夫婦格差社会 - 二極化する結婚のかたち (中公新書)

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著者 : 橘木俊詔
制作 : 迫田 さやか 
  • 中央公論新社 (2013年1月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022004

夫婦格差社会 - 二極化する結婚のかたち (中公新書)の感想・レビュー・書評

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  • ○この本を一言で表すと?
     いろいろなデータから日本の世帯別の格差について、非難を恐れずに書いている本


    ○面白かったこと・考えたこと
    ・タイトルから「夫と妻の間の格差」の本だと思い、本屋でパラパラと目次や内容を見た上でもその認識が変わらなかったのですが、実際読んでみると「夫婦を中心とした世帯間の格差」の本でした。

    ・男女の優先順位の違いなどのデータがいくつも出てきて、それ自体が結構面白かったです。

    ・「パワーカップル(高所得夫婦)」「ウィークカップル(低所得夫婦)」「結婚『できない』人たち」など、人によってはカチンときそうなキーワードが躊躇なく使われ、統計データから推論して「貧困者は同レベルの者と結婚している」「貧困者はなかなか結婚できない」などの結論を導き出しているところなど、非難を恐れない人が書いているのだろうなと思い、個人的には痛快だなと思いました。

    ・個人の所得ではなく、世帯の所得の方が重要という意見は、確かに世帯所得の方が生活とリンクしていてその通りだなと思いました。(第1章 夫の所得と妻の所得)

    ・夫の所得が高ければ妻の働く率が低い、夫の所得が低ければ妻が所得を補おうとするということが「ダグラス・有沢の第二法則」と定義されていることは初めて知りました。今はそうとは限らず、夫が高所得でも妻が働くことが多く、夫が低所得でも妻が働いていないことが多いという話は周りを見ている実感でもそうだなと思いました。妻の所得がさらに世帯格差を広げているというのは意識していませんでしたが、そうかもしれないなと思えました。(第1章 夫の所得と妻の所得)

    ・結婚相手に何を望むかで「相補説(自分にないものを望む)」「類似説(自分と同じものを望む)」があり、実際はそれぞれの要素(経済力、体格、容姿、性格)の優先順位が人によって違い、それぞれの要素にどちらが適用されるか異なるというのはそりゃそうだと思いました。だからこそ統計を取ることは難しそうですが。(第2章 どういう男女が結婚するのか)

    ・晩婚・未婚・離婚原因の三仮説「女性の自立仮説」「相対所得仮説(稼得能力と生活水準の比率で結婚・離婚を判断)」「つり合い婚仮説(ジョブ・サーチ理論と同じく、マッチングがうまくいくかどうかが理由)」で日本では「つり合い婚仮説」が一番近いというのはなかなか実感としても納得できるなと思いました。(第2章 どういう男女が結婚するのか)

    ・三高(高身長、高学歴、高収入)は聞いたことがありましたが、3C(快適、通じ合える、協力的)という言葉は初めて知りました。(第2章 どういう男女が結婚するのか)

    恋愛結婚と見合い結婚の区別はそれほど厳密ではないという意見(友人等を通じての紹介は見合い的な要素もあるし、見合いがきっかけで恋愛ということもある)はなるほどなと思いました。(第2章 どういう男女が結婚するのか)

    ・学歴がそれほど結婚の決定要因でなくなったというデータがある一方で、「名門大卒」「非名門大卒」「その他」という三極化になっていて、「名門大卒」と「非名門大卒」の間に大きな違いが出ているという指摘は面白いなと思いました。(第2章 どういう男女が結婚するのか)

    ・高水準職業同士、低水準職業同士が結婚する傾向にあること、特に女性側から見ると高水準職業の女性の結婚相手はほとんどが高水準職業であるという結果はなかなか興味深いなと思いました。(第2章 どういう男女が結婚するのか)

    ・パワーカップルの例で、「医師」「法曹」「研究者」「管理職」が挙げられて詳しく説明されていて、それぞれ母数の男女比が大きく異なることから女性はほぼ同職の男性と結婚し、男性は他の結婚相手を見つけることが多いということは納得です。出会う場所が限られていて、しかも共感を得やすい相手を探すとなると同じ職場で結婚することが多いというのは、実際そうだろうなと思いました。(第3章 パワーカップルとウィークカップル)

    ・ウィークカップルの例ではデータとして低学歴・低所得同士の夫婦が貧困世帯になることが多いこと、単身者や母子家庭には顕著にみられることが書かれていました。(第3章 パワーカップルとウィークカップル)

    ・生涯未婚率の上昇はよく聞く話ですが、その要因分析がされていて面白かったです。結婚できない理由の第一位が「適当な相手にめぐり会わない」で第二位が「結婚資金が足りない」。(第4章 結婚できない人たち)

