戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)

  • 1103人登録
  • 3.92評価
    • (61)
    • (87)
    • (51)
    • (9)
    • (3)
  • 78レビュー
著者 : 猪木武徳
  • 中央公論新社 (2009年5月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020000

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジョージ・A・ア...
村上 春樹
村上 春樹
三島 由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印

戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)の感想・レビュー・書評

  • 学者、教授としての著者の良心が凝縮された 名著と言って良いと思う。テキストとしての経済史としてもわかりやすい。著者はまず5つの視点、「市場と政府の折り合い」「グローバリゼーション」「所得分配の不平等」「経済統合 」「市場の信頼」を論じているが、これは読む側にとっては格好のガイダンスになると思う。戦後の様々な経済的事象を経済学者、政治家の意見とともに紹介、著者の理解も述べられ、読書の楽しみみを味わえた。ただし、平等化と自由への侵食の議論は消化不良だったようにも思える。いずれにせよ必読の★5。

  • 流読。
    世界経済の主要な出来事、流れ、各地域、各国の経済発展の流れが一通り眺められる。

    理解するには個別理解が必要。

    20世紀の課題については現在に通じるもの、この時点では現れていないものがある。

  • 2009年刊。◆戦後~20C終了時まで(若干の例外あり)の世界経済上の事件等につき焦点化しつつ網羅的に、経済学的に解説。日欧米先進国、NIESなどアジア諸国、植民地独立諸国(南アジア、アフリカ)、中南米、ソ連、東欧共産主義国など広範な地域が叙述対象。◇勿論、全部を網羅しているわけではなく、重要な国・典型な国を選抜しているのは言うまでもない。また、個人的に相当新奇な、中南米や植民地からの独立諸国に頁を割いているのはありがたく、さらに言えば最近留意していた共産主義国崩壊の経済的要因に言及している点も買い。
    ◆一方、21世紀の事象は補足的な叙述なので、これは他で補う方がいいかもしれない。二極化の亢進と資本移動の巨大化などなど。◆共産主義国の失敗の中核について、中央からの計画経済、一元的指示の非効率性・非実証性に言及するが、所謂税金を通じた所得再分配が問題視されているわけではない点に注意。◆著者は大阪大学国際日本文化研究センター所長。

  • 戦後経済史の概説的な勉強に最適。よくここまで手際よくまとめられたものか、ただ脱帽するのみ。

  • 【目次】
    はしがき [i-iv]
    目次 [v-ix]

    第一章 あらまし 001
    第1節 五つの視点 002
    市場の浸透と公共部門の拡大/グローバリゼーションと米国の時代/所得分配の不平等/グローバル・ガヴァナンス/市場の「設計」と信頼
    第2節 不足と過剰の六〇年 031
    生活と意識/技術力と豊かさ/公共精神の過剰から不足へ/アジアの興隆/人口・エネルギー・技術の変化/人口の増大、高齢化そして少子化/資源と食糧/エネルギーの転換/科学の発展と技術革新

    第二章 復興と冷戦 057
    第1節 新しい秩序の模索 058
    終戦と復興/モルゲンソー・プラン/マーシャル・プランの意味/マーシャル・プランの効果/貿易の枠組みと国際通貨体制
    第2節 ソ連の農業と科学技術 076
    スプートニク・ショック
    第3節 通貨改革と「経済の奇跡」 083
    通貨改革/ドイツの分断/マルクの切り上げ

    第三章 混合経済の成長過程 099
    第1節 日米の経済競争 100
    鉄鋼業の場合/自動車産業をモデルとする労使関係/「デトロイト条約」から「ワシントン・コンセンサス」へ
    第2節 雇用法とケインズ政策 116
    基軸通貨国の責任/米国のインフレーション/「偉大な社会」/貧困との戦争/ベトナム戦争の経済的帰結
    第3節 欧州経済の多様性 131
    英国/フランス/イタリア/ヨーロッパ共同市場の形成/スウェーデン

