夫婦格差社会 - 二極化する結婚のかたち (中公新書 2200)

著者 :
制作 : 迫田 さやか 
  • 中央公論新社
2.93
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本棚登録 : 347
感想 : 46
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022004

作品紹介・あらすじ

格差が拡大しつつある日本。家族の最小単位である「夫婦」もその流れに拍車をかけている。さまざまなデータに基づき、日本の夫婦の今を探ると見えてくるのは、夫の所得と無関係に働くようになった妻の影響力の大きさだ。医師夫婦に代表されるパワーカップルと、対極にある若いウィークカップルなど、興味深い事例を紹介。また、結婚できない人たちから、離婚、そして地域差まで視野を広げ、夫婦をめぐる格差を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 女性の就業・収入は夫の収入の補完的に作用するというダグラス・有沢の第二法則が崩れ、高学歴・高収入男女同士の婚姻と、夫が高収入であっても就業する女性の存在が、世帯間格差を広げているとする。

  • 世帯の格差が広がっている理由は「女性の就業、収入」

    以前は高収入の夫の妻は無業で、低収入の夫の妻はその収入を埋めるために就業していた。
    しかし現代ではそうでなく、高収入の夫を持つ妻も働いたり、低収入の夫でも無業の家庭があるという。
    また、前者の高収入、高学歴、高職業の世帯を「パワーカップル」低収入、低学歴、低職業の世帯を「ウィークカップル」という。

    高学歴は高収入に、低学歴は低収入になる傾向があるが、高学歴、高収入、高職業という同類婚が増えつつあり、高学歴であるほど結婚子育て中も就業継続するためにそれも格差の1つである。

    そして最後には、現代は離婚も多く、専業主婦はリスキーな選択であるため、女性も経済的に自立すること、男性も家事能力を高める必要があると述べている。

  • 夫婦格差社会(橘木俊詞・迫田さやか)
    『夫の収入が高ければ妻は専業主婦となり、夫の収入が低ければ妻が働き出す。』この効果によって、夫婦間(とこの本では言っているが世帯間のことと思われる。)の格差が平準化されるという『ダグラス・有沢の第二法則』。この法則が、夫の収入と無関係に働くようになった妻の影響(男女間の不平等の是正、女性の社会進出などによる)で崩れつつあることを指摘。コレによって世帯収入の二極化(パワーカップルとウィークカップル)が進み、格差が広まっていることを豊富な事例で紹介する本。
    アマレビュでも書いてる人がいたが、そりゃせやろなという内容がほとんどだった。

    新鮮だったことも何点か。

    学歴と離婚率が我が国では負の相関があるとのこと。(もちろん因果関係ではない。)ノルウエーやイタリアでは正の相関があるらしい。シンプルに考えると学歴が高いほど自立能力が高いので離婚率は上がりそうなものだが。
    高学歴の人は計画的に結婚するのと、低学歴だと金銭トラブルが生じやすいことが関係しているのだろうか。ここはまだ、分かっていないらしい。

    あと、1960年代くらいまでは『跡継ぎ』思考も相まって、離婚後の親権が夫婦どちらに行くかは半々だったらしい。近年では周知の通り8〜9割母親。

    離別した父親から養育費をもらっている割合はなんと19.7%。

    日本で母子家庭が貧困層なのは上記の理由とともに、そもそもの離婚率が貧困層に多いという事実が効いている。

    意外だが、都市部ほどダグラス・有原のM字カーブ(女性の年齢と就業率の相関)が顕著で地方ほど平坦らしい。これは地方が平均収入低いので共働きじゃないとやってられないからかもしれないと。地域格差はあるものの、全体としては平坦化しているというのがこの本の主張。

  • 「パワーカップル」「ウィークカップル」

    本書はとりあえずシングルは置いといてカップルの格差拡大に言及しています。
    昔は旦那に甲斐性があれば専業主婦で家を守り子供を育て
    無ければ補うために奥さんが働いて
    ってのが「ダグラス・有沢の第二法則」やったそうです。

    今はその法則が崩れて稼げる女子がそのまま稼いで同じで甲斐性の旦那を見つけ
    「パワーカップル」が生まれてきたそうです。
    ただそうなると晩婚化と少子化が進んでいくとのことです。

