経済学的思考のセンス: お金がない人を助けるには (中公新書 1824)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121018243

作品紹介・あらすじ

「お金がない人を助けるには、どうしたらいいのですか?」小学5年生が発したこの問いに、経済学者はどう答えるだろうか。女性が背の高い男性を好む理由からオリンピックの国別メダル獲得数まで、私たちの周りには、運や努力、能力によって生じるさまざまな格差や不平等がある。本書は、それらを解消する方法を、人々の意思決定メカニズムに踏み込んで考えることによって、経済学の本質をわかりやすく解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 「お金がない人を助けるにはどうしたら良いですか?」
    運や努力や能力によって様々な格差や不平等が生じます。
    小学5年生の質問が大人に深く刺さります。
    僕は福祉の世界からこの問題を見ていますが経済学からの視点を示唆してくれる本です。

    マリッジプレミアム
    「マトモな男は絶対結婚している」
    のではなく
    「結婚によって男は仕事ができるようになる」
    良い男は結婚しているのではなく結婚して良い男になると神学論争に決着がついたように思います(笑)

    著者の調査によると
    日本人の7割を超える人が
    「十分な格差がないと人々は努力しない」
    過半数が
    「所得は各人の選択や努力によって決まる」
    と考えるとのこと
    日本人の支持を得るためには
    「努力しているにもかかわらず運が悪い人を広く救う制度に変える」
    ことが必要とのこと。
    低所得者への再分配だけでは支持は得られないとのことです。
    確かに生活保護制度への風当たりの強さはその裏返しなのかもしれません。
    ただ運が悪かった人を見つけるのは大変なんですよねσ^_^;

  • 中学生の時、「今経済に関心があります」と教頭先生と本について話したら紹介してくださった本です。中学生のときはとても難しかったのですが、いまなら読めました。身長や双子などの勝ち組と負け組について書かれたいたところがとくに興味深くて面白かったです。

  • 経済学っぽくなく、読みやすい。格差とか平等についてもかかれている。

  • 経済学の本質は、インセンティブと因果関係を理解すること。

  • 行動をうながすためのインセンティブを見ていったり設計したり、また、統計データから相関しているものをどう読み解くか、その因果関係への着眼点の持ち方、それらが、本書のタイトルになりテーマとなっている「経済学的思考のセンス」になる。本書は2005年刊行の本ですが、すでに行動経済学の考え方が取り入れられていたり、格差や不平等に関する着眼点や論考にも先見の明があり、現在でも通用する内容になっています。最初は、イイ男ははやく結婚しているものなのか、それとも、はやく結婚して守るものができたため、あるいは妻に育てられたため、などによってイイ男になったのか、といったおもしろトピックをとりあげて、経済学的な視点といったものに慣れていく感覚ですすんでいきます。それは、プロ野球監督の能力とはなにか、だとか、オリンピックの国別メダル獲得予測に関するものだとか、週刊誌の見出し的なトピックのものが多い。中盤から最後までは年金問題や格差問題を正面から扱い、不平等というものにドスンとぶつかっていく硬めの論考になっていきます。それは大まかに見ていくというのとおは逆で、ミクロな部分を仕分けしていくように、そして、本書の前半部分で親しんできた経済学的な着眼点と思考を用いての分析になっていきます。低所得者は怠惰であるからそうなった、つまり努力が足りないからだ、と考える日本人は多いそうで、さらにはアメリカ人的な考え方でもあるようです。ヨーロッパのほうでは、幸運や持って生まれた才能に大きく左右されるものだと考える向きが強いそう。これは、努力も幸運も才能も、どれもが低所得や高所得に影響するもので、どれか一つというわけでもなければ、どれが一番というものでもないのかもしれない。また、努力が足りないから低所得なのだ、と考える向きの強いアメリカでは、「今は低所得だけど、転職によって高所得を得られる可能性はずっとある」というように、所得階層間での移動率が高い。幸運や持って生まれた才能が大きく関係すると考えるヨーロッパでは、所得階層は固定的。日本はどちらなのかといえば、所得階層間の移動率は低いのに、考え方は努力が足りなからだ、というもので、なんだか組み合わせが悪いものになっている。努力しても所得階層間の移動率が低いので、努力が報われない可能性が比較的高いのに、それでも努力が大事でな要素であって、運・不運や持って生まれた才能は努力よりも影響は小さいと考える。よく日本人は「自己責任」という考え方をするので、そういった場面での冷たさが指摘されることがあります。こういう、社会の構造と心理のアンバランスさがそういった日本人の意識を醸成しているのだろうなあと思いました。アメリカ人のいう自己責任と日本人のいう自己責任ははっきり違ってきますからね。努力すれば報われるアメリカンドリームの世界を前提とした自己責任と、せいぜい大学入学までの努力が比較的報われて、それ以降の努力は報われない世界を前提にした自己責任と、まったく違いますよね。

  • お金のはなし

    報酬を増やせばやる気が出るか?
    年功賃金は「ねずみ講」だったのか?
    小さな政府は所得格差を生じる
    「本当にお金のない人」を見つける方法はどのようにすれば良いのだろう?
    所得の平等か機会の均等か?

    特別な目線から経済を考える本

  • 経済をインセンティブと因果関係の視点から考えるきっかけになる良書。「イイ男は結婚しているのか?」や「成果主義によって生産性は向上したか?」といった身近な話題を例にその経済学的な意味を解き明かしていく。

    特に後半の格差問題や年金制度に関する議論が興味深い。「こんな制度になったらいいな」という主観に終始せず、「人間はその制度のもとでどんなふうに行動するのか?」を豊富な統計データや研究結果に基づいて考えている。

    まもなく衆院選、東京都知事選である。「こうなったらいいな」だけでなく、「そうなったらいったい何が起こるのか?」まで深く考えるきっかけにぜひ読んでいただきたい。

  • 「イイ男は結婚している」とは本当か?」
    「女性はなぜ、背の高い男性を好むのか?」
    など、一見経済学とは関係なさそうな命題を明快に解析していく良書。
    なるほど、経済学的思考って、こういうことなんだな。

  • 太る日本人男性、やせる日本人女性。
    身長プレミアム。
    ゴルファーの賞金。
    評価制度。
    賃金カットか、リストラか。

    など様々なことに経済的思考を持ちこむことで、
    インセンティブの観点から社会を見て、因果関係を見つけ出す力をつけましょう!って本。

    いろんな場面で実践出来たら世の中面白く感じれそうですなー

  • 良書
    特に下記は参考になった

    野球監督の能力推定(計量経済学)
    年功序列から成果主義への転換の説明(長期的な成果主義から、より短期的な成果主義への変更)

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著者プロフィール

大阪大学感染症総合教育研究拠点特任教授。

「2023年 『検証・コロナ期日本の働き方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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