歴史の愉しみ方 - 忍者・合戦・幕末史に学ぶ (中公新書 2189)

著者 :
  • 中央公論新社
3.89
  • (67)
  • (96)
  • (73)
  • (6)
  • (3)
本棚登録 : 1011
感想 : 91
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021892

作品紹介・あらすじ

忍者の子孫を訪ね歩き、東海道新幹線の車窓から関ケ原合戦を追体験する方法を編み出し、龍馬暗殺の黒幕を探る-。著者は全国をめぐって埋もれた古文書を次々発掘。そこから「本物の歴史像」を描き出し、その魅力を伝えてくれる。同時に、歴史は厳しいものでもある。地震史研究にも取り組む著者は、公家の日記などから、現代社会への警鐘を鳴らす。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 予想をはるかに超える面白さで、あっという間に読了。
    新聞・雑誌等の連載記事をまとめたもので、ひとつの記事は大体3,4ページ分ほど。多少のぶつ切り感はあるが、楽しさの方が際立っていてほとんど気にならない。
    日本史に苦手意識を抱いている方、著者の切り口なら間口が広いかと。
    古文書を入手して歴史的事実を読み解いていくので、その過程も読みごたえがある。
    また、学術的研究のみでなく、東日本大震災をきっかけに「これから起こる地震津波について歴史から何が予見できるのか」を詳しく述べてあり、歴史研究というのは人命さえ救いうる有用性を持っていることにも瞠目した。

    特に心に残った章をいくつか挙げてみる。
    2章「歴史と出会う」の中の「斎藤隆夫の命がけの色紙」。
    ポケットに千円しかない貧乏学生だった頃、見知らぬ露天商から戦前の政治家の色紙を買う。斎藤隆夫については全くの無知だったが、読み解き、国会図書館で調べていくととんでもないことが分かる。
    憲政史上の記念物と言って良いくらい、国の未来を憂えて命がけで書かれたものだったのだ。このとき斎藤隆夫は暗殺を覚悟していたらしい。
    色紙にしたためた漢詩が、本書で載せられている。
    件の露天商を探し出して礼と詫びを言うと、「この商売、客に一本とられることもあれば逆もある。気にせんでいい」という、まことに粋なひと言をもらったらしい。
    うーん、こういう出会いがあるから、古文書を読む楽しみにとり付かれていくのかもね。全く読めない私は、ひたすら羨ましがるしかない。

    また同じ2章の「反実仮想」という考え方も、大変参考になった。
    幕末の薩摩人は、「もしこうなったら」とあらかじめ考えておく習慣があったという。
    すでに解答の決まったものに答えるだけの現代の学校教育に、警鐘を鳴らしている。
    現実を直視し、反実を仮想することの大事さを久々に考え直してみた。
    想定外のことを想定内にしなければ、同じことの繰り返しになってしまう。

    最終章の「関ケ原観光」も面白い。
    そうか、新幹線でこんな楽しみ方もあったのか、とついニヤニヤ。今度ぜひやってみよう。

    興味深い「忍者」の話から始まる一冊。
    その仕事の内容、俸禄、甲賀百人衆の居所、現在も生き残る忍者の子孫との交流等々、ここだけでも楽しめるが、著者は4章の「震災の歴史に学ぶ」を特におすすめしてる。磯田さんて、熱い方なんですね。

  • 〝みちふみ少年〟は、自他ともに認める〝かわりもの〟だったようですが、興味の対象に尽きせぬ情熱を注がずにいられない探求心が、古文書の解読から歴史研究への道を歩み続かせることになりました。福沢諭吉の『学問のすゝめ』に触発され、学者は専門研究に留まることなく、ひろく実社会に学問成果を語らねばならないと悟ります。古文書から震災の歴史研究に取り組む真摯な姿勢には敬服の至りです。亡き司馬遼太郎氏への想い、新幹線の車窓から関ケ原合戦の追体験など、【磯田道史】氏の世界を存分に愉しめる教訓あふれる歴史読み物です。

  •  歴史学者として自分に何が出来るかを考え、真摯に行動する姿勢に敬服する。
     ものっすごくわかりやすくて、おもしろい、歴史の愉しみがぎゅうぎゅう詰まった本。
     からみあったり上書きされまくったりしてる歴史に、誰もが親しめる味付けをして提供し、現代に必要な歴史の情報を伝えてくれてる。
     磯田さん、あなたの本、全部読みます。

  • 3月に靖国神社を参拝して、日本史をもっと勉強したいと思い、その帰り道に書店で手に取った本。想像以上にマニアック過ぎて、若干引き気味にはなりましたが、所々興味深い内容があって、最後まで読み終えることが出来ました❗個人的には、戦国時代と明治維新時代の話しをもっと色々知りたいと思うようになりました。

  • 先達たちから学ぼうとする磯田氏の狂気じみた知的好奇心から成る一冊。
    歴史学とは、私生活におけるささやかなことに疑問を浮かべ、過去を知ろうとする学者たちの存在の上に成り立つ学問だと主張してくる。

  • 面白い。ついていけないくらいオタク度の高い内容もあるが、エッセイに近い感じで楽しめる。

    新幹線に乗るとき、家康や三成の気持ちで窓の景色を楽しみ、関ヶ原で興奮する磯田先生、面白すぎる‼︎

  • 新聞や雑誌の記事をまとめたもののようで、一つのトピックは数ページと短いので、空き時間に気楽に読める。忍者の履歴書を探したり、殿様の朝の手洗いはお湯だったのか水だったのか気になったり、東日本大震災後は震災を記録した古文書を探したりと、トピックは多岐にわたる。家康と直江兼続の話や、関ヶ原見物作法も良かった。磯田さんの本は5冊目だけど、どの本も読みやすくて面白い。

  • 忍者の話、毒の話、胞衣塚の話、新幹線からの関ヶ原古戦場の見方、が最高。
    新幹線、いつもよくわからないまま関ヶ原を通過してしまう。新幹線の車窓から遠目に見えるお城が何城なのかよくわからないまま通過してしまう。
    次はこれを読み込んで、この本片手に、東海道新幹線に乗りたい。ひとまずは、コロナが終息したらかな…

  • 一つ一つのトピックが短いから読みやすいけど、もっと読みたい内容もあった。磯田先生の震災から学ぶ気概はすごい伝わった。文章が残っていて学べることは沢山ある。このような本にしてくれてありがたい。

  • 初めての磯田さんでした。テレビで拝見するのと同じ歴史愛を感じました。常に古文書に当たり、それをもとに健全な想像力で楽しませて頂きました。 特に第4章「震災の歴史に学ぶ」には深く納得。今日の科学を以ってしても大地震の予測は困難。でも歴史は、「必ずこの日本には定期的に大震災が起きる」ことを明らかに示している。その大きさまで。科学的探求は勿論必要だが、素直に歴史の力を借りることは極めて重要だと感じました。

全91件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

磯田道史
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『無私の日本人』(文春文庫)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイストクラブ賞受賞)など著書多数。

「2022年 『日本史を暴く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

磯田道史の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヴィクトール・E...
佐藤 優
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×