田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書 2186)
- 中央公論新社 (2012年10月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121021861
感想・レビュー・書評
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友人との雑談で、スティーブ・ジョブズって社会をより良くしようとしたけど、良い社会人ではなかったよね、って盛り上がり、そんな日本人いるかな、と言って出てきたのが、田中角栄の名前。その直後、出張の新幹線に乗る前、つい買っちゃったのがこの新書。仇敵、青嵐会の石原慎太郎の新作「天才」より、もっと冷静な評伝なのかな、と思って手にしたのです。朝日新聞の記者らしい距離感を保っているようにも感じますが、そもそも政治記者としての人生をこの傑出した才能に相対し続けて来た人の文章なので、相当に熱を放出している、と思いました。それは、時代の熱であったのかもしれません。人々が欲望に躊躇しなくなった時代の熱。日本中が東京になれる日を夢見ていた時代の熱。我が親がマイホーム計画を立て、狂乱物価で変更を余儀なくされた自分のファミリーヒストリーを久々に思い出しました。それに引き摺られて思い出しましたが、彼が総理大臣になった時が小学生で、少年ジャンプで「田中角栄物語」をマンガで読み、中学時代に背伸びして文藝春秋で立花隆の「田中角栄研究」を読み、高校でロッキード事件で国民大盛り上がり大会に遭遇なんて、ティーンの人格形成期にずっと田中角栄と並走してきたこと忘れてました。ある意味、ポップスター。そこらへんもジョブズ的?彼は確かに良い社会人ではなかったけど、社会を変えたこと(良いか悪いは別にして…)は確かだったと改めて思います。
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時代を感じさせる
手段を問わず強引でも自山達のために尽くしてくれる政治家としては頂点に君臨するのだろう
新書にしては分厚いけれど、時代とともに角栄のポジションの移り変わりをわかりやすく解説してくれる本である。
角栄に対峙する検察官が正義の体現として評価されたのはよくわかる気がした。
ただ、こういう圧倒的な現実の前に、法律で何ができるかというのは難しいなと思う。 -
番記者経験者による田中角栄の伝記。
本書を読んで、田名角栄は、金権という意味ではやはり真っ黒であるし、現在の日本社会に負の遺産を残したという面は否定できないが、非常に魅力ある優れた政治家であったということを再確認した。
小泉元首相が、構造改革でいう構造とは何かと問われて、「田中角栄が作った政治構造だ」と答えたというエピソードが紹介されていたが、国土開発、道路特定財源、郵政、電源3法、福祉など、戦後の政治・社会構造を作りあげたのが、まさに田中角栄であったと感じた。現代においては、綻びが出てきているのは間違いないが、当時においては、時代に即した政策であったのだと思う。
33本の議員立法、官僚掌握術など、政治家としての田中角栄の手腕も感じた。
ひたすら「具体」、政治家は「実行」が大事という田中角栄の考え方は、「具体的」なものとしてカネに走ってしまったという側面はあるものの、政治家の姿勢としてひとつのあるべき姿であると感じた。 -
田中角栄の一生をコンパクトにまとめた新書。昨年(2012年)に書かれたことで、これまでの膨大な角栄関係の著作や資料などにも言及しながら、より冷めた視点で角栄を記述することで、より真実の田中角栄像が捉えられていると思う。
個人的には、田中角栄という人は、非常に男気があり、懐深く、人の気持ちの分かる魅力的な人物という印象。
一方で、政治家としての評価は良くも悪くも極端。
○は、抜群の実行力とリーダーシップ。山一証券倒産の時の金融危機の回避などは、政治家としての類稀なる能力を持った人。そして特質すべきは日中共同声明だろう。
×は、政治思想や政策。これにカネを加える人もいるかと思うが、やっぱり、あの時代はカネが絡むのは致し方ない部分もあると思うのであえて除外。
そして政策は、高度成長時代をそのまま駆け抜ける様な政策であって、もはや彼が総理大臣になった頃には、時代遅れの政策となっていたし、国の継続的な発展を推進するのが、政治の第一であり、富の分配はその次と思うが、これが逆転してしまっている。新潟における自分の幼少時の原体験をそのまま政治で解決しようという政治信条は、総理大臣にしては、ちょっと稚拙すぎる。
時代時代にマッチしたやるべきことが政治にはあり、それに優先順位をつけて、確実に実現していくことが政治だと思うが、そもそものやるべきことがズレていては、逆に実行力のあることが仇になってしまう。
「名君は、暗君にはならないが、暴君にはなる。」
つまり実行力があるから、良いことも悪いことも、やりきってしまう。それが角栄という政治家だろう。 -
田中角栄の一生を前半期を中心に書いたもの。
客観的でありつつも、番記者だったからか同情的な視線が根底に感じられる。
首相までの上り坂とその後の凋落がコントラストとなっているが、戦後の総理で最も人間的魅力を感じさせるのは角栄だろう。
彼のバックボーンにある新潟県民の恨み、羨望を救済しようとしたからこそ、戦後日本社会の安定はあるのではないか。 -
野中広務に続き、次は田中角栄。新書大賞2位ってことで前から手もとにはあったんだけど、なんせ普通の新書2冊分くらいの分量だから尻込みしてしまい、なかなか読む気にならんかった。自民党史上、最大級大物の評伝。出版形態は違うけど、件の野中文庫とほぼ同様の体裁。薄汚い献金事件と、最後までそれを認めなかったことで、圧倒的に晩節を汚しているとしか思えんけど、ここだけを見ると、まるで最近長期政権を担った誰かさんのよう。そっちは結局、事件にもならず逃げ切る気ぽいけど。当時と違い、党として団結して隠蔽に走っているところが、その凋落ぶりを物語っている。そう考えると、この当時はまだ、党内であっても不正は糺す、という気概を持つ政治家が多かったんですね。遠い目。
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「できることはやる。できないことはやらない。全ての責任はこの田中角栄が負う」
金権政治の元祖。田中角栄以後は、それ以前と桁の違うカネが動いた。三木政権による徹底的な汚職追及。やっていないと言い張れるの何故か?認めたら終わり?小沢はカタチだけ真似してるんだな、多分。 -
昭和時代をイメージさせる人物として田中角栄さんはランキングの上位にいると思います。そんな人物ですから、関連図書も多く、どれを読んだらいいのか?って迷ってしまいます。
本書は、田中角栄さんのそばで記者をしてた著者が、その生い立ち、民間会社時代、政治家時代、ロッキード事件、そして人生の終焉までをまとめた決定版的な本です。
角栄本は沢山あるけど、まずはこの一冊という軽いノリで読まれてはいかがでしょうか。 -
田中角栄の政治家としての人生を描いた書籍。これまで知っているようでいて、よく知っていなかった角栄をとある視点から知る良書。若手のころは、ブルドーザーばりに法案を作り、道路を作り、と活躍していたが、手法としてはカネが重要な役割を担っており、それが後年の失脚につながっている。田中派議員が結局はカネ問題に引っ掛かっていったのも、角栄を批判しながらも、自らが角栄を越えることができずに同じ手法に陥っていたからだろう。そういった意味でも、先見の明を持った政治家であったことは間違いない。戦後日本の変曲点に頻繁に顔を出す一方で、アメリカとの関係には悩まされたということだろう。