物語イランの歴史: 誇り高きペルシアの系譜 (中公新書 1660)

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  • 中央公論新社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121016607

作品紹介・あらすじ

日本人はイランに対してどのようなイメージをもっているだろうか。革命、戦争、日本に大挙してやってきた労働者…。しかし、それはイランの「非日常」的な一面に過ぎない。古代に広大な帝国を築き、正倉院へガラス器をもたらしたペルシアは、アラブのイスラーム勢力や欧米諸国の侵入・干渉を受けながらも、独自の文化を守り抜いた。不安定な世界情勢のなか、現在も模索を続ける人々の真実の姿を伝える。

感想・レビュー・書評

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  • 主に現代イスラームを専門とする著者によるイラン通史,20世紀以降の特に対アメリカについてが本書のメイン。

    p38「日本人は,欧米の一部にある「イランは危険」という誤解や偏見にとらわれずに,イランという国を正確に認識,理解していくべきだろう。」

    p258「日本は自由を希求し,また強い民族的ブライドをもつイラン人の心情に留意しながら,イランを国際社会にとり込み,急進的な保守派の主張を弱めることを,ヨーロッパやイスラーム諸国と強調しながら図っていかなければならない。」

  • 旅行前に一冊読んでおこうと本棚の中から。
    世界史の知識が無いもんだから分からないところもありましたが
    読みやすく手っ取り早く一冊読むには適した本かと。

  • [両面の相克]アケメネス朝やサファヴィー朝に見られる大国としての歴史を持つと同時に、近代以降は王政からイスラーム革命への大転換を見せたイラン。民族や宗教が行き交う地で育まれた壮大な歴史をコンパクトにまとめあげた作品です。著者は、イランへのペルシャ語留学もされた経験を持つ宮田律。


    そもそもこの変化の多い地域において、「イラン」という形で数千年前から歴史が書ける、ないしは紡げるところにこの国のまとまりの強さが感じられました。中東地域というとややこしく感じられるかもしれませんが、まずは本書でペルシャ・イランの系譜の独特さに足を踏み入れてみるのもオススメです。


    イスラーム革命後のイランについてはその影響力の大きさもあって議論が尽きないのですが、その端緒が那辺にあったのかを簡潔に知ることができるのも本書の魅力。アメリカとのこじれにこじれた関係がイランからの視点ではどう見えるのかといった点も非常に勉強になりました。

    ~ホメイニーによる反米の提唱は、イランとアメリカの外交関係の歴史に関係があるとともに、歴史的に外部勢力によって侵入を受けてきたというイラン人の「被害者意識」にも関連するものだ。~

    コンパクトにして明瞭☆5つ

  • 行く前に勉強しておかないとね。
    ペルシャ時代からの歴史ダイジェストと、文化についての説明。編年体的と言いますか、全体的に量と熱を均等に割いて説明している。なので教科書みたいな感じ。
    現代のイラン関連の戦争についての説明がない。国内の話がメインのため、他国との関係を説明して欲しかった。語られる現代の国際的な関係性もアメリカと日本の二者のみ。他の中近東との国際情勢を書いてくれないとイランの立ち位置がわからない。

  • 正直、イランのことも全然知らなければ、イスラム世界の知識も皆無。ただ中公の物語シリーズだから、ってことで読むことにした作品。案の定というか、全然覚えられなかったし、下手したら歴史の流れさえほとんどつかめなかったってのが事実。でも、他にも中東世界に関する書籍を読んでみようってきっかけにはなったと思えるし、ふとしたときにまた読み直すのも良いかも。食わず嫌いはダメすよね。

  • パフレヴィー朝からホメイニに来て今で 実際どう思っているんだろう

  • ロシアとイギリスとアメリカとの関係に悩まされる近代史は興味深い。
    しかし、出版年の関係で、アフマディネジャド政権への言及がないのは残念。

    本の構成としても近代に偏りすぎている気がする。それ以前はそこまでの歴史的見所はないのだろうか?

