物語フランス革命: バスチ-ユ陥落からナポレオン戴冠まで (中公新書 1963)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121019639

作品紹介・あらすじ

一七八九年、市民によるバスチーユ襲撃によって始まったフランス革命は、「自由と平等」という光り輝く理想を掲げ、近代市民社会の出発点となった。しかし、希望とともに始まった革命は、やがて恐怖政治へと突入、ナポレオンを登場させ、彼の皇帝即位をもって幕を下ろす。本書は、ドラマに満ちた革命の有為転変をたどりつつ、当時を生きた人々の息づかいな社会の雰囲気を丁寧に追い、革命の時代を鮮やかに描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 我々の社会の根本原則である「国民主権」や「法の前の平等」はフランス革命によって確立された。
    生まれや身分による差別が当然のものとされた歴史はフランス革命により否定され、決定的になったが、今からたかだか200年前のこと。

    バスチーユ要塞がパリの民衆によって攻め落とされ、フランス革命の火蓋が切られたのは1789年。ナポレオンが政権を掌握した1799年のブリュメールのクーデターで終わったとするのが、一般的。フランス革命には世界主義の思想があった。フランス革命の際、人口構成は40歳以上24%、若さが社会的活力を産んだ。

    そこから世界が変わった。

    フランス革命、世界史に詳しくない人でも楽しめるし、マリーアントワネットやナポレオンの名前だけ知っているような人は、その歴史や背景を詳しく、更に楽しく分かりやすく学べる素晴らしい一冊だ。明治維新でもそうだが、本当に不満があり、この社会を変えたいと思うなら、我々は変える力を持っている。組織や制度を組み直す意欲を発揮さえすれば、いつだって体系は変えられるはずだ。

  • かねてよりフランス革命は、世界にもっとも大きな影響を与えた史実という認識を持っていた。それゆえに関心もあったが、通史的な本を読んでも、他の史実と似たような濃度で書かれてしまう。だから、いつかフランス革命のみに言及した本を読みたいと思っていた。

    随分と時間がかかったが、その間フランス革命の本は常に渉猟していた。そして、ついに本書を手にした。タイトルに「物語」の冠がついている。加えて新書版なので、量的にも読みやすい。物語の仕立てで書かれているので、革命に関わった人々の息遣いや怒号やため息まで聞こえてくるようである。だから、本書はまず読んでいて楽しかった。楽しみながら、フランス革命という世界的かつ歴史的な出来事を学べたのは、本書と出会ったことによる僥倖と言うしかない。

    フランス革命は一言で言えば、絶対王政という封建制度から共和制、つまり国民に主権を委譲する革命である。封建制度を倒した革命という意味では、日本ではよく明治維新と比較される。時期的にも明治維新から遡ること一世紀も経っていない頃の出来事なので、それも比較されやすい理由かもしれない。

    しかし、革命の中身や革命がもたらした結果は随分と異なる。フランス革命は、まだヨーロッパ諸国が悉く絶対王政であった時代に、いち早く「国民主権」を取り戻す革命が勃興し、あまつさえその一方で今や「民主主義」の代表であるアメリカ合衆国の独立運動をも支援していたというのだから、民主意識にあふれた革命であった。一方で明治維新は、当時長らく日本を掌握していた武家から朝廷、すなわち日本の王家へ政権を返上する革命であり、日本が「国民主権」を取り戻すには、第二次世界大戦での敗戦を待たなければならない。そう考えると、軽々に明治維新とフランス革命を比較するのは、革命後の社会が乖離しすぎていて、とても比較できるものではないという気がしてくる。なぜなら、日本が「民主化」を達成できたのは、フランスの助けを得て独立を果たし、世界の「民主主義」の旗印を掲げたアメリカに戦争で敗れた結果だからである。

    今や日本は民主主義国家を標榜しているけれども、著者があとがきで記している「日本も明治維新によって近代社会に移行し、戦後は「国民主権」の国に生まれ変わったはずであったが、政府や高級官僚諸君のやっていることを見ていると、今の日本で国民本位の政治が行なわれているとはとうてい思えない」という言葉に全面的に賛同せざるを得ない。さらには、諦めなのか、日本人的な長いものに巻かれる社会的特性なのか、国民本位の政治が長らく行われることなく、戦後のどさくさからくる一党独裁的な世の中が未だに当たり前に継続していることを思えば、今からでも日本版「フランス革命」を期待したくなる。

  • フランス革命は近代社会のバックグラウンドに直結していると、そういうざっくりの印象はあったのですがたったの10年弱の出来事だったのですね、濃密な期間でロマンを馳せるには申し分ない猛者たちが登場してくるし、悲劇的でかつドラマティック。

    歴史をなぞっているのだけど、各人物の人間臭いところに焦点を当てまさに物語を綴ってくれて、特に演説の引用はその場での臨場感を想起されて興奮するし、偉人の女性関係にはむふふとなる。初心者なわたしには非常に理解しやすい、良かった。

    ナポレオンのその後が気になる。。良さそうな本探そう。

  • 近代社会の出発点となったフランス革命は、1789年7月のバスチーユ陥落に始まり、1804年12月のナポレオンの皇帝戴冠に終わります。
    本書は、15年にわたるフランス革命史を人物中心に描写した概説書。
    ルイ16世、マリー・アントワネット、ダントン、ロベスピエールなど、おなじみの顔ぶれにくわえ、ジャコバン派のマラー、彼を暗殺したシャルロット・コルデー、恐怖政治の下、ギロチンの露と消えたロラン夫人など、革命に関与したさまざまな人を取り上げることで、革命の大きな流れと市民生活に与えた影響を具体的に理解できるしかけになっています。

