批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

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著者 : 廣野由美子
  • 中央公論新社 (2005年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121017901

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批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)の感想・レビュー・書評

  • 古典SF『フランケンシュタイン』を題材に、前半は小説の技法についての解説を、後半は批評理論について概説している。


    まず、題材が『フランケンシュタイン』というのが良かった。誰もが知っているけれども、実際の所、読んだ人なんて日本ではあんまりいないのではないか……(ボリフ・カーロフのビジュアルや、『怪物くん』のイメージは有名だけれど)と思う小説だし、名作として批評も研究もされた小説ということで「あ~あれでしょ? フランケンシュタインって人造人間が出るやつ?」程度の理解しかなくても、興味を持続して読むことができると思う。


    小説の技法については、個人的にはデビッド・ロッジが書いたその名もズバリな『小説の技法』の価値を再確認するようなものだった。


    文学者的にあの本はどうなんだろうな~と思っていたけれども、たびたび言及されているのを読んで(というか、元ネタになっているのを後書きで読んで)、やはり資料としても優れた内容だったんだねと思った。実際の所、前半部分を勉強したいのなら、デビッド・ロッジの『小説の技法』を読んだほうがいいと思う。それぞれの技法にマッチしたテキストを紹介しているし。


    実際、この本は後半が重要だと思う。『フランケンシュタイン』という小説が時代時代によってどう批評されてきたか、というのがこの本の主眼になっていて、道徳的批評や伝記的批評、ジャンル批評から、フェミニズムやジェンダー、マルクス主義といった新しい切り口で批評されたことが概説される。


    現在の文体論的批評や透明な批評までいくと、難しかったりエッセイじゃないの? といろいろ考える部分もあるが、こういう風に時代時代によって新しい解釈が生まれる作品こそがマスターピースと呼ばれるのかなと思った。

    基本的に入門書ではあるが、大学の講義を元にしているようなので、概説としては内容の濃いものになっていると思う。新書でこのレベルが読めれば嬉しいよね。また、この本から離れて、自分が好きな小説の解釈をいろいろ考えてみるのもいいかもしれない。

  • これ、眉間に皺寄せまことしやかに文芸理解のポーズで読む本ではないのでは?
    「ポスコロ風に批評するとこうだよね」
    「新歴史好きの批評屋ならこう書くんでね?」
    と次々繰り出されるパスティーシュへ「よくできてるじゃん」「んー?これはちょっとイマイチこじつけ臭い」などと微笑みながら楽しむ本ではないかと。たぶん。
    ちなみに脱構築批評風の箇所、とりわけリキはいってます。
    前半の技法分析はロッジ『小説の技巧』http://booklog.jp/users/donaldmac/archives/4560046344 の劣化コピー技じゃね?と思いながら読んでいたら、あとがきでネタばらしされてました。

  • 『フランケンシュタイン』を読んだことがなくても理解し易い本です。併せて読めば、より理解が深まると思います。


    間テクスト性についての記述が少し足りない。
    間テクスト性とは、先行テクストの影響だけではない。後続のテクストを含めての、読みの可能性を示唆したものである。つまり、時間軸は関係ないのである。
    この本では先行テクストの記述だけであるが、『フランケンシュタイン』の間テクスト性として、他にはディケンズ作『大いなる遺産』のピップも挙げられるのではないだろうか。

    2005.3.25 初版/2009.4.9 購入/2009.7.15 読了

  • 「脱構築」はわかっても、脱構築「批評」が想像できない、「マルクス主義」はなんとなくわかるが、マルクス主義「批評」が想像つかない僕には、とても良い本。

  • 中公新書のロングセラー。
    小説を読む上で、まずは作品世界に入り込み、その体験を楽しむというのが、最もよくある楽しみ方だろう。
    もちろんそれだけでもよいわけであるが、その作品をより深く知ろうと思ったとき、読み手である自分が受けた印象だけでなく、作品がどのようにして書かれたか、書かれた背景を知れば、より深い理解に通じることもある。
    本書では、作品を分析するにあたって、「内在的」アプローチと「外在的」アプローチに大別されるさまざまな手法を用いて小説の「解体」を試みる。
    特徴的なのは、手法を単に概説するのではなく、1つの小説、ここではメアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』を題材にして、実践的に紹介していることである。
    こうすることで、読者は具体例を豊富に知ることができ、分析法をよりよく理解することが可能になる。
    著者は英文学研究者で、NHK100分de名著で『フランケンシュタイン』を取り上げたこともある(cf:『メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』 2015年2月 (100分 de 名著)』)。
    この作品を取り上げたのは著者の専門分野であることももちろんだが、作品自体にさまざまな読み方が可能であることが大きい。
    『フランケンシュタイン』が未読であっても本書を読むことは可能だが、性質上、「ネタバレ」している箇所も多々あるので、読み終わってから手に取る方が無難と思われる。私も大まかな筋は知っているつもりだったが、原作をきっちり読んでからの方がよかったと幾度か後悔した。

