秀吉と海賊大名 - 海から見た戦国終焉 (中公新書 2146)
- 中央公論新社 (2012年1月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121021465
作品紹介・あらすじ
信長・秀吉・家康が天下統一をめざした時、鍵となった地域が瀬戸内である。とくに伊予(現在の愛媛県)は中国・四国・九州を結ぶ「かなめ所」(秀吉の朱印状より)であった。瀬戸内海で活躍した村上氏・来島氏ら海賊衆と彼らを束ねた河野氏・毛利氏ら「海賊大名」は、秀吉など東国勢力との衝突を余儀なくされる。信長が始め、秀吉・家康が引き継いだ「革命」は地方の人々をいかに翻弄したか。海から見た戦国終焉の物語。
感想・レビュー・書評
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☆戦国時代の海賊は合法的な海の武士団(前著 ×信長革命
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<目次>
プロローグ 海賊史研究の新視点
第1章 瀬戸内海賊世界
第2章 秀吉の調略
第3章 海賊大名の消長
第4章 戦国終焉
第5章 海賊たちの就職戦争
<内容>
先日、『藩とは何か』を読んだ藤田氏の本。そこにこの本と『天下統一』と合わせて3部作とあったことから手に取った。この本は確かに安土桃山期から江戸初期にかけての、瀬戸内海の海賊大名たちの消長を描いているのだが、底に流れているのは、織田信長→豊臣秀吉→徳川家康の統一過程である。この本では大きく、西日本が海の論理から陸の論理に変えられてったことが描かれている。また、信長の下で、明智光秀と豊臣秀吉の権力闘争が隠れていることが描かれている。こういう視点でこの時期を見ていなかったので、なかなか面白かった。『天下統一』も読まねば!
逗子市立図書館 -
新書文庫
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日本の海賊が中世から近世へ変遷がよく分かる。海賊を通じて中世とは何ぞや、近世の何ぞやと教えてくれます。
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同郷出身の著者による、パッと目についた代名に引かれた。読んでいて、緻密な資料分析に基づいた研究により、書かれているのが分かる。当時の伊予の歴史的背景が、信長・秀吉の政治的センス・政策からどのような経緯を辿ったのか、興味深く読ませてもらった。
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読み途中~
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瀬戸内海の水軍から見た戦国時代の物語。信長や秀吉に翻弄される河野氏や村上氏などの水軍の動向がわかる。
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読み終わる。特に面白かった点は二点。
本能寺の変に関係する秀吉ー光秀関係と四国・中国の取次の関係。
「豊臣惣無事令」パラダイムの否定と、朝鮮戦役~関ヶ原をかけた「戦争を通じた中世~近世の転換という世界史的パラダイムへの地域史の接続
この二点がこの本の最も要点にして価値を高からしめていると考える。
室町幕府の天正期における実態や河野氏の評価は西日本の中世史の先生が良く言う「後期室町幕府」の実効性次第で読み方を変えないといけないと思うが、それでも東国政権が西日本の秩序を変えていく、という語り口で地域史を再定義している事は非常に興味深い。日本を東西に分けて理解することの重要性を改めて教えられた。これも網野史観なのかな?
しかし、これって、「中国化する日本」で出てきた中国化ー江戸化のパラダイムと完全に一致している。その意味でも、この本がやろうとしている事は「歴史に埋もれた瀬戸内海賊の掘り起こし」等という最近はやりの自慰的研究とは異なってかなり野心的な問題提起なんじゃないだろうか。
いやー、最初は愛媛出身の人が河野氏をプッシュしているだけかと思っていた。。。反省。でも河野氏を海賊大名として再評価しているのは愛媛出身者として微妙に嬉しかったのも事実ではある。
というか、鎌倉時代くらいまでの「二つの王権」論だと、室町時代ってここまで明快に分析できていない気がするなあ。もっと本を読めばあるんだろうけど。
中世は平清盛に始まり、足利義満が完成させ、豊臣秀吉が最後に爛熟させた、といったところだろうか。三者の軍事動員、対外思想、比較的大規模な複数の権力者による連合政権構想、色々と似ていると思わせる点は多いような気がする。
誰か、この三人の比較検討みたいな本書かないかなあ。