男が女を盗む話: 紫の上は「幸せ」だったのか (中公新書 1965)
- 中央公論新社 (2008年9月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121019653
作品紹介・あらすじ
『源氏物語』の主人公光源氏と紫の上は正式な婚姻関係を結んでいない。光源氏による強引な掠奪によって二人の関係は始まり、このことは物語のその後の展開に大きな影をおとしている。平安物語文学は『源氏物語』のみならず、『伊勢物語』『更級日記』などでも掠奪婚=「男が女を盗む話」を繰り返し描いてきた。男はなぜ女を盗むのか、女はそれにどう対処したのか。新たな切り口で千年前の物語が甦る。
感想・レビュー・書評
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ものすごく面白かった!院生のときに『雨月物語』の女性像に対する先行研究に「それは理想化されているのではないか。て本当にそうなのか?」と喧喧諤々した日が懐かしくなりました。
物語文学における盗まれる女性の考察に、女性には男性達の理想が投射され、その幻想性と現実の軋み(=嫁盗みのもう一人の当事者であるはずの女性はその時どう思っていたのか)が描かれている、という視点で考察をするのが女性研究者ではないという驚きもありました。
こういう論点って女性側から提起されるのかなと思っていたのでとても面白かったです。
原典に典拠をとって文法から考察して読み解かれているので、軟派なフェミニズム文学論とは一線を画して安心して読める一冊でした。
著者の立石先生の一般向けの著書があればどんどん読んでいきたいです!
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なかなか面白いテーマを扱っているが、「光源氏の身勝手」や「紫の上の心境が語られていない」などの今となってはベタベタな記述が多く、月並み退屈この上ない。女を盗んだ男が「日常(秩序)」に帰っていく、などと言う指摘もつまらない。やはり研究者、やたらと理は組み立てているが、それはそれだけと言う感が否めない。また、天皇制などと言う言葉を安易に使って物語構造論を立てるなどの粗忽(錯誤?)も見える。P196に本著の主題がある。構造主義の虚無への頽落(そんなこと言ったら何でも、、、という)、とでも言いたくなるこの虚しさ。必死で源氏物語を読んでいるのだろうに、これだけか、、、このために時間を使っているのか、、これだけか、、、これがあなたの学問か?これがあなたの人生か?
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思索
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高1の定番教材である「芥川」(伊勢物語)。
授業では男性視点で読み進め、悲恋としてまとめるわけだけど、さらわれた女性の立場からするとどうか?
非常に興味深い観点で、特に挿絵に触れて二人の関係を考察しているところはへ~とうなるものがあった。(時代によって挿絵が変わっていくのが面白い) -
内容紹介:「源氏物語」など平安物語文学は、掠奪婚=「男が女を盗む話」を繰り返し描いてきた。男はなぜ女を盗むのか、女はそれにどう対処したのか。新たな切り口で千年前の物語を読み解く。(TRC MARCより)
資料番号:011059631
請求記号:913.3/ タ
資料区分:文庫・新書 -
副題に惹かれて手に取った本だが、解釈の視点が新しくて、為になった。
特に『大和物語』の安積山の女の自死をめぐる従来の古典解釈に疑問を投げかけている。提示されている解釈には納得した。
本書の投げかけは、今後さまざまな議論を引き起こすことになるだろう。