新自由主義の復権 - 日本経済はなぜ停滞しているのか (中公新書 2123)
- 中央公論新社 (2011年8月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121021236
感想・レビュー・書評
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提示されている政策の狙い・目的についての理解はしやすかったが、多くのものが日本の慣行を変えるものであり、その実現は容易ではないと感じた。
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新自由主義の立場で考えてみよう。
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タイトル通り、「新自由主義とは何か」を書いた本。
この主義の本質は世間で批判されるような「格差拡大の主犯」ではなく「市場を最大限に活用し、パレート最適(他人の効用を低めない限り、自らの効用や生産を高める余地が全くない状況)にする。その結果、社会の富を生み出す企業や個人を最大限に認め、その成果を不遇な人々に状況改善に充てることができる。」と主張する。
戦後や最近の政治経済はもちろん、日本の経済史、雇用問題、環境、保育、介護・医療など幅広く取り扱っている。コラムでは経済古典も扱う。
「上記の新自由主義の視点からどのような政策が提案できるか?」その点も新書の割に、具体的で深く掘り下げられていて非常に興味深かった。新自由主義という軸がしっかりしていてどの分野の政策案も論理が全くぶれてなかった。かなりスパッと明快。批判点も多くあるようだが、この明快さが本書のまた一つ魅力となっているのかもしれない。
失われた"20年"を30年にしないためには、市場をフル活用し、政府がそれを整えていく必要がある。
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今ある政策やそれに関する情報に対する違った見方から行われる批判や考察が素晴らしい
国内視点だけでなく国外からの視点も踏まえている -
悪しきものとされる新自由主義の立場から、現在の日本が抱える経済問題について、解き明かし、その道筋を示す。新自由主義は悪だという書籍が多く出版される中、この立場から解決策を導こうとするのは貴重であると思う。
理論的には明快でわかりやすかったが、注意すべきは理論は現実と必ずしも一致しないこと。新自由主義の立場であれ、違う立場であれ理論的にナンボきれいにまとまっていても、現実とことなっていては意味がない。その点で、どちらの考えに立脚した選択肢を取るかは論点ごとに異なると思うし、慎重な検討が必要であろう。 -
リーマンショックでトラウマ化した「新自由主義」的な思想・政策についての世間的な誤解を解いて、改めてその有効性を再提起する内容であり、これと異なる政策を採って行き詰っている現政権下における政策的な議論に一石を投じる内容だと思う。
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新自由主義は市場原理主義ではなく、市場を有効に活用していく手段である。そのためには、政府の適切な政策や規制緩和が必要であり、それは震災からの復興や今後の日本経済の成長にも繋がる物である。
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素晴らしい指摘がたくさんある。もっと早く八代さんの本を読んでおけばよかった。
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新自由主義的考え方は、既得権益を持つものたち(組合なども)に不利。
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「日本の伝統を壊した」「格差を拡大させた」「強者の理論」との批判にさらされ、小泉政権以後最も嫌われている経済思想といっても過言ではない新自由主義(neoliberalism)であるが、その主義の本来意図するものは「市場原理主義に基づく『弱者の切り捨て』」でもなければ単なる「自由放任」でもなく、「一定の枠組みの下で、個人や企業が利益を追究する仕組みを活用する方が、社会的に望ましい結果をもたらす」、そのような「不特定多数の人々の利益を最もよく調整できる市場を最大限に活用するための、政府の役割を重視する」思想であることを日本経済史、サブプライムローン問題の事例などを引き合いに力説した。それを踏まえて具体的な政策立案にまで言及している点が評価できる。