寺田寅彦 - 漱石、レイリー卿と和魂洋才の物理学 (中公新書 2147)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021472

感想・レビュー・書評

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  • 「寺田寅彦」と書名にあったので、彼に関する評伝あるいは、物理学者としての側面、もしくは、文筆家としての側面について書かれた本かと思ったが、違った。

    著者の「寺田寅彦には、二人の師となる人がいる。それは、レイリー卿と夏目漱石だ」という主旨はわかるが、やや強引かとも。

    内容も物理学(変遷や歴史)についての記述が多く、「寺田寅彦」そのものに関する記述が少ないようにも思う。

    物理学者であり、優れた文筆家であったことは、本書を通して、改めてわかる。

  • 小山慶太『寺田寅彦 漱石、レイリー卿と和魂洋才の物理学』中公新書、読了。漱石門下の寅彦はその文才でつとに名高いが、学師はノーベル賞科学者レイリー卿。古典物理学と量子論の交代期を生きたレイリーは「空はなぜ青いか」を解明した最後の道楽学者でもあったという。本書は二人の師匠の関わりから寺田物理学の神髄に迫る一書。

    寅彦は随筆や俳句を発表し、芸術も嗜んだ。アートに愉しむ如く、意表をつくテーマの研究に没頭した。同世代の科学者が先端の吸収に明け暮れる一方で、寅彦は、研究をまさに「愉しんだ」。「ねえ君、不思議だと思いませんか」。人が「研究する」意義を本書は問い直す。

  • 寺田寅彦の文学の師が夏目漱石であるというのはよく知られているが,物理学における師が古典物理学を極めたレイリーであるという説が著者の思い入れたっぷりに語られる.本文を読んでみても,それほど根拠がある説ではなく,古き良き時代の物理学と,雑事に煩わされずにその研究に取り組むことができた裕福な研究者へのノスタルジックな思い入れがその説を支えている.レイリーとそれを取り巻く物理学の状況の説明に紙幅をとられた分,寺田寅彦自身の記述が少なくなっているのは私には残念.20世紀初頭の物理学の発展を背景にしながら,寺田自身の物理学の研究を語る後半が面白いだけに,そこをもう少し深めてもらいたかった.

著者プロフィール

1948年生まれ。早稲田大学名誉教授。理学博士。著書に『寺田寅彦』『入門 現代物理学』『科学史人物事典』『科学史年表』『どんでん返しの科学史』(中公新書)、『ノーベル賞でたどるアインシュタインの贈物』(NHKブックス)、『ノーベル賞で語る20世紀物理学』『光と電磁気─ファラデーとマクスウェルが考えたこと』(講談社ブルーバックス)『エネルギーの科学史』(河出ブックス)など多数。

「2020年 『高校世界史でわかる 科学史の核心』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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