親指はなぜ太いのか: 直立二足歩行の起原に迫る (中公新書 1709)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121017093

作品紹介・あらすじ

一本だけ離れて生えている太くて短い親指、ガラスさえ噛み砕くほど堅い歯。人類の手と口は、他の霊長類に例のない特異なものである。霊長類の調査を長年続けてきた著者は、サルの口と手の形、移動方法は、その主食によって決定されることを解明し、「口と手連合仮説」と名づけた。なぜアイアイの中指は細長いのか、なぜチンパンジーは拳固で歩くのか、そして人類は何を食べ、なぜ立ちあがったのか。スリリングな知の冒険が始まる。

感想・レビュー・書評

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  • ■糖質制限をするにあたって,人間の歴史のほとんどが肉食であったのかを知りたくて本書を読みました。

    その目的を達するには,最後の二章だけで十分だったかもしれない。

    端的に結論をば…。

    ■ボーン・ハンティング(骨猟)をする類人猿は両手に道具(石)と食物(骨)をもって立ち上がる。そして,歩き出す(直立二足歩行)。

    ■人類の特徴的な手の形は、骨を口に入れ、その歯ですり潰す前に、道具(石)をもって砕かなくてはならなかったこと、そのためにしっかり握りしめることが必要になったことを示している。

  • サルの口と手の形、移動方法はその主食によって決定されるという「口と手連合仮説」をベースに、初期人類の主食を考え、直立二足歩行に至った理由を考える。
    序盤のマダガスカルのサルの話は聞きなれない話で想像しづらく退屈だったけど、中盤以降が面白い。
    自然科学、生物学、人類学の面白さがわかる。

  • 主食が霊長類の手と口の形を決める
    その仮説を、世界の色々な猿で検証していきます
    そうして思い浮かぶ1つの疑問、「じゃあ人類は?」
    著者の結論は衝撃です。そんなものが主食だったとはとても信じられません。
    もしホントなら、世界中で1民族くらいそういう風習が残ってるような気もします。
    それとも、忘れ去りたい、そして忘れ去った黒歴史なのか?

  • 池澤夏樹さんが書評で紹介された本の内、読んでみようと思った本を数冊、図書館で借りて読んでいます。池澤さんはとても面白いと評されているんですが、ことごとく専門的で、私には難しすぎますw。この本、島泰三 著「親指はなぜ太いのか」(2003.8)もそうです。まぁ、中公新書ですから専門的ですよねw。この本の論旨は2つだと思います。①主食が手と歯の形を決定する ②石を握る。そして歩きだす(道具をもった類人猿は立ち上がる)。直立二足歩行の起源に思いを寄せながら、「立つ」「歩く」「握る」「噛む」「話す」を大事にしてます

  • 推理小説の趣がある。生きる姿勢で私が一番大切だと考えるのは「問う」ことである。学ぶ行為の奥に問うという自主性が働いている。島泰三の問いは単純にして深い。同じ霊長類でも手の形は実に様々だ。
    https://sessendo.blogspot.com/2020/02/blog-post_12.html

  • 学者ではない著者が親指はなぜ太いか追求した著作。論の展開、そして結論も素晴らしい。

  • 第6回(文理横断ビブリオバトル)

  • 人の親指が太いのは、初期人類は石を使って骨(骨髄)を食べるボーン・ハンターというニッチを選んだために、石を握るための太い親指が必要だったためである。本書の結論はいってしまえばそれだけである。しかし、この結論を導くために、一見冗長のように思えるマダガスカル島の霊長類やオランウータンやゴリラのナックルウォークに関する手口連合説の考察を積み上げた結果、初期人類の生態を矛盾なく説明できるのがボーン・ハンターであるという結論を導いたところに筆者の執念のようなものを感じた。

  • 本書では、まずアイアイの手の形状のユニークさと、その食性の特殊性を結び付けるところから始まる。そしてこのリンケージは歯の形状とも強い結びつきがあることを説明し、食性(本書ではニッチと呼ぶ)は、手と歯の連動的進化を決定するという仮定を立てる。 その後、その他の類人猿、例えばチンパンジーや、ゴリラ、オランウータンなどに対し、この仮定が当てはまることを証明していく。 さらにここから議論は発展し、直立2足歩行という、一見、生存競争での不利な条件をたくさん抱えた機能を、なぜ人類が獲得したのかという問いに対する仮説を作り上げる。 これの仮説では、初期人類はサバンナの大地に転々とする野生動物の骨を主食として食った。荒唐無稽な説のように見えるが、彼の論理展開には説得力があり、なかなか面白い。少なくとも水生サル説よりは、支持できる。

  • 面白い、面白いけれど前半が特に冗長

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著者プロフィール

1946年下関市彦島生まれ。東京大学理学部卒。理学博士(京都大学)、マダガスカル国五等勲位シュヴァリエ、雑誌『孫の力』監修。1978年(財)日本野生生物研究センターを創設、主任研究員を経て、国際協力事業団(JICA)派遣専門家として2001年までマダガスカルに6年3か月滞在。アイアイなどを上野動物園に送り、2002年より日本アイアイ・ファンド代表としてマダガスカル北西部アンジアマンギラーナ監視森林の保護管理を行って、現在にいたる。2012年、ルワンダ共和国でマウンテンゴリラの名付け親となる(日本人初)。ANAグループ機内誌『翼の王国』にて阿部雄介氏とともに『日本水族館紀行』(2007~2012年)、『どうぶつ島国紀行』(2012年~)を連載。『はだかの起原』(木楽舎)、『親指はなぜ太いのか』、『戦う動物園』(編)、『孫の力』(3冊とも中央公論新社)ほか、著書、論文・報告書多数。

「2004年 『はだかの起原 不適者は生き延びる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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