物語エルサレムの歴史: 旧約聖書以前からパレスチナ和平まで (中公新書 2067)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020673

作品紹介・あらすじ

一九八〇年代、イスラエルが占領地でユダヤ人入植を推進した際、パレスチナ人がオスマン・トルコの土地台帳を根拠に所有権を主張すると、入植者たちは旧約聖書に記された神とアブラハムの契約を示したという-。ダビデら古代の王の事績から、イスラム教徒の統治と十字軍、二回の大戦とイスラエル建国、そして戦争と和平交渉が繰り返される現代まで、聖書の記述が息づく「聖地」の複雑な来歴を、エピソード豊かに綴る。

感想・レビュー・書評

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  • 物語 エルサレムの歴史
    旧約聖書以前からパレスチナ和平まで
    著:笈川 博一
    中公新書 2067

    おもしろかった、中東は複雑すぎて、1つの都市の歴史を追うぐらいで分かりやすのかなと感じました。

    エルサレムとは、宗教上の聖地であること以外では、たんなる地方都市にすぎない、農業が経済の基礎だった時代、ろくな水源もなく、山の上にあって本格的農業をする土壌にも貧しい
    歴史上は、超大国である、ギリシア、エジプト、メソポタミア=バビロン=ペルシャが、パレスチナを通過するときの小さな拠点の1つにすぎない

    旧約聖書とは、BC3世紀ごろまでのユダヤの歴史である

     ・モーセ5書=トーラー
     ・ダビデのカナン統一
     ・南北朝時代
     ・バビロニア捕囚
     ・捕囚からの帰還以後(BC3世紀ごろまで)

    エルサレムは、BC4000年くらいから人が住んでいる痕跡があるが、世界最古の都市は、エルサレムの東で、死海の近くにある、エリコという都市である。エリコは、BC9000年にもさかのぼることができる
    エルサレムが初めて歴史に現れるのは、エジプトで、侵攻を受けているので援軍を送ってほしいという、文書がのこっている。それが、ユダヤの者かどうかはわからない

    出エジプト記は、旧約聖書に残っているが、エジプトの歴史には、ユダヤ民族の移動はのこっていない。60万人が移動すれば、当時としては大事件であったにもかかわらずだ。
    ヨシュアに率いられたイスラエル人のカナン征服物語は大幅に誇張されているようだ。

    ダビデが、エルサレムを首都にしたのは、カナン平原のちょうど真ん中にあったから

    ユダヤの神は、すべて子音で、YHWHと称す、やがて神の固有名詞は、忘れ去られてしまった

    バビロン捕囚まで安置されていた、契約の箱は中身の十戒の石板とともに行方不明になった。

    ダビデの欠点は女色がすぎたこと、イスラエルの民はやがてくる、救世主は、ダビデの子孫であると思い込むようになっていく、そして、それは、ベツレヘムで生まれる必要があった

    BC922、統一王国は、南北に分裂した
    BC625、新バビロニア王国のネブカドネザルが大軍を率いて来襲した、運の悪いことに、イスラエルは、下り坂のエジプトの配下にはいってしまう
    交通が発達していない古代において、領域を統治するにあたっては、委任をするか、その地域の支配層を捕囚して自国の首都に連れてきてしまえば叛乱はおきない。
    バビロニア人は、カナン統治について選択したのは、後者であった、それをバビロン捕囚という
    捕囚の対象になったイスラエル12部族のうち、10部族は、やがて、バビロニアの文化に同化していった
    神殿を失ったイスラエル民族は、神に祈るというのは、持ち運びができる、携帯でできるようになった

    BC539年ペルシアがバビロニアに勝利して、ユダヤ人を解放した、ペルシア王キュロスは、ユダヤ神殿の復興を赦す(第2神殿)とともに、ユダヤ人の帰還をゆるした
    エズラ記、ネヘミヤ記はこのころのユダヤ民族を描いている

    ヘロデが統治していたユダヤはその後叛乱を起こす、AD70年。ローマ軍は、これを焼き払ったとある、亡くなったのは、110万人
    130年ハドリアヌス帝治世下に、ユダヤの大規模叛乱が起きた。58万人のユダヤ人が殺害されたが、ローマ軍の損害も大きかった

