物語 食の文化 - 美味い話、味な知識 (中公新書 2117)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021175

作品紹介・あらすじ

長く人類はまずいものを繰り返し食べてきた。「美味しいものをお腹いっぱい食べたい」という欲求が強いのも無理はない。美味、珍味の探求は世界の人々の日常行為となっており、たべものへの関心は高まり続けている。本書は、食材、調理法、食事のしきたり、さらに各地各時代の食文化などを広く紹介するものである。味覚の満足、心躍る会食、そして健康増進のために、たべものについての正確な知識は欠かせない。図版多数。

感想・レビュー・書評

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  • 世界中の食文化、食材、食べ方に至るまで幅広く網羅されており、飲食文化学の導入として非常に心強い一冊。細かな食材や言葉に関しても起源まで書き留められていて、読み応えは十分。

  • 食と健康について世界的にも関心が高まっており,この分野に興味のある学生も多いだろう.本書は世界中の食材,調理法から作法や文化まで図を多用し詳しく解説した辞典的な良書である.著者は本学名誉教授の北岡先生である.

  • 素材や料理から食器など周辺の食文化まで、古今東西を網羅する。なんでもマッチョに言い切る文体が素敵

  • 2011-6-25

  • 新書文庫

  • S901.3-プリ-053 000499251

  • 第5週 2/8(水)~2/14(火)
    テーマ 「食」

    ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00168044

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号:383.8//Ki72

  •  本書の挿絵として、1930年にフランスで出版された『パリのレストラン』内の挿絵で、19世紀初頭のパリでもっとも繁盛したプロヴァンス兄弟の店を描いたものが掲載されている。フランス革命の結果として、ディナーというものが宮廷や城館を飛び出して、街角に進出するようになった時代の図である。画面右側にはシャンパングラスをもったブルジョワ紳士が、テーブルの下で足を組んでいる。そしてこの、椅子に座って足を組むという行為にも歴史があるのである。
     ところで、私が学生時代に習ったヨーロッパ出身のとある女性語学教師は、映画の趣味ではカイエ派だったようだが、食事マナーではひどく厳格な印象を受けた。彼女は、食事中に足を組むクセをもつ日本女性の多いことに、ずいぶんとおかんむりであった。「足を組んで食べるのは、ヨーロッパでは売春婦だけです」と先生はため息をついたものだ。
     そして今日の東京。ランチをとりにレストランやビストロを訪れると、べつだん見るでもなく目に入ってしまうだけだが、女性客のほぼ全員が足を組んで食事をしている。白人女教師の憤りもむなしく、足を組んで食べものを頬ばることはもはや、日本女性のデファクト・スタンダードとなった感がある。とはいえ語学教師の憤りに同感を表明することは、全日本女性を敵にまわすことになるだろうから、丁重に辞退しておこう。
     おそらくデファクト・スタンダード化の原因のひとつは、ミュールの流行であろう。ヒールが高いうえに、かかとと外側にホールド感のないミュールという履き物は、椅子に腰かけた際、両足と床との接点に安定性を欠くため、いっそのこと王貞治のようにフラミンゴの要領で一本足となった方が、逆に重心を保てるわけである。ただし、ヨーロッパ諸都市の状況を眺めてみるならば、語学教師の憤りのほうに分があるように見えるのだが。

     マナーの話は私も他人をあまり笑えないので、足組みの話はこれくらいにする。とにかく「食」というものはタテヨコの拡がりをもっている。地域的な拡がり、歴史的な拡がりである。それは、万巻の書によっても書ききれぬ厚みを有する。
     ところが、新書というもっともお手軽な形式でそれをやってしまった無謀な書が出たのだ。御年86才を迎える京都大学出身の農学者・北岡正三郎の著した『物語 食の文化』(中公新書)である。これは奇跡の本であり、有袋動物のようなおそるべき巾着のような拡がりをもつ。かつて拙ブログにて、〈小百科〉というジャンルへの愛を表明したことがある。上に例を挙げたような「女が足を組んで物を食べること」というような事象に興味が湧いた場合、小粒な文字がびっしりとつまった『物語 食の文化』という〈小百科〉は、凡百のグルメガイドが到底達することのできない知恵を読み手に授けてくれるのである。

     この偉大な新書に対し、ひとつだけ重大な不満を述べなければならない。2011年6月25日付で発行された本なのに、大震災についてまったく言及がないのは、いくら関西の老人が書いた本だとはいえ、決定的な欠陥である。もし第2版が出るならば、最終章は書き換えられるべきである。レベル7の原発事故の起きてしまった国土における食のあり方(もしくは、食の不可能性)を、電源権益にあずかる勢力の強弁的な世論工作から引き剥がすことが、こうした本の著者の責任と考えられないだろうか。
     保守派マスコミは依然として電源権益の片棒を担いでいる。「風評被害」などという陳腐な語は、せいぜいFUJIYA事件や毒入りギョーザ事件程度に使われるべきものであって、原発のメルトダウンが発生した今となっては、単なる死語だろう。もっとも、読売の軍門に下った中央公論の出す新書に、そこまでの見識を求める私のほうが愚かなのかもしれない。

  • 一つ一つは浅いし、歴史的にはどうかと思うところもありますが、ハンディなタイプで、ここまで書いてあるものは少ないので、食べ物の蘊蓄や歴史を調べたりするときには、重宝しますね。

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