大阪―大都市は国家を超えるか (中公新書)

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著者 : 砂原庸介
  • 中央公論新社 (2012年11月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021915

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大阪―大都市は国家を超えるか (中公新書)の感想・レビュー・書評

  • 2012年刊行。
    著者は大阪大学法学研究科准教授。

     過日、大阪市の住民投票で否決された大阪都構想。
     本書は投票前の段階ではあるが、大阪を定点とし、都道府県と市と国、地方自治の過去と現在、そして未来を語った書だ。

     私自身、大阪をはじめとする地方自治体の在り方・将来像について、大阪都構想はもとより、さほど関心を持ってこなかったツケが本書読破で来てしまった。
     そんな読後感である。

     すなわち、
    ① 都道府県、市、さらには政令指定都市の権限・財源・政治運営の仕組み、異同につき十分な理解をしていない。
    ② 現実の大阪市、大阪府、府内の他市の財政状況につき情報を入手していない。
    ③ 二重行政の問題の理解不足の露呈。
     かかる個人的な問題点を把握できただけでも良しとすべきか。

     ただし、
    ① 大阪都構想(あるいはこれに類する制度改革・政令指定都市の解体)で、無駄の削減が可能か。本書で言われる無駄は、結局、バブル期・バブル崩壊期の事業計画の甘さに起因しているだけではないか。
    ② 人口減少が前提となる中で、これまでの同様の府市の対立構図が維持できるのか。共倒れにならないか。
    ③ 結局、国との税源分配の問題に帰着しないか。
     という想念も湧いたところである。

     さて、かなり多様な視点で書かれている本書。対立軸としては以下の如し。
     ① 大阪府と大阪市(都道府県と市町村)
     ② 東京と大阪
     ③ 大阪と他の中核都市
     ④ 京阪神
     ➄ 地方自治体と国
     ⑥ 都市と農村
     ⑦ 市街地と郊外
     ⑧ 大阪等日本の都市と他国の都市

     あるいは、別の切り口として、
     ⑴ 戦前と戦後、そして平成時代の史的変遷
     ⑵ 官僚的側面と納税者という地位的・人的側面、
       あるいはそれらの対抗関係
     ⑶ 選挙制度を含む政治面と、
       税務・予算分配という財務面、
       都市問題(かつては公害・上下水道などのインフラ整備。現在は高齢者・医療介護など)

    という3つの側面という多様な視座が、本書ではキーとなっている。
     これらは、かなり混乱させがちな多様性レベルであり、確かに良くまとめ上げたなぁ、という印象の一方、流石に判り難いよ、という印象とが混在する。

     要再読か。

  • 【目次】
    はじめに [i-viii]
    大都市「大阪」の来歴/「大阪都構想」と大都市の役割/本書の構成
    目次 [ix-xiv]

    第 I 章 大都市の成立と三つの対立軸――問題の根源 003
    1 自治の確立――三市特例から六大都市へ 003
    大都市のイメージ/市制施行と有力者による支配/三市特例とその廃止/市長の役割をめぐる論争/都市官僚制の成立/国家事業から都市計画へ
    2 国家への挑戦――特別市運動と東京都制 016
    拡張する大都市/「大大阪」へ――全国最大の都市に/特別市運動の論点――府県監督への不満/東京の特殊性/東京都制の成立と特別市運動の挫折
    3 挫折と埋没――「特別」でない都市へ 028
    特別市制と残存区域問題/府県と大都市の対立――政令指定都市制度へ/財政調整制度の導入――都市から農村への分配/伸長性を持つ財源の喪失/全国計画のなかの大都市/大阪市の位置づけ

    第II 章 都市問題と政治――先進地域としての縮図 041
    1 大都市が抱える宿痾 041
    都市の改造と「貧民」の排除/釜ヶ崎形成の起点/戦前の産業公害/公害の激化――府と市の権限争い/先頭を走った大阪市――都市計画と都市官僚制/権限と財源の制約
    2 革新勢力の台頭と退潮 052
    革新勢力の源流/統一戦線の挫折/一九五五年体制下の停滞/革新自治体の時代――黒田了一の府知事就任/革新の衰退――社共共闘の瓦解/都市官僚制との距離
    3 自民党長期政権下の大都市――進む多党化 064
    「保守の危機」と自民党の対応/「都市政策大綱」という提案/多党化とその影響/大都市は「搾取」されてきたか/選挙制度の歪みと「自民党システム」

    第III章 未完の再編成――拡張の模索 079
    1 大阪市域の固定化と都市基盤の整備 079
    揺らぐ都道府県境界/広域行政と府県合併/大阪市域拡張の試み――中馬馨の挑戦/大阪府による「機能分担」の主張/戦災復興から万博へ/臨海部への拡張
    2 行き詰まる大阪 093
    府による開発――大阪府企業局/開発事業の重複/人口流入の終焉/再開発事業の過剰な競合/リーダーシップ欠如の象徴/「スラム」から貧困問題へ/整理できない密集市街地
    3 浮上する大都市――二〇〇〇年以降の都市回帰 107
    「世界都市」への挑戦と挫折/都市への回帰/「自民党システム」の動揺/地方分権改革――溶解する自民党の基盤/補助金削減と財源移譲/顕在化する都市と農村との対立

