シュメル―人類最古の文明 (中公新書)

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著者 : 小林登志子
  • 中央公論新社 (2005年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121018182

シュメル―人類最古の文明 (中公新書)の感想・レビュー・書評

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  • チグリス川とユーフラテス川に挟まれたメソポタミアの南部。
    世界最古の文明の地は歴史の教科書でもおなじみだ。

    その文明に一大変革を与えたのがシュメルである。本書は発掘
    された遺跡や遺物からシュメルの文化・社会制度・宗教などを
    読み解き、解説している。

    時代を遡ること5000年から3000年前に文字を持ち、通商を行い、
    法典を作り、戦争をして、奴隷を持ち、神々を崇めて、学校では
    読み書きのできる書記を育てていたんだよな。

    しかも、日本の判子に通じる円筒印章まで作成している。

    この時代に既にビールが飲まれていたことも興味深かったが、
    何故、これほど時代が経っても情報が残っているかだった。

    粘土板なんだよね。この時代に紙はない。情報を記すのは粘土板
    のみ。それが乾燥した土地であったことや、火災にあっても紙の
    ように焼失しなかったことが大きい。

    持ち歩いたりするには不便だが、保存という観点で考えたのなら
    粘土板は紙よりも優れているような気になった。

    ただし、保管するには場所を必要とするけれどね。

    古代文明は教科書で習ったことくらいしか知らないし、ともすると
    オカルトネタになってしまうのだが、本書は出土品の解説が多く、
    「へぇ、こんな文化を持った人たちがいたのか」と面白く読めた。

    尚、文字を書くのに使用されたのは葦だそうだが、メソポタミアの
    葦は日本の葦と違い太くて丈夫なのだそうだ。その葦のペンの
    使い方のコラムが楽しかった。私も書いてみたいけど、葦が手に
    入らないよね。

    イラク戦争の際に、貴重な出土品が博物館から盗まれてしまった
    のは哀しい。戻って来たものもあるようだが、破損した部分もあった
    とか。

    遥か昔ではあっても、歴史を刻んだ資料は盗んだり壊したりしない
    で欲しいな。

  •  現在分かっている限りのシュメール文化について解説してくれる一冊。
     文字・教育・戦争・儀礼・信仰など、あらゆる側面からシュメール人を浮き彫りにしていく。

  • 簡にして要を得た記述。シュメルなんてとおーい昔の話でありながら、なんだかロマンを感じたりするんだよね。
    にしても、未解読の粘土板が数十万個あるとか。いやあ、コンピュータの発達によって、なんか突然一気に解析できたりせんのかのう。

  • 五千年前のイラクの地で、当時すでに文字やハン コ、学校、法律などを創り出していた民族がい る。それが、今までほとんどその実像が明らかに されてこなかったシュメル民族である。本書は、 シュメル文明の遺物を一つ一つ紹介しながら、そ の歴史や文化を丹念に解説するものである。人類 最古の文明にして現代社会の礎を築いた彼らの知 られざる素顔とは―。多様かつ膨大な記録から、 シュメルの人々の息づかいを今に伝える。

  • 次のなぞなぞの答えが知りたくて読んだ。
    「天の如き基礎を持つ家、水瓶の如き基礎を持つ家は亜麻で覆われていて、鵞鳥の如く(堅固な)基礎に立つ家、開かれていない目を持つ者がそこに入り、開いた目を持つ者がそこから出て来た。その答えは― 」

    この本片手にルーヴル美術館や大英博物館の古代オリエントコーナーをじっくり観て回ってみたい。
    円筒印章を粘土板の上にコロコロ転がして押してみたい。
    遠い時代の、遠い国の歴史の中に、現代にも通じるものが垣間見えるとぞわっと鳥肌が立つような感じがすることがある。
    こんな古い時代の研究、何の役に立つんだよーとは言いたくない。
    現代の戦争や治安の悪化で遺物が略奪されたり破壊されたりするのはとても歯がゆい。
    でもそんな破壊や略奪も、まさに古代からおこなわれてきたことで、人間は何世紀たっても同じことを繰り返している。
    いろいろな意味で中東は遠い、と改めて思った。

