皇族: 天皇家の近現代史 (中公新書 2011)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (458ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020116

感想・レビュー・書評

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  •  「皇族」については、一般にその歴史と近代日本における役割を詳細に知ることはあまりないし、なんとなくのイメージしか持たないいようにも思える。
     本書は、その「天皇家の近現代史」を詳細かつ丁寧にひもといており、興味深く読むことができた。
     「近代皇族の誕生」における「陸海軍」での役割を読むと、当時の皇族に課せられ、期待された任務がよくわかるが、「皇族男子の全て」が「陸海軍の軍人になることが義務付けられる」とは、当時のヨーロッパにもなかったことではないのだろうか。
     その後の「昭和の戦争」における「皇族軍人」が及ぼした影響を考えると、当時この制度ができた理由はなんだったのか。
     「法制化される皇族」「謳歌と翳り」を読むと、当時の日本の国家システムが「皇族」という「権威」を必要としていたことがわかるが、果たして当人の「皇族」にとってよかったのかどうか、現在の目から本書の「皇族」と「華族」を読むとなんとも違和感をもつ。
     「昭和天皇の登場」以降は、よく知られた「昭和の時代」になる。軍事との関係については駆け足にも思えたが、全体像はよくわかる。
     しかし、「皇族」が軍高官を務めるプラスとマイナスを本書で読むと、組織を歪めるマイナスの方が大きかったのではないかとも思えた。
     「天皇・皇族の戦後」では、よくまあ戦後の動乱期を切り抜けたものだとの感慨と共に、「楽な仕事ではない」との感想をも抱く。
     「天皇」については、イデオロギーや過去の戦争の被害の大きさから、極端な意見やイメージによる独断の本が多いが、本書は「皇族」について冷静かつ詳細な論考であると高く評価したい。
     本書を読み終わって、「皇族」について冷静な視点から歴史を考えることができるように思えた。読後感は、「興味深い」である。

  • 皇族の定義は自体によって違う。
    臣籍降下した11宮家は室町時代・江戸時代の天皇から分かれた系統で、現皇室とは血縁的に相当さかのぼる。
    伊藤博文は女系天皇容認論者であった。
    東久邇宮は欧州に留学し、その後なかなか日本に戻らず、再三の説得によりようやく帰国した。
    伏見宮博恭王は軍令部総長となり、皇族という立場も利用して、自己の考えを推し等した。非立憲的態度であった。
    昭和天皇と2直宮とは、対米開戦を巡り相当のやりとりがあった。特に高松宮とは開戦後の相当意見の対立があった。
    皇族でも戦後には離婚騒動があった。閑院宮。
    皇室関連法、軍人皇族一覧、皇族外遊先一覧、臣籍降下時の宮家財産、内親王・女王婚家一覧等、皇室・皇族に関するデータも豊富。近代皇族の概要が把握できる興味深い著作。

  • [ 内容 ]
    古代より「天皇の血族」として存在した皇族。
    明治維新後、最も近親で天皇を支える階級として、軍人の義務と多くの特典を獲得し成立した。
    だが、自らの権威・特権を背景に、長老の皇族軍人や直宮は、天皇を脅かす存在でもあった。
    本書は、古代から現代の皇族を概観し、近代以降存在した十五宮家、皇族軍人たちの動向、新たな位置づけを求めた戦後の「皇室」を中心に、皇族の全貌を明らかにする。
    巻末に詳細な「近代皇族一覧」付。

    [ 目次 ]
    序章 十一宮家の皇籍離脱―伏見宮系皇族の解体
    第1章 近代皇族の誕生
    第2章 法制化される皇族―男系・傍系・配偶者
    第3章 謳歌と翳り―近代国家の成立期
    第4章 昭和天皇の登場―軍国主義の跫音
    第5章 戦争の時代
    第6章 皇籍離脱と新憲法
    第7章 天皇・皇族の戦後
    終章 これからの皇族

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    [ 参考となる書評 ]

  • この本は、明治維新〜現在までの、皇族についてかなり網羅的に書かれた本であって、おそらくあまり他にない目の付け所で、貴重な記録である。皇室ゴシップ的なおもしろさで読むことも出来る。

    我々は皇族というと、つい現在の天皇家を考えてしまうが、戦前は皇族の範囲はもっと広かった。彼らは特権を持っていたが、基本的に軍人になるという社会的な使命も負っていて、独特な存在で、それなりの影響力もあった。しかし、戦後の皇室典範の改正により、過酷な財産税も科せられ、臣籍降下される。その運命は興味深い。

    また、皇室に関する記述も多く、天皇の素顔を垣間見ることができる。天皇跡継ぎ問題についても言及がある。著者ははっきりとは書いていないが、女系への跡継ぎが可能であるような制度の見直しを支持しているように思える。

著者プロフィール

1952年東京都生まれ。静岡福祉大学名誉教授。立教大大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。国立国会図書館海外事情調査課非常勤職員、静岡福祉大社会福祉学部教授などを経て、現職。専門は日本近現代史。主な著書に『皇族 天皇家の近現代史』(中央公論新社)、『肖像で見る 歴代天皇125代』(角川新書)など多数。

「2019年 『幕末 志士の作法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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