経済大国インドネシア - 21世紀の成長条件 (中公新書 2143)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021434

作品紹介・あらすじ

リーマンショック後の二〇〇九年秋、欧米の格付け会社が、インドネシアの持続的成長能力と財政的安定を評価し、国債の格付けを引き上げた。以来、インドネシアの有望性は世界が注目するところとなる。二億四〇〇〇万近い人口と豊富な資源を背景とした潜在的な国力は、二〇〇四年、ユドヨノ政権になって以降の政治的安定によって、さらに強固な成長要因となっている。中国、インドに続く"アジアの大国"のこれからを展望する。

感想・レビュー・書評

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  • (「BOOK」データベースより)
    リーマンショック後の二〇〇九年秋、欧米の格付け会社が、インドネシアの持続的成長能力と財政的安定を評価し、国債の格付けを引き上げた。以来、インドネシアの有望性は世界が注目するところとなる。二億四〇〇〇万近い人口と豊富な資源を背景とした潜在的な国力は、二〇〇四年、ユドヨノ政権になって以降の政治的安定によって、さらに強固な成長要因となっている。中国、インドに続く“アジアの大国”のこれからを展望する。

  • 今度は経済の面から見た時のインドネシア。外資、華人、地元民など資本が入り乱れている様子など、興味深い。変わりつつあるというのが、キーワード。

  • インドネシア経済の専門家によるインドネシア経済論。インドネシアが今後経済的に有望であることが論理的に述べられている。インドネシアの学生論文を取り上げ、日本の占領時の残虐さや従軍慰安婦を問題視しているところ(p231)は、中韓によりでっち上げられた米国内の論調を根拠にしていると思われ、真実ではないと思われる。
    「インドネシアの人口ボーナス期間は、タイ、韓国、中国やベトナムよりも長く、2030年まで続くと見られる」p36
    「インドネシアの外交戦略に特徴的なのは、特定の大国の影響下に入らない、二大グループのいずれにも与しない、という思考法である」p95
    「(インドネシアの渋滞が激しいことから)一日の1/3はベッドの上、1/3は職場、残りの1/3は道路の上」p102
    「総人口に占める生産年齢人口の比率が上がると、第一に、労働の投入量が増え、成長を促進する。第二に、所得を手にする人口が増え、貯蓄率が上がる。貯蓄が投資に回って資本の蓄積量が増加し、成長が促される。第三に、出生率が低下すると子供一人当たりにかける教育投資や保健衛生サービスが増える。就業者の教育や健康状態が改善され、技術などの生産性が向上して成長を後押しする」p132

  • インドネシアの経済・政治を、現地在住の長い研究者がまとめている。

    ・領土も人口も大国。資源も豊富。90年代前半には今のBRICsあたりと並び称されていたが、アジア通貨危機で脱落。

    ・人口増加率はふつうに減ってきていたが2000年代(90年代1.45%→00年代1.49%)になってなぜか盛り返した。民主化・分権化によりスハルト時代の強制的な人口抑制策が弱まったためか。良し悪しはあるが、他のアジア諸国と比べても人口ボーナスは長く続き、2025から30年くらいまで。

    ・分権化が進み、資源収入の15から80%は地元に帰属するようになった。地方間の経済格差が生じる可能性も。

    ・2004年就任のユドヨノがはじめて民主的に選ばれた大統領。経済面では通貨危機やスハルト後の混乱期の影響をようやく脱しつつあるくらいで苦戦しているが、政治・治安は安定した。ユドヨノは軍人出身で、軍が庶民の出世コースであることが伺われる。

    ・大国インドネシアは重工業も含めたフルセット主義の開発方針を採っている。しかし、資源高のせいもあるが輸出高にしめる工業製品の割合はここ10年で減少している。それに重工業はまだ外資中心である。

    ・1997年までは定跡どおり農業人口割合は減り続けていたが、その後一転して40%強で横ばいになった。
    →著者は、「農業にも成長のエンジンが現れた」(パーム油など価格が上がっているはず)で済ませているが、農業が成長してもふつうは機械化などで従事人口は減るはずであり、他のアジア諸国と比べた生産性の伸び悩み、都市と地方の所得格差を考え合わせると、ここ(たぶん多すぎる人口、中国も近いところがあるのでは?)にインドネシアのアキレス腱があるかもしれない。

    ・プリブミ優遇策でのしあがった政商がいたり、豪米帰りの経済テクノクラートが政府の中核を占めていたりいろいろ。もちろん華人企業家も多い。

  • 刊行から時間が経つが(2011年12月刊行)、インドネシアの「今」と「これから」を知る上で、役に立った。内容はやや専門的で、学術的なところもあるが、わかりやすく解説されていると思う。内容の濃い新書だった。

  • インドネシアの近代を経済的視点から俯瞰した良書。
    2011年発刊だが、今尚大いに参考になる。

    経済成長が続くインドネシアであるが、実際に訪れるとジャカルタには近代的なビルが建つ一方、裏通りには低所得者層の居住区がある。その格差・落差に驚かされる。タイトルに
    『経済大国』とあるが、感覚的には買い被り過ぎ。

    人口ボーナス、民主化の進展、経済テクノクラート(人材)や華人財閥・プリブミ企業の規模拡大など、経済発展の素地は整っており、政治の安定・適切な経済政策がなされることでインドネシアの経済発展はより強固なものになるだろう。

  • インドネシアのことを知りたくて読み始めた2冊目の本。2010年位までの経済状況を知ることができた。2004年ユドヨノ政権になって以降、政治的安定により経済も安定的に前進しているとのこと。たいへん参考になった。

  • 少し古いが、著者の目的通り、インドネシアの今を政治経済の角度から的確に伝えている良書。インドネシアでビジネスする際には頭に入れておきたい。
    更なるアップデート版を期待する。

  • イスラム教と民主主義。日本にいてはイメージがわかないその結びつきをアジアにおいて成し得ている国が、インドネシアだ。

    アジアの大国、中国やインドの影に隠れつつ、日本の二倍の人口と五倍の国土を持つインドネシアの今とこれからの経済力とはいかほどのものなのか。近年の数値と国の政策から読み解く新書。

    生産年齢人口比率が高まる人口ボーナス。
    資源依存体質からの脱却。
    民主主義体制の確立。
    投資と開発の政策支援。
    経済学者と実業家の政治参加。
    そして日本との関わり。

    主題はインドネシアの改善の歴史であり、筆者はインドネシアの広報担当なのではと疑うほどに成し得たことへの賞賛と、明るい未来が語られる。

    国家経済を語るにしては読みやすいとは言っても、本書を読んで投資に乗り出す人はいないだろう。新書なので、一意見として流し読んでおくには悪くないと思える一冊。

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著者プロフィール

佐藤 百合 アジア経済研究所地域研究センター東南アジアⅠ研究グループ長
木村 福成 慶應義塾大学経済学部教授
林 光洋  名古屋学院大学経営学部助教授
ヒクマハント・ジュワナ インドネシア大学法学部教授
米倉 等  東北大学大学院農学研究科教授
加藤 学  アジア経済研究所地域研究センター東南アジア研究Ⅰグループ研究員
松井 和久 アジア経済研究所地域研究センター参事
水野 広祐 京都大学東南アジア研究センター教授

「2004年 『インドネシアの経済再編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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