治安維持法 - なぜ政党政治は「悪法」を生んだか (中公新書)

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著者 : 中澤俊輔
  • 中央公論新社 (2012年6月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021717

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治安維持法 - なぜ政党政治は「悪法」を生んだか (中公新書)の感想・レビュー・書評

  • 治安維持法の制定から廃止までの経緯を、内務・司法両省の競合と政党政治との関係に重きを置いて政治史的に分析している。広範な史資料を用いて、治安維持法が逸脱・拡大していく要因を究明しており、特に1928年改正での目的遂行罪の導入を重視している点が注目される。「取り締まる側」からの治維法史といえよう。

  • 1枚の写真が証拠とされ、共産党再建の為の集まりだとの特高警察
    の主張から発生した「横浜事件」。1944年のことだった。

    事件は明らかなでっち上げ。しかし、特高警察の過酷な取り調べの
    過程で犠牲者も出ている。

    戦後、元容疑者の名誉回復の為の再審が行われたが、事件の際の法
    律が既に存在しないことから免訴の判決が出た。そうして、2010年になり
    実質無罪とも言える刑事補償が決まった。

    適用された法律は「治安維持法」。元々は共産主義への警戒から
    結社を取り締まる為に生まれたものだった。民主主義・自由主義の
    転覆を計るものから、国体を守る為のものだった。

    1925年に成立した治安維持法の内容は漠然としていた。いかようにも
    解釈出来る。これが後の特高警察の暴走の温床となった。小林多喜二
    の虐殺を持ち出すまでもなく、特高警察にとって治安維持法は錦の
    御旗だった。

    ターゲットは共産党だけではない。新興宗教も次々と弾圧された。
    そして、治安維持法を生んだ政党政治は崩壊に向かい、戦時色の
    強くなった時代には反戦を唱えただけで適用されるようになる。

    本書は治安維持法の誕生と変化の過程、植民地であった台湾・朝鮮で
    の適用から戦後のGHQによる人権指令での廃止までを分かりやすく
    解説している。

    悪法もまた法なりとはいうが、そもそも思想を裁くことには無理がある。
    誰が人様の頭の中まで分かるというのか。悪法が法として通用した
    時代になんて、もう戻りたくないね。

  • 治安維持法が、政党政治の時代に、なぜ生まれ、どう変容していったか。

    施行後、増殖していく過程がおもしろい。

  • 治安維持法が「結社」取締法として成立した点、また政党政治と治安維持法の関わりに着目して、治安維持法の立案から戦後への影響までを再検証している。
    政党政治の衰退とともに、治安維持法がどんどん膨張していく過程がよくわかった。始まりは節度をもって運用されていた制度も、政党政治のコントロールが効かなくなると暴走していってしまうというのは、現代においても教訓としうる事例のように感じた。

  • マガジン9:適用範囲が拡大していった「治安維持法」の歴史に学ぶ
    http://www.magazine9.jp/article/biboroku/9428/

  • 稀代の悪法とも表される治安維持法だが、本書では政党政治の時期にこの法律が生まれたことを重視。その問題設定がとても興味深い。

  • 治安維持法と聞くと、どうしても「悪法」という印象を捨てきることが出来ない。本著では、この治安維持法がどのように成立し、運用され、拡大解釈とともに膨張していったのかを丁寧に追っている。
    結社である政党が何故、結社を取り締まるこの法律を成立させたのか。護憲三派内閣という特殊な内閣であったからこそ成立を見た治安維持法は、内務省や司法省との折衝を重ねて施行されていった流れは重要だと思う。
    治安維持法が時の政党と大きく関係していることは、この法律に対して考えていく上では重要であろう。

  • 同法の成立は、1925. 普通選挙法の施行とともに、共産主義への脅威を背景としていた。すなわち、社会が共産化してしまう懸念があったのだ。当初、若槻礼次郎内閣により、成立する。つまり、民主主義の支持を得た政党内閣が成立させたのだ。法の適応としての効果はまだ当時低かったようである。