    第IV章 改革の時代――転換期に現れた橋下徹 123
    1 遅れてきた改革派 123
    「相乗り」と「無党派」/「納税者の論理」による行政改革/大阪府の転落/無党派知事横山ノック/大阪府政の安定と継続/チェック機能の弱体化/橋下徹の登場
    2 「橋下改革」――論点と対立構図の推移 139
    圧勝からの改革/国への働きかけ/水道事業統合問題/WTC庁舎移転問題/府議会自民党の分裂/大阪府と大阪市の再編構想/「大阪都構想」
    3 「大阪維新の会」結成――地方政党という戦略 156
    新党結成と府市議会議員の参加/対立構図の確定――既存政党と大阪市長/統一地方選挙の戦略/大阪維新の会の圧勝/ダブル選挙という手法/高投票率での勝利/ローカル・ポリティクスの“全国化”

    第V章 大都市のゆくえ――ふたつの論理の相克 173
    1 制度改革の条件 173
    市長対議会/大都市の位置づけ/革新自治体との比較/都市の政党というポジション/政党再編成の可能性/ふたつのハードル――参議院と東京都政
    2 大都市制度の設計――争点とその対応 185
    都市への配慮は可能か/現行制度下の限界/都市の自律――府県と政令指定都市の統合/地域限定の分権改革/大きすぎる大都市
    3 都市をめぐるふ... 続きを読む

  • まず、この本は橋下体制の是非を問うものではない。
    そこに至る経緯を含めて考えるべきという示唆を与えるものだと私は理解している。

    以上の点について、しっかりと答えてくれる本はこれを置いて他にない。

  • 「大阪都構想」が注目される「大阪」を題材に、近代以降の大都市行政の歴史を丁寧にたどりながら、日本における大都市の問題を論じている。
    大都市をめぐっては、戦前から現代に通じる3つの対立軸―市長VS地方議会、東京VSその他の大都市、大都市VS全国(あるいは農村)―があるとし、それにそって分析を進めている。また、大都市行政に普遍的なものとして「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」というトレードオフの関係をもつ2つの論理の存在を指摘し、「大阪都構想」にもその2つの論理が内在していると指摘する。そして、それらをいかにバランスさせるかが重要であると主張している。
    本書は、大阪の都市行政(市政・府政)の歴史、そして、それを通じての日本の都市行政の歴史が非常によくまとまっていると感じた。また、大阪都構想を橋下徹氏の個人的なパーソナリティと結びつけるのではなく、政策として客観的に分析しようとしているのにも好感が持てた。
    個人的には、大都市は、日本経済、また地域経済を牽引する重要な役割をもった存在だと考えており、一元的なリーダーシップによって企業体としての都市全体の利益を見据えた経営を目指す「都市官僚制の論理」がより強化されるべきだと思う。その点で、大阪都構想というのは都市としての力を強化するための一つの解答になりうるのではないかと感じた。著者は、「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」のトレードオフ性を強調するが、私は、2つの論理は都と特別区等との役割分担により両立可能なのではないかと思う。
    「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」をどのような手続きでバランスさせるか、という点についての、著者の提案である「都市における政党政治の創出」については、興味深くはあるが、地方自治に一律に国政のような政党政治を持ち込むことにはいささか懸念がある。ただし、大都市に限定して、地方議員選挙に比例代表制を導入したり、議院内閣制的な仕組みを導入することは検討に値すると思う。現行の地方自治法は、大都市であっても、小規模な町村であっても、一律に同様の二元代表制を規定しているが、本書を読んで、それぞれの自治体の性格に応じて、統治システムを選択可能にする多元的な自治制度が望ましいという思いを新たにした。

  • 自民党の政治システムは都市から生じた利益を農村に配分するという制度であり、この制度の下で東京を除く大都市は自律的成長を制約されたというのが本論の主張である。

    住民自治・大都市と自民党戦後政治体制を関連づけた論文は初めて読んだと思う。

  • 関西出張時に梅田で買ってきた本その2。その1は「阪急電車(有川浩)」

    一般に大都市は、農村と比べて豊かであり、社会問題は少ないと認識されている。「豊か」というのは、少なくとも経済的には、客観的事実であるが、「社会問題が少ない」という認識が正しいかどうかは怪しい。社会問題というと、少子高齢化、過疎化や交通の衰退など、農村が抱える問題が挙げられることが多いが、都市もこれらとは質の異なる問題を抱えていることが分かる。自分なりに整理してみると、以下の三点が問題を引き起こす主要原因である。

