ケータイを持ったサル: 「人間らしさ」の崩壊 (中公新書 1712)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121017123

作品紹介・あらすじ

「ひきこもり」など周囲とのコミュニケーションがうまくとれない若者と、「ケータイ」でいつも他人とつながりたがる若者。両者は正反対に見えるが、じつは成熟した大人になることを拒否する点で共通している。これは「子ども中心主義」の家庭で育った結果といえる。現代日本人は「人間らしさ」を捨て、サルに退化してしまったのか?気鋭のサル学者による、目からウロコの家族論・コミュニケーション論。

感想・レビュー・書評

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  • 人間がケータイを使うことによる弊害が書かれているのかと期待して読むと、それだけではなくパラサイトシングルや引きこもり、主婦が夫を蔑ろにすることから、20年前当時の若者の行動について書かれている本だった。
    20年前の話だったので、勿論スマホは無い時代なので共感できることは、ケータイの件では少なかった。
    また、話にまとまりがなく、章ごとに主題の異なる話ではあったが、20年前と現在での繋がる話も多く、新しい発見は得ることが出来た。

  • ちょっと理解に苦しむタイトルだが・・・
    ニホンザルを研究されている筆者だということを知り、一応納得。しかしながら、ややこの本の古さが気になる。この本が出版された当時、筆者はまだケータイを持っておられなかったそうだ。その前提で書かれたのであれば、筆者の主張もまあ理解できないこともないが。ルーズソックスなど懐かしい時代を表すものも、いまとなっては一般化するルールとしては説得力が弱い気がする。

    本としては楽しく読めた。この筆者は今ケータイ、いやスマホをバリバリ使われているのではないかと・・・あくまでも私の推測ですが。

  • 以前一度読んでいたが、内容をすっかり忘れていたので再読した。「ひきこもり」と「携帯依存の女子高生」は基本的には同類であり、いずれも社会と交渉することを拒絶した人々とのこと。単に「ひきこもり」は社会と接触しないために部屋の中に閉じこもり、「女子高生」は外に出ているように見えて実は自分の部屋を外に拡張しているだけ。だから平気で外でも家の中にいるように大きな声で友人と会話し、地べたに座り込み、食べ物を食べる。社会との断絶の原因が実は親の過干渉にあり、今の日本人はサルの家族と同じになっている。サルは集団でいるので社会性があるのかと思うが、実はサルは集団に属してもあくまで家族としか接触を持たず、他家族との間では接触がないらしい。大変示唆に富んだ本。20年前の本だが、今読んでも遜色ない。むしろまだ携帯にメールしかない当時より、SNSの出現した今の方がよりサル化が進んでいるようにさえ感じる。

  • 高名なサル学の研究者が書いたトンデモ本との評を耳にして、興味本位で手に取りました。

    著者は、現代の若者は人間らしさを捨ててサル化しつつある、と述べていますが、これは一種のレトリカルな表現だと理解しました(コジェーヴ=東浩紀の「動物化」だって、生物学的な意味での「動物」を意味しているわけではありませんし)。そのように受け取るならば、人間の社会的行動を、社会的な近接要因をすっとばして生物学的な要因に還元してしまうような議論ではないので、竹内久美子のような本式のトンデモ本といっしょにあつかうのは酷だという気がしました。だからといって、本書がおもしろいとは思いません。まあ、オヤジの愚痴のようなものでしょう。

    たとえば、母子密着の「家(うち)のなか主義」が広がっていると述べている第2章で、サルどうしの毛づくろいの時間についてのデータと、子に対する経済的な投資額の多寡のデータを並べて議論をしていますが、この2つのデータからただちに現代人の「サル化」という結論を引き出すことの乱暴さを、この本の著者が承知していないというのは、少し信じがたいように思います。

  • サルの生態に現代人が近づいていることを挙げ、現代の社会問題にメスを入れている。

    夫をないがしろにして、子に期待を押し付ける主婦、専業主婦の生態など、うすうすみんなが感じていることを的確に文字にしてあり、大変おもしろく読めた。

  • (「BOOK」データベースより)amazon
    「ひきこもり」など周囲とのコミュニケーションがうまくとれない若者と、「ケータイ」でいつも他人とつながりたがる若者。両者は正反対に見えるが、じつは成熟した大人になることを拒否する点で共通している。これは「子ども中心主義」の家庭で育った結果といえる。現代日本人は「人間らしさ」を捨て、サルに退化してしまったのか?気鋭のサル学者による、目からウロコの家族論・コミュニケーション論。

  • 37916

  • 時代考証は必要だが人間行動を探る上でのヒントが満載。

  • サルの社会性を通して現代日本の社会を読み解いた本。

    第一章 マザコンの進化史
     サルについての考察と、現在の子育てについての考察
    第二章 子離れしない妻と居場所のない夫
     現在の家庭内の状況。「家のなか主義」
    第三章 メル友を持ったニホンザル
     サルの会話と、メールのやりとり
    第四章 「関係できない症候群」の蔓延
     関係性の脆弱化
    第五章 社会的かしこさは四十歳で衰える
     子育てと生活スタイル。本当は子育てしていたのは母親じゃなく、爺婆。
    第六章 そして子どもをつくらなくなった!
     家族像の激変と、「性差」の発現。現代社会のしくみは、近年つくられたもので、「母親とはかくあるべき」論を信じるのは思考停止。


    学校の図書館に置いてあった本。手に取ってみたら、意外におもしろかった。

  • 著者は比較行動学が専門。
    霊長類の観察から人類の文化的進化を解き明かそうとする。現代人に顕著な行動の深層を追及している。
    タイトルに反して?かなり専門的な方法論で現代人の行動を解明している。単なる観察分析だけでなく、たくさんの実験結果を踏まえた分析もユニークで面白い。

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著者プロフィール

1954年大阪生まれ。専門は、ヒトを含めた霊長類のコミュニケーションの研究。
1983年 大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了
現 在 京都大学霊長類研究所教授

[主著]
ケータイを持ったサル 中央公論新社 2003年
音楽を愛でるサル 中央公論新社 2014年
自閉症の世界(共訳) 講談社 2017年

「2019年 『ニューロダイバーシティと発達障害』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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