大平正芳―「戦後保守」とは何か (中公新書)

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著者 : 福永文夫
  • 中央公論新社 (2008年12月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121019769

大平正芳―「戦後保守」とは何か (中公新書)の感想・レビュー・書評

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  • 大平正芳個人の評伝だったが、同時に戦後日本の自民党政権の変遷を語ってもいる。前半は丁寧に語られているが後半、特に田中以降はやや急ぎ語っている感。そのせいか官僚時代と池田に仕えた時代の印象が強く残った。またここで語られた自民党首班の中では最も敗戦国としての日本を背負っていた人物のようにも取れる。真面目でよく勉強しており残されている論文等からもそれがにじみ出ているが、他の首班に比べ打ち出された政策がこじんまりとしている印象も受ける。興味深いのは「大平(と河本)は、日米安保・自衛力の他に政治・経済・文化の総体の力で「日本はいい国だ」と思わせることが外国に侵略する気を起こさせない、つまり安全保障だとしている。」「福田が文化を「守る対象と捉えているのに対し、大平は「守る力の一環」として位置付けている」(p.225)といった考え方。これは「ソフトパワー」に通じるものではないだろうか。
    たらればだが大平氏が政治の世界に入らず官僚職を全うしたらどうなっていたのだろうと思う。
    一般に使われる「党人脈」「官人脈」が一箇所しか見られなかったのは意外。
    大平についての著作なのに「福田ドクトリン」が丁寧に語られている(p.219)が、確かにこれが対アジア政策において重要であることは疑いない。
    子供ごごろに当時の政治というと自民党内の派閥争いという印象で見ていた。そんな時代を資料で見せてくれた一冊だった。

  • 官僚時代のエピソードに、政治家「大平正芳」の一端を感じる発言がある。終戦が決まった数日後、同僚の宮沢喜一に向かって、「これで日本は何も無くなってしまった。これからどうやって日本人を食わせるか。外地から帰って来る人も多いだろう。何百万人が餓死しなければ生きられないかもしれない。すべてが止まってしまった今の日本では、鉄道だけがとにかく動いている。この鉄道を担保にしてアメリカから金を借りる手はないだろうか。」待ち受ける苛酷な現実を前にしながらも、この気概と志。成長から衰退に向かう日本に向けてネガティブな意見が飛び交っているが、敗戦直後と比べれば遥かに現在の方が恵まれていると思うし、打つ手が無いわけではない。本書は大平の言葉に潜む思考・思索を通して、彼の目指した戦後保守とは何だったのかを考察する。そこには歴代の政治指導者たちとの関わりー政治指向が対峙した岸信介、池田勇人との軋轢、盟友田中角栄との固い絆、福田赳夫との対立、バルカン政治家三木武夫との確執等ーを彼らの掲げた政策と政治志向を交えながら、丁寧に書かれている。戦後政治史の概観を知る上での格好の書だと言える。大平が総理時代に提唱し企画したことは21世紀を視野に入れた構想であったこと。この慧眼ぶりを知るにつけ、昨今の政治家の言動をどうしても比較してしまう。あなたには「こいつの考えをちょっと聞いてみたいと思える政治家はいますか?」

  • 20160330~ 0426田中角栄に続いて同時代の政治家史。

  • 角栄本を読んだ後であったが、前者が角栄という人物に主に焦点を当てていたのに対し、こちらは大平正芳という人物と政治状況を描いた書。

  • 読みやすく、かつ素晴らしい内容です。丹念に文献を調べ、ここぞという時に引用してくるのが心憎いです。かつて、日本にもこのような哲人政治家がいたということは、もっと知られて良いと思いました。

  • 一点だけ修正。p.123 佐藤さんは現光市ではなく、田布施町の出身です。

  • 保守本流の代表者。素晴らしい。

  • 2014年度秋学期輪読。最後の2回で怒涛の追い上げでなんとか年度内に読み切る。「含羞の政治家」という大平評はだいたい妥当かしら。とまれマスター学生による報告もこれでおしまい。来年度はどうしようなかなあ。