  • “イラクの次”と言われ、今アメリカから最も敵視されている国イラン。
    しかし高校の世界史ではインドやトルコ=イスラームに囲まれて
    いまいち扱いがマイナーな地域
    そんなイランの概略を何とかつかめはしないかと手に取ったのがこの本です。


    で、この本の感想ですが、私のレビューの前にこの本の章立てをみてください

    序章:イラン人の日常生活と文化
    1章 ペルシア帝国の栄光とイラン文化の形成
    2章 イラン文明のイスラームとの融合
    3章 西欧帝国主義との出会いと宗教社会
    4章 民族運動の台頭と挫折
    5章 イラン‐アメリカ相互不信の背景
    6章 イランの伝統文化の探求
    7章 模索するイランのイスラーム
    終章 イランはどこへ向かうのか

    古代から第2次大戦までの流れを3章でまとめてます

    読み終わって知ったのですが、
    アマゾンのレビューでも2ちゃんねるでもこの本はさんざんたたかれてます。
    さもありなん、この本を手にした人間のほとんどはイランの通史を知りたいと思った人でしょう。
    しかしいざ読んでみると20世紀半ばまでの歴史は教科書に毛の生えた内容程度。
    遊牧系イラン人のたてたパルティアや、イラン系イスラーム王朝であるターヒル朝、サッファール朝、サーマーン朝については名前だけ。
    イラン人がたてた訳じゃないけどイラン地域を支配した諸王朝については何もなし。
    多少ページを割いているのは(パフレビー朝は第1次大戦後に建国されて1979年の革命までの王朝だからほぼ現代史に当たるので除外すると)
    アケメネス朝、ササン朝、サファヴィー朝、カージャール朝だけ。
    これじゃイランの歴史は通時的に理解できません。


    ちょっくらイランを支配した国を並べてみましょう
    前2000紀末 アーリヤ人の侵入
    前1500年頃 エラム人
    前7世紀 アッシリア→メディア
    前6世紀 アケメネス朝
    前4世紀後半 アレクサンドロス大王の侵入
    前4世紀末 セレウコス朝シリア
    前3世紀 アルサケス朝パルティア(東部は一時バクトリア)
    3世紀 ササン朝ペルシア
    7世紀 イスラーム勢力の侵入
    7世紀 正統カリフ時代→ウマイヤ朝
    8世紀 アッバース朝
    10世紀 ブワイフ朝
    11世紀 セルジューク=トルコ
    12世紀末 ホラズム朝
    ※9世紀から10世紀頃、イラン系の民族が中央アジアにターヒル朝、サッファール朝、サーマーン朝を建国
    13世紀 モンゴルの侵入
    13世紀 イル=ハン国
    15世紀 ティムール帝国
    16世紀 サファヴィー朝
    18世紀 アフシャール朝(一時東部はゼンド朝)
    19世紀 カージャール朝
    20世紀 パルレヴィー朝
    現在 イラン=イスラーム共和国

    これだけの歴史の流れの中にあったイランですが、
    それをたった3章でまとめるのは無理があります。
    しかも19世紀後半から現在に至るまでの歴史は異様に詳しい・・・
    ちょっとアンバランスすぎました。

    まあ、それでも日章丸事件※1を詳しく紹介してくれるなど
    おもしろいエピソードなども盛り込まれていたのですが、
    正直な話著者の専門は国際政治と現代中東論(静岡県立大のHPより)ですから
    このような内容になってしまうのは仕方がないと思います。
    すべては出版社の人選が間違ってたんでしょうね。

    結論を言いますと、この本は『物語 近現代イランの歴史』としたほうがしっくりきます。


    ※1 イランの石油はイギリスのメジャー(世界的石油企業)が支配していたが、1951年イランの首相モサデクが国有化を宣言。それに反発したイギリスやアメリカがイラン産石油の市場締め出しをはかる。
    イラン産の石油の値段が下がったのをみた日本の出光興産は同社が持つ石油タンカー日章丸をイランに送り、石油の買い付けをはかる。サンフランシスコ条約による独立間もない日本は、経済復興とアメリカに依存しない石油戦略を図るため、米英の反対にもかかわらずこれを承認。
    (外務省は「出光興産によるイラン石油の買い付けは一私企業の行為であり、政府としては介入できないという意見を出す)
    こういうのをプロジェクトXでやってほしかった・・・

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著者プロフィール

現代イスラム研究センター理事長。1955年生まれ。慶応義塾大学大学院文学研究科史学専攻修了。UCLA大学院(歴史学)修了。専門は現代イスラム政治、イラン政治史。著書『現代イスラムの潮流』(集英社新書)『中東イスラーム民族史』(中公新書)『アメリカはイスラム国に勝てない』(PHP新書)ほか

「年 『集団的自衛権とイスラム・テロの報復』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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