皇族―天皇家の近現代史 (中公新書)

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著者 : 小田部雄次
  • 中央公論新社 (2009年6月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020116

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皇族―天皇家の近現代史 (中公新書)の感想・レビュー・書評

  • 配置場所:摂枚新書
    請求記号:288.44||O
    資料ID:95120061

  •  「皇族」については、一般にその歴史と近代日本における役割を詳細に知ることはあまりないし、なんとなくのイメージしか持たないいようにも思える。
     本書は、その「天皇家の近現代史」を詳細かつ丁寧にひもといており、興味深く読むことができた。
     「近代皇族の誕生」における「陸海軍」での役割を読むと、当時の皇族に課せられ、期待された任務がよくわかるが、「皇族男子の全て」が「陸海軍の軍人になることが義務付けられる」とは、当時のヨーロッパにもなかったことではないのだろうか。
     その後の「昭和の戦争」における「皇族軍人」が及ぼした影響を考えると、当時この制度ができた理由はなんだったのか。
     「法制化される皇族」「謳歌と翳り」を読むと、当時の日本の国家システムが「皇族」という「権威」を必要としていたことがわかるが、果たして当人の「皇族」にとってよかったのかどうか、現在の目から本書の「皇族」と「華族」を読むとなんとも違和感をもつ。
     「昭和天皇の登場」以降は、よく知られた「昭和の時代」になる。軍事との関係については駆け足にも思えたが、全体像はよくわかる。
     しかし、「皇族」が軍高官を務めるプラスとマイナスを本書で読むと、組織を歪めるマイナスの方が大きかったのではないかとも思えた。
     「天皇・皇族の戦後」では、よくまあ戦後の動乱期を切り抜けたものだとの感慨と共に、「楽な仕事ではない」との感想をも抱く。
     「天皇」については、イデオロギーや過去の戦争の被害の大きさから、極端な意見やイメージによる独断の本が多いが、本書は「皇族」について冷静かつ詳細な論考であると高く評価したい。
     本書を読み終わって、「皇族」について冷静な視点から歴史を考えることができるように思えた。読後感は、「興味深い」である。

  • 皇族の定義は自体によって違う。
    臣籍降下した11宮家は室町時代・江戸時代の天皇から分かれた系統で、現皇室とは血縁的に相当さかのぼる。
    伊藤博文は女系天皇容認論者であった。
    東久邇宮は欧州に留学し、その後なかなか日本に戻らず、再三の説得によりようやく帰国した。
    伏見宮博恭王は軍令部総長となり、皇族という立場も利用して、自己の考えを推し等した。非立憲的態度であった。
    昭和天皇と2直宮とは、対米開戦を巡り相当のやりとりがあった。特に高松宮とは開戦後の相当意見の対立があった。
    皇族でも戦後には離婚騒動があった。閑院宮。
    皇室関連法、軍人皇族一覧、皇族外遊先一覧、臣籍降下時の宮家財産、内親王・女王婚家一覧等、皇室・皇族に関するデータも豊富。近代皇族の概要が把握できる興味深い著作。

  • [ 内容 ]
    古代より「天皇の血族」として存在した皇族。
    明治維新後、最も近親で天皇を支える階級として、軍人の義務と多くの特典を獲得し成立した。
    だが、自らの権威・特権を背景に、長老の皇族軍人や直宮は、天皇を脅かす存在でもあった。
    本書は、古代から現代の皇族を概観し、近代以降存在した十五宮家、皇族軍人たちの動向、新たな位置づけを求めた戦後の「皇室」を中心に、皇族の全貌を明らかにする。
    巻末に詳細な「近代皇族一覧」付。

    [ 目次 ]
    序章 十一宮家の皇籍離脱―伏見宮系皇族の解体
    第1章 近代皇族の誕生
    第2章 法制化される皇族―男系・傍系・配偶者
    第3章 謳歌と翳り―近代国家の成立期
    第4章 昭和天皇の登場―軍国主義の跫音
    第5章 戦争の時代
    第6章 皇籍離脱と新憲法
    第7章 天皇・皇族の戦後
    終章 これからの皇族

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    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 2007年に成立した国民投票法案、多くの人が憲法9条の問題を想定した。しかし、ほかにもある。たとえば、天皇制にかんしてである。この国民投票、タイミングがひじょうに重要で、なにかをきっかけにその時のムードでおこなわれると、将来に禍根を残すことになる危険性がある。その前に、充分に考えておく必要がある。

     2006年に悠仁親王が誕生し、ひとまず継承問題は棚上げされているが、問題が解決したわけではない。日本の天皇家の問題より先に、皇室と深いかかわりのあるタイとイギリスで、深刻な事態が起こるかもしれない。タイは、明治天皇と同じ15歳のときに即位し、ほぼ同じ在位期間(1868-1910年)のチュラーロンコーン王(ラーマ5世)のときに近代君主制の基礎ができ、近年では秋篠宮家を中心に交流が密である。現在のプミポン国王(ラーマ9世)は1927年生まれ、1946年以来の長期の在位が続いており高齢である。イギリスについては、もっと大きな問題があるかもしれない。日本の天皇制をめぐる問題は、国内より先に海外からの影響によって巻き起こるかもしれない。

     イギリスにせよタイにせよ、近代に王制が生き残り、現在まで続いているのにはそれなりの理由があり、生き残り戦術があった。そして、第一次世界大戦の敗戦国ドイツでは王制が廃止されたが、第二次世界大戦の敗戦国日本では天皇制が存続した。天皇制が存続し、今日に至っている理由の一端が、本書からわかる。