    1. 高い昼夜間人口比率
    大都市には、昼になると多くの人が通勤で流入し、夜になると郊外へ流出する。東名阪のように、市町村境界を越える通勤が当たり前になると、大都市は「インフラを整備しなければならないのに財源が限られる」という問題に直面する。昼間に流入する人々のために交通インフラ等を整備しなければならないが、郊外居住者は郊外の自治体に住民税を納めるため、大都市は限られた財源でのインフラ整備を迫られる。

    2. 自民党システム
    自民党システムとは、大都市から農村への所得移転により、農村部からの支持を得るシステムのことである。一票の格差がこのシステムを固定化する。さらに、自民党内での議員に対する評価では、当選回数が重要指標であるので、他党候補との競争が激しい大都市選出の議員は自民党内で出世できない。

    3. 政治的無関心
    自民党システムにより大都市の民意が国政に反映されなくなると、大都市の有権者は政治に対して関心をなくす。この結果、大都市において「支持政党なし」が拡大する。

    著者は、上記のような制度的背景から、橋下市長と大阪維新の会が支持される理由を考察する。大阪都構想に関する論評は、橋下市長の個性と結びつけたものになりやすいが、この本では都構想と市長の個性は切り離されている。本の約半分を、江戸末期以後の大阪市政・府政の歴史分析に割いている。著者は大阪市立大学の行政学の研究者であり、数ある都構想論評の中では最も学術的な本だと思う。

  • もう一つの大都市、大阪。
    近年では、大阪都構想をはじめとして、自治の意味を考えさせる政策課題を提供する。大阪の特性を「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」の2つの視点から、鮮やかに論じている。では、東京と考えさせられる。

    OPACへ⇒https://www.opac.lib.tmu.ac.jp/webopac/catdbl.do?pkey=BB02168851&initFlg=_RESULT_SET_NOTBIB

  • 国内第二の都市であり、最大の地方都市である大阪が
    その制度上持つ矛盾とそこから生じる問題、
    そしてそれに対する解決案を
    橋下市長の大阪都構想をもとに解説する一冊。
    歴史を振り返りつつ体型的に説明されるため
    内容を細かく理解できずとも方向性はわかりやすい。
    大阪都構想をよりよく理解するのに適していると感じる。

  • 廃藩置県以降の大阪市の行政の歴史。
    橋下徹の主張する「大阪(日本)維新の会」が唱える、「大阪都構想」まで。

    もうかなり以前にも府市一体化の話があったことなどは、新たな知識を得ることができたが、本書の内容が、ただただ行政史中心の内容が多かったことが残念。

    期待しすぎていたのかも。

  • 図書館で読む。期待はずれでした。題名と中身が違うのです。

  • 良書。巻末の参考文献、注記を見るだけで、筆者が本書の執筆のために過去の大都市研究の膨大な蓄積を踏まえて、大都市の歴史を整理、今後の大都市のあり方を書いたことが伝わってくる。大都市について論じる人は必ず読むべき書。

  • 大阪を事例として、大都市制度の変遷についてまとめられている。
    筆者によると、大阪都構想などの大都市制度改革は、二つの論理を内包しているとする。一つは、都市経営の観点からすると、二重行政の撤廃などの効率化を目指し、国際競争力を高めるというものである。いまひとつは、住民に密着した行政サービスを遂行するというものである。このように、部分と全体に関する二つの論理が内包されているため、二つの論理が、衝突してしまうケースもありうる。そのために、いかにして二つの論理のバランスをとるかがポイントになる、と筆者は論じている。
    大都市制度の在り方は、地味なテーマではある。しかしながら、近年、大都市制度は各都市で提案されており、政治の世界において、ホットなテーマであると言えよう。本書は大阪を事例にしているが、他の都市でも大都市制度の在り方をめぐる議論は多く存在しており、大阪のみならず、大都市制度に興味がある方は、本書を読むことを勧める。

  • 連綿と続く、国家と大都市(大阪)の抗争を、近代から現代に至る歴史の中にプロットし、大都市の抱える問題と打開への道程をレクチャーしてくれます。
    いわゆる「大阪都構想」なるものが、歴史の中でいく度となく、浮かんでは消えてきたことを知りました。また、このような構想が出てくる必然性もよくわかりました。頭が整理できた感じです。
    明晰な人が語ると、錯綜する物事も見通しが良くなり、理解しやすくなるというお手本ですね。論者の若さに驚きました。更に研鑽を積まれ、ご活躍されるよう期待します。(^-^)/

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停滞が続く日本。従来の「国土の均衡ある発展」は限界となり、経済成長の"エンジン"として大都市が注目を集めている。特に東京に比べ衰退著しい大阪は、橋下徹の登場、「大阪都構想」を中心に国政を巻き込んだ変革が行われ、脚光を浴びた。大都市は、日本の新たな成長の起爆剤になり得るのか-。本書は、近代以降、国家に抑圧された大阪の軌跡を追い、橋下と大阪維新の会が、なぜ強い支持を得るのかを探る。

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