市場主義のたそがれ: 新自由主義の光と影 (中公新書 2008)

著者 :
  • 中央公論新社
3.10
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本棚登録 : 99
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020086

作品紹介・あらすじ

ベルリンの壁の崩壊後、世界を席巻した「市場主義」。だが、経済格差や環境破壊を引き起こすなど、欠陥を露呈している。本書では、市場主義の源流に位置するフリードマンの経済思想を、同時代の証言を交えて読み解き、その功罪を明らかにする。第二次大戦後、彼らが勢力を拡大した過程を辿る一方、アメリカの経済思想の多様さにも注意を促す。

感想・レビュー・書評

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  • 新自由主義、市場原理主義などの言葉で表される経済学の歴史を書いた本
    理論よりも歴史的な部分が中心なため分かりやすく、この思想の功罪が学べる

  • 偏りが見受けられます。
    実はこの「偏波心」こそがこれから数世紀に渡って語り
    注がれることになる<冷戦>なのだと思います。
    どうか、私が死ぬまでには、その先行きを端緒で良いから
    感じていたいものです。俺だって未来を信じていたい。

  • シカゴ学派だとか市場原理主義だとか、よく聞く割には正確にどんな『教義』なのか知らなかったので興味深く読んだ。
    特に得心したのは、マネタリストが信じている「マネーサプライはコントロールできる」という仮説は、銀行が信用創造して融資を増やすことが前提になっていて、貸出先がなければ成り立たないという点。言われてみればその通りだが、日銀がこれだけジャブジャブお金を注ぎ込んでも、ちっともデフレが解消しないのはこういうことだったのか。事業者のマインドが変わらなければいくら金利が下がってもお金なんて借りないわな。
    それにしても経済学者と言うのは単純で自明なことを無理やり数式やグラフにしたりして、理系人間からすると意味のないことをやっているようにしか見えない。

  • 経済史の著書が多い、京大の根井先生の本。

    市場主義と書いてあるが、基本的には主人公をフリードマンに据えて、第二次世界大戦前から、ケインズ革命、ニクソンショックなどの経済的な歴史をフリードマンや近辺の人物の性格などを含めてわかりやすく書いた本だと思う。

    経済学は理論だけでは無味乾燥な面白くない話が多いが、人物像や人間のかかわりまで書くと、経済史上の登場人物が生き生きとしてくるように感じた。読んでいて楽しい本多が、やはり経済史上の最低限の知識をもって、それらを整理するつもりで読んだ本がよいと思う。

  •  同じ著者の『物語 現代経済学』(中公新書)がなかなか良かったので購入。
     『物語~』がメインストリームから外れた傍流にも目配りしたアメリカ経済学史とすれば、この本は時代の寵児ミルトン・フリードマンを中心に、サムエルソンの新古典派総合やフリードマン以前のシカゴ学派との「ずれ」に焦点を合わせたもの。それだけに、やや理論的な側面に重心を置いているものの、相変わらず素人にも分かりやすく説明している点は好印象。
     ケインズとフリードマンの違いが、じつは巷間で言われるほど大きなものではなく、フリードマンのプロパガンダで印象操作された部分が大きいというのは、ちょっとした驚きだった。また、リバタリアニズムの権化フリードマンが戦時中は財務省に務め、源泉徴収制度を考案したという事実は意外中の意外。
     こういう面白エピソードは豊富にあるものの、多忙のためか議論の展開が所々崩れていたり、説明不足が否めない点が(特に後半)多かったのは残念。この点で☆は一つ減らしました。

  • 読みたい。

  • 1989年、かつては多くの知識人や労働者の夢であった社会主義を象徴するベルリンの壁が崩壊した。社会主義計画経済の停滞は、以前から知られていたが、多くの人々は自分が生きているうつにソ連が崩壊するとはお思っていなかった
    冷戦時代は資本主義VS社会主義というテーマが学会によく取り上げられたものだったが、片方の社会主義がほとんどなくなってしまうと、一時、経済論壇では資本主義の勝利という一色になってしまった。そして資本主義が市場メカニズムによって動かされてきたからこそ、計画経済に対して圧倒的な勝利を覚めたのだという理解から、市場主義という言葉がジャーナリズムで頻繁に使われるようになった。