     近代天皇制は、男子皇族の軍人化によるところが大きい。1945年の帝国軍隊崩壊までの72年間に、陸軍に18名、海軍に10名の計28名が配属され、大元帥である天皇のもとで軍事的役務を担った。軍人とならなかった皇族男子は、神宮祭主となった2人と健康上の理由があったひとりだけであった。その軍人化は、イギリス王室に学んだことが、つぎのように書かれている。「ロンドンに着いた[東伏見宮嘉彰]親王は、欧州文明を学び、英国の儀式に参加し王室との交流を結ぶ。日本の皇族としてはじめて海外の君主であるヴィクトリア女王に対顔、握手をしたりする。また、エドワード七世の平癒感謝会などに参列もした。こうした経験から嘉彰親王は、欧州の王族が年少時より「海陸軍に服事し勉強せざるはなし」との見解を持ち、帰国後、自ら望んで陸軍少尉となり、皇族軍人の道を開いたのである。当時、華頂宮博経親王はアメリカ海兵学校、北白川宮能久親王はプロシア(ドイツ)の陸軍大学校で、それぞれ学んでおり、皇族の軍人化への環境は整えられていった」。

     いっぽう、女性は、後方支援の日本赤十字社の活動に従事した。「皇后は毎年行われる本社での総会にかならず出席し、皇族妃は戦時の繃帯(ほうたい)巻や傷病兵慰問を担った。昭憲(しょうけん)皇太后(明治天皇の皇后美子(はるこ))基金など、皇室からの財政援助もなされた」。因みに、現在、名誉総裁は皇后陛下、名誉副総裁は皇太子殿下・同妃殿下 秋篠宮妃殿下、常陸宮殿下・同妃殿下、三笠宮殿下・同妃殿下、寬仁親王妃信子殿下、高円宮妃殿下である。

     戦後、国民とともに軍事的に国を守るというもっとも重要な皇族の役割のひとつは終わった。それは、1947年10月14日、伏見宮邦家の子孫である11宮家51人の皇籍離脱というかたちでもあらわれた(第92代伏見天皇、在位1287-98年)。残されたのは、昭和天皇の皇后、皇太后、実子、実弟とその家族だけだった。この皇室の危機に際して、軍事的役割にかわる役割を見出したのは、昭和天皇の実弟の高松宮だった。「高松宮はスキーや競馬、駅伝などのスポーツ杯に関わったり、ハンセン病予防事業団である藤楓(とうふう)協会の初代総裁に就任した。また、かつての海軍関係の集まりにもよく出席した。国際親善のため海外に渡航することも多かった。一... 続きを読む

  • この本は、明治維新〜現在までの、皇族についてかなり網羅的に書かれた本であって、おそらくあまり他にない目の付け所で、貴重な記録である。皇室ゴシップ的なおもしろさで読むことも出来る。

    我々は皇族というと、つい現在の天皇家を考えてしまうが、戦前は皇族の範囲はもっと広かった。彼らは特権を持っていたが、基本的に軍人になるという社会的な使命も負っていて、独特な存在で、それなりの影響力もあった。しかし、戦後の皇室典範の改正により、過酷な財産税も科せられ、臣籍降下される。その運命は興味深い。

    また、皇室に関する記述も多く、天皇の素顔を垣間見ることができる。天皇跡継ぎ問題についても言及がある。著者ははっきりとは書いていないが、女系への跡継ぎが可能であるような制度の見直しを支持しているように思える。

  •  現在の皇室典範では、天皇は男系男子のみによって継承される。しかし皇太子には男子がなく、今上天皇の男子の男子は一人だけだ。このままでは“万世一系”の天皇が絶えてしまう可能性が高い。その対策として旧皇族の復帰を主張する人々がいる。第二次大戦後に多くの宮家が皇籍離脱させられたことが継承者不足の原因であることは明らかだからだ。

     皇族は天皇の血族であり、皇位継承者を生み出すために存在する集団だ。しかし天皇自身と比べ、皇族について詳しく紹介した本は少ない。本書は皇族の歴史的な位置づけから始まり、明治維新を経て敗戦に至るまでに彼らがたどった運命をアカデミックかつドラマチックに紹介している。

     皇族は華族以上の特権階級だが、同時に義務や制約も大きく、飢えはしないが自由もない。また、一概に皇族と言っても実態は多様であり、中には随分とスキャンダラスな人生を送った方もいる。うらやましい部分もあるが、トータルとしては遠慮したい境遇だ。

     私のような庶民ですら、長男の長男だが子供どころか嫁もいないという現状にはプレッシャーを感じる。悠仁親王が将来どんなプレッシャーを受けることになるか、かわいそうでならない。

     現在の天皇は実権を持たない「象徴」に過ぎないのだから、必死になって男系男子にこだわる理由などないのではないかと私は思う。世襲であることすらなぜ必要なのかわからない。恐らくそれは客観的合理的に説明できるものではなく、「国民感情」という曖昧だが確かに存在するもののためなのだろう。

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皇族―天皇家の近現代史 (中公新書)の作品紹介

古代より「天皇の血族」として存在した皇族。明治維新後、最も近親で天皇を支える階級として、軍人の義務と多くの特典を獲得し成立した。だが、自らの権威・特権を背景に、長老の皇族軍人や直宮は、天皇を脅かす存在でもあった。本書は、古代から現代の皇族を概観し、近代以降存在した十五宮家、皇族軍人たちの動向、新たな位置づけを求めた戦後の「皇室」を中心に、皇族の全貌を明らかにする。巻末に詳細な「近代皇族一覧」付。

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