    子供は社会的に効用が高いです。
    労働力としてだけではなく消費としても期待できます。
    たしかに毎年何回も旅行に行くとかええトコに外食に頻繁に行くとかしないと消費性向に向かわず貯蓄性向に向かいます。
    我が家も今年はダブル受験生なのでまさに飛ぶようにお金が出ていきますが子供がいなければこんなに使うことはないと思います。

    ただ「子供は社会的効用が高い」といっても「パワーカップル」は自分の楽しみを犠牲にしてまで子供を持つインセンティブが働かないと思います。
    また「ウィークカップル」はもっと切実で先立つモノがなければ子供なんて…ってなると思います。

    そうなると少子化対策と連動した貧困対策が必要になるとは思います。
    ただもっと必要なのは意識なんでしょうね。
    子供が社会に有用であるならもっとお金をかけて良いと思いますし不幸な子供たちが減る政策にお金をかけるべきなんやと個人的には思います。

    もっと若いうちに子供が欲しくなるような支援があれば「パワーカップル」も早くに子供を産み育てるでしょうし
    「ウィークカップル」もお金に気兼ねなく子供が持てるでしょうし
    結婚したいのに所得が低くて諦めてる層も希望が持てる社会になるんやないかなと思います。

  • 昔の共稼ぎは貧乏のため。現代の共働きは個人個人が裕福になるため。

  • NDLC EC161 経済社会学
    件名(キーワード) 階層--日本
    件名(キーワード) 夫婦--日本

    361.8 : 社会的成層:階級,階層,身分
    エリート, 階級, 階級問題, 階層, 学歴社会, 社会階級, 社会階層, 社会的移動, 社会的成層, 身分

  • 昔は、夫が低収入であれば妻が働き、全体として格差が減る方向と言われていたが、最近の日本では、かえって、格差が拡大している。
    その理由として、高学歴のペアで共稼ぎ(しかも子供なし)のパワーカップルとそうでないウィークカップル(共稼ぎだったが、子育てで妻が退職とか、あまり高学歴でなく、収入もすくないなど)にわかれている。

  • データをわかりやすく説明している

  • 三葛館新書367.3||TA

    1970年代~1990年代にかけて、日本は「一億総中流社会」と言われてきました。それが現在では「格差社会」といわれ、所得格差や教育格差、地域格差など様々な名前がつけられた「格差」が存在しています。
    本書では夫婦の所得傾向や夫と妻の職業・学歴の組み合わせなどから、日本の格差拡大について検討を行っています。また単身者や離婚後の格差についても目をむけ、最後の6章では都市と地方の夫婦関係の実態を調査し、その格差について考察をしています。
    現在の社会の状態を知り夫婦として、家族として「格差」の波に飲まれないようにするために、オススメしたい1冊です。
                                  (うめ)

    和医大図書館ではココ → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=65292

  • 当たり前のことといえば、当たり前のことが、統計データを基に綴られている、というのが正直な感想。個人的には、特段、新たな発見は無し。政策提言も、当たり障りのない感じでおさめられている。最終章=第6章での、田舎の母親と都会に出た娘との会話の部分、母親が広島弁っぽい話し方のところが、妙にリアルだったのが面白い。

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著者プロフィール

京都女子大学客員教授,京都大学名誉教授
1943年兵庫県生まれ。
小樽商科大学,大阪大学大学院を経て,ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学教授,同志社大学教授を歴任。元日本経済学会会長。
専門は経済学,特に労働経済学。フランス,アメリカ,イギリス,ドイツで研究職・教育職に従事するとともに,日本銀行,経済産業省などで客員研究員を経験。
和文,英文,仏文の著書・論文が多数ある。
〔主要近著〕
『日本の構造:50の統計データで読む国のかたち』(講談社,2021年)
『教育格差の経済学:何が子どもの将来を決めるのか』(NHK出版,2020年)
『“フランスかぶれ”ニッポン』(藤原書店,2019年)
『日本の経済学史』(法律文化社,2019年)
『21世紀日本の格差』(岩波書店,2016年)
『フランス産エリートはなぜ凄いのか』(中央公論新社,2015年)

「2021年 『フランス経済学史教養講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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