チョコレ-トの世界史: 近代ヨ-ロッパが磨き上げた褐色の宝石 (中公新書 2088)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 112
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  • Amazon.co.jp ・本 (225ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020888

感想・レビュー・書評

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  • タイトルのおもしろさに惹かれて手に取ってみた。チョコレート好きなのも理由の一つかも。現在のチョコレートになるまでの過程を、様々な歴史的背景と交えて知ることができた。チョコレートがこんなにも歴史と深く結び付いているとは思いもよらなかった。

  • 堅い本は苦手。チョコレートが大好きなので、面白いとは思っているのですが。

  • S588.34-チユ-2088 300134624

  • 『<a href="http://mediamarker.net/u/akasen/?asin=B00H1GYY1C" target="_blank">リンカーン</a>』を観て、ふと思った。何故奴隷解放に至ったのだろうかと。勿論現代の視点でいえば、人類は神の前でも法の前でも平等に扱われるべきであるということは当たり前に理解できるが、奴隷制は紀元前より2000年以上続いたシステムだ。裕福で余暇がある文化人がいたローマ・アテネだろうが、暗黒の中世ヨーロッパだろうが、躍進と飛躍の大航海時代だろうが、奴隷は常に存在した。いや、むしろどの時代の文化も奴隷制度によって成り立っていたと言っても過言ではない。そんな社会基盤システムが、ただ非人道的だという理由で終わらせられるものだろうか。『<a href="http://mediamarker.net/u/akasen/?stg=title&word=%E3%83%A4%E3%83%90%E3%81%84%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6&st=regdate" target="_blank">ヤバイ経済学</a>』でいうところのシステムとしてのインセンティブが、どこかにあったのではなかろうか。本書では、その答えというほどそのものズバリではないが、理由の一端が垣間見える。なぜならチョコレートの歴史こそ、欧州の植民地政策と資本主義の形成に密接に関わっているからだ。
    マヤ以前のメソアメリカ文明の時代から登場し、神々の食べ物として崇められていたカカオは、16世紀のスペインの支配により、欧州に普及するようになった。そして17世紀。拡大するカカオの需要に対応するため、アフリカから奴隷貿易で連れてこられた人々の労働力により、プランテーションでの栽培が本格化する。ベネズエラでスペインが、カリブ海諸島でフランスが、トリニダード島でイギリスが、キュラソー島でオランダが、ブラジルでポルトガルが、さらには生産拠点を南米からアフリカにまで拡大した。各国の植民地で栽培されたカカオは、欧州に運ばれてからココア・チョコレートに加工される。18世紀には家内制手工業だったが、産業革命により加工方法は先鋭化され、工場制手工業、工場制機械工業と移り変わり、加工業者の資本を形成するに至った。ここで対立するのが、植民地での奴隷による穀物生産を担う保護貿易派と、国内での加工業者である自由貿易派。保護貿易により、輸入穀物には高い関税がかけられるので、国内の穀物価格は不当に高止まり、加工業者の生産の担い手である国内労働者の賃金に直接影響する。この時既に保護貿易派は奴隷の濫用による人的資源の枯渇、それに伴う奴隷卸売価格の上昇、生産量増大による産物の価格低下などの影響で力が弱まりつつあったところを、産業革命の後押しにより成長著しい自由貿易派が止めをさす形で19世紀、欧州各国で奴隷貿易が廃止されるに至ったということだ。
    と、思わず個人的に気になったところのみを厚く取り上げてしまったが本書の主題はそこではなく、広告戦略、クエーカー教徒との関わり、工場労働者の環境改善、戦地でのチョコレートなどなど幅広く取り扱っている。誰が読んでもとっかかれるところはあると思うので、こういう特殊解から学びを進める順序こそ、オススメしていきたい次第。

  • カカオからチョコレートやココアが誕生し、庶民の口に運ばれるまでが世界史として書かれている面白い本
    何と言ってもイギリスの日本にはないキャッチコピーがイイね

  • 今のチョコやココアからは想像ができない昔のチョコとココア。
    普段食べているチョコやココアは試行錯誤の末にできたもの・・
    世の中にチョコを広めた人に感謝ですね。
    今もココアやチョコは身体に良いと聞くけれど、昔の効果と比べたら微々たるものだろうね。
    しかも糖分を摂りすぎる可能性も否めない。

    カカオやカカオを使った製品は時代の変化に翻弄され
    大きく反映されてきた。
    戦争にも負けなかったカカオは凄い

    だが現代っ子には昔のココアが全く美味しそうに感じないんだ。

  • とてもおもしろかった。
    本の中心にあるのはキットカット。キットカットの歴史は、それを生み出した Rowntree 社の歴史であり、それはイギリス福祉の歴史であり、それはクエーカーの歴史であり、三角貿易から自由貿易への歴史であり…という感じで拡がっていく。
    拡がっていく、というのは読み終えてから見返した時の視点であって、それは著者が後書きに書いているこの本を書くに至った発端からの発展ではあるけれども、本自体は紀元前からカカオが人間とどう歩んできたか、どうキットカットに至るのか、というような構成になってる。キットカット奥が深い。

  • フグやナマコなど、最初にこれを食べた人間は勇気があるとか語られたりする。それらとは別方向で意味不明な食べ物といえば私ならチョコレートを挙げる。複雑怪奇な製造法や産地と製造国の不一致など、お菓子の代表格としてでかい顔をしているが相当に不思議な食べ物である。
    本書は本来アメリカ大陸で薬や疑似貨幣として扱われていたカカオがヨーロッパで菓子として市民権を得るまでとイギリスの産業社会の発展と寄り添ったチョコレートの歴史を紹介している。
    カカオにとっては砂糖と紅茶がまさに運命を変えた出会いとなったが、奴隷制や植民地政策と密接なそれら作物との関係を思うと業が深い食べ物だと感じる。

  • カカオがアステカ文明で珍重された話や、三角貿易に組み込まれていたあたりの話には目新しさはなかったが、
    その後の話が面白かった。

    十九世紀後半、労働者に必要なカロリーを、アルコールに代えて、砂糖、つまりはココアやチョコレートで摂るようになったこと、
    イギリスのチョコレート業者がメソジストを中心に発展したこと、
    メソジストが社会貢献に熱心なため、労働者の教育やモチベーションに配慮したチョコレート工場が経営されていたことなどが、興味深かった。

    後半、
    そのメソジストのチョコレート会社、ロウントリー社で考案されたキットカットについて、長く書かれており、あまり好きな味ではもないのに、食べたくなった。

  • 近代化とチョコレートの結びつきは、面白かった。キットカットの話が意外と分量多いw

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著者プロフィール

お茶の水女子大学文教育学部卒業、東京都立大学大学院社会科学研究科(博士課程)修了、博士(社会学)。武蔵大学社会学部教授。専攻は都市社会学、地域社会学。著書に『瀬戸内海離島社会の変容』(御茶の水書房)、『もんじゃの社会史』(青弓社)、『質的調査データの2次分析』(ハーベスト社)、『マニラへ渡った瀬戸内漁民』(御茶の水書房、第2回日本社会学会奨励賞受賞)など。

「2010年 『温泉リゾート・スタディーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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