    1930年代 徐々に取り締まりは強化される。日中戦争、太平洋戦争と、同法は改正を経て、共産主義=国体変革を目指す ことへの取り締まり この考えは、一人歩きを続ける。

    法律が、制御を外れてしまう。政党の自殺、とも筆者は述べていた。

    現在、破防法への反面教師として、その役割を果たしているという。秘密保護法案が成立した、今、読むべき本として、★5つを上げた。

    また著者の中沢俊介は、同世代である。同世代が、これだけの著作を出せること、うらやましくも有り、誇らしくも思う。30代前半は、やはり社会の重要な役割を担うべきであろう。

  • 治安維持法を通して戦前から戦後を描く一冊。
    治安維持法の生まれた経緯がわかりやすく解説されており、
    日ソ国交樹立と普通選挙が契機として
    大きな位置を閉めたとの説明には納得させられる。
    その後の改正や運用についての記載はやや骨太に過ぎる感があるが、
    内容は非常に丁寧で、各事件についてもしっかりと解説されている。

  • 12/12/09、ブックオフで購入。

  • 著者が東大に提出した博士論文を基にした一冊。実は、博士論文や助手論文にこそ良い物があるというのは、この業界に詳しい人なら既に常識であるように、この本もとても力の入った一冊。そのことは、参考文献を見るだけでも伺える。また、視点もオリジナリティがあり素晴らしい。しかし、いかんせん文章が読みにくい。また、注釈も参照しにくい。良い題材なのに、ぐいぐいと本の世界に引き込んでいく力に欠ける。というわけで、残念ながら星3つ。

  • 「悪法」であるという、漠然とした意識しかもたない治安維持法の成立過程、変遷、実際に適用された事例を、丁寧に説明している。特に、治安維持法の成立が、なぜ戦前護憲三派内閣で成立したのかに着目し、内務省と司法省、憲政会と政友会の利害一致に答えを求めた点は、大変興味深かった。

  • 1925年の治安維持法成立は、同年の「(普通選挙制との)アメとムチ」説や「日ソ国交樹立」説があるが、本書では主に、当時の加藤高明内閣が護憲三派の連立政権だったために議会内の多数派確保及び内務省・司法省間の調整が容易だったことを理由としている。それでも成立当初は言論の自由を重視する声及び日ソ基本条約の宣伝禁止条項を背景に「結社」のみを対象としていたが、その対象の狭さから28年の三・一五事件では共産党関係者の多数検挙にも関わらず起訴に至ったのは少なかった。そのため同年の改正では共産党員でなくとも(思想の)宣伝を行う者まで対象が拡大された。1930年代には改正こそ成立しなかったが、実際の運用の中で拡大適用がなされていった。罰則強化、検事の強制捜査権と予防拘禁を定めた1941年の改正はこの拡大適用の後追いだったわけである。このような治安維持法の膨張は、政党政治の弱体化と表裏一体だったと言えるだろう。

  • P159~161 転向者による国体の学習は保阪正康の著書にも書かれていた”国体の本義”?

    大政翼賛会が治安維持法の取り締まり対象だったとは意外。同じ体制側だと思っていたのだが。

    悪法と言われながらも、議会で審議可決された。だが、その運用に問題があった。

    P224~225 清瀬一郎の東京裁判での発言

  • 2012/08/? んー、わからん

  • 【75冊目】若き研究者による本。取り締まるべきなのは、言論ではなく暴力の方だったという最後の考察が地味に心に残った。

    「復活説」等、当時の法学説の勉強になりました。

    それと、共産党(赤化)とテロの脅威が治安維持法を後押ししたみたいだということは勉強になりました。年齢的に、共産党の脅威というのは実感しにくい世代ではあるのだけれども。

    治安維持法が拡大の一途を辿っていく過程は興味深く読みました。以前読んだ「許される悪はあるのか」に書いてあった、lesser evilの基準を意識しながらもう一度読みたいです・・・読まないと思うけどww