    第四章 発展と停滞 155
    第1節 東アジアのダイナミズム 156
    中国へのソ連型計画手法の導入/大躍進政策/文化大革命と中国経済/東アジアの土地改革/香港とシンガポール
    第2節 社会主義経済の苦闘 172
    戦後の混乱と共産化/ポーランドとカトリック教会/ハンガリーの改革/チェコスロヴァキア/ユーゴスラヴィアの独自の道/共通の致命的欠陥
    第3節 ラテンの中進国 191
    ブラジル/アルゼンチン/メキシコ
    第4節 脱植民地化(decolonization)とアフリカの離陸 202
    インド・パキスタン/英国とアメリカ/英国の政策/フランス領の場合

    第五章 転換 219
    第1節 石油危機と農業の停滞 220
    基軸通貨国のインフレーション/石油危機/東側経済への影響/生産性の低下とスタグフレーション/食糧問題の顕在化/途上国の農業の停滞
    第2節 失業を伴う均衡 239
    失業率の上昇/インフレーションとの闘い/ヨーロッパの技術革新力の低下/女性の社会参画
    第3節 「東アジアの奇跡」 252
    アジアNIEsとASEAN/政府か市場か/NIEsの貿易/ASEANの輸出振興/日本の直接投資/輸出志向工業化/クルーグマンの誤り?/成長と不平等/アジアの社会主義国/ベトナム/北朝鮮
    第4節 新自由主義と「ワシントン・コンセンサス」281
    規制緩和/民営化の進展/財政支出削減と税制改革/製造業における米国の地位低下

    第六章 破綻 303
    第1節 国際金融市場での「破裂」 304
    累積債務危機の構図/ラテン四ヵ国/IMFへの批判/アジアの通貨危機
    第2節 社会主義経済の帰結 319
    ドイツの混乱/移行過程の困難
    第3節 経済統合とグローバリズム 333
    経済の「ボーダレス化」の進行/ヨーロッパの統合/共通通貨「ユーロ」の導入/憲法のない国家/アジアの地域統合/環境のグローバル化
    第4節 バブルの破裂 355

    むすびにかえて 365
    自由と平等/人的資本の役割/エートスの問題

    謝辞 376
    参考文献 [378-397]
    人名索引 [398-399]
    事項索引 [400-406]

  • 出口治明著『ビジネスに効く最強の「読書」』で紹介

    自由と平等、市場システムが世界にもたらした歴史的変化の本質を明らかにする。

  • 戦後(WWI後含む),世界で起こった経済に関わる制度や出来事などをほぼ全て網羅する本書.
    TwitterやNaverでも"中公新書ベスト◯"でよくよく取り沙汰されていますが,確かにそれに見合うだけの内容を備えています.
    戦後・現代史や経済について考える時にレジュメ・辞書的にも使える便利な本のようにも思います.

    内容としては,経済から見た各国の戦後史という史学的なものから,経済における政治や統治機構の役割・関係という政治的な話,また第三世界やアジア・BRICsなど新興国の発展度合いや方法というように,あらゆる角度のトピックについて書かれてあるので,全て学びきるのは難しいでしょう.
    ただ,一つ一つのトピックとして,歴史的事件と経済の関わりや国際的な問題など,キーワードとしては備えている知識を,互いに繋げてくれるという良さがあり,興味深く読み進められました.

  • ギュッと詰まった内容で、戦後を俯瞰するには非常に良いです。

  • 請求記号 332.06/I 56

  • ○この本を一言で表すと?
     戦後の世界各地域の経済について触れた経済史の本


    ○この本を読んで興味深かった点・考えたこと
    ・題名通りに「戦後」の「世界」各地域の「経済」に触れた本でした。概要から詳細まで程よいバランスで書かれていてよかったです。

    ・最初に五つの視点として「市場化の動きと公共部門の拡大」「グローバリゼーション」「所得分配の不平等」「グローバル・ガヴァナンス」「市場の設計と信頼」が挙げられていて、それぞれ難解であるもののそれぞれ興味深い視点だなと思いました。戦後を「不足と過剰の六〇年」として、その振幅の大きさを様々な分野で書かれていました。「飽食と飢餓」「技術力と豊かさ」「公共精神の過剰から不足」「アジアの興隆」「人口・エネルギー・技術の変化」「資源と食糧」など様々な点で戦後の移り変わりが激しかったことがざっと書かれていました。(第一章 あらまし)

