戦後和解 - 日本は〈過去〉から解き放たれるのか (中公新書 (1804))

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著者 : 小菅信子
  • 中央公論新社 (2005年7月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121018045

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戦後和解 - 日本は〈過去〉から解き放たれるのか (中公新書 (1804))の感想・レビュー・書評

  • 2005年刊。著者は山梨学院大学法学部政治行政学科助教授。

     戦争後の和解(基本的には互譲による対立関係の止揚だろうか)に関し、和解概念があり得なかった(=捕虜の奴隷化)古代、そしてキリスト教的対立克服観を携えた中世・近世期における対立止揚の分析の後、第二次世界大戦後の、漸う成功事例と目される日英関係を例示しつつ、爾後の日中関係の像を粗描する。

     今になってみれば、さして問題にされなかった私的参拝とは違い、中曽根の公式参拝とその際の極めて挑戦的な物言いが、悪転機として思い返される。

     そして本題の日英和解。成功例と言っても、和解が本格化したのが90年代以降というのが意外とも、当然とも。
     日本が対アジアのみならず、戦後和解に取り組んでこなかった事実を雄弁に語る事象であろう。実際、ドキュメントでも、戦後の天皇訪英時の歓迎ムードとは対極の模様を見たことがあり、昭和天皇崩御時にも弔問使への否定的ムードが英国にあった事実を思い起こせば、90年代になるまで和解醸成が本格化しなかったとの本書の内容もさして奇異には感じない。

     しかも、いわゆる村山談話を、英国(特に国民)は全く評価せず、日本大使館前でのデモすら起きたこと。これは余り知られていない事実ではなかろうか。つまり謝罪とは言えないということ。

     そして、この英国民の反日目線を打破したのが、①日英将兵どうしの民間レベルでの交流と、②経済交流の進展(例えば英国内での自動車工場建設と雇用創出)、とどめが③橋本首相が英国大衆紙に行った謝罪記事の投稿という件。
     特に③は驚きだ。どういう投稿だったのかは本書に明示されないのが残念だが、英国からの助言を踏まえて、大衆の心をつかむべく実行した英断は評価されるべきであろう。

     なお、再言するが、国際的には、村山談話すら謝罪とはみなされず、和解の端緒にならない可能性ある点。
     さらに、サンフランシスコ平和条約にて日本は東京裁判を受け入れており、これを反故にするようなスタンスは条約を順守しない(約束を守らない)政権だという、国際的な評価を受ける点は、虚心坦懐に認識しておくべきか。

  • 忘却ではなく記憶が和解に繋がるのはなぜか。

    和解の意義の変遷は面白い。その後の日本と第二次大戦の交戦国とのわかいについては、不足を感じる。

  • 二次大戦中に起きた出来事についての戦後の感情的対立は、法的には解決済みとされた後でも、日本に対する不信感や偏見の根拠となっている。
    本書ではそれらのわだかまりを、未来のために、いかに解決していくべきか
    敗戦国の日独が戦後選んだ異なる道、日英の和解例、そして、日中和解の可能性などについて触れながら、語られている。

    筆者の選び抜かれた慎重な言葉が、
    今の殺伐とした東アジアの空気に、無力に響くなあ、と思う。
    優等生的で、相手を強く批判するトーンではなくて、
    こういう感性って最近は流行らないんだろうな、と思う。
    この本が出て10年、状況はずっと悪化してしまったと思う。
    このトーンに、日本人が聞き飽きて、バックラッシュが起きてるのかもしれない。

    「過去に根ざした感情対立の解決としての戦後和解のエッセンスは、
    未来の平和と友好とを担保にした高邁な妥協である」

    空襲や原爆投下などの戦争犯罪を不問にしながら欧米戦勝国によって一方的に裁かれた東京裁判の
    あまりのいい加減さ、日本にとっては屈辱以外の何者でもない。
    その屈辱が一部政治家たちの勘違いされかねない安易で過激な発言と、
    首相の靖国神社参拝を後押ししているのだと思う。
    中・韓の屈辱とは、まあ、言わずもがなだろう。

    すべての国の屈辱が早く晴れればいい。
    そのための「高邁な妥協」をそれぞれが出来るかどうか、
    道は果てしなく長いと思うけれど(とりわけ相手が思うようにいかないという意味で)
    日本と、アジアの国の傷つけられたプライドが癒されてほしいし
    なんとか各国のメンツを立てる方法を探していきたいと思う。

