物語タイの歴史―微笑みの国の真実 (中公新書 1913)

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著者 : 柿崎一郎
  • 中央公論新社 (2007年9月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121019134

物語タイの歴史―微笑みの国の真実 (中公新書 1913)の感想・レビュー・書評

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  • タイの子どもたちが学校で学ぶような教科書的なタイの歴史を中心に、周辺地域との関係やタイ公式の歴史への批判を加えている。
    父の転勤で中学生時代をタイで過ごし、交通に詳しい著者ならではの描写があり、また、近代以降は世界大戦での立ち回りなどがわかりやすい。タイ王室についても詳しく書かれている。

  • 新書で読めるタイの通史。
    プミポン国王が亡くなって、これからどうなっていくのだろうか…

  • 「微笑の国の真実」というサブタイトル。しかし、19世紀以降、西欧諸国が東南アジアに進出してきたあたりからの「世渡り上手な国」の実情を知ると、「ほくそ笑み」の国と呼ぶ方が相応しいように思えてくる。タイの歴史の主なポイントは次のとおり。
    1.中国の揚子江以南に出自を持つタイ族は、漢民族の居住域の拡大により南下・西進。チャオプラヤー川の流域に大ムアン(くに)を形成する。
    2.スコータイ朝(1240年頃~1438年)は、初めて現在のタイ領をほぼ支配下に置いたマンダラ型国家であった。
    3.アユタヤ国(1351-1767年)は、アンコール国を滅ぼし(1431年)、スコータイ朝を服属させ(1438年)、アユタヤ朝(1438~1767年)となる。位階田制を整備し中央集権化に努める一方、ビルマとの間で熾烈な攻防を繰り返す。
    4.アユタヤは港市としても繁栄し、日本人町も形成され、有能な外国人は官吏にも登用する。山田長政はその一人。1767年にコウバウン国(現ミャンマー)の攻撃を受け滅亡。
    5.トンブリ―朝(1767~82年)はバンコクを都とし、ベトナムと勢力争いを繰り返す。同朝を開いたタークシンと同じ潮州系中国人商人の活動が活性化する。
    6.ラーマ1世は、アユタヤをバンコクの地に復活させようと考え、トンブリー朝の対岸に、現在のラッタナコーシン朝(別名チャクリー朝。1782~)を築く。
    7.19世紀には英仏による周辺諸国の植民地化という状況下で、モンクット王(ラーマ4世)は1855年にイギリスと不平等条約を強制され、王室独占貿易は崩壊。領土も「割譲」された(1909年に現在の領域が確定)。一方、タイの関税収入の増加のため代表的輸出品として位置づけたのがコメ。現在もコメの輸出量では、タイは世界1・2位である。
    8.インドシナ半島の東部(ベトナム)をフランスが、西部(ビルマ)をイギリスが植民地化。両国の衝突を避けるため、1896年に英仏宣言を発表。両国はタイのチャオプラヤー川流域を「緩衝地帯」とした。このため、タイは日本と並びアジアで唯一植民地化されなかった国となる。チュラーロンコーン王(ラーマ5世)は英仏の緩衝国として独立を維持するだけでなく、積極的に上からの近代化政策=チャクリー改革を推進し、鉄道による領域統合を進めた。
    9.第一次世界大戦が勃発すると、タイは洞ヶ峠を決め込む。戦勝国となって列強との不平等条約を改正するためである。1917年4月のアメリカ参戦により、連合国側での参戦を決める。
    10.1932年の絶対君主制から立憲君主制への革命が起きる。以後、頻繁に軍事クーデタが生じる。
    11.ピブーン首相が「大タイ主義」を掲げ、国名をシャムからタイに変更。第二次世界大戦も当初は中立を決め込み、日本と不即不離の関係を保ちながら失地回復を目論む。1942年1月に枢軸国側として連合国側に宣戦布告。しかし、宣戦布告に必要な3人の摂政の内1名が不在として、1945年8月16日に宣戦布告無効宣言を行う。
    12.米国との協調により国際社会に復帰し、米輸出により復興する。
    13.1949年の中華人民共和国の成立やベトナムの共産化の中で、反共を前面に出す。親米開発独裁政権(サリット・タノーム両政権)の下、外資導入型工業化を目指し、反共の地域協力機構ASEANを結成。これらは成功の一方で徐々に格差是正・民主化運動を活発化させてしまう。
    14.2005年の総選挙に圧勝したタックシンは、世界的なグローバル化に伴う自由化、規制緩和の潮流の中、「世界の台所」「アジアのデトロイト」などのキャッチフレーズを掲げ、国際競争力を高めようとする。しかし権威主義に起因する諸問題の発生と「売夢政策」に対する国民的不信から、2006年9月に軍によるクーデタが起き、政権が崩壊する。

