- Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121018274
作品紹介・あらすじ
たとえば、天使がラッパを吹きながら空を舞う名画は、技術の蓄積だけでは描けなかった。目には見えないその姿を描く画家は、人体のデッサンに習熟し、想像力に助けられて、絵画という世界を構築していったのだろう。この本ではクールベやゴッホなどのたくらみや情熱の跡を辿り、美の宇宙の源泉へ旅してみたい。描く技術、鑑賞する感性を会得するには、近道も終着点もないが、創造の歴史には「絵の真実」が現われてくる。
感想・レビュー・書評
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NHK人間講座「絵とイマジネーション」をもとに書かれたもの。写真、遠近法、実際の画家を映した映画、ゴッホの生き方というものなどを手掛かりにしたり、実際にスケッチしたり、自画像を描いたりしたりしながら、イマジネーション(想像力)というものを考えている。見たものを写真のように描くことや遠近法を厳密に守って描くこと、刻々と変化するものを一瞬として捉えるのと時間の流れの中で視点も移動しながら全体として描くのを比較したりなどと、いろいろな観点から考えているが、結局は描く人の内からの衝動(ミューズ!?)が大切だということなのだろう。絵画鑑賞の本ではなく、絵を描く人のためのものだね、やっぱり。
ゴッホについての章は力が入っている。著者が好きなんだろうな。ゴッホは赤い靴を履かされて「死ぬまで描き続けよ」という内面の叫びのままに一生描き続けた人なのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
絵に対する真摯な姿勢がたまらない。
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基礎がないと応用はできない。そんな当たり前なことは意外に理解できていないことなのかも知れない。
例えば、ピカソの絵を見て「俺にもこんな絵描ける!」って思うことは1度はあるだろうが、実際彼のデッサンを見るとまぁ普通に上手いわけ。笑
このように基礎の上に応用、つまり創造性やイマジネーションが成り立つ。基礎もないのにそれらは成り立たない。
この本で著者は、基礎である技術を磨くことに拘泥するあまり、創造性を放棄することを危惧している。(どちらも必要だということ)
一般的に本物のように描く写実的な絵が「上手い絵」とされるが、本当にそうなのか?
遠近法を用いた絵は現実に近いから「上手い絵」なのか?
そうではなく、自分の感性に従って描くべきで、本書では「直感的に絵は進んでいきます。よく考えてみると、誰の命令でもなく、知らず知らずのうちに進行して、絵になっていくのです。」と述べており、″ミューズのしわざ″と表現している。
絵は創造性を発揮できる行為そのものであり、それによって豊かな感受性を獲得し、豊かな世界を生きることに繋がるんじゃないかなぁ。
幼少期の豊かな感受性を取り戻さないとね。
【メモ】
David Hockneyの『絵画の歴史』と内容的に被る箇所があって復習になった。特に、ドゥーラーの遠近法の説明が詳しくなされていて、本書で補足できる。
「写実」と「事実」の違いは今まで盲点だった。
描こうとすると、モノの仕組みを考えようとする。これを考えると、レオナルドが狂気的な好奇心を持って人体解剖や観察を行ったわけにも納得する。
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リヒターともつながる、「絵を描く」ということ。
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「正解は自然の事実の中にあります。」
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「わたしたちは、ものごとを、写真のように見ているのではなく、絵のように(主観的に、かなり自分の都合のいいように)見ているのだった。そして絵はそれでもよかった。むしろ、そのほうがよかった。 ということになりますが、いかにも悟ったようなこの考えかたは、実は写真がわたしたちに教えてくれた、あるいは、気づかせてくれた考えかただったのです。」 -
渡邊十絲子さんおススメの一冊。
絵と写真とは何がどう違うのか、この本を読んでよくわかりました。
また、ふだんよく目にしているものも、「じゃあ絵で描いてみましょう」と言われると、少しもその細部が浮かんでこない、つまりはそのくらいにしかきちんとものを見ていないということも、よくわかりました。
ものをよく見ないということは、物事もよく見ていないということでありましょう。
反省しないといけません。 -
2022年10月3日購入。
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9割自分語りかと思ったら意外と真面目に教科書的な技法の話とかしてくれる。専門的に絵を学んでる人にはきっと耳にタコな内容なんだろうけど、独学で絵を学びたい人とかは役に立ちそう。
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