  • ○この本を一言で表すと?
     大平正芳の事績とその背景を丹念に追った本


    ○面白かったこと・考えたこと
    ・名前を知っているものの詳しくは知らなかった「大平正芳」という人物とその行ってきたことを一通り知ることができたように思います。今の日本に至るまでに「この人物がいなかったら歴史が変わっていた」という人物の一人だなと思いました。

    ・田中角栄の本を読んだ後に読んだので、比較すると本の形式としてその時に起こったことなどが丁寧に書かれている印象がありました。また、田中角栄の派手で大きな波を自分から起こすような人生と大平正芳の堅実に物事を漸進的に進めるような人生の対比も印象的でした。

    ・大平正芳の当時の中流から普通の秀才として人生を歩んでいく姿は他のドラマチックな人生を歩んだ人物と比較すると地味に思えました。大平正芳が大学で学んだ教授の教えからその後の政治に活かしていくところは身につけることころから実践するところまで着実な流れだなと思いました。二つの中心が均衡を保ちつつ緊張した関係にあることが望ましいという「楕円の哲学」、未来と過去の緊張したバランスのなかの「永遠の今」など、現代においてもバランスの良い安定した考え方に繋がりそうだなと思いました。農村出身の大平正芳が故郷の村長から受け取った手紙で受けた献策「棒樫財政論」も、枝葉を切り落として棒樫にすることが全体の健全化に繋がるという分かりやすく受け入れやすい表現でよいなと思いました。池田隼人の秘書となって足りないところを埋めることで信頼を得る流れは「7つの習慣」に載っていたワンマン上司を批判するのではなく支えることで重要な人物になった事例と似ているなと思いました。(第1章 青少年期)

    ・議員になった当初の「陣笠議員」として選挙区や東京を動き回る異常に多忙な議員生活や、その後池田隼人が首相になってからの主流化、官僚から学ぶことで外交知識を有した状態で外相になり、実績を出すことで池田隼人に疎まれ出して主流から外され、またその傷心の時期に長男が死んでさらに落胆することなど、安定した人間の波のある人生というある意味一つの典型のような流れだなと思いました。賭けを打って成功するパターンではなく、成功できるだけの地力をつけて地位を向上させていく様子は、一度落ちながらもその後の再浮上が当然と思えるようなしっかりした土台を持っている者の強みを感じました。(第2章 「保守本流」の形成)

    ・「三角大福」と呼ばれるトップの一角としてありながらも、積極的にトップに立つよりはトップを補佐しながら政策の主導をしていく様子は安定感を感じさせるなと思いました。日中外交、ニクソンショック、オイルショック、ロッキード事件による田中角栄の失脚など、国内外の様々な難局の中で立ち位置を変えながら関わっていくところもこれまた安定感を感じさせるなと思いました。(第3章 宰相への道)

    ・トップを補佐し続ける立場からついに首相になり、その中で立ち上げた九つの政策研究会の内容とその陣容が凄いなと思いました。第二次オイルショックやダグラス・グラマン事件などがありながらも乗り越え、消費税導入を進めようとして選挙でかなり党全体の票を落としながらも総裁選に勝利したことなど、失敗があってもそれまでに積み上げたものが大きければ受け止めることができるということかなと思いました。大平正芳が病に倒れて亡くなることで弔い選挙となり、自民党が一致団結したというのは歴史の皮肉だなと思いました。(第4章 大平政権の軌跡)

  • 保守本流のあり方を具現化した男が大平正芳といえる。
    →理論家として明瞭な人。
    →環太平洋構想=日米友好を基軸にそれを補完

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大平正芳―「戦後保守」とは何か (中公新書)の作品紹介

戦後、「保守本流」の道を歩み、外相・蔵相などを歴任、一九七八年に首相の座に就いた大平正芳。その風貌から「おとうちゃん」「鈍牛」と綽名された大平は、政界屈指の知性派であり、初めて「戦後の総決算」を唱えるなど、二一世紀を見据えた構想を数多く発表した。本書は、派閥全盛の時代、自由主義を強く標榜し、田中角栄、福田赳夫、三木武夫らと切磋琢磨した彼の軌跡を辿り、戦後の保守政治の価値を問うものである。

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