    ・未婚者の中には交際相手もいない者が多いこと、職場への帰属意識が弱くなってきたことから職場結婚が衰退していること、未婚期に友人が多くその中でも異性の友人が多いほど結婚しやすいという統計がある中で年齢を重ねると友人が減少する者が多いことなど、妥当かどうかはともかく、何となく当たっていそうなこともあるなと思いました。(第4章 結婚できない人たち)

    ・「異性と交際する上での不安」についても内閣府がしっかりアンケートを取って統計にしているというのは面白いなと思いました。「自分は異性に対して魅力がないのではないかと思う」が第一位、「どのように声をかけてよいかわからない」が第二位というのは妥当な結果だろうなと思いました。(第4章 結婚できない人たち)

    ・年収300万円の壁が存在し、かなり明確に「既婚」「恋人あり」の数に差があるという統計結果はなかなか現実的だなと思いました。(第4章 結婚できない人たち)

    ・離婚についてもいろいろな統計が出始めているというのはなかなか興味深かったです。離婚の理由として「サーチ理論の問題のマッチング・ミス」「情報の非対称性による結婚後に分かる情報蓄積による不満」「不確実性(予期しない夫の収入減、妻の収入増など)」としているのはなるほどと思いました。(第5章 離婚による格差)

    ・失業率と離婚率に相関関係があること、「金の切れ目が縁の切れ目」というのは世知辛いですがそういうものだろうなと思いました。(第5章 離婚による格差)

    ・離婚後の養育制度が破綻しているといことは聞いたことがありますが、数字で見るのは初めてでした。相手に収入が期待できなければ養育費を定めないというのは当然だと思いますが、貧困が原因での離婚が多いことと併せて考えるとなかなか深刻だなと思いました。(第5章 離婚による格差)

    ・都市と地方の収入格差と結婚格差はよく聞きますが、これも統計で見たのは初めてでした。結婚相手と出会う要因なども分析されていて面白かったです。統計的にはそれほど大きな差がなかったことが逆に意外に思いました。(第6章 地域差を考える)


    ○つっこみどころ
    ・図表が読み辛いなと思うことがありましたが、著者も読み違えているところがありました(P.97)。

    ・データから推論するところまでは面白いだけでしたが、「~の状況から離婚しないことを勧める」「~より、勇気を出して数を打ってチャレンジしてもらいたい」などのアドバイスは学者らしい放言だと思いました。

    ・ところどころみられる施策提言は実現可能性が低そうな、弱者救済にしか目が行っていない意見だなと思いました。

    ・ところどころ、「男性は一部の者が複数回結婚することで他の者に女性が回らない」のような断定が他の統計からの推論と同じニュアンスで入っていて笑えました。

    ・この本の推論・結論の基になっている統計データに偏りがあり、海外の本に比べて根拠データの検討が弱く、ある統計データを見て即結論を出すところが全体的にみられ、各結論もこの本全体としても信憑性が薄いかなと思いました。本の中でも「これだけでは結論は出せないが」などと留保しているところもあるので、著者も分かっていることかもしれませんが。

    ・あとがきで橘木氏が単著で出版しようと考えていたところを夫婦というテーマから女性の意見も必要ということで大学院生の迫田氏との共著にしたと書かれていましたが、ほとんど橘木氏が書いたか、迫田氏が橘木氏の意向を酌んで書いたかのどちらかだろうなと思いました。時折「イクメン」などの現代語が書かれているところは迫田氏が協力しているのかもしれないなと思いました。

  • データをわかりやすく説明している

  • 1:子育てをしながら若い夫婦、特に妻が働くことは大変な困難を伴う。そのため育児休業後に企業に戻った母親がの処遇が不利にならない対策、保育施設の整備や保育の条件をニーズに合ったもの(たとえば乳幼児の保育確保や長時間の保育など)にする。
    子供を公共財として育てる精神をもっと強くするには国民は税負担の増加を容認せねばならないだろう。

    2:夫婦間の経済的格差を決めるのは、女性、あるいは妻の就業状態という時代である。

  • 三葛館新書367.3||TA

    1970年代~1990年代にかけて、日本は「一億総中流社会」と言われてきました。それが現在では「格差社会」といわれ、所得格差や教育格差、地域格差など様々な名前がつけられた「格差」が存在しています。
    本書では夫婦の所得傾向や夫と妻の職業・学歴の組み合わせなどから、日本の格差拡大について検討を行っています。また単身者や離婚後の格差についても目をむけ、最後の6章では都市と地方の夫婦関係の実態を調査し、その格差について考察をしています。
    現在の社会の状態を知り夫婦として、家族として「格差」の波に飲まれないようにするために、オススメしたい1冊です。
                                  (うめ)

    和医大図書館ではココ → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=65292

  • 当たり前のことといえば、当たり前のことが、統計データを基に綴られている、というのが正直な感想。個人的には、特段、新たな発見は無し。政策提言も、当たり障りのない感じでおさめられている。最終章=第6章での、田舎の母親と都会に出た娘との会話の部分、母親が広島弁っぽい話し方のところが、妙にリアルだったのが面白い。

