科学者という仕事: 独創性はどのように生まれるか (中公新書 1843)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121018434

作品紹介・あらすじ

多くの研究者には、共通した考え方や真理に対する独特のこだわりがある。アインシュタイン、ニュートン、チョムスキー、朝永振一郎、キュリー夫人らが残してくれた、真理を鋭く突き、そして美しい言葉を手がかりに、独創性がどのように生まれるかを考えてみよう。科学者という仕事を通して科学研究の本質に触れることは、「人間の知」への理解を深めることにつながるだろう。第一線の研究者によるサイエンスへの招待。

感想・レビュー・書評

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  • お…おもしろかった!
    私の科学に対する憧れをますますかき立ててくれた1冊です。
    これから研究を始める大学生や、研究者を志す人にもおすすめしたい本でした。

    アインシュタイン、ニュートン、チョムスキーなどの偉大な研究者の言葉を引きながら、科学者として生きることの喜びや難しさ、研究をする際の心構えなどを説いています。
    特に第6章の研究倫理の話は、STAP細胞の1件についても考えを巡らせながら、大学生のうちに読んでおくといいのでは、と思います。

    朝永振一郎の「科学の芽」の言葉はとても好きです。
    平易な言葉で科学の喜びを伝えており、朝永先生の優しさと科学への愛情が滲んでいます。

    それから、研究成果を人に伝えることをテーマにした第5章がとても勉強になりました。
    よい研究発表をするための条件として紹介されている「デルブリュックの教え」と「堀田の教え」は、研究発表に限らず、人前に立って話すのであれば心にとめておきたいことです。
    私もメモメモ。

  • たくさん引用される科学者たちの言葉をヒントに,自然科学を学び研究する人に,その心得を教えてくれる本.講義中の余談がこの本を書くきっかけになったと著者が書いてある通り,自然科学を学ぶ学生が知っていてほしいと著者が考えるこの世界の常識が書いてあって,多くのヒントを与えてくれる.私もこういう本と学生時代に出会いたかった.
    ただ,この本の性格上,どうしても科学の研究の厳しい面に話が向きがちで,p.240 のピエール•キュリーの生き方などは,もはやほとんど修行僧のようである.

  • 勉強のモチベになった

  • ●日本の研究者は700,000人を上回る。2000年頃から停滞傾向に転じている。大学ではこの数年来、学生が新しいことや難しいことに挑戦するのあえて避ける傾向にあることが何度となく指摘されてきた。
    ●「科学を開拓した研究者がどんな人なのか」と言うことも大切な科学知識の1部だと考えたい。科学者は優れた個性がなかったとしたら、科学の進歩は何十年も遅れてしまったに違いない。科学者の独創性は、科学の進歩に必要な推進力でもある。
    ●朝永振一郎。本を読むのもいいが、なるべく元論文を読みなさい。そこにはナッセントステートの理論がある。これは「発生期の状態」と言う意味である。良い論文に出会うと言う事は研究者にとって一生の財産となる。だから優れたオリジナル論文を1つ読む事は、手当たり次第に論文を100読むよりはるかに勝ると言う意味。
    ●研究者は、人のやらないことをやり、人の考えなことを考える、と言うことを目標とするかなり特殊な仕事である。
    ●女性研究者はなぜ少ないのか。女性は共感化に優れている。男性は原因と結果を結ぶ法則によって物事を分析するような系統化に優れている。後はロマン。
    ●反証(間違っていることを証明すること)が可能な理論は科学的であり、反証が不可能な説は非科学的だと考える。検証ができるかどうかは問わない。
    ● 1に模倣、2に創造。どのように研究するかは、言い換えれば模倣の段階である。そして何を研究するかは、創造の段階に対応する。この順番が大切だ。
    ●高校から大学院まで10年以上もの長い期間をかけて行われる科学専門教育の「下積み」の過程を、短期間で一気にクリアする方法があるのなら、とっくに理系でも採用されているはずである。研究に王道は無いのである。
    ●サイエンスとは切り捨てること。重要な問題に取り組まなければならないから、余分なことを考えないと言うこと。どんな情報を無視するか効率よく判断する。
    ●科学において本質以外を切り捨てるためには、大胆な抽象化と理想化が必要である。桜の花びらを見て正五角形と言う形だけを取り出す。これが抽象化。また実際完全な正五角形を示す花びらは少ないだろうが、そこにはあまりこだわらない。これが理想化。
    ●科学に携わる研究者は、それを利用する人々の倫理性に無関心であってはならない。これが最低限の科学者の社会的責任である。

  • 実に教育的な本。理系文系を問わず大学生、高校生に一読を勧める。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/52397

  • ☆令和2年度先生が選んだイチ押し本☆

    請求記号 C-1843(中公新書)
    所蔵館 2号館図書館

  • 【北海道大学蔵書目録へのリンク先】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2001270786

  • 完全な筆者持論だとは思うけど,大成してる人の話だし、そういう考えもあるのかと参考にはなった.生成文法の歴史などが出てくる点が興味深かった.

