物語 哲学の歴史 - 自分と世界を考えるために (中公新書 2187)
- 中央公論新社 (2012年10月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121021878
作品紹介・あらすじ
哲学とは何だろうか-。人間が世界と向き合い、自分の生の意味を顧みるとき、哲学は生まれた。古代から二一世紀の現代まで、人間は何を思考し、その精神の営為はどのような歴史を辿ってきたのだろうか。本書は、その歴史を「魂の哲学」から「意識の哲学」「言語の哲学」を経て、「生命の哲学」へと展開する一つのストーリーとして描く。ヘーゲル、シュペングラー、ローティの歴史哲学を超えた、新しい哲学史への招待。
感想・レビュー・書評
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哲学とは歴史である。そのことがよくわかる本だった。本書は、哲学史を一つの物語として語った本だ。歴史といっても、実際にはさまざまな細部があり、すべてを詳細に記述することはできない。本書が考える哲学史の展開のストーリーは、「魂の哲学」から「意識の哲学」、「言語の哲学」を経て、「生命の哲学」に向かっていく。
ある思想がどのように生まれ、どのように否定されるのか、ある人物はなぜこのような主張をしたのか、そして私たちは今なぜこのように考えているのか、などのことがわかるようになる。これまでの思想の全体像を理解したい人におすすめの本だ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
哲学史や哲学概論の本はこれまで何冊か読んできたが、これが最もわかりやすく、新書にしておくのはもったいないと思うほどである。
哲学史ではよく「元素(アルケー)」の説明から始まるが、これだけでは「だから何?それが何でプラトンとかの哲学につながったの?」という疑問で終わってしまう。実際、元素自体に関する考察はギリシアのみならず中国でも生まれているし、「タレスは万物の元素を水とした」などという事実の列挙だけではギリシアで哲学が発展した理由にはならない。
この本はその疑問に答え(本書p.36参照)、哲学全体の流れを一つの物語として淀みなく、かつ初学者にとってはかなり網羅的に記述している。また、アリストテレス哲学の基礎である「質料」と「形相」の説明がどの本を読んでも理解できなかったのだが、この本はその説明も手厚く理解することができた。
哲学史を気軽に一望できる本としてぜひ一冊持っておきたい本である。
参考までに、僕はこれまで『はじめての哲学史』『図説・標準 哲学史』等を読んできた。本書が難解だと思われる場合にはこれら(特に前者)を読んでから本書に取り掛かると良い。 -
難解な部分もあるので読むのに時間はかかる。大学の授業で使ったが、また読み返したい。
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哲学を「存在とは何か?」「人間とは何か?」ということを切り口にギリシャから現代まで俯瞰した本。非常に狭い範囲に論点を絞っているのでそれぞれの哲学社の思想をすべて網羅しているわけではないが、「存在」「人間」というものをどのように考えるかという哲学の最大課題を見事に描き出している。プラトンのイデア論、アリストテレスの目的論、デカルトによる理性の発見、イギリス経験論、大陸合理論、カントの観念論、ショーペンハウアーの生の哲学、ニーチェの力の哲学、プラグマティズム、ラッセルの言語哲学、実存主義と哲学の大筋を理解するにはうってつけ。一つ一つの哲学書を読むよりその思想を生み出す土台となったそれ以前の哲学との流れとして理解できるので、分かりやすい。哲学が科学技術の進歩に影響を受けて形を変えてきたということもよくわかる。とは言っても内容を咀嚼するのには相当の努力が必要で、面白さも相まり珍しく2度読みした。人間は特別な存在なのか、言語というものはなぜ存在するのか、言語は社会の進化を促すのに大変有益であると同時に言語があるために哲学のようなある意味考えなくても良いことを考える宿命を人間は持ってしまったのではないかとつくづく考えさせられた。
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まさに「物語」のように哲学の歴史を有機的に紡いでくれます。全くの初心者にはお勧めできませんが、それなりに哲学の知識を入れた後ならば
断片的な知識を結びつけるのに役立つと思います。 -
哲学
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2012-12-1
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題名をあえて「物語」としたところに「歴史物語論」に対する著者の意図を感じるが、それは捻くれた見方だろうか。
著者は人間の精神をテーマに哲学史を論じ、最終的には「生命の哲学」へと帰結している。これは科学哲学のみならず、生命倫理や医学分野等々、学際的に考えなければならない重要なテーマであると思うが、タコツボ化したアカデミズムにそれが可能か否かが課題だろう。 -
序章 哲学史のストーリー
第一章 魂の哲学 古代・中世
第二章 意識の哲学 近代
第三章 言語の哲学 二〇世紀
第四章 生命の哲学 二一世紀へ向けて