  • 戦後和解は感情的な問題である。著者も繰り返しているが、法的な解決は済んでいる、にもかかわらず当事者同士にわだかまりは残ったまま。
    具体的にまとめれないが、戦争後の和解として、悪の象徴としての加害者と、それに騙された被害者の線引を行い、それぞれに対処することを当事者双方が受け入れる、それが近現代の戦後和解における、成功例とする。日本はうまく成功することが出来なかった。

    多くの日本人の心情として、戦犯と被害者を別物として扱うことに抵抗があることは理解出来るが、それは日本人の立場。戦後和解においては、相手の国の立場がある。(バランスを取る為に言うと、中国が政治カードとして戦後和解を使っていることも指摘している。)

    著者が言うのは「戦後和解のエッセンスは、未来の平和と有効を担保にした高邁な妥協」ということ。「正義を追い求めるだけでは和解は成立しない」。

  • 世界大戦に無知すぎるのも問題かな、と。そう思って色々手に取るようにはしているけど、まだまだ全然ダメす。日英関係の歴史とかも全然知らんかったし、日中関係の根底にある問題も、殆ど理解できてない。その事実が分かっただけでも価値はあったし、無知に基づいたまま相手を悪く思う前に、理解するための努力が一層必要なんだと思いを改めました。

  • 民主主義という根底があってこそ和解は成立しうるのだろう。

  • 戦争後に両国(国家間)において、終結後に和解が必要である。言葉としては理解できる。講和とは、違うものだろうか?
    先の大戦を振り返れば、終戦後には裁判というかたちで戦争責任を清算した。降伏と講和条約とは、別物であろう。裁判においては戦勝国側に有利となる条件で結実する。東京裁判では長期にわたり開廷され、その後も記録は長期間公表されなかったようだ。秘密裏にされたことは何を意味するのか?
    日本とドイツを比較しながら和解のあり方が語られる。また、日英間の和解成功例、中日間問題例などが示されている。植民地に関しては和解が必要ない。

    63
    戦争犯罪人への処罰(ジャスティスとルビが振られている)
    66
    大東亜共栄圏(日本の思惑)
    vs
    アメリカなどには、侵略と読み替えられる。
    79
    原爆
    戦争責任を追及するべき行為である。
    昭和天皇への戦争責任等
    時は流れて、正義も変わる。
    168
    東京裁判
    天皇は、加害者(A級戦犯)に(欺かれた者)すなわち、被害者とみなされた。
    植民地支配は、不問にするというアメリカの意向、日本の戦争を侵略とする、アンバランスなものである。
    南京占領を南京大虐殺と取り上げる(情報操作)。
    185
    日本の行為が中国での攻略に使われる。中国人にとって、マイナスイメージの行為。

  • 新鮮な切り口で解説された歴史書であり、和解について日本のあり方を示す社会科学の書です。

  • 戦後和解のあり方について、歴史的な経緯を振り返りつつ、
    日中関係を論じる一冊。
    日英関係に関する内容が新鮮で、
    イギリスにおける日本の捕虜問題の大きさを学べた。
    読みやすく入門には適しているように感じる。

  • [ 内容 ]
    第二次世界大戦が終わり六〇年が過ぎ、戦争を直接記憶している人も少なくなった。
    だがいまだに戦争についての歴史認識をめぐり、近隣諸国との軋轢は絶えない。
    日本はいつ「戦争」の呪縛から解き放たれるのか―。
    一九九〇年代後半まで、日本軍による捕虜処遇問題で悪化していた英国との関係はなぜ好転し、ここにきて中国との関係はなぜ悪化したのか。
    講和の歴史を辿り、日英・日中の関係を比較し、和解の可能性を探る。

    [ 目次 ]
    序章 「戦後和解」とは何か
    第1章 忘却から戦争犯罪裁判へ(神の前での講和;揺らぐ忘却―制裁の登場;勝者が敗者を裁く時代へ)
    第2章 日本とドイツの異なる戦後(ドイツの選択;不完全だった東京裁判;曖昧化する日本の戦争責任)
    第3章 英国との関係修復(日英関係に刺さった棘;さまざまな和解のかたち)
    終章 日中和解の可能性

    [ POP ]


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    [ 参考となる書評 ]