  • サイエンス

  • 670円購入2006-08-21

  • 科学とは何かということはもちろんであるが、その科学に向き合う科学者とはどのような職業なのか、科学者は科学に対してどのような姿勢で向き合っているのかなどを通して、科学者という職業の楽しさ、厳しさを述べている。その際、先人の科学者の言葉や研究を事例として持ち出しているので、科学者のイメージがしやすい。

    また、この本には科学と教育の関係について述べている部分があるが、そこから大学という場所がどういう場所なのかを考えてみるのも面白い。

    この本は科学に携わる(研究する)上でのテクニカルなことが書かれているというより、研究に従事する人が持つべき道徳や信念などが中心に書かれている。そのため、科学者という人種がいつも何を考えながら、何に熱中しながら生きているのかを理解したい人におすすめ。

  • 2006年刊。言語脳科学者たる著者が、研究者(主に理工系)について、その哲学、創造性の源泉、研究者としてのありよう、磨くべきセンス、倫理等多様な視点から説明。特に「研究のセンス」がいい。抽象化の程度、審美眼、理想化の程度、切り捨てるべき事項など、絶妙なバランスの上に成立している研究者の立ち位置を知ることができる。また、本書で書かれる社会貢献を肯定的に見れない人には、科学者といわれる立場に立ってもらいたくない。科学者の功績は、これまで生命・世界を左右してきたし、今後も左右するからだ。本書はこんな気にさせる。

  • 科学的であるとは、検証ができ、また反証ができることである。例えば、「お化けが存在しない」ということを証明することは難しい。「お化けが存在する」ことは、検証も反証もできないので、その存在を信じることは非科学的である。逆に、「お化けが存在しない」ことは、お化けが見つかれば反証できるので、科学的である。このように、科学的仮説を検証と反証を繰り返しながら発展させていく、ことが科学者の仕事である。
    科学者にとって、「何を研究するか」よりも「どのように研究するか」がより重要である。「どのように研究するか」は、模倣の段階である。そして、「何を研究するか」が、創造の段階である。科学者は、模倣から創造へ移行していくことで成長する。
    科学者自身が、個を磨き、不思議へ挑戦し、それを発表するという形で伝えること、すべてが科学者の仕事である。その際、研究の倫理を身につけ、後進を指導し、社会貢献をすることも、同時に考えていく必要がある。

  • この先生の本は本人にもらったヤツ読んでて面白かったのでこれも読んでみたんだけど、科学者のあるべき姿などを実際に結果を残してきた科学者をもとに論じていてとても面白い。

  • 大学教員には教育者・科学者・研究者の側面があり、これらを場面に応じて演じ分けているイメージを持っている。また大学職員は、学生の様相を考えることの他に、教員の生態を了解していくことがわりに重要なのではないか、と以前から思っていた。言い換えれば、教員の研究に対する思い入れや、当座の関心事を事前情報としてわかっていることで、コミュニケーションが良好になるという発想である。こうした仮説を持って本書を読み始めてみたところ、改めて気付かされる点が多かった。以下にそれらを少し抜き書きした。全般を通じて興味深いことは、科学や研究を説明する際のメタファーとして、クラシック音楽の楽曲事例、作曲家の作風、楽器職人の気質を引いてくることだ。思いのほか、音楽と科学の距離は近く、共通する点が多いことがよくわかる。自分自身が比較的抵抗なく、大学院で学ぶことができたのは、少し音楽を勉強していたことも要因の一つとしてあるかもしれない。

  • 著者の専門は脳生理学であり本書の内容も理系分野に偏るが、独創的な科学研究に携わる点においては理系・文系の区別はないのだと実感。突飛な例かも知れないが、読んでいて幕末の志士吉田松陰を思い出した。
    当時の教育システムは先ず四書五経の素読であり、松陰は幼少の折より家学である山鹿流軍学をも学んだ。しかしこれはいずれも単なる「模倣」であり、「知る」ことにとどまる。彼はこれに飽き足らず、脱藩して各地の人士と交わり、独創的な思想を育んでいった。そして「知る」だけではなく「分かる」ために、米国密航まで企てるのである。その迸るような好奇心と行動力には圧倒される。
    そして重要なことは、彼は優れた教育家であったことである。彼は研究や実践活動に身を置きつつ熱心に後進の指導に当たり(というより共に学び)、明治維新の原動力となる人物を輩出した。その過程ではまさに激烈な議論が交わされ、伝えるセンスというものは日々培われていったのである。
    「科学者という仕事」は、まさに人間と社会についての深い洞察を伴う「志」あってこそ成し遂げられるものだと痛感した。

  • 【配架場所】 図・3F文庫新書 岩波新書 1843 
    【OPACへのリンク】
     https://opac.lib.tut.ac.jp/opac/book/112948

  • 研究者、教育者としての意識を徐々に芽生えさせながら、更に科学者であることを成長のマイルストーンとして意識して自己の中に生成していくように努めたいと感じる内容の書籍であった。

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著者プロフィール

言語脳科学者。

「2023年 『高校生と考える 21世紀の突破口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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