  • ロマンはあるが、難しい。

  • メソポタミア文明最古の都市国家を建造したシュメル文明を扱った一般書。
    とはいえやっぱり、相当コアな本。

    シュメル文明について、かなり幅広い項目を淡々と事実に基づいて記述するスタイルは、結構この分野に興味を持っている人間でなければ心が折れる。
    もちろん、一つ一つのエピソードに興味深い点はあるものの、何せ話が広いし深い。

    事実を解き明かすことで壮大な歴史ロマンを想像できるだけのゆとりある時間に読みたい一冊。

  • 2013 8/15パワー・ブラウジング。司書課程資料室の本・・・宇治郷先生の置かれていった本?

    図書・図書館史授業用。文字全体ではなく発端であるメソポタミア、その中でもシュメルについて突っ込んで知るために手にとった本。
    さすがに色々読んでから、なので全くの未知って事項はそれほど多くはなかったけど、他の本で描いていた進行の裏付けにはなったし、ニップル市の図書館=エイムグラについては完全に初めて知ったのでありがたかった。
    これは確実に使おう。

    以下、気になった点の詳細メモ。

    ・p.34 文字=交易記録の必要から生じる
     ⇒・天水農業から灌漑農業へ⇒都市に集住して組織農業を行なうように
      ⇒・生産物の他都市との交易が増える
     ⇒・記憶を目に見える形で保存⇒記憶の復元のためのもの
     ⇒・この本の中では最古の文字=前3200年、ウルクの絵文字(ウルク古拙文字)とする

    ・文字よりさらに以前・・・代替貨幣=トークン
     ⇒・なんか印とかつけてるちっさい造形物
     ⇒・最古は前8000年。単なる幾何学図形等
     ⇒・前4400年頃に多様化。羊とか牛とかを表す図像がついたり
     ⇒・これらを「物資管理のための簿記用具」として使用
     ⇒・交易の更なる活発化・・・トークンでは追いつかない・・・絵文字へ
      ⇒・その後はお決まりの表語文字(シュメルにおける楔形文字は表語文字)⇒表音文字へ(シュメルが他民族に征服されると、音を借りて表音文字として、各言語を表記するのに使われるように。アッカド語とか)

    ・p.61~62 前3000年紀末(~前2000年の前)には、耕地管理文書=農業技術書も既に存在

    ・最古のはんこ社会もシュメル(所有印)

    ・p.199~200 前3000年紀シュメルの識字状況
     ⇒・読み書きできるのは書記のみ
     ⇒・「王といえども読み書きはできなかった」
     ⇒・書記養成学校・・・前2000年頃には既に「学園もの」文学も?
      ⇒・ある学生の記録。失敗しては先生に鞭で叩かれまくり、いやになって父親に先生の接待を頼んだら、手のひらを返したようにほめられました、的な話
     ←・うらやまけしから(ry

    ・p.212~ 前2000年紀ニップル市に「図書館」?
     ⇒・シュメル語でエイムグラ=「大声を出して読まれる粘土板の家」
      ⇒・大声で読まれる粘土板=教育用?
     ⇒・62作品を列挙した書名目録も
      ⇒・神話、叙事詩etc・・・しかし多いのは詩
     ⇒・(p.274より補足) 当時、すでにシュメル王朝は滅亡、日常語はアッカド語になっていたものの、書記の世界では未だにシュメル語が使われる
      ⇒・「それもいずれは・・・」という危機感もあって、シュメル語の粘土板が多数残された??

