孫の力: 誰もしたことのない観察の記録 (中公新書 2039)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020390

感想・レビュー・書評

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  • 猿の観察が専門の動物学者の孫娘観察記録。親という直接的な庇護者ではなく祖父という客観的かつ直近の子孫という目での観察は、もうメロメロに可愛いいだろうな。人間の社会的かつ生き物としての成長を観察することは自分の成育を追体験することに他ならない。人生の締めくくりの至福。
    メロメロジイジの時間をもてる人は幸いです。

  • 読み始めた途端、あまりに面白くてマズイ!と思った。
    早く先を読みたい。でも読みたくない。だって読んだら読み終わるじゃない。
    この恍惚の時間を手放したくない。だから日に日に読むペースが落ちる始末。結局読み終えるまで3ヶ月を要しました。(馬鹿)

    筆者はニホンザルやアイアイ研究の第一人者です。
    さすが研究者。観察が細かい。よくぞここまで書き留めた。いや書き留め続けた。なんと0歳から6歳までの膨大な記録と、そして考察です。

    「モリスの言うような無条件に『かわいい信号』があって、『幼児はその信号を備えているからかわいいのだ』というような動物行動学はエセである。」
    「イヌは命令―服従型だが、サルは命令―欺瞞型だと思うようになった(中略)禁止で赤ん坊が育つことはない(中略)人間はサルの仲間だから、禁止されると裏をかく方法を探す」
    「食卓のふちを伝い歩きしながら『あー』と赤ん坊が言う。新聞を読んでいた母親は、ほとんど無意識の様子で『あー』と答えた。聞いている私は驚く。それは、ニホンザルでは『鳴き交わし』と呼ばれている声のやりとりとそっくりだった。」
    「孫娘は坐り込んで、紙をばらばらと扱いながら、『うらうらうらうら』と何事か話し始めている。『意識化だ』と私はとっさに思う。」

    日常の些細な一コマが研究者の理性の目で輝き出す。
    でも理性だけではありません。

    「心は花のように開き」、「子どもは遊びを食べて育つ」。
    「ふくらむ心が始め出す表情を笑いと呼ぶのだろう。笑いをこらえるとき、体の中にはふくらむものが必ずある。」
    「なんと! 人は日々、自分を超えようとする動物なのだ。」
    「未来はすでにここに、孫たちとしてあるのだから。」

    研究者としての理性と祖父として深い愛情の見事な融合。
    決して人間の子育てを動物と比較した書ではない。命の物語を記した愛の書だ。
    読んでいるうちに孫が本当に欲しくなる。(自分の息子(2歳)は?)
    育児に悩み解決は大切だ。便利も自分時間も大切だ。でもそんなこと些細なことジャマイカ。何をさておいても子どもと関わりたくなる。育児書かくあるべし。

  • 猿の研究者である著者による、自らの孫(つまりヒト)が生まれてから小学校に入学するまでの『観察』の記録。

    動物学者だけに猿との比較もするのだけれど、孫の成長の様子がすごく生き生きと描写されていて、読んでいるこちらまで嬉しくなるように感じました。

  • 189 10/13-10/20

  • ほぼ半分を読んでいる途中です。
    思っていた以上に素晴らしい本だと思いました。

    まぁ・・・独身で子育て経験ゼロのオヤジに云われても説得力ないと思われますが・・・

    ただし、少子・高齢化が進んだ日本において、子育ては両親・祖父母だけでなく、地域を含めたおおらかなものである必要があるのでは?と感じている。

    もちろん、祖父母の代わりとしての、地域のオジサンオバサンの関わりの重要性だ。

    人類にとっての子育てとは、両親と子供だけの閉じた問題ではないということだと。

    本書の残りは大変興味深い!!!

  • 猿の研究者の「じいじ」の客観的かつ冷静な、孫観察日記。

  • 猿の観察が専門の動物学者の、孫観察日誌。0〜5才の保育園児の孫娘ちゃん、あの瞬間が重要な成長の証だったのか!と、我が事のように、楽しく読みました。観察の記録が専門的かつ愛情たっぷりでなごむ〜

  • [ 内容 ]
    ニホンザルにも孫がいる。
    しかし、サルのおばあさんは孫を特別な存在としてとくに意識することはない。
    だが、ヒトはちがう。
    孫と祖父母とのつながりには、単なる生物的な関係をはるかに超えた、社会的・文化的な意味が隠されている。
    本書は、ニホンザルやアイアイの生態を研究してきた研究者が、その手法でみずからとその孫を観察した貴重な記録である。
    かつて孫だった人、これから孫を持つことになるすべての人へ。

    [ 目次 ]
    1 ほほえみの生まれるとき
    2 心は花のように開き
    3 笑い
    4 新しい歌、新しい遊び
    5 遊びを食べて子どもは育つ
    6 恐怖とその克服
    7 心の枝は展がり
    8 「ごっこ」に夢中
    9 孫と祖父母
    10 心の香り
    11 彼方へ

    [ POP ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 平成23年1月27日読了。イヌは命令−服従型だが、サルは命令−欺瞞型だと思うようになった。
    人間はイヌではなく、サルの仲間だから、禁止されると裏をかく方法を探す。(P28)

  • 【書店】
    う~ん、終始一貫して単なる観察記録の域を出なかった。

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著者プロフィール

1946年下関市彦島生まれ。東京大学理学部卒。理学博士(京都大学)、マダガスカル国五等勲位シュヴァリエ、雑誌『孫の力』監修。1978年(財)日本野生生物研究センターを創設、主任研究員を経て、国際協力事業団(JICA)派遣専門家として2001年までマダガスカルに6年3か月滞在。アイアイなどを上野動物園に送り、2002年より日本アイアイ・ファンド代表としてマダガスカル北西部アンジアマンギラーナ監視森林の保護管理を行って、現在にいたる。2012年、ルワンダ共和国でマウンテンゴリラの名付け親となる(日本人初)。ANAグループ機内誌『翼の王国』にて阿部雄介氏とともに『日本水族館紀行』(2007~2012年)、『どうぶつ島国紀行』(2012年~)を連載。『はだかの起原』(木楽舎)、『親指はなぜ太いのか』、『戦う動物園』(編)、『孫の力』(3冊とも中央公論新社)ほか、著書、論文・報告書多数。

「2004年 『はだかの起原 不適者は生き延びる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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