アメリカ黒人の歴史 - 奴隷貿易からオバマ大統領まで (中公新書 2209)
- 中央公論新社 (2013年3月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121022097
感想・レビュー・書評
-
始まりから現代にいたるまでの歴史の概要が分かりやすく書いてあります。肌の色が違うだけでこうも世界が違うのかと驚愕しました。こう言ったことをしっかり知って、アップデートしていって過ごさないとなと思いました。また本書は歴史の流れの勉強にもなります。歴史は繰り返