    さて、分析法として、「内在的」アプローチとされるのは、小説の形式や技法、構造や言語を調べることを指す。これに対し、「外在的」アプローチは、文学以外の対象や理念を探究するために、小説を利用することを指す。本書では、前者を「小説技法篇」として、後者を「批評理論篇」とした二部構成を取る。
    小説技法としては、ストーリーやプロット、性格描写、間テクスト性(他の文学作品との関連)、結末などについて論じる。
    批評理論としては、道徳的批評、ジャンル批評、精神分析批評、ジェンダー批評、文体論的批評などが取り上げられる。
    いずれも多くの研究者たちの議論を引きながら、さまざまな箇所のさまざまな解釈が示される。合間には、著者シェリー自身の生い立ちや執筆当時の環境も挟まれる。『フランケンシュタイン』という作品が平面から立体に立ち上がっていくスリルがある。
    具体例に数多く触れながら、文学論のエッセンスに触れられる点が本書がロングセラーとして生き延びてきた所以だろう。

    『フランケンシュタイン』は不思議な作品である。
    枠物語の構造を持ち、怪奇小説としても読め、ある意味、SFとも受け取ることができ、人間を人間たらしめるものは何かという問題提起も孕む。
    書いたメアリ・シェリーは執筆当時、20歳前後という若さである。16歳の頃、後の夫となる妻帯者パーシー・シェリーと恋に落ちるが、メアリの父が激怒したために駆け落ち。怒濤の日々の最中に5人の子供を身ごもったが、流産や幼少期の死亡で、生き残ったのはわずかに1名。メアリの父ウィリアムの名を付けた長男は、ついに祖父に会うこともなかったという。メアリ自身の母もメアリ出産時に産褥熱で死亡している。
    安易に作品と作者を重ねてよいかどうかはわからないが、『フランケンシュタイン』のおどろおどろしさのいくばくかには、出産の血なまぐささを感じないでもない。

    文学論の歴史の厚みや広がりには感嘆もし、圧倒もされるが、この作品を理解する上には、さらにプラスして、時代背景を知ることがかなり重要なのではないかという気もしている。
    科学技術等の大きな発展から未来への希望に燃えつつも、どこか先行きの見えない、得体の知れない不安もそこここに漂っていたような、... 続きを読む

  • 自分が無意識にマルクス主義批評に偏っていることがわかった。でも「象徴」とか「構造」とか言われるとほんまかいなと思ってしまう。

  • タイトルは固いですが、要はメアリ・シェリーの「フランケンシュタイン」の構造を分解して解説した一部と小説を様々な角度から批評した二部からなります。小説一作を取り上げているだけですので、批評理論とやらを学びたいって方の入門書にはなりにくいかも。ですが、小説を書いている、もっと深く読みたいって方にはおすすめです。
    自分は一部を大変興味深く読みました。二部は、なるほどと思えるところと、そうなんだろうけど果たしてシェリーはここまで考えていたかと思ったり。
    若干難しかったですが、今後の読書に生かしたいですね。

  • 様々な読み方を実例を通して紹介している.教科書的.今後の読書で実践していきたい.

  • メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』を題材に、文学理論上のさまざまな概念や手法を解説している本です。

    テリー・イーグルトンの著書をはじめ、批評理論の入門書は数多くありますが、じっさいに一つの題材をさまざまな手法で料理してみせるところに本書の特色があります。具体的な批評の実践に触れることができると同時に、そうしたさまざまな批評を可能にする『フランケンシュタイン』というテクストそのものの豊かさを感じ取ることができるという点で、優れた入門書ではないかと思います。

  • 様々な文芸批評理論を、実際のテクストの読みを通して解説する入門。使用テクストをメアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』一本に絞っているため、それぞれの批評の切り口の違いがよく分かる良書。

    しかし、批評理論自体には違和感を感じるものが多いかな。形式主義的批評はまだ作品について論じようとするけれど、社会学に基づいた批評は、極論すれば作品をネタに自分の信奉するイズムについて論じているようなもの。18世紀を舞台とした小説内で「女性が軽視されている」などとフェミニズム批評されたって、「知るかボケ」としか言いようがないよね。

  • 19世紀イギリスの作家メアリー・シェリー(1797年〜1851年)が、1817年に発表した「フランケンシュタイン」を、小説技法と批評理論の角度から読み解こうという狙いを持って書かれた文藝理論の解説書。本著は2004年度に京都大学人間総合学部で行われた講義録をまとめたものである。そのためここで展開されている文体は硬い上に内容も高度なので「新書版なので内容は平易だろう」と思ったら後悔するかも知れない。本書の着目点は、後半に登場する批評理論。この本で紹介される批評理論は13種類(小項目を含めると24種類)だが、理論が異なれば、そこから受ける印象はこうも違うのだろうかとうなってしまう。言い換えれば、この作品は多種多様な読み解き方ができる作品、ということがいえるのだ。欲を言えば、もう少し文体を平易にしてくれればと思う。

  • 小説技巧編が五つ星。小説の面白さの秘密が解き明かされたようだ。
    批評理論編は薄く広くで四つ星。他書より、紹介されている理論数は多いが、いかんせんそれぞれの記述が少ない。ただ文体論だけは少し面白かった。

  • 初読。技法と理論とそれぞれ整理されていて、読む前に予想していたよりも分かりやすかった。フランケンシュタインの分析としても結構おもしろく読めた。いつも何となくで読んでしまうけど、もっといろいろ考えて読みたいと改めて思った。個人的には技法の部分が特に興味深かった。今後の読書に生かせるだろうか。

  • 京大の講義がもとになっている。こういう本ってありそうでなかったので、店頭で見た時、すぐに買いたくなった。
    (買いたくなってから実際買うまでにはだいぶ時間がかかったけど…ん、矛盾?)

    技法の章、興味があるナラトジーのところを何回か読み直した。アイロニーについて、自分でもよくわかってなかったことを認識した。批評理論の方は今ひとつよくわからなかった。また必要に応じて読みなおすことになると思う。

  • これほどいろいろな観点から小説の読み解き方を解説した本はないのではないか。

    半は小説技法篇として小説を創作する際の技法の観点から、後半は批評理論篇として小説を鑑賞する際の視点の取り方から整理をされている。

    これまでの文学研究の歴史の蓄積を踏まえて、各技法、批評理論を簡潔に説明しつつ、具体的に『フランケンシュタイン』を題材としてその使われ方を解説している。

    非常に分かりやすい説明であると同時に、具体的な小説を題材にしているだけに、無味乾燥な分析にとどまらず、これらの分析手法は小説の世界に深く入っていくための方法であることが感じられるような本になっていると思う。

    本書で紹介されるいろいろな視点を持っておくことで読むたびに新しい発見が得られ、一篇の小説を何度も読み返すことの楽しみも与えてくれそうである。

  • 新書という体裁ながらこれは完全に「教科書」ですね。『フランケンシュタイン』という具体的な著作を材料にしているため、解説は具体的でわかりやすいです。また、各課ごとの分量もよくまとまっていて、消化不良に陥ることなく小説技法・批評理論を勉強できます。その分、娯楽性はゼロで読んで面白いという類の本ではないように思います。

  • 小説における「視点」が気になり、本書を読み始めた。批評のためというよりは、小説を読む手がかりが欲しいためである。焦点化やイメジャリーなど、自分自身にしっくりくるものもあったので、今後の参考にしたい。

  • 大橋洋一「新文学入門」で得たものを補強するためにもう一冊簡潔な入門書を、と思って手に取った本。「新文学入門」が批評理論しか扱っていないのに対して、本書は内在的アプローチ(小説技法)と外在的アプローチ(批評理論)の両方を扱っている。教科書と用語集の中間的立ち位置。「新文学入門」では扱われていなかった批評理論(ジャンル批評、マルクス主義批評、文化批評、新歴史主義など)が扱われているし、1,2行で簡潔に各批評理論が定義付けられているのでわかりやすいし、なにより「フランケンシュタイン」を用いて実践例を示しているのがとても良い。この本に書かれていることがすべての基礎なんだろうとおもった。ここに書かれていることをきちんと吸収しきったうえで、さらに詳細な理論書に当たって勉強を深めていくべきだと。入門書として最適な一冊。

  • メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』をテキストにした概説本。
    前半は小説の技法について、後半は批評理論について、わかりやすく論じています。

    フランケンシュタインは怪物の恐ろしさばかりが先行しており、知っている気になっていましたが、きちんと内容を知りませんでした。
    以前バイロンとシェリー、そしてフランケンシュタインの物語を映画化した『幻の城』を観たため、雰囲気を重ねながらストーリーを追っていきます。

    単純な恐怖小説ではなく、きちんとプロットの組まれた、小説としての質の高い作品だと気づきました。
    メアリ・シェリーは、シェリーの内縁の妻だという知識しかありませんでしたが、両親共にすぐれた文学者であり、単なるシェリーの妻というだけではなく、文学的資質のある女性だということも知りました。

    この小説を、彼女は妊娠中に執筆したとのこと。
    未知のものへの恐ろしさ、生と死への鋭敏な表現は、妊婦だったからこそかもしれません。

    フランケンシュタイン博士が、死体をより集めて生命を吹き込み、怪物を生み出したというくだりでは、『鋼の錬金術師』や『ピグマリオン』を連想しました。

    この怪物、単に恐ろしいだけの存在かと思いきや、ミルトンの『失楽園』を読んで、自分とアダムとの違いについて考えを巡らせたりするインテリです。
    単独で言葉を覚えて、自らのアイデンティティを探し求めつつ、主観的に反応しながら本を読むというのは、人間以上ののびしろがある存在。
    仲間がいない孤独と絶望に苦しむところなど、感情も人と変わりません。

    醜いものを生み出してしまった博士は現実に目を背けているのに対し、現実を学び、知っていく怪物の前向きさが際立ちます。
    ただ、良からぬものを作りだしたという後悔から、憎しみや裏切りによる殺人が導き出されていく悲劇。

    荒削りなところはありますが、人物設定や話の構成は古典的でわかりやすく、例として最適です。
    こういった概論では、テキストはむやみに量を出すものよりも、ひとつの作品に焦点を当てて語っているものの方が理解が早いことに気が付きました。

    大学の講義用なのか、入門編といったところなので、理論の説明自体はテキストよりも把握しやすく感じました。
    むしろ、イントロ段階の紹介のみで終わってしまっているため、もっと踏み込んで語ってもらいたかったです。

  • 批評理論系の本を初めて読む人にオススメしたい本。
    全体的に分かりやすく、理解しやすい。
    但し、メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』を元に書かれているので、
    あらかじめそっちを先に読んでからの方が良いかもしれない。
    また、分かりやすく書かれている分1つ1つの項目の内容が薄いと言えば薄い。
    批評理論系を少し勉強している人には物足りないと思うかも。

    個人的には家に置いておきたい1冊。

  • 小説を書くって、綿密な作業だなあ。

  • 批評とはどんなものかに最近関心があって、実際具体例を通してやっている本はないかなと思ったらぶちあたった本。

    『フランケンシュタイン』自体は読んだことがなく、ストーリーラインをちょこっと知っている程度だった。
    それでも終わった頃には『フランケンシュタイン』の魅力がじわじわと伝わってきて、これが文化的な原型として語り継がれてきた理由もなんとなくわかってくるような気がした。

    批評に関する、理論的な細かい部分に関しては他の本のほうが良いかもしれないが、実際にそれをどう適用するか?ということを見るのにはお勧めしたい。

  • 批評理論の枠組みを、「フランケンシュタイン」という具体的な実例を通して概観できるところが本書の優れた点です。

    それぞれの批評理論について、なるほどと思わせるものや、的外れのように感じるものもありますが、そういった型があると知るだけでも随分役に立つものと思います。

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批評理論についての書物は数多くあるが、読み方の実例をとおして、小説とは何かという問題に迫ったものは少ない。本書ではまず、「小説技法篇」で、小説はいかなるテクニックを使って書かれるのかを明示する。続いて「批評理論篇」では、有力な作品分析の方法論を平易に解説した。技法と理論の双方に通じることによって、作品理解はさらに深まるだろう。多様な問題を含んだ小説『フランケンシュタイン』に議論を絞った。

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