田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書 2186)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021861

作品紹介・あらすじ

「コンピュータ付きブルドーザー」と呼ばれた頭脳と行動力で、高等小学校卒から五四歳で首相の座に就いた田中角栄。「新潟三区」という雪深い地盤に"利益誘導"を行い、「日本列島改造」を掲げた角栄は、戦後政治の象徴だった。だが彼の金権政治は強い批判を浴び、政権は二年半で終わる。その後も巨大な「田中派」を背景に力を持ったが、ロッキード事件では有罪判決が下った。角栄を最期まで追い続けた番記者が語る真実。

感想・レビュー・書評

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  • 昔総理大臣やってた人だよね?ぐらいの認識しかなかったのですが、戦後の日本にはなくてはならない人だったんだと思う。
    賛否両論ありそうな半生だけど、現実的に日本を発展させるには、この人しかいなかったのではないかと思わせる。

    話しぶりも庶民にわかりやすい内容で、日本を、世界を動かしていった。
    政治にカネはつきもの。カネは使える人が使えばいい。現在の世論では、税金の無駄遣いには異常なほど敏感に反応するけど、自分の家計の無駄遣いには無頓着な印象を受ける。
    この辺りは今度まとめて記述したい。

    以下引用
    世論とは何か。主権在民だ。国論は国民の投票の結果でしか決まる道はない。新聞が世論ではない。一億玉砕と言っていたラジオが世論か。帰りの燃料もなく死地に行かせたのではないか。新聞やラジオではありません。声なき声を政治に実現するのが総選挙。

  • 友人との雑談で、スティーブ・ジョブズって社会をより良くしようとしたけど、良い社会人ではなかったよね、って盛り上がり、そんな日本人いるかな、と言って出てきたのが、田中角栄の名前。その直後、出張の新幹線に乗る前、つい買っちゃったのがこの新書。仇敵、青嵐会の石原慎太郎の新作「天才」より、もっと冷静な評伝なのかな、と思って手にしたのです。朝日新聞の記者らしい距離感を保っているようにも感じますが、そもそも政治記者としての人生をこの傑出した才能に相対し続けて来た人の文章なので、相当に熱を放出している、と思いました。それは、時代の熱であったのかもしれません。人々が欲望に躊躇しなくなった時代の熱。日本中が東京になれる日を夢見ていた時代の熱。我が親がマイホーム計画を立て、狂乱物価で変更を余儀なくされた自分のファミリーヒストリーを久々に思い出しました。それに引き摺られて思い出しましたが、彼が総理大臣になった時が小学生で、少年ジャンプで「田中角栄物語」をマンガで読み、中学時代に背伸びして文藝春秋で立花隆の「田中角栄研究」を読み、高校でロッキード事件で国民大盛り上がり大会に遭遇なんて、ティーンの人格形成期にずっと田中角栄と並走してきたこと忘れてました。ある意味、ポップスター。そこらへんもジョブズ的?彼は確かに良い社会人ではなかったけど、社会を変えたこと(良いか悪いは別にして…)は確かだったと改めて思います。

  • 時代を感じさせる
    手段を問わず強引でも自山達のために尽くしてくれる政治家としては頂点に君臨するのだろう

    新書にしては分厚いけれど、時代とともに角栄のポジションの移り変わりをわかりやすく解説してくれる本である。

    角栄に対峙する検察官が正義の体現として評価されたのはよくわかる気がした。

    ただ、こういう圧倒的な現実の前に、法律で何ができるかというのは難しいなと思う。

  • 番記者経験者による田中角栄の伝記。
    本書を読んで、田名角栄は、金権という意味ではやはり真っ黒であるし、現在の日本社会に負の遺産を残したという面は否定できないが、非常に魅力ある優れた政治家であったということを再確認した。
    小泉元首相が、構造改革でいう構造とは何かと問われて、「田中角栄が作った政治構造だ」と答えたというエピソードが紹介されていたが、国土開発、道路特定財源、郵政、電源3法、福祉など、戦後の政治・社会構造を作りあげたのが、まさに田中角栄であったと感じた。現代においては、綻びが出てきているのは間違いないが、当時においては、時代に即した政策であったのだと思う。
    33本の議員立法、官僚掌握術など、政治家としての田中角栄の手腕も感じた。
    ひたすら「具体」、政治家は「実行」が大事という田中角栄の考え方は、「具体的」なものとしてカネに走ってしまったという側面はあるものの、政治家の姿勢としてひとつのあるべき姿であると感じた。

  • 小学校卒業で首相にまでのぼりつめ、
    日本に高速道路や鉄道を張り巡らし、
    田舎に団地などをぼんぼん作った人。

    そんなイメージで手に取りました。

    松下幸之助のように、
    成功するためのキーワードが、
    星の数ほどちりばめられているだろう……。

    と期待して読み始めましたが、
    すぐに裏切られることに。

    それほど、この方は偉人すぎました。
    高校や大学を卒業した人でも、
    そうそう、この方のように生きられるものではありません。

    といっても、まるで参考にならないかというと、
    なんだかポジティブになります。
    「思ったら即、行動しないと!」
    といった、わくわく感も湧きます。

    ときに、日本人には受け入れられず、
    かのジョン・F・ケネディに、
    「あなたの率直な態度はアメリカでは評価されている。
    預言者、郷に入れられずのたとえ通りかもしれない」
    とまで、言わせているらしい。
    それほど、先を行くひとだったのだろう。

    そして、かなりの勉強家!
    大学を出ていなくても、
    大学の講義録で独学するなど、
    やはり、大きくなる人は違います!