    ・戦後のヨーロッパ復興の大きな要因としてマーシャル・プランが挙げられることが多いですが、その反論として数値としてはそれほどの影響がなかったことが挙げられていて新鮮に感じました。ソ連における科学面での成功と農業面での失敗、ドイツの通貨改革の成功など、戦後すぐにあったトピックだけでも興味深いなと思いました。(第二章 復興と冷戦)

    ・戦後の日本がそれ以前には考えられなかったほどの経済成長を見せてアメリカの競争相手になるほどになり、また貧困層の実態とその生活向上がテーマとなって様々な政策が考えられるようになるなど、軍事競争からある程度離れると違った土俵での勝負になったり、それまで目を向けられなかった場所にようやく目を向けられるようになるのだなと思いました。イギリス・フランス・イタリア・スウェーデンなどのヨーロッパ諸国がそれぞれ違った政策で国家運営していたこと、戦後すぐに欧州共同体の方向に向かっていったことなども興味深かったです。(第三章 混合経済の成長過程)

    ・戦後の東アジア諸国の発展についてざっと触れられていました。それぞれ異なった路線で成長していったこと、不思議な共通点として社会主義計画経済要素が認められなかった国は西欧の植民地になっていなかった国だということなど、なかなか興味深い話だなと思いました。社会主義国家の苦闘が各国ごとに概観されていて興味深かったです。計画経済の欠点として、その計画を立案できる層と運用する層で断絶があったことが挙げられていてなるほどと思いました。ラテンアメリカの中心国では、輸入代替工業化政策で関税を高くし国営で工業を運営していくなかで零細産業はインフォーマル・セクターに任され、そのために労使関係等が成熟しなかったというのは興味深い見方だなと思いました。戦後のアフリカがどのように脱植民地化していったかが書かれていましたが、同じ植民地でも西欧化が勧められた国と収奪だけされた国でその度合いが大きく異なるというのはよく分かる気がします。(第四章 発展と停滞)

    ・基軸通貨であるドルが不安定になることで世界の各地域に様々な影響があったことが概観されていました。アメリカ一国の通貨を基軸通貨にしていることでアメリカ経済に世界が連動してしまうことの危うさを感じました。石油危機から始まる世界経済の不安定化、そこから連鎖する第一次産業重視の国家の経済破綻、アジアの興隆と一部の破綻、ワシントン・コンセンサス推進による民主化など、様々なことが連鎖しているなと思いました。(第五章 転換)

    ・IMFのアメリカを中心とした先進国よりの政策への批判、社会主義経済の破綻、地域経済統合とグローバリズムの動き、バブル崩壊など、戦後それなりに動いていたものが壊れて現在も停滞していることや新たな仕組みに繋がっていることが、戦後経済史の不連続性と連続性の両方... 続きを読む

  • タイトル通り、戦後の世界史を経済面から通観する内容。
    政治の安定が経済発展にとっての大前提であること、経済における自由と平等を追い求めた各国の苦闘の歴史。

  • 第2次世界大戦前後からの世界各国の歴史問題について取り上げた本。多くの国を取り上げており、深い内容ではないのだが、広く知ることができる。興味ある箇所については、他の本で補完することをおすすめ。

  • この1年で出た経済本の中ではかなり新自由主義に寛容な立場と受け止めた。「貪欲を批判するだけでは始まらない」と。それはそうかもしれないが、だからといって、貪欲を批判しなくてよいことにはならないだろう。それにしても、の貪欲さを見せ付けられるとどうにも説得力が無い。

  • 戦後世界史というものすごい広い分野について書いてある。主軸は、保護主義の台頭、社会主義の失敗、グローバル化の波、といった大きな歴史的社会体制の流れに対して、個々の国がどのように巻き込まれ、そして対処していったかということ。もう一回読みたいね。