    638年、ムハマンドが現れて、イスラム教が伝播していく
    691年、ウマル朝がエルサレムを制圧して、ユダヤ神殿のあとに、モスクを立てる
    1099年~1187年 十字軍がエルサレムを席巻、ビサンチンの影響も受ける
    1187年 サラディンがペルシア軍を率いてエルサレムに入城、ユダヤ人は、捕囚から救ってくれたペルシア軍を歓迎し、キュロス王の再来と称えた

    1516年 オスマントルコのセリム1世がエルサレムに無血入城
    1799年 ナポレオンがエジプトからパレスチナを通過、そのきっかけで、エジプト王ムハマンド・アリが、エルサレムの近代化を始めた
    1914~1918第一次世界大戦で、オスマントルコは、滅亡。中東は、3つの協定で分割翻弄されることになる
     ①マクマホン書簡
     ②バルフォア宣言
     ③サイクス・ピコ協定

    1947~1967 英国が統治機能を失い、中東は混乱の中にほりこまれる
    エルサレムは、ヨルダン王国に組み込まれる
    1967年 イスラエル軍が、エルサレムを急襲、以後、現在まで、エルサレムは、イスラエルの統治下にある

    目次
    第1部 諸王国の興亡
     1 BC1000年まで
     2 BC1000年~BC925年まで ダビデ、ソロモンの統一王国時代
     3 BC922年~BC720まで 南北朝時代
     4 BC539~AD70まで 第2神殿
     5 70年~614年まで ローマ、ビサンチン時代
     6 614年~629年まで ササン朝ペルシアによる征服
    第2部 イスラム興隆の中で
     7 638年~1099年まで 第1次イスラム時代
     8 1099年~1187年まで 十字軍時代
     9 1187年~1516年 第2次イスラム時代
     10 1516年~1917年まで オスマン・トルコ時代
     11 1917年~1948年まで 英委任統治時代
    第3部 イスラエル建国ののち
     12 1947年~1967年まで ヨルダン王国時代
     13 1987年~2010年まで イスラエル建国ののち
    あとがき

    ISBN:9784121020673
    出版社:中央公論新社
    判型:新書
    ページ数:328ページ
    定価:880円(本体)
    発売日:2010年07月25日

  • 着眼は素晴らしいし著者は博識で現地での実体験も多く、いい本になりそうなんだけど、文章に難がありすぎる。
    主語がはっきりしない文が多い。話題がいつの間にか変わる。読者に提示済みの情報と新情報との切り分けができてない。実にもったいない本だ。

    図さえもときどき意味不明だから、この著者はたぶん根本的に「説明する」ってことに向いてないんじゃないかな。その博識と体験だけで絶対的な価値なんだから、もうゴーストライター立てるか、さもなきゃ共著で書いてほしい。
    と、読んでいてつくづく思ってしまった。

  • 今月、米国が大使館を移したエルサレムですが、古代以来今世紀に入るまでユダヤ人の街とは言えなかった歴史をひもとく一冊。
    その苦しんできた歴史と、今の軍事力を持って抑えつけている姿の違いに、解決できない国際問題の根深さを感じずにはいられません。

