ujikenorioさんの感想
2013年4月27日
長有紀枝『入門 人間の安全保障 恐怖と欠乏からの自由』中公新書、読了。概念提唱から約二〇年。本書は地雷禁止条約策定交渉ほか各地の人道支援の最前線にたち続けた著者が、その歴史と現在を解説する包括的入門書。教科書にも便利な一冊だが、著者の実践と知見が随所に落とし込まれ新鮮な一冊。 冒頭で国際社会の成り立ちと現況を紹介、先ず紛争違法化の歴史から、前史となる国際人道法の成立を見、概念形成と実践主体、内実としての「恐怖からの自由」「欠乏からの自由」を取り組みの事例に沿ってみていく。人道介入のジレンマは読み応えがある。 最後は「東日本大震災と『人間の安全保障』」。弱者にしわ寄せされる被害は、人間の安全保障の問題が海の向こうの世界でない事実を可視化させたといえよう。震災関連死の男女比は女性が上位になる。集約的一書ながら「ここからはじめる」スタートとなるなるのではないと思う。
長 有紀枝(立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科・社会学部教授、難民を助ける会[AAR Japan]会長、人間の安全保障学会[JAHSS]第5代会長) 「2023年 『SDGsを問い直す』 で使われていた紹介文から引用しています。」