  • 猪木武徳氏の本ですから、大変内容が濃くて、読むのに時間がかかります。本の前半は正に戦後の世界経済史について時系列的に書かれているので、特段ここで説明することもないのですが、最後の二つの節、「経済統合とグローバリズム」「バブルの破裂」と最後の「むすびにかえて」が読み応えがありました。
    ざっくり言いますと、トクヴィルの言った、「平等化の進展は自由の侵蝕を生む」というアポリア(哲学的難題)について、経済成長、人的・物的資本、デモクラシーの関係をどう捉えるかについては、大きく二つの考え方があるそうです。ひとつは、「制度優先論」(institutional view)、もうひとつが「開発優先論」(development view)で、前者はデモクラシーなどの政治制度の確立から人的・物的資本への投資、そして経済成長へという因果関係で、後者は人的・物的資本への投資から経済成長、そしてデモクラシーなどの政治制度の確立へという因果関係で歴史の発展を捉えるものです。
    どちらが正しいかについての明確な答えは得られていないものの、現時点では概ね、人的資本、即ち人間の知的・道徳的質が成長にとっても民主化にとっても、一番重要な要因だと考えられているそうです。つまり、人的資本の蓄積が不十分な(教育水準の低い)国でのデモクラシーの実行可能性は疑わしいということです。
    この人的資本については、単に学校教育だけではなく、結社などの中間組織を通じて醸成される市民道徳を中心とした「知徳」が重要な構成要素を成し、人的資本の蓄積が不十分な国でのデモクラシーは、「全体による全体の支配」を生み出しやすいとしています。
    その上で、国民が倫理的に善い選択をできるためには、先ず十分な知識と情報が必要であり、資源問題にしても地球温暖化問題にしても、議論の多くは限られたデータに基づく予測であり、将来の可能性と蓋然性をデータと論理のバランスを考慮しながら判別していくことが重要であるとしています。そして、日本のような経済の先進国でも、市民文化や国民の教育内容が劣化していけば、経済のパフォーマンス自体も低下する危険性があり、知育・徳育を中心とした教育問題こそが、これからの世界経済にとっての最大の課題になると結論付けています。

  • 題名の通りの内容で、世界経済を俯瞰して理解するにはいいと思う。経済の専門家でなければ、あまり深く考えずに、ざっと流し読むくらいでちょうどいいかな。自由と平等が両立し難い点は難しい問題だ。

  • 戦後史、とくに政治文化はある程度は分かっているつもりだけど、経済史についてこんなに自分が無知なのかと驚愕した。単に無知なだけではなく、経済に関しては「戦後日本史」と「戦後世界史」を同じようなものとして扱っていることに気がついた。
    まあ、いくら経済史でも戦後米国史は分かる。つまり私は、日本と米国およびその関係しか知らないわけで、まるっきり昭和人だ。

    あと、金融政策や経済政策について、とくに中央銀行や財務担当者の意思決定について、基本的な知識が欠落しているので、深く分からない。
    読めばなにをやっているかは分かるのだが、これでは理解しているとはいえない。

    重い宿題を背負った気がするなあ。

  • 中公新書の2000番だけあって、かなりの力作で、読み応えがあり内容が豊かだが非常に読みやすいという、新書の手本のような本だった。

    がしかし、新書ではなく選書や単行本といった形でグラフ等も省かずに書かれたものを読んでみたかった。


    ちなみに中公新書の1000番目は入江 昭「新・日本の外交」です。

  • 戦後史の流れを新書の中でなんとかこなそうとした本。

    そもそもこの形で新書にすることが無謀なことだとは思うが、その心意気はかいたいと思う。ただし、どうしても広く浅くになることは仕方がない。また、戦後の経済史の概説に近くなるので、何度か読み直したほうが良いと思った。

    さすが、中公新書2000番のキリ番だけのことはある。

  • 自由と平等の視点から、と副題。第2次大戦後の60年はかつてない急激な変化を経験した。そのKeywordは民主制と市場経済。本書では「市場化」を軸にこの半世紀を概観、経済の政治化、Globalizationの進行、所得分配の変容、世界的な統治機構の関与、そして自由と平等の相剋―市場Systemがもたらした歴史的変化の本質とは何か。

全78件中 1 - 25件を表示

戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)を本棚に「積読」で登録しているひと

戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)の作品紹介

第二次大戦後の世界は、かつてない急激な変化を経験した。この六〇年を考える際、民主制と市場経済が重要なキーワードとなることは誰もが認めるところであろう。本書では、「市場化」を軸にこの半世紀を概観する。経済の政治化、グローバリゼーションの進行、所得分配の変容、世界的な統治機構の関与、そして「自由」と「平等」の相剋-市場システムがもたらした歴史的変化の本質とは何かを明らかにする。

戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)はこんな本です

戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)のKindle版

ツイートする