- Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121020116
感想・レビュー・書評
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「皇族」については、一般にその歴史と近代日本における役割を詳細に知ることはあまりないし、なんとなくのイメージしか持たないいようにも思える。
本書は、その「天皇家の近現代史」を詳細かつ丁寧にひもといており、興味深く読むことができた。
「近代皇族の誕生」における「陸海軍」での役割を読むと、当時の皇族に課せられ、期待された任務がよくわかるが、「皇族男子の全て」が「陸海軍の軍人になることが義務付けられる」とは、当時のヨーロッパにもなかったことではないのだろうか。
その後の「昭和の戦争」における「皇族軍人」が及ぼした影響を考えると、当時この制度ができた理由はなんだったのか。
「法制化される皇族」「謳歌と翳り」を読むと、当時の日本の国家システムが「皇族」という「権威」を必要としていたことがわかるが、果たして当人の「皇族」にとってよかったのかどうか、現在の目から本書の「皇族」と「華族」を読むとなんとも違和感をもつ。
「昭和天皇の登場」以降は、よく知られた「昭和の時代」になる。軍事との関係については駆け足にも思えたが、全体像はよくわかる。
しかし、「皇族」が軍高官を務めるプラスとマイナスを本書で読むと、組織を歪めるマイナスの方が大きかったのではないかとも思えた。
「天皇・皇族の戦後」では、よくまあ戦後の動乱期を切り抜けたものだとの感慨と共に、「楽な仕事ではない」との感想をも抱く。
「天皇」については、イデオロギーや過去の戦争の被害の大きさから、極端な意見やイメージによる独断の本が多いが、本書は「皇族」について冷静かつ詳細な論考であると高く評価したい。
本書を読み終わって、「皇族」について冷静な視点から歴史を考えることができるように思えた。読後感は、「興味深い」である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この本は、明治維新〜現在までの、皇族についてかなり網羅的に書かれた本であって、おそらくあまり他にない目の付け所で、貴重な記録である。皇室ゴシップ的なおもしろさで読むことも出来る。
我々は皇族というと、つい現在の天皇家を考えてしまうが、戦前は皇族の範囲はもっと広かった。彼らは特権を持っていたが、基本的に軍人になるという社会的な使命も負っていて、独特な存在で、それなりの影響力もあった。しかし、戦後の皇室典範の改正により、過酷な財産税も科せられ、臣籍降下される。その運命は興味深い。
また、皇室に関する記述も多く、天皇の素顔を垣間見ることができる。天皇跡継ぎ問題についても言及がある。著者ははっきりとは書いていないが、女系への跡継ぎが可能であるような制度の見直しを支持しているように思える。