  • 原敬内閣は労働運動への融和を試みようとしたんですね。

  • 治安維持法は「宣伝」取締法ではなく「結社」取締法として成立したとか、「目的遂行罪」を設けた改正案が審議未了で廃案となった後に緊急勅令として枢密院で可決されたとか、地味面白い。

  • 新着図書コーナー展示は、2週間です。
    通常の配架場所は、1階文庫本コーナー 請求記号:326.81//N46

  • 中澤俊輔『治安維持法 』中公新書、読了。副題通り「なぜ政党政治は『悪法』を生んだか」を検証する。成立させたのは護憲三派の政党内閣、政治的自由の確保が一つの目的である。「悪法」としての歴史は政党政治の全盛、衰退、消滅の歩み。自由と民主主義を守る意味でも、その実態を学ぶ意義がある。

  • 悪名高い治安維持法の成立から、その拡大的適用、そして廃止に至るまでの歴史的経過を、中心的役割を果たした機関や政治的状況に焦点をあてることで克明に描き出している。本書によれば、治安維持法は加藤高明内閣の下で、共産党を具体的な対象と考え、デモクラシーを破壊しようとする結社に制限を加えようとして制定された。議会では反対意見も強かったが、政党人は成立した以上遵守するのが政党政治の精神だと理解していた。それが、次第に拡大解釈され本来的には共産党員でない人々にまで適用されていった。名前は知っているが、詳細には理解はしていないという歴史的に有名な事象は数多くあるが、治安維持法もその一つだったということに気づかせてくれる著作。戦前日本の政治の内実をより深く理解するためにも役立つだろう。

  • 当時の政治・議会の雰囲気が分かる。治安維持法が共産主義者取り締まりに果たした功績は大きい。

  •  中澤さんはぼくより20歳も若い政治学者で、博士論文をまもめた力作。

     治安維持法という悪法が、どうして、護憲3党が連立したときにできたか、から切り込んで分析している。

     3党が連立することによって、当初の法案から宣伝を規制するなど牙が抜かれていくが、最後に、結社の自由を制限するという観点に絞って治安維持法ができていく。その解釈も厳密と抽象的の間の中庸できまっていく。

     現時点で民自公がまとまったような時代だったということか。政党政治は、いままで与野党で争っていた政党が大連立するとたががはずれるいい例だと思う。みなさん、よく記憶しよう。

     また、2回目の強化のときは、国会で廃案になったものを一部の枢密院の有力者が勅令で死刑をいれたりした改正案をつくり、あとから国会で承認させている。このような、国会の仕組みを通さないで、国民の権利を制限する歴史を絶対にくりかえしてはいけない。

     その他、治安維持法の条文がどんどん拡大解釈されて、天皇制を否定する共産党から最後は、キリスト教団体まで規制するようになる。

     現在、条文案を作成するわれわれも、後世において、拡大適用がされないよう、国民の権利義務に関わる部分はきちんと条文上規定しておく必要がある。

     きちんとした法律を国民の意見をきちんときいて議会に提案し、成立後は、その法律に従って、きちんと節度をもって運用する、これが最低限の行政府の役目だと再確認した。

  • 1979年生まれでこの内容か……と思ってあとがきを読んだら、東大北岡ゼミ出身、ということで、納得。実証的だけどアプローチが新鮮。

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治安維持法 - なぜ政党政治は「悪法」を生んだか (中公新書)の作品紹介

言論の自由を制限し、戦前の反体制派を弾圧した「稀代の悪法」。これが治安維持法のイメージである。しかし、その実態は十分理解されているだろうか。本書は政党の役割に注目し、立案から戦後への影響までを再検証する。一九二五年に治安維持法を成立させたのは、護憲三派の政党内閣だった。なぜ政党は自らを縛りかねない法律を生み、その後の拡大を許したのか。現代にも通じる、自由と民主主義をめぐる難問に向き合う。

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