  • クメールが最初は大国を築いていて、タイはその後。
    スコータイ誕生。
    北部チェンマイは、タイの主軸にはならず、北部の国としてその前からある。
    スコータイをアユッタヤーが呑み込み、さらにバンコクへ。インドシナ半島全域の巨大国家。
    いつしかカンボジアのクメールは滅び、二度ほどタイを征服した強敵ビルマも後にはイギリスの属国に。東はイギリス、西は後からフランスがベトナム、ラオス、カンボジアを吸収し、植民地の時代に。フランスが押してくるが、土地はガンガン譲渡し絶対戦わない。ギリギリで英仏の緩衝地帯として残る。
    そのうち第一次世界大戦。終戦近くに参戦し、ちゃっかり戦勝国。
    その後の国内は、おもしろいほど各国と同じ流れをもつ。ナショナリズムの高揚、共産化との戦い、第二次世界大戦。
    日本軍がタイを要所として進軍するも、通す。しかし、同盟はしない。逆らえずに、、、という言い分で加担しない政策。慎重。そのため、戦後は敗戦国とはなるが軽いもので済む。
    戦後は、東南アジアの共産化に対抗する最後の砦として、西欧諸国のパートナーに。
    総じて見ると、絶対に損をしない外交ができる国と言える。軽率な決定はしないし、パートナーは戦局がもつ限り考えて慎重に決める。

  • 2016/10/13 かねてより高齢・体調不良で心配されていたプミポン国王が亡くなった。カリスマ的な国王が亡くなった事での政治的混乱が心配されていたが今のところ平静を保っている。しかし2013年から続く軍事政権の民政への移行の遅れも取りざたされている。

    というわけでタイと言えば、微笑みの国、ムエタイ、観光・遺跡、マッサージ、歓楽街、"親日"的、山田長政、日本への不法入国者などなど良くも悪くも色々なイメージが付きまとうが、ちゃんと歴史を勉強したことがなかったので、本書を手に取ってみた。

    列強の植民地時代・2回の世界大戦を乗り切った「世渡り上手」な外交は、一方的な「親日国」のイメージとは全く異なる。「失地」回復の野心(大タイ主義)と日本の野心とがあくまで合致した結果。

    またこの東南アジア地域で見るとタイは今も昔も大国・経済的先進国であり、周辺国との軋轢は日本と周辺アジアとの軋轢を想起させる。

    もう少しタイの近現代史や経済開発の歴史を読んでみたいと思った

  •  国王をはじめとするタイの王室は、タイ国民から深く敬愛されているが、これは「新しい伝統」であると言えよう。(中略)国王一家は頻繁に地方行幸を行い。国民の辛苦を見てまわった。国王自身も僻地の地域開発に大きな関心を示し、自らの博学を活かして具体的な施策を低減することもあった。この精力的な地方行幸が、国民と国王や王室との距離を縮め、国民の敬愛度を深めることになった。(中略)この「伝統」は、幼い頃から国王とともに各地を巡幸してきた皇太子や王女にも引き継がれている。現在でも夜八時からは各局とも王室関係のニュースを流しており、その日の王族の公務状況が報道されている。(pp.98-100)

     タイの第一次世界大戦への参戦は、「世渡り上手」な国タイの外交姿勢が現れた典型例である。すなわち、そこには「危ない橋は渡らない」「最小の負担で最大の利益を得る」という発想が存在した。(p.140)

     タイの首都バンコクは東南アジアでも有数のメガシティーへと成長した。バンコクを訪れる人は誰でも、多数の高層ビルが立ち並び、高速道路や都市鉄道が延びる近代都市の姿と、その狭間に残された伝統的な寺院や住居に囲まれた低層の空間のコントラストを目の当たりにするであろう。現在のバンコクは一面では東京やニューヨークなど他のメガシティーと同じ様相を持ち、伝統的な景観は徐々に薄れつつあるものの、市場や繁華街の独特の「活気」は依然として健在である。

  • タイを含めインドシナの国々へ、いつか行ってみたくて、
    その成り立ちや構造の仕組みを理解する一助とすべく。

    外国との関わり合いのなかでうまく立ち回ってきた、アジアの優等生、という著者の評価は、
    たしかにあの笑顔のタイ人たちに、とてもよく当てはまる言葉だと感じさせます。
    カンボジアやミャンマー、ラオス、マレーシアとの違いはどこにあるのか、といえば
    それらの歴史に根ざしたアイデンティティにもないことはないのかも、と思いました。

    また、先進国の中に名を連ね、近隣諸国や西欧各国との関係性を見直すべき地点に立っている、という点で、
    日本との共通点が見出せます。

  • 物語シリーズ面白い。身近なアジア諸国に行くときに読んでおきたいものね

  • タイの歴史を学ぶことはメコン流域の歴史を知ることだな、と思った。当該地域全般がよくわかる。特に、列強諸国の取扱い方(つまり外交)にたけた様子も理解した。
    鉄道等(国際)インフラについて記述も詳しい。

  • 読了。

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