    グローバル資本主義は、世界経済活性化の切り札であると同時に世界経済の不安定化、所得や富の格差拡大、地球環境問題など、人間社会に様々な負の効果をもたらす首班人でもあり。そして、グローバル資本が自由を獲得すればするほど、この傾向は助長される。
    21世紀世界はグローバル資本というモンスターにもっと大きな自由を与えるべきか、それともその行動に一定の歯止めをかけるべきなのか。

  • 自由市場至上主義ってのは実際考えられたのかってはなし。欧米でだれもアナーキーを推奨はしないし。
    でもなぜアメリカが市場原理よりに見られてるのかって、混合経済へのケインジアンの影響を自覚できてないからという盲点があったからというのもあるんだよと
    とにかく僕らはみんなポストケインジアンなんだね忘れちゃだめね


    むしろ、ケインズ以前の国家の役割はぶれぶれだった・手探りだったってこと?

  • [ 内容 ]
    ベルリンの壁の崩壊後、世界を席巻した「市場主義」。
    だが、経済格差や環境破壊を引き起こすなど、欠陥を露呈している。
    本書では、市場主義の源流に位置するフリードマンの経済思想を、同時代の証言を交えて読み解き、その功罪を明らかにする。
    第二次大戦後、彼らが勢力を拡大した過程を辿る一方、アメリカの経済思想の多様さにも注意を促す。

    [ 目次 ]
    第1章 フリードマンの孤独な闘い-主流派経済学に抗して(「選択の自由」を訴え続けた経済学者 歴史の長い貨幣数量説 ほか)
    第2章 静かなる時流の変化-「市場の失敗」から「政府の失敗」へ(『経済分析の基礎』 ベトナム戦争 ほか)
    第3章 シカゴ学派の勝利?-ベルリンの壁の崩壊(社会主義の崩壊 シュンペーターの資本主義衰退論 ほか)
    第4章 フリードマン以前の「シカゴ学派」-F.ナイトの「適度な懐疑主義」(「偉大な新古典派経済学者」ヴァイナー ダグラスとシュルツ ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  •  ロマンティックな題名に惹かれ図書館でレンタル。
    ミルトン・フリードマンに代表される新自由主義者は、必ずしも市場主義だけが全てとは考えていないんだよという話。
     初期の新古典派総合は競争原理に基づく自由経済を原則とし、経済危機や急激なデフレーションなどの突発的な場合には政府が市場に介入するというケインズ的な経済思想だった。にもかかわらず、その後競争原理の部分だけがクローズアップされ、公的介入を一切認めない(ロックアウト)個人主義的な市場経済が唯一だとされた。公的介入は神の見えざる手を阻害して市場をゆがませる方法であると非難されるようになった。
     
     新自由主義者は純粋な市場主義を信奉していたと考えられている部分があるが、それはかつての経済学者の思想を曲解してしまっている。

     著者は世論の流れが市場経済一辺倒になっていることを危惧して
    「市場のルールを整備して公平な競争が可能になったとしても、育ってきた環境は違うから結局全てを公正明大にすることは出来ないのかもしれない」
    ゆえに特定の条件の下での介入は必要である、という事を市場経済を推している学者が言っていたらしい。
     はるか以前の、しかも新自由主義の勃興紀にすでに機会の平等の限界が語られているにも関わらず行われた市場主義を推し進める政策は、富める者がさらに富める政策であり、新自由主義は富裕層が政治を動かす転換期であった。

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著者プロフィール

1962年、宮崎県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。著作に、『今こそ読みたいガルブレイス』(集英社インターナショナル新書)、『英語原典で読むシュンペーター』(白水社)、『現代経済思想史講義』、『経済学者の勉強術』、『来るべき経済学のために』(橘木俊詔との共著)、『ブックガイド基本の30冊 経済学』(編著、以上四冊は人文書院)など多数。

「2021年 『16歳からの経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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