- Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121022080
感想・レビュー・書評
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2016.8読了
シンガポール赴任となり、現地の書店で購入。とても勉強になりました。著者はシンガポール人とご結婚されるほどのシンガポール研究の第一人者のようです。歴史を客観的に示しつつ、物語としても面白く読める、秀作です。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ラッフルズがインド・中国の貿易の中間点で、便利な港として「発見」したジャングルの島が、イギリス植民地、日本占領時代を経て、マレーシアの一部になるも追い出され、「誰にも祝福されない」独立を成し遂げてから、いかにして水も資源もない小国が今の経済発展を成し遂げていったか、ということを分かりやすく解説する本。
イギリスの分割統治の話(p.21)や、日本占領時代はナショナリズム意識を生むための「膨大な犠牲を払った学習機会」(p.56)としても捉えられる話なんかは納得だった。本書にも書いてあるが、シンガポールに行って、国立博物館の展示を見ていて思ったが、日本占領時代は苦難の時代だけれども、イギリス植民地時代はとても良いものとして描かれているのが印象的だった。
今の旅行者の目に映るシンガポールからは想像もできない独裁が行われていたというのは驚きだった。例えばインド人弁護士のジャヤレトナムという人(p.100)は、1980年代に国会で不適切な言動を行ったとして潰されてしまったし、2011年ですら「野党の立候補届けが受付時間を三〇秒ほど超えたため立候補を認められなかった」(p.209)ということがあったらしい。「野党候補者を選んだ選挙区の公共住宅修繕を後回しにする」(p.208)というのもあったらしく、すごい独裁だなと思った。北朝鮮という国が近くにあるだけに、これくらいのことなら大丈夫なのかなあとか思う。
シンガポールには宗教はないが、あるとすれば「プラグマティズム」というのは、恐ろしいというか、その中で生きていく人は大変だろうなあと思う。例えば「成績の悪い者には、これ以上の教育は無駄という『効率』が、教育でも原理とされている」(p.120)なんて、恐ろしい。「生存のための政治」をせざるを得ない状況がそうさせているのだということがよく分かった。(16/07/29) -
2016/2/10
シンガポールの改革を進めてきたリー・クアン・ユーの一生のような本。
・極めて合理的な政策により経済成長してきた反動で、この国では文化・宗教といった経済以外の教養が忘れられている。
・リー・クアン・ユー時代の人民行動党はこれまで野党の勢力が少しでも拡大すると厳しく弾圧してきた。
・ゴー・チョク・トンやリー・シェンロンの時代になり、自由な言論が許されるようになってきたこともあり、海外誘致の姿勢により国内を顧みてこなかったつけが回ってきている状況。
今後の舵取りは、経済成長一辺倒であった10年前よりも、遥かに難しいだろう。
資源をもたない経済大国シンガポールの今後の動向は今後も注視していくつもり。 -
訪問前の予習として。
華やかで自由そうなイメージしかなかったが、
こんなにも管理社会の国だったとは知らなかった。
ここまで繁栄しても、
ずっと経済成長を目指し続けなければならないのは
何かしんどそうだと感じた。 -
本書によれば、シンガポールはマレー半島の先に浮かぶ小さな島国。200年前まではほぼ無人のこの島が発展したきっかけは、イギリスのアジア植民地政策にある。インドと中国のちょうど中間に位置し、イギリス人ラッフルズが中継貿易の拠点としてこの島に目をつけたのが発展の端緒。中国人等が仕事を求めて出稼ぎにきて人口が急増。1965年にマレーシアから追い出されるようにして独立し、今年が独立から50年目。人工的に創られた国で歴史が浅く、固有の文化は育っていない。小国がゆえに生き残りをかけて国を上げて必死に経済発展を続けており、国民一人当たりのGDPは日本を上回る。その反面、政治活動や言論は規制され、統制されている。日本については、三年八ヵ月の不幸な占領期を知る世代と若者でイメージが大きく異なる。両国の関係は悪くないと言えそうだ。
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これまで4回訪れたことのあるシンガポールについて知りたかったので本書を読み始めた。
シンガポールという国ができるまで、できてからほぼ今日までの政治的な動きがとてもよくわかった。
イギリスにより作られた国。
日本の侵略。
今や一大観光島になっている、セントーサ島で行われたこと。
これまでまったく知らなかった。
日本の教育を受け身で受けているだけではまったく知ることのできない,日本が大きく関わった外国の歴史。
読んで、知ることができて良かった。 -
すごく面白い。歴史、政治、マネジメント、経営、思想、人間。あらゆるものがつまってる。
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実際に訪れた国を知るのは面白い!シンガポールはひとつの会社、という表現はすごく納得。独立のきっかけは追放というのは驚き。
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インドを制したイギリスが他の宗主国たちに対抗するために植民地したことから歴史がスタートして、日本に占領されて、マレーシアに属して、わずか2年で追放される形でシンガポールとして独立して。
リー・クアンユーの作り上げた人民行動党政権の下、開発至上で走ってきたシンガポール。
一党独裁の光と影。周辺諸国との関係、移民社会からの転換、資源開発、新世代、新たな価値観の萌芽。
読みやすくてとにかく為になる。
日本軍占領時代に関する記述箇所は本当に申し訳ない気持ちになりました。 -
物語としてよくかけており、非常に読みやすい。シンガポールの特殊性がよくわかる。