気候変動とエネルギー問題 - CO2温暖化論争を超えて (中公新書 2120)

著者 :
  • 中央公論新社
3.96
  • (20)
  • (14)
  • (8)
  • (4)
  • (2)
本棚登録 : 170
感想 : 34
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021205

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 原発は省CO2、温暖化対策だ、という話をよく目にした。震災後もしばらくはそういう言説が目立っていたけど、いつの間にかコストの話に入れ替わって、そして政治の取引材料の一つとして収斂している。
    科学と政治の関係は、この本が糾弾するクライメート事件の渦中の一人、ブラッドレー(謀議の中心ではないようだ)の「地球温暖化バッシング: 懐疑論を焚きつける正体」は、そういう点で面白いが、やはりCO2だけを悪者にしてよいのかという疑問は残る。論争を超えて、とはいうけれど、やはり表と裏のような本である。
    ともあれ、最後に著者は、温暖化対策費をすべて災害復興に向けよ、と訴える。僕もそう思う。

  • いわゆる懐疑派の主張ですが、なかなかに説得力がありました。論争に関してはどうとも言えませんが、エネルギー問題についてなど勉強になりました。

  • IPCCのスキャンダルを平易に紹介し、盲目的な温暖化問題を疑問を呈する。気候変動の「科学的根拠がある」要因の一例として、宇宙線が与える気候変動への影響を解説している。(原子未満サイズの宇宙線が、分子以上のサイズの雲に関係するのは不思議な気がしたが、つまりは地球の大気圏全体が巨大な霧箱と思えば納得もいく)
    ただし、この宇宙線の話が本書の真意ではない。公正で客観的な姿勢を欠いて、CO2のみを悪者に導いた科学界への警鐘として受け取るべきだ。ただ、CO2が悪者扱いされるに至った経緯を見るに、単に科学者のモラル・ハザードと言い切るのもちょっと厳しく、そこには政治力学や経済原理が絡まった現実を認めざるを得ない ---- だからこそ科学の姿勢が重要になるのだが。。。そうした俗世構図の延長に、CO2問題とエネルギー問題(要は原発)のもたれあいがある。化石燃料vs核燃料という二元論的な視点を避けるべく、現在のエネルギー源と将来のエネルギー源候補についての前広な解説にも多くの紙面を割いている(ただし解説すべき事項が多すぎるので、それぞれ記述はちょっと物足りない感あり)。
    某大国が京都議定書にサインしない「客観的な」理由のひとつがわかったのは、本書の大きな収穫だった。

    かつて、太陽が地球を回っていた頃、科学の対立項は宗教だった。21世紀の科学の前には、政治や経済という壁が立ちはだかっている。数百年経て、科学と宗教は共存と棲み分けができるようになった。次の世紀には政治経済と科学が共存共栄が可能になって欲しい。そう思った一冊。

  • 環境・エネルギーに興味がある人は読むべき!研究者ならではの深い視点がいい。

  • 1章の気候変動に関する分析は良い。環境問題への反省も含めて一読の価値はある。
    2章以降のエネルギー問題の提言等は、現状においては、必ずしも地に足の付いた議論とは言いがたいが、研究者という立場としては普通の構成だろう。勿論技術的なブレークスルーに過度に依存するのはあまりに危険だが、さりとて枯渇する資源利用に固執しなければならない理由など無いのだから、研究は尊重すべきだ。
    もっとも、クライメートゲート事件を通して、学術研究にすらバイアスが大きくかかりうる事が明るみに出た以上、これから環境問題を考えていく上で求められるのは、専門家ではない我々の判断の成熟さかもしれない。

  • 地球温暖化現象を、二酸化炭素を原因とする説に疑義を唱え、宇宙線の変動が原因だという説とその裏付け、古代の気象変動をどう調べるかといった話から、ボトリョコックス(本文まま・Botryococcusなので「ボツリオコッカス」と読む方が一般的らしい)という油を生成する藻の話、最近のニュースで話題になった核融合の話など、かなり幅広い分野にまたがった話で大変興味深かった。

    地球温暖化が宇宙線の影響っていう話はおもしろかった。銀河の公転速度より太陽の移動速度の方が早いので、銀河の星が密集している"腕"の部分を太陽が通過する。星が密集しているところは超新星爆発が起こる可能性が高いので、宇宙線の量も多い。その周期と、地球の温暖化~寒冷化の周期がほぼ一致するとかね、もうなんかスケールが凄い。

  • 二酸化炭素は地球温暖化の重要な要因ではない、その他の重要な問題から目をそらすための施策である。重要になってくるのはエネルギー問題と財政問題である。という説。

  • 温暖化二酸化炭素原因説は本当か。かねてから僕の頭にある疑問です。
    僕は、たかだか0.038%の大気中の二酸化炭素がそれほどの気候変動を引き起こすことを理解できずにいます。
    それよりも、ヒステリックとも思えるほどの「エコ・キャンペーン」が嫌でしょうがなかった。

    この本の著者は、温暖化を引き起こしている主たる要因は二酸化炭素以外にあると述べています。
    例えば、宇宙線の量。
    二酸化炭素濃度と気温変化がリンクしていないことも指摘しています。

    2008年に開かれた洞爺湖サミットのとき、17基の原子炉の契約が成立したとか。
    一体、IPCCとは何なのか。
    今や地球温暖化問題すら、経済に組み込まれているのでは??
    と思ってしまいます(というか、僕はそう思っているのです。その確証が欲しくてこの本を読んだのでした)。

  • 「二酸化炭素の削減」を優先目標にするのは間違い。
    今必要なことは、省エネと新エネルギーの開発。

  • IPCCは、この気温急上昇が人間活動のもたらした大気中二酸化炭素の増加によるものとして、地球温暖化抑制のキャンペーンを始めた。
    IPCCは1988年に世界気象機関と国連環境計画によって設立された国連の組織で、本来、研究機関ではなく地球温暖化に関する科学的、技術的、社会経済的な評価を行ってその知見を世界の人々、特に政策担当者や政治家に伝えることを目的とする広報機関である。

    IPCCは第5次報告書を作成することになっている。
    IPCCの登場は冷戦終了と同じ時期。
    IPCCのモデルは過去100年間の気温上昇をすべて二酸化炭素によるものとしたために、二酸化炭素による気温変化を過大評価することになってしまった。

全34件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1934年千葉県生まれ。東京大学理学部物理学科(地球物理学専攻)卒。同大学院数物系研究科博士課程修了。理学博士。専攻は金属物理学、とくに金属-水素系の物性と材料科学。現在、中央大学名誉教授、物質構造科学研究所・東京大学生産技術研究所客員研究員。著書に『拡散現象の物理』(朝倉書店)、The Metal-Hydrogen System(Springer)、『気候変動とエネルギー問題』(中公新書)、『水素と金属』(共著、内田老鶴圃)、『物理学大百科』(共監訳、朝倉書店)などがある。

「2015年 『地球はもう温暖化していない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

深井有の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
クリス・アンダー...
ヴィクトール・E...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×