    革命前史として、国民の大多数を占める農民層の困窮と、対外戦争による国家財政の危機があります。
    ルイ16世は、2つの難題に対応するため、貴族への課税を含む政治改革を志向します。改革には国民全体の支持が必要との判断から、国民各層からなる三部会を招集。このあたり、錠前作りだけに熱中した愚鈍な王様というイメージとはかけ離れた開明的な君主だったことが明らかにされます。
    気の毒だったのは、既得権益層の貴族・教会勢力の抵抗が強力だったこと、対外的に強大化しつつあったイギリス、大陸におけるハプスブルク帝国との争いで、軍事費を削減できなかったこと。(緊張緩和のため、とられたのがハプスブルク家との婚姻政策で、その相手がマリーアントワネットだったのは周知のとおり)

    歴史の逆説ですが、筆者は、ルイが開明的君主だったからこそ第三身分が政治的に覚醒し革命が加速したので、彼がゴリゴリの絶対君主で民衆に弾圧を加えていれば、革命は(勃発不可避だったにせよ)彼の代ではなかったかもしれないと、同情的に筆を進めます。

    開明派の財務大臣ネッケル罷免というニュースに衝撃をうけ、市民が立ち上がったのが、バスチーユ襲撃。この時点で国民の大多数は(ロベスピエールも含め)国王のもとでの改革を支持していました。革命のスローガンが「国民、国王、国法」だったことからもわかります。
    ただ、後の歴史を知る私たちは、フランスがイギリスのように立憲君主制にならなかったことを知っています。それはなぜか?

    筆者は、ルイの絶対君主としての性格に原因を求めます。身分の低い連中が次から次へ、改革(という名の自分の権限を奪う)政策を進めることに我慢ならず、彼は、革命を緩和するため妻の祖国オーストリアの介入を求め脱出を図ります。これが革命の転換点、ヴァレンヌ事件でした。結局、革命政府に国王家族は捕らえられ、(脱出劇にもフェルセンが登場するなどドラマがあります)国民の国王に対する信頼は失墜。より急進的な革命が進行し、いくつかの反動を経て、ナポレオンのクーデターに向かいます。

    フランス革命は、恐怖政治に代表されるように、たくさんの人の血が流れた凄惨な一面は否定できません。一方で、自由平等という理念に燃え、理想の社会を作るというポジティブな面も非常に大きく、全国民を対象とした教育制度やメートル法など、私たちの社会を基礎づける重要な社会インフラが整備された時代でもありました。

    革命の正の側面、負の側面、そのあとの世界に与えた影響など、バランスよく記述されていて、読了後、すっきりした見通しを持つことができました。良書だと思います。

  • フランス革命について殆ど知識が無い状態で読み始めたが、とても分かりやすく面白く読めた。
    当時の王、貴族、ブルジョア、市民の価値観や刻一刻と変化する状況。時代の流れに逆らう者、流されたはいいが滝つぼから落っこちる者、そういった大河ドラマ的な面白さがあってすごく良い。妊娠していたおかげで首を落とされずに済んだ一市民など、一般的には取り上げられない人達にも目を向けていて、できる限り公平に革命の様子を描こうとしているので好感が持てた。

  • フランス革命の終始を、読みやすく分かりやすく解説してくれる本、事実を追うだけでなく、意義や流れが、自然に盛り込まれていて、小説を読むような感覚で読むことができた。

  •  「フランス革命史〈上〉 (中公文庫)ジュール・ミシュレ」を読んで、いやいやフランス革命の全体像を把握した上で読むべきだ、と思い下巻を読む前に本著を読むことにした。
     フランス革命を学ぶ入門書としてはよいと思う。王政に対する革命運動は、王政ヨーロッパ諸国の脅威となっったのだと改めて気づかされた。

  • コテンラジオでフランス革命が取り上げられており、もっといろいろと知りたくなりこの本を手にしました。
    非常にわかりやすかったと思いますし、各演説や名言には気持ちの高揚や熱狂が感じられます。
    時折、革命の主流ではない人物への言及箇所がありますが、作者が後書きで述べているように、登場人物を多くする意図によるものなのでしょう。それも大して気になるものでもありませんでした。

  • #一度読んだら絶対に忘れない世界史 を読んだ中で、一番興味を持った出来事、#フランス革命 。

    「物語」というだけあって、人物に焦点を当て、非常にその時代を生々しく描いているのが素晴らしいと思う。教科書では革命の象徴的に記載されるバスチーユ陥落も、よくよく見たらただのノリしゃねえか!と思ってしまう。そういう意味では、今、SNSでいろいろ盛り上がるのと大差なく、人間も進歩しねえなと思ってしまう。

    この革命の右往左往ぶりは凄まじく、これだけ国内が混乱している中で、旧体制との戦いとしてヨーロッパの周辺国をほぼ敵に回して戦争しているのだから国民はたまったもんではなかっただろう。

    著者の大前提《フランス革命は世界史の新しい時代を切り開いた輝かしい革命であり、フランス革命を抜きにして現代世界を考えることはできない》のはその通りであり、この多大な犠牲の結果、(いろいろあるけど)国民主権の世の中になってきているわけである。


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著者プロフィール

フランス文学者。1944年岩手県盛岡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業、同大学院修士課程修了。フランス政府給費留学生として渡仏、パリ大学等に遊学。執筆活動の傍ら、大学で講師も務めた。著書に『物語 フランス革命』『マリー・アントワネット』など。

「2020年 『サンソン回想録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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