  •  日本と「戦勝国」の戦後和解の模様を特に東京裁判を軸に論じている新書。色々と興味深く読ませて頂いた。ただ、ちょっと表現が時に意図的なのか、素直に書き過ぎているのか、論争的な問題を扱うにしては、注意不足な言い回しであったりするような気がする。全体として、妥当な主張、妥当な議論なので、本書がイデオロギー的な新書だと指摘される事はあまりないと思うが、その点が気になったのと、もう一つは、ちゃんと論文レヴェルでも典拠をちゃんとしないさいよという話。これはさ、「〜〜と受け取られた」とか「〜〜という印象を与えたはずだ」という場合も、少なからずそう思う根拠を明示しないと行けないし、捕虜等の当事者でもないのに、彼らの気持ちを代弁しているような表現が見られたりしたけど、そういう点もどうしてそう思うのか、エヴィデンスを提示しないとね。

     ただ、それなりに面白く、本書そのものというより、自分の研究の異なった側面に注目する機会を与えてくれたような気がする。

  • 日英・日中関係を掘り下げ、過去を見、未来を予想する。

  • このあたりは私の高校の時の卒論のテーマ「歴史認識の二重構造」の参考文献。

  • 2005年におきた日本を取り巻く国々で発生した出来事の中で、特に印象深い人が多くいただろうと思うのが、中国での反日デモの激しさだったと記憶している人も多かろうと思います。

    著者は、この日中間の火種を解決して、現代における過去から解き放たれるのかどうかを論じています。読んでみて印象的だったのは、日中間の対立を論じるために日英間での戦後の確執や対立が1990年代になってようやく解消され始めた点に注目し、同じような時間を経過した同じ戦後の問題をどうして日英間では解決できて日中間では解決できないのかを明らかにしようとします。

    読んだ感想としては、日中間の問題を解決するために紐解かれた日英間での関係改善にむけてなされた努力から得られた教訓を、日中間の問題にうまく適応できていない感があります。

    ですが、日英間での戦後補償や謝罪にかかわる国家間問題がつい10年ほど前までぎくしゃくしていた事実をイギリス側からの視点で描いている点がまずは新鮮でよかったです。

    当時イギリスの植民地だった東南アジアの国に攻め込んだ日本は、泰緬鉄道での重労働を通じた非人道的捕虜取り扱いをおこないました。そこでの経験が、実はアジアとヨーロッパという地理的も違い、もちろん文化や思考も違う国々とを共通の体験を通じて日本に対する批判や非難の意識を共有化させた部分などは、考えさせられるものがあります。

    ですが、そうした精緻な日英間の研究を日中間での問題解消に結びつけるとなるとやはり難しいですよね。しかも、以前とは状況がまったくことなり経済でも政治面でも日本と中国が相競う状況になるときに、本来ならばそれらとは分かたれてかんがえられるべき歴史問題を同列で論じていることも気になりますし、同列で論じないようにするにはどうしたらよいかという点への言及もありません。

    新書であるためにページに限りがあるのですが、肝心の論点の帰結となる日中間問題への応用可能性があまり感じられないので3点とします。でも日英間の戦後における和解プロセスについては大いに参考になりました。

  • この春以来この手の本ばかり読んでいる。日本と中国の和解はいかにしてできるかを日本とイギリスとの個人レベルでの和解
    を通じて提案する。イギリスの捕虜達が日本人に恨みをもつのはもちろん過酷な労役があったのだが、それ以上に自分たちより以下と思っていたアジアの人間に使役されたことの方が大きいだろう。また、中国の政府がその正当性を日中戦争での輝かしい勝利に頼っている限り、真の和解はできない、中国がそれ以上に晴れがましい成功を収める必要があるというのは理解はできるが、かなり先のことのような気がする。

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戦後和解 - 日本は〈過去〉から解き放たれるのか (中公新書 (1804))の作品紹介

第二次世界大戦が終わり六〇年が過ぎ、戦争を直接記憶している人も少なくなった。だがいまだに戦争についての歴史認識をめぐり、近隣諸国との軋轢は絶えない。日本はいつ「戦争」の呪縛から解き放たれるのか-。一九九〇年代後半まで、日本軍による捕虜処遇問題で悪化していた英国との関係はなぜ好転し、ここにきて中国との関係はなぜ悪化したのか。講和の歴史を辿り、日英・日中の関係を比較し、和解の可能性を探る。

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