  • 未婚女性が30代になると、友達が減り、紹介してもらえる確率が減ることで結婚しづらくなる、てところが印象に残った。

    男性には年収300万円の壁があり、300万円未満の場合は結婚してる割合、恋人がいる割合が減るらしい。

  • 読了。

  • 近年、夫の所得と妻の有職率との逆相関が薄れている。これは、近年の格差社会化に少なからず影響を与えている。

  • 再分配所得におけるジニ係数が上昇していることから、日本社会が格差社会になってきていることが言える。従来は所得格差について論ずるとき、個人の所得・賃金が注目され、その家計の核である夫婦間の格差についてはあまり語られてこなかった。以前は「夫が外で働き、妻は家事育児」という形態の家庭が多く、家計所得は夫の所得額とほとんど変わらなかったためである。また妻に関しては、「夫の給料が高ければ専業主婦となって家事に専念し、夫の給料が低ければその収入を補うために妻も働く」という法則が働いており、これが社会全体の家計所得の平等化に寄与していたが、現代では妻が働くか働かないかが、夫の給料とは無関係のところで決まり、妻の所得が家計間の格差を助長しているということが様々なデータから明らかになった。これは、女性労働者にアルバイト・パートなどの非正規雇用労働者が多い一方で、高学歴女性が増加し、専門職や管理職に就く女性もいて、女性間での所得格差が男性よりも顕著なことも理由の1つである。このようなデータ分析結果のもと、本書では、高所得夫婦・低所得夫婦のそれぞれの特性を子供の有無、学歴、職種などの点から考察し、第2章では、どのような男女が結婚して経済生活を共にするのか、経済学的な視点も含めつつ分析した。この際参考にしたデータが、「結婚相手に何を求めるのか」、「どのようなプロセスで結婚に至ったか」、「結婚のメリットは?」といった質問を含むアンケート調査の結果である。夫婦の学歴・職業に関しては、男性が異なる学歴・職業の女性と結婚したり、同じ学歴・職業の女性と結婚したりとまちまちであるのに対して、女性は同じもしくは自分より高い学歴の人や同じ職種の男性と結婚する傾向があることを示しており、これにより所得格差が両極端に位置するパワーカップル・ウィークカップルが形成される。夫婦間格差の経済基準が妻の就業形態、年収によって決められることが言える(夫の経済力に頼る形態、すなわち専業主婦もまだ少なくないので、その場合は別)。
    次に「貧困」に焦点を当てると、日本の貧困者の半数以上が高齢者単身世帯や母子家庭に集約される。これには年金で受け取れる額の低さや母子手当の不十分さなど、支援制度の問題もあるが、非正規雇用で働く若者が増えており、賃金が低いことも要因の1つだ。
    このほかに本書では、結婚が出来ない人たちや、離婚する夫婦の経済状況や都市と地方の違いにもスポットを当て、広く様々な形態の家計状況の分析をしている。

    現代では特に都市で、核家族が増えている背景もあり、「夫婦」に焦点を当てて所得格差について論じていくことは面白いと思う一方で、このような発想が生まれた背景に女性の社会進出がある程度進んだことも挙げられるのではないかと思った。女性が働いて家計に多く貢献することが広く見られるようになったことで、本書のような分析が可能になったと思うからである。男女間の所得格差が未だ大きく開いていることが本書でも述べられたが、これは男女の平均所得の格差であって、専業主婦がまだ多く存在していること、専業主婦でなくとも妻は夫の経済力にある程度依拠しても良いという考え方が未だ根強い中では、平均所得において大きい差が出るのは当然かと思った。しかし、女性が出産のために仕事を中断して再び戻ってくるということがしにくい、できたとしても非正規労働のような賃金の低いものになってしまう、というような問題点はまだまだ解決されていないように思える。母子家庭の貧困率の高さにもその現状が反映されていると思う。

    多少の新しい発見もありつつも、図表見れば分かるってとこもあってさくさく読み進んだから、内容的にはそんな濃くない。読書慣れしてる人は物足りないかも。読書慣れワンステップとしてまず積み重ねて達成感を得て原動力に繋げてこうと思った私にはかえって合ってた気がする。

  • えげつない本。豊富なデータを元に、夫婦という関係を築くにあたり、どのようなメリットやデメリット、そして困難が生じるのかが示される。寝れなくなるけど、読んでおいてよかった。

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格差が拡大しつつある日本。家族の最小単位である「夫婦」もその流れに拍車をかけている。さまざまなデータに基づき、日本の夫婦の今を探ると見えてくるのは、夫の所得と無関係に働くようになった妻の影響力の大きさだ。医師夫婦に代表されるパワーカップルと、対極にある若いウィークカップルなど、興味深い事例を紹介。また、結婚できない人たちから、離婚、そして地域差まで視野を広げ、夫婦をめぐる格差を考える。

夫婦格差社会 - 二極化する結婚のかたち (中公新書)はこんな本です

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