音楽の聴き方: 聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書 2009)

著者 :
  • 中央公論新社
3.84
  • (69)
  • (83)
  • (54)
  • (18)
  • (5)
本棚登録 : 1065
感想 : 106
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020093

作品紹介・あらすじ

音楽の聴き方は、誰に言われるまでもなく全く自由だ。しかし、誰かからの影響や何らかの傾向なしに聴くこともまた不可能である。それならば、自分はどんな聴き方をしているのかについて自覚的になってみようというのが、本書の狙いである。聴き方の「型」を知り、自分の感じたことを言葉にしてみるだけで、どれほど世界が広がって見えることか。規則なき規則を考えるためにはどうすればよいかの道筋を示す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 音楽は言葉では表現できないと言われることがありますが、そうではないことを本書は示してくれます。

    ”音楽の少なからぬ部分は語ることができる。語らずして音楽はできない” ということを、指揮者の指示、表現の伝え方を通して説明している様は、とても説得力がありました。
    2021,3/11-3/13

  • うっすらと感じていたことがとても明瞭に書かれていた。それは、音楽に国境はない、ピース、というあまりに流布しすぎた幻想。
    とんでもない。音楽には国境がある。ある文化圏の音楽を理解するためには、外国語を習得するのに匹敵するリテラシーが必要だということ。
    じゃあロックやポップスの普遍性はどうなるんだ?
    それは、英語がたまたまグローバル言語になっているのと同様、西洋音楽の語法がたまたま全世界に広まっただけのこと。ウイルスのようなもの。

  • 名著『西洋音楽史』に続くクラシック理解のための格好の手引き。でも、いわゆるディスクガイド的なことを期待すると裏切られます。西洋音楽の「聴かれ方」と「語り方」の歴史的変遷と理論的背景を踏まえた読み物で、新たな発見がたくさんありました。

    「自分の感性の受信機の中にあらかじめセットされていない周波数に対して、人はほとんど反応出来ない」
    ある音楽を気に入るかどうかは、誰にでもある「内なる図書館(自分が何年もかけて蓄積してきた記憶の断片≒自己のアイデンティティ)」と接点があるかどうかにかかっています。だからこそ、「たくさん聴いて、読んで、いろいろな人名や作品名を覚え、多くの人と話すこと」。音楽という大海で迷子にならないためには、ある程度「量」を聴き込んで、自分なりの海図を持つことが必要です。

    要するに、「ある音楽ジャンルが「分かる」とは、一つの文化に参入し、その暗黙のアーカイヴに対する土地勘のようなものを会得することだ。歴史を知り、価値体系とそのメカニズムと含蓄を理解し、語彙を習得すること」。語るべき言葉を持たないと、音楽の楽しみは半減する。同感です。

    「音楽についての本を読むことで、聴く幅が飛躍的に広がる」。ジャズについては、ミュージシャンの伝記や批評、文化論、ディスクガイドなど、それなりの数の本を読んできましたが、それによって自分が音楽を聴くときの軸足が定まったという実感があります。
    でも、私の心に刺さったのは、それに続く次の言葉。「他人が使った語彙は、あくまで自分の言葉を見出すまでの、仮設の足場のようなものだ」。他人の知識や経験が自分のものになるまでの熟成のプロセスを表す表現として、これ以上のものは思いつきません。

  • さまざまな音楽批評の事例から,音楽の聴き方および語り方について解剖する本。主張自体は無難なものが多いものの,巻末の読者案内を始め単純に勉強になる内容が多い。

  • 音楽のみならず、芸術全般や言論、世界との接し方に通じるものがある。

    音楽の聴き方には方法論がある。単なる好き嫌いじゃない。その好きだって、すでに集団的に経験的に出来上がった履歴「内なる図書館」だ。その図書館にこもって、いつまでの自己に出会うだけの反復じゃあ、つまらないだろう。それはパブロフ的「刺激と反応」(動物化!)じゃないか。

    いい音楽と出会えば自然と体が動くだろう。分かるから、分け合いたいんじゃないのか? それがスイングだ! 音楽を聴くとは、意味を探すこと、他者を探すことだ。外へ出よ!!である。

    デジタルコンテンツ溢れる現代では、いくらでも簡単に「感動」という刺激に出会うことは可能だ。だからこそかえって、本書の実践のような「手間」をかけることが大切だ。動物ではなく、人間であり続けるために。

  • p.15 モンクス・ポイント 『ソロ・モンク』 『American Piano Classics』
    アフリカン・ピアノ 青森 閉架
    中山 読んでから聴け! ジャズ100名盤 あ

  • ”音楽の聴き方は自由だが、一切から自由に聞くことは不可能だ。ならば自らの聴き方を自覚的になってみてはどうか”。音楽を語る語彙、音楽自体の語法、再生のポータビリティなどの観点から気づかせる。

  • 音楽の聴き方を読んだ。現存する音楽の聴き方を紹介しながら、なぜそうなったのかを歴史を紐解きながら解説し、音楽の聴き方とその向き合い方に迫っていく良本。

    詳細は下記
    https://note.com/t06901ky/n/n2f405373469e

  • 西洋音楽史をベースとしたクラシック音楽の楽しみ方が主題にはなっていますが、特にクラシック音楽にこだわる必要は無く、芸術全般の楽しみ方を学べる良書。

    西洋音楽史に余り興味が無いのでやや退屈な章もありましたが、特に「はじめに」と「第5章」は秀逸!!素晴らしいコンサートや美術館に行った後(もしくは最高に面白かった本や映画、マンガでも良いと思います)、共通の価値観を持つ友人とそれらについて語り合う時間が最高に楽しい。ただ、その時に「面白かったね」の一言しか語る言葉が無かったらその楽しい時間は一瞬で終わり。でも、「あの部分はこう思ったんだけどあなたはどう思う?」「この部分はちょっと分からなかったんだけどあなたは分かった?」みたいな感じで、少し語る言葉を覚える事でその楽しい時間は無限に広がっていくと思います♪

    僕は、最低でも年1回、海外旅行に行くようにしていますが、予備知識無しで行くよりも、その国の歴史や価値観、ちょっとした挨拶の言葉を軽く覚えてから行った方が断然面白いです。また、野球やラグビー、サッカーなどもそうですが、全くルールを知らないのと、最低限のルールを知っているかどうかでその楽しさは全然違ってくると思います。

    同じように、クラシック音楽についても、音楽のロジックのパターン(音楽のセンテンスがどういう論法でもって互いに関連づけられているのかなど)であったりその曲が生まれた歴史的背景を知る事で、より楽しめるようになるような気がします。また、仮にクラシック音楽には興味が無いという人も、何かしら心に響くものがあるように思います。「クラシック音楽なんて興味無いよ」という人にこそ読んで欲しい良書!!

全106件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1960年京都生まれ。京都大学人文科学研究所教授。専門は近代西洋音楽史。著書に『リヒャルト・シュトラウス 人と作品』(音楽之友社、2014)、『音楽の危機』(中公新書、2020、小林秀雄賞受賞)、『音楽の聴き方』(中公新書、2009、吉田秀和賞受賞)、『西洋音楽史』(中公新書、2005)、『オペラの運命』(中公新書、2001、サントリー学芸賞受賞)、共著に『すごいジャズには理由がある』(アルテスパブリッシング、2014)など。

「2023年 『配信芸術論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岡田暁生の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×