    そしてこの本、
    歴史として、大変勉強になります。

    「池田勇人の『所得倍増』は、一言で言えば、
    都市化の発展だった。
    角栄はそれに加えて田舎の底上げを主張した」

    一貫して、都市への人口流動を憂いていたことがわかります。
    それが、結果、「列島改造論」につながるのだろう。
    まだ、そこまで読んでいないけれど。

    さらにさらに、
    角栄さんの演説は、とってもわかりやすかった模様。
    田舎のおじいちゃん、おばあちゃんも、
    政治を良く知らない若者たちも。
    「この人なら日本を変えてくれる」
    と信じたのもうなずけます。

    田中角栄のように生きるには、
    フットワークが新幹線並みに必要だけど、
    少しは「行動を起こしてみよう!」
    と思える、いい本です♪ 。

  • 角栄の人物、政治家としての軌跡のみならず、戦後史のお勉強にもなりました。

    実は、一度だけご本人にお目にかかり(目白台の御殿の中)、一言だけ、声をかけて(ヨッシャ、ヨッシャ)もらったことがある。その頃は闇将軍と言われてた頃ですが、思っていたより気さくで、いかにも土建屋の親父という印象がしたのを覚えています。

    あの時代の人達は、カネにこだわった人も沢山いると思うが、今みたいに、カネに汚い、あるいは、カネがすべてという人は少なかったような気がする。
    角栄も、結局はカネで失敗したが、何故か許せる感じかするのは、富の配分を、自己の権力保持の為かもしれないが意識してたからかもしれない。

    あと、作者もあまりつっこんでないが、ロッキードはアメリカの陰謀の側面もあるかもしれない。
    何十年か後、新資料が出てきて、歴史が変わるかもしれない。

  • 田中角栄の一生をコンパクトにまとめた新書。昨年(2012年)に書かれたことで、これまでの膨大な角栄関係の著作や資料などにも言及しながら、より冷めた視点で角栄を記述することで、より真実の田中角栄像が捉えられていると思う。

    個人的には、田中角栄という人は、非常に男気があり、懐深く、人の気持ちの分かる魅力的な人物という印象。

    一方で、政治家としての評価は良くも悪くも極端。

    ○は、抜群の実行力とリーダーシップ。山一証券倒産の時の金融危機の回避などは、政治家としての類稀なる能力を持った人。そして特質すべきは日中共同声明だろう。

    ×は、政治思想や政策。これにカネを加える人もいるかと思うが、やっぱり、あの時代はカネが絡むのは致し方ない部分もあると思うのであえて除外。

    そして政策は、高度成長時代をそのまま駆け抜ける様な政策であって、もはや彼が総理大臣になった頃には、時代遅れの政策となっていたし、国の継続的な発展を推進するのが、政治の第一であり、富の分配はその次と思うが、これが逆転してしまっている。新潟における自分の幼少時の原体験をそのまま政治で解決しようという政治信条は、総理大臣にしては、ちょっと稚拙すぎる。

    時代時代にマッチしたやるべきことが政治にはあり、それに優先順位をつけて、確実に実現していくことが政治だと思うが、そもそものやるべきことがズレていては、逆に実行力のあることが仇になってしまう。

    「名君は、暗君にはならないが、暴君にはなる。」

    つまり実行力があるから、良いことも悪いことも、やりきってしまう。それが角栄という政治家だろう。

  • 令和ジャップ臣民必読。
    地方の王国チャンピオンの逸話はハンパない。福島原発の爆発を角栄さんが見たらどんな思いを抱くのか。
    金の匂いのするところに群がるアリは昭和も令和も変わらんですね。
    昭和政治史もある程度追えるのでGOOD

  •  田中角栄に取材していた経験をもつ、朝日新聞の記者による田中角栄論。新書にしては厚めだが、青年期から政界入りを経て、ロッキード事件、失脚までの田中角栄を描く好著。

     取材メモを活用した記者ならではの記述は、当時を知らない評者に日本政治が暑苦しかった時代を教えてくれた。ただ、全体的に田中擁護寄りで、彼が残した負の遺産についての記述は少ないのではないかとも思った。面白い本だった。

  • 田中角栄の一生を前半期を中心に書いたもの。
    客観的でありつつも、番記者だったからか同情的な視線が根底に感じられる。
    首相までの上り坂とその後の凋落がコントラストとなっているが、戦後の総理で最も人間的魅力を感じさせるのは角栄だろう。
    彼のバックボーンにある新潟県民の恨み、羨望を救済しようとしたからこそ、戦後日本社会の安定はあるのではないか。

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著者プロフィール

1945年生まれ。朝日新聞政治部記者として、田中角栄の番記者などを皮切りに歴代政権を取材。書名コラム「ポリティカにっぽん」を1996年4月〜2010年3月まで連載。

「2014年 『日本の今を問う 沖縄、歴史、憲法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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