- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121020710
作品紹介・あらすじ
ガウディ、ピカソ、カザルスら多くの芸術家を育んだバルセロナ。地中海貿易で繁栄したこの都市は、一六世紀以降、マドリッドの中央政府から抑圧を受ける。だが一九世紀、産業が発展、セルダによる大胆な都市計画のもと独自の文化が開花し、カタルニアの中心地として独立を志向していく。本書は、スペイン国家の中で、王制、内戦、フランコ独裁を経ながら、芸術・文化・スポーツを育み、新しい「かたち」を模索する都市を描く。
感想・レビュー・書評
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前回読んだ「物語 バルセロナ」が中世中心だったのに対し、本書では近代にかけて、1992年バルセロナオリンピックあたりの歴史も描かれており街の都市開発の歴史がよく分かる本だった。キーワードは「囲壁都市」。バルセロナに行ったら是非歩きながらその歴史を感じたい。
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1986年バルセロナ出身のサマランチはIOC会長の立場で、
「1992年オリンピック開催都市は”バルセロナ”に決定しました」
とにこりともせずゆっくりと伝えました。
この瞬間のバルセロナの人々の喜びようは尋常ではありませんでした。
バルセロナに決まったことを喜んだだけではありません。
サマランチは、しっかりしたフランス語でメッセ―ジを伝えながら、
固有名詞のバルセロナだけは、フランス語読みでもなく、スペイン語読みでもなく、
カタルニア語読みで発音したのでした。
この本は先日読んだ『物語カタルーニャの歴史』の続きと言っていいかも。著者はちがうけど。そちらは中世中心で、こちらは近現代です。
著者の岡部明子さんは東大大学院の工学系をでられたかたで、都市計画や建築を専門とされているらしく、その件になると難しくてチンプンカンプンになります。
でも歴史やスポーツの話、芸術家、ガウディやピカソやカザルスなどもいて、面白かったです。
バルセロナは「スペインの都市」であるより、「地中海の都市」そして「カタルーニャ人」であることにアイデンティティを持っていると思います。
バルセロナに行ってみたい。カタルーニャ料理をいただきたいです。 -
バルセロナシティの歴史でありカタルニアの歴史
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バルセロナで暮らすにあたり手に取ったが、とても興味深く読み進めた。あとがきに「バルセロナをあたかもひとりの人物であるかのように描きたい」とあるように、視点にあったかさが感じられたからかな。
あの街に住んでみようと遠く日本からでも思えるようになった現代に生きてることを、改めてラッキーと思う。 -
【読書その94】大好きな待ち、スペイン、バルセロナ。その甘い思い出を思い出そうと手に取る。しかしながら、ドストエフスキーモードの自分にはあまりしっくりこない。
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バルセロナの魅力はその設計にもあります。芸術文化を受容しつつ多難を克服した地中海都市の底力は想像を越えたものです。
バルサやガウディ、ピカソを好む人にも。
九州大学
ニックネーム:天神(あまがみ)ルナ -
縁あって数回にわたり訪れている街、バルセロナ。
ゴシック建築にガウディ建築、意外に広く静かな地中海、新鮮な素材が手に入る豊富な市場。今のバルセロナは少しずつ分かってきた。
しかし、この本を読んでいて、たどってきた歴史とそこから生まれた今につながる物事に、歴史の迫力を感じた。
著者は同年代の方。相当な知識とそれをささえる情報収集力を感じる仕上がり。新書にもかかわらず、なんども読んでしまい、その度にバルセロナ旅行へと駆り立たせられる。 -
日本人ほどバルセロナが好きな外国人は他にいないと思うが、その日本で一番新しい入門書。
建築の専門家が社会や政治に目配りして都市の歴史を語る ―というと「またか」と思ってしまうが、読んでいると類書とはどうも違う印象を受ける。
おそらく「ふつうの人たちの生活」が念頭にあるからだろう。
19-20世紀の都市改造も、一般労働者の日常生活を心地よくするため、建築家たちが具体的な生活空間を懸命に考えた軌跡を追う。
上から目線で設計された花の都パリ、理念の影絵のような闘争に没頭する先進国の社会主義者たち、いずれとも違う。一歩距離を置く。
生活と政治が具体的なスペースの中で結びついている。文化のための文化、アートのためのアートではない。私的な生活空間の中でちょっと奇抜なことをしたところで、そんな気どった自己満足は白い目で見られるだけなのだろう。
よくいわれる地中海都市の特徴を、はじめて実感できたような気がした。