    ・p.217 書記は物品管理や畑の検知も担う
     ⇒・そのため算術も身につける
     ⇒・ほかに・・・「法律、神話、讃歌、祈祷文、音楽などのさまざまな教科が教えられていた」
     ⇒・書記=知識生産階級、と位置づけられようか

    ・p.277~278 アッシュールバニパル王は読み書きができる!
     ⇒・自分の像には葦ペンを懐に入れている様を描かせる・・・自慢のため?
     ⇒・自分で読むことができたので・・・珍しい粘土板を集めさせた「王の図書館」を作ることに

  • いまひとつ。採り上げられている題材は面白いのだが、あまり深い考察はなされていない。また、図版は白黒がメインで、低解像度。

  • 書籍だと、大抵バビロニアに抱き合わせで書かれるシュメールを主眼に据えた本。
    (バビロニア関係の記述が皆無ではなく、全体の3,4割くらいにバビロニア関係の記述が見えるけれど、まあ止む無いところはある)

    シュメールというのは、文字や農耕技術、車輪などを持ってメソポタミア南部に忽然と現れた文明で、現代に残る技術などの源泉を辿ると、その起源がシュメールへと行きつくことが多い。
    シュメール人は民族的な出自が不明で、彼らが果たしてどこからやってきたのか、そしてなぜこれほどまでに多数の高度な技術を他に先駆けて有して歴史上に現れてこれたのか、謎が多い。

    通史ではなく、各章においてテーマを定め、それについてシュメールの実際はどうであったのか、粘土板に残るシュメル語の言葉などから解説をしていく。

    シュメール人というのは、驚くほど高度な社会システムを持っていた事がわかる。
    習俗の中心に宗教があったが、人々は大変に現実的で、直裁に言えば現世的な愉しみ等を理解し、追求してきた人々であったのだなぁ、と感じる。彼らの世界観の中には、例えば「来世での救済」のようなものはない。死後の世界、というのが切り離されて存在していない。神も人も、あくまでも現世的なものとして存在している。
    随所に紹介される、シュメール人の書き残したエピソードなどが、非常に興味深く、謎の多い彼らを少し身近に感じさせてくれる。

    記述は平易で、テーマに沿った内容を理解し、シュメール人の生活や習俗がどうであったのか、その一端を楽しむくらいなら基礎知識は不要。ただ、メソポタミア史がある程度頭に入っていないと、流れがちょっと理解しにくい面がある。バビロニア史の入門書を手に取ってから、シュメールに興味がある人が手に取ると楽しめる本。

    ---------------------------

    ところで、やっぱり解消しないのだけれど、個人的に、なぜシュメール人やバビロニア人に殉死の習慣があったのか、について長年賦に落ちない。
    彼らの死観には、独立した死後の世界、というものはなく、冥界というのは現世世界と重なる、地下にある暗い世界と解されていた。人が死ねばそこに平等に行き着く事になるという(日本で言えば黄泉の国に近いが、もっと密接している)。
    死後の救済というものはないし、死後の世界で生前のような生活をすることもない。なのに、王の墓地などには習慣的に殉死していた形跡がある。これはなぜなんだろう?

    著者はこれを「忠誠の現れ」として、中国の故事を紐解く。
    確かに、古代中国では殉死の習慣があり、例えば秦の穆公(前659年ー前621年頃)の時などは、家臣一七七名が殉死したという記述が史記にある。殉死した彼らはれっきとした貴族で秦は頭脳集団を一瞬で失い、秦は一時、国力の衰微を招いた。
    古代中国には祖霊崇拝の習俗があり、従って死後の世界もある。仕えた王が没し、その行く先である死後の世界へと供をするべく、殉死を選ぶ、というのは、「忠誠の現れ」として分からなくはない。国力を傾けるくらいに有力な人物が多数、一瞬で殉死する、というのは大なり小なり、そういう死生観があったのだろう、と思う。

    しかし、シュメールにはそういうような気配がない。
    死後の世界に夢を馳せる事がほとんどなかった彼らが、殉死の習慣があった、というのがよくわからない。ある特定の王に忠誠を誓っていた人がおり、たまたま殉死を選んだ、というのならわからなくはないのだけれど。
    シュメールは宗教国家であり、王は神官王であり基本的には神ではない(神格化した王も一部にいるが)。習慣として行われていたのなら多分それは宗教的な理由だと思うんだけれどな~。

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