  • 著者の笈川博一氏は、東京教育大(現・筑波大)卒業後、エルサレムにあるヘブライ大学に留学し、同地に25年在住した中東近代史の専門家である。
    私は、本年1月にエルサレムを1週間ほど一人で旅をするにあたり、この街の、長く、複雑な歴史を知るために本書を手に取り、旅にも持参した。
    エルサレムという街は、世界でも極めて特異な街である。古代の重要な街道からは外れ、標高800mの岩だらけの丘陵地に広がり、水の供給にも問題があるため、農業生産力も決して高くない。即ち、地理的にも経済的にも不利な立地条件にあり、それ故に、歴史上の大部分の時間、一国家の首都ですらない単なる地方都市に過ぎなかった。にも拘らず、21世紀の今日において、世界で最も影響のある街のひとつと考えられるのは、言うまでもなく、3宗教の聖地だからである。旧約聖書の宗教がユダヤ教に発展し、それがキリスト教を生み出したが、その2つの一神教の連鎖がエルサレムを中心にして起きたのである。また、アラビア半島で生まれたイスラム教においても、ユダヤ教、キリスト教から強いインスピレーションを受けており、精神的にエルサレムを母胎としていると考えられ、現在は第3の聖地とされている。
    本書では、そのエルサレムの3千年の歴史を、聖書の時代から解説しているが、特に、オスマン・トルコによる統治以前の記述は圧倒的に詳しく(イスラエル全般やパレスチナ問題を扱った新書も読んだが)、この街の歴史に、いかに様々な国(王朝)、人種・民族、宗教が入れ替わり立ち替わり関与してきたか、そして、それ故に現在のエルサレムがこれほど多様で複雑なのだということが理解できる。
    また、エルサレム(やマサダやベツレヘム)に残る史跡に関する歴史が詳しくわかり、旅のガイドとしても大変役に立った。
    著者は、現代のエルサレムについて、「通りを一本隔てると、そこでは言葉がちがい、文化も暮らし方も、暦すら異なる。お互いに通りの向こうを猜疑心なしには見られない。・・・ユダヤ人住民はパレスチナ人をテロリストと呼び、パレスチナ人にとってのユダヤ人は圧制者だ。・・・ありとあらゆるキリスト教の宗派がそろっており、司祭たちはそれぞれ特徴のある僧服で、別々の言葉で神を賛美する。夕方になれば、数知れぬモスクのミナレットからアッラーに祈りを捧げろとのアザーンの声が響き渡る。町全体を統一するハーモニーは存在しない」と語っており、私が実際に滞在して見聞きしたことも概ね同様であった。しかし、一方で、ユダヤ教の聖地・嘆きの壁でも、キリスト教の聖地・聖墳墓教会でも、イスラム教の聖地・神殿の丘でも、穏やかで平和な時が流れていたことは事実であり、エルサレムの人々は“平和を望む”という一点を共有することにより、過去を乗り越えようとしているのではないかとも思えたのである。
    現代世界の縮図とも言えるエルサレムを知るために、一読の価値のある一冊である。
    (2017年3月了)

  • 笈川博一. 2010. 物語 エルサレムの歴史:旧約聖書以前からパレスチナ和平まで. 中公新書(2067)/中央公論新社.

  • 東2法経図・6F開架:B1/5/2067/K

  • 複雑怪奇すぎる。
    ユダヤ教、キリスト教、イスラム教
    元を辿れば同じなのに争い
    それぞれの宗教の中で宗派を作って争う。
    そこに民族、文化、国家という枠組みが存在する。
    争いの歴史の中で何が正しかったのか
    わからないが、民衆はただ生きていくための
    選択をしていかなければならない。
    助けられることもあるが、
    弊害になることもある。

    本書は聖地エルサレムを巡る歴史である。
    ローマ帝国、オスマン帝国、アラブ諸国、
    十字軍にレバノン戦争、湾岸戦争、などなど
    いろいろな出来事がこの聖地中心に起こり
    今のイスラエルとパレスチナの紛争にたどり着く。
    今後のこの地域で何かある時に
    本書で得た知識がどう影響するのだろうか。










  • 2千年以上前からの確執、それぞれの思惑が入り乱れ、入り組んでいて難しい問題。

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    この本は現代イスラエルの歴史というよりもユダヤ人がどのような歴史を歩み、イスラエルという国家が誕生したのかが書かれている。
    このため大部分はユダヤ教の歴史に近い内容となっており、時代毎に有力国家に翻弄される歴史だったのだと感じた。

  • 本書は以下のような三部構成となっている:

    第Ⅰ部→紀元前からペルシャ時代まで,旧約聖書の吟味を含む。

    第Ⅱ部→イスラム時代からWW2まで,支配者の母体の変化を手早く確認。

    第Ⅲ部→ヨルダン王国を経てイスラエル時代(2010年)まで,著者のヘブライ大学留学でのルポともとれる。

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著者プロフィール

1942年東京生まれ。1970年,東京教育大学文学部大学院修士課程修了。専門は古代エジプト言語学,現代中東学。イスラエルに25年間在住。ヘブライ大学,時事通信社勤務を経て杏林大学教授。著書に,『物語エルサレムの歴史』(中公新書)など。

「2014年 『古代エジプト 失われた世界の解読』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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