天才』は、DWEの営業マンが言ってることに対する科学的根拠の裏づけになるような内容で面白いです。

    この本を読むならば、12章、13章から読み始めて、必要とあらばそれ以前の章を参照するという読み方がおすすめです。

    これにあわせて読むのにオススメな本は赤ちゃんと脳科学や早期教育と脳です。

    脳科学の視点から行き過ぎた早期教育に警鐘を鳴らす本です。また幼児へのテレビの影響が気になる方にもおすすめです。この2冊で脳科学からの幼児教育へのアプローチはうまくバランスがとれると思います。

  •  チョムスキーという人が、普遍文法という説を唱えてらっしゃるそうで、それは「文法」というものは元々人間のもつ能力なのであって、後天的に得るものではない…という説らしいです。で、じゃあ文法をつかさどる脳のモジュールなり遺伝子なりがあるのかって話ですが、それはどうも将来的な話のようです。
     結局、チョムスキーの言うことが正しいのかどうか、正しいとして実証する方法があるのかどうかについては雲を掴む感じで、ド素人の私にはわかりませんでした。少なくとも、本を読んだ限りでは「脳はどのようにことばを生みだすか」は未だほとんどわかっておらず、文法に関しては言葉以上にわかっていない状況があるというのはわかりましたが、だとすると少しこの本のタイトルは問題があるでしょう。バイリンガルの失語症の話などはおもしろかったですが、お茶を濁された感じが否めません。全体としてフェアじゃないな、と思いました。

  • 新書としてはやや厚めの本。チョムスキー擁護派。(派、とか言っても科学的な事実なんだからしょうがないんだろうけど。)4章までは生成文法の考え方の基礎が説明されており、「2冊目の入門書」としては良いかもしれない。5章から10章までは脳科学に特化した内容で、11章が手話、12、13章が言語獲得について。すべての章にわたって脳科学からのアプローチが紹介されている。普段、漠然としたものでしかなかった脳科学に対する知識(左脳の方が言語に関しては強いんだ、脳内では電気信号として情報が伝わる、とか)が専門家の立場から詳しく整理されていて、全体的に面白く読める。脳科学に関する専門用語が使われていてもそんなに気にならないし、種々の実験や症状とその治療(失語症、失書症、失読症、分離脳など)から脳内の構造を解明しようとする点が興味深い。また8章の人工知能の話や手話、言語獲得の話も読み物として面白いだけでなく、当該分野の知識が少し深まった気がする。

  •  おもしろい本でした。

     チョムスキーの脳科学の立場から立証しようという試みです。まだ脳科学が十分に発達している訳ではないので,きちんと立証できたわけではありません。しかし,その方向性は確かに正しいと思われます。

     ただ,スキナーの行動主義批判の仕方がよろしくない。ぼくはスキナーの理論を学んだが,著者の無理解さは激しい。矮小化して,自分で作り上げた行動主義を批判して満足している感じがしまする。もっときちんとスキナーを理解して欲しい。
     チョムスキーとスキナーはかなり激しい議論を行ったことは有名なことだが,一方的な意見という感じです。

     ●は本書からの引用で,( )はぼくの意見,感想です。

    ● チョムスキーは,発生の仕組みで体ができあがるのと同じように,脳に「言語器官」があって,言語も成長に従って決定されると考えた。言い換えると,言語は,本人の努力による「学習」の結果生ずるのではなく,言語の元になる能力,すなわち言語知識の原型がすでに脳に存在していて,その変化によって言語の獲得が生じると考えればよい。

    ( この長い人間の進化の中で,言語の原型が脳にあっても不思議ではないかもしれない )

    ● チョムスキーは,自然言語には文を作るための必然的な文法規則があり,これが普遍的かつ生得的な原理であることを提唱した。一方,意味や概念の学習は後天的であり,単語と意味のつながりは連想に基づくものであって,その連想関係は偶然的である。
    ● 言語獲得は一定の成長の過程をとるのに対して,学習の過程は教育のやり方で大きく変わるし,個人差も大きい。文字や第二言語の勉強に学校教育が貢献しているのも,学習の必要性を反映したものである。母語における文法の獲得や使用は,無意識的に行われるのに対し,第二言語を取得するときに意識的な反復学習が必要なのは,多くの人が経験済みであろう。

    ( 英語教育において,学校教育を批判する人の中に,「アメリカの子どもたちはみな英語を楽に話すのに,なぜ中学,高校と英語を学んでいてまったく話せないのか。それは文法重視の教育が悪いのではないか,」という人がいますね。チョムスキーの理論からすれば私たちが日本語を習得するのと中学生になって英語を学ぶのとではまったく異なるものだということでしょう)

    ● クリストファーという1人のサヴァンは,20カ国語を使いこなす「言語天才」であり,
    ● クリストファーの特殊技能を概観するうえで,注目すべきもう一つの点は,言語を習い覚えるその速さと容易さである」
    ●巧みな文法能力を発揮して,わずかな例から自然に使いこなせるようになった。
    ● 幼児のときには,誰でもクリストファーと同じように,この「言語モジュール」を使って,どんな言語でも獲得しているのだから,クリストファーは,幼児の言語モジュールの能力を大人になっても失わなかったことがユニークなのである。

    ( 幼児期には,みんな言語の天才です。それは分かります。日本人の赤ちゃんはいとも簡単に日本語を話せるようになります。それが中学生になっていくら勉強しても話せるようにはならない。それは,幼児期にあった言語を獲得する能力を中学生では失ってしまっているのですね。
     とすると,幼児期と中学生では,英語教育の仕方が根本的に異なる必要があるのではないかと思えます。やはり,意識的に文法を学ぶというのは必要ではないのか)

      

  • 読みやすいです。と、いうか論述としてしっかりしているので、脳科学とかサッパリンチ。という僕でもよくわかりました。自分に内包されている言語機関に興味が沸く一冊。

  • 文系に分類されている言語学を理系の立場から見たもの。
    チョムスキーの普遍文法などを筆頭に
    人間がどのように言語を習得し、使用しているのかを
    言語学の知識を下地に、脳科学の立場から分析している。
    主に現在までに分かっている知識の紹介。
    また、生成文法から飛躍して、第二言語・バイリンガリズムにおける
    脳の使用している部位や、そのメカニズムの説明もある。

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著者プロフィール

言語脳科学者。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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