男が女を盗む話: 紫の上は「幸せ」だったのか (中公新書 1965)

著者 :
  • 中央公論新社
3.56
  • (6)
  • (8)
  • (9)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 117
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121019653

作品紹介・あらすじ

『源氏物語』の主人公光源氏と紫の上は正式な婚姻関係を結んでいない。光源氏による強引な掠奪によって二人の関係は始まり、このことは物語のその後の展開に大きな影をおとしている。平安物語文学は『源氏物語』のみならず、『伊勢物語』『更級日記』などでも掠奪婚=「男が女を盗む話」を繰り返し描いてきた。男はなぜ女を盗むのか、女はそれにどう対処したのか。新たな切り口で千年前の物語が甦る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ものすごく面白かった!院生のときに『雨月物語』の女性像に対する先行研究に「それは理想化されているのではないか。て本当にそうなのか?」と喧喧諤々した日が懐かしくなりました。

    物語文学における盗まれる女性の考察に、女性には男性達の理想が投射され、その幻想性と現実の軋み(=嫁盗みのもう一人の当事者であるはずの女性はその時どう思っていたのか)が描かれている、という視点で考察をするのが女性研究者ではないという驚きもありました。

    こういう論点って女性側から提起されるのかなと思っていたのでとても面白かったです。

    原典に典拠をとって文法から考察して読み解かれているので、軟派なフェミニズム文学論とは一線を画して安心して読める一冊でした。

    著者の立石先生の一般向けの著書があればどんどん読んでいきたいです!

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99098954

  • なかなか面白いテーマを扱っているが、「光源氏の身勝手」や「紫の上の心境が語られていない」などの今となってはベタベタな記述が多く、月並み退屈この上ない。女を盗んだ男が「日常(秩序)」に帰っていく、などと言う指摘もつまらない。やはり研究者、やたらと理は組み立てているが、それはそれだけと言う感が否めない。また、天皇制などと言う言葉を安易に使って物語構造論を立てるなどの粗忽(錯誤?)も見える。P196に本著の主題がある。構造主義の虚無への頽落(そんなこと言ったら何でも、、、という)、とでも言いたくなるこの虚しさ。必死で源氏物語を読んでいるのだろうに、これだけか、、、このために時間を使っているのか、、これだけか、、、これがあなたの学問か?これがあなたの人生か? 

  • 思索

  • 源氏物語において「光源氏が幼い紫の上を略奪するように連れて来た」というプロットは有名だが、同様の略奪婚は他の物語にも多い。元来、略奪婚は男性的ロマン(熱愛等)で粉飾されがちだが、この視点を反転させ、略奪される女性から見た場合は異なる解釈が可能になる。以上の観点から本書は叙述されている。◆かかる反転したモノの見方は興味深く、現実に起こる事象(著者は新潟女子監禁事件を引き合いに出すが)の解釈にも有益。また、源氏物語のテクストだけでなく、映画等の二次創作から説明する本書の手法は、判り易さという意味で有効だ。
    もっとも、ラカン(?)の精神分析の道具だて(象徴界や現実界など)での説明・解釈は、その有効性がわからず、説得力を持つかどうかも不明。そもそも精神分析の手法を知らない者(まさに私)にとっては意味不明だし、その手法の有効性に依存するような説明はあまりいい方法とは思えないのだが…。
    2008年刊行。著者は青山学院大学等非常勤講師。

  • 就職活動をする女子学生の多くがいま、専業主婦という夢を抱いているらしい。彼女たちはある意味社会の厳しさを知っているのかもしれないが、逆に男の収入に頼らざるを得ない不安定な職に憧れている。言いようによってはシンデレラ・ストーリーが好きなのだろう。少女漫画にもしばしば登場する「男が女を盗む」話型。いつまでも女性の一部に好ましく迎えられる。

    この話型で有名なのは、誰もが名前だけでも知っている『源氏物語』。もしかしたら友達と「ねえねえ、誰が好き?」なんて会話をしたこともあるかもしれない。
    わたしは『好きなタイプは六条御息所と葵の上。男はみんなすきでもないが、とにかく源氏だけは絶対に勘弁』派である。
    そう。自己主張がはっきりしている(していた)人が好きなのである。その点、紫の上や浮舟には苛立ってしまうのだがそれはておき。

    この本は珍しくも男性が『男が女を盗む話を好んできたお国柄は、実に男尊女卑思想にまみれていて、それに気付いてすらいない現代の人々もアカン!』というような
    主張をしている。だいたい一言におさまってしまったが、まあ、引用している昔話も面白いので、ぜひ読んであげて欲しい。

  • 高1の定番教材である「芥川」(伊勢物語)。
    授業では男性視点で読み進め、悲恋としてまとめるわけだけど、さらわれた女性の立場からするとどうか?
    非常に興味深い観点で、特に挿絵に触れて二人の関係を考察しているところはへ~とうなるものがあった。(時代によって挿絵が変わっていくのが面白い)

  • [ 内容 ]
    『源氏物語』の主人公光源氏と紫の上は正式な婚姻関係を結んでいない。
    光源氏による強引な掠奪によって二人の関係は始まり、このことは物語のその後の展開に大きな影をおとしている。
    平安物語文学は『源氏物語』のみならず、『伊勢物語』『更級日記』などでも掠奪婚=「男が女を盗む話」を繰り返し描いてきた。
    男はなぜ女を盗むのか、女はそれにどう対処したのか。
    新たな切り口で千年前の物語が甦る。

    [ 目次 ]
    第1章 『伊勢物語』の嫁盗み(芥川段はどう描かれたか 芥川段はどう語られたか 背負われる女 男女のコミュニケーション 鬼と女 嫁盗みの失敗)
    第2章 『大和物語』の嫁盗み(拒む女 身分違いの恋 女性拉致監禁事件 安積山段を読み直す)
    第3章 『源氏物語』の嫁盗み(映画の中の描かれ方 若紫掠奪 紫の上は「幸せ」だったのか 移動させられる女たち 柏木と女三の宮)
    第4章 嫁盗みの反転(『更級日記』竹芝寺縁起 笑話としての嫁盗み)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 内容紹介:「源氏物語」など平安物語文学は、掠奪婚=「男が女を盗む話」を繰り返し描いてきた。男はなぜ女を盗むのか、女はそれにどう対処したのか。新たな切り口で千年前の物語を読み解く。(TRC MARCより)

    資料番号:011059631
    請求記号:913.3/ タ
    資料区分:文庫・新書

  • 副題に惹かれて手に取った本だが、解釈の視点が新しくて、為になった。
    特に『大和物語』の安積山の女の自死をめぐる従来の古典解釈に疑問を投げかけている。提示されている解釈には納得した。

    本書の投げかけは、今後さまざまな議論を引き起こすことになるだろう。

全16件中 1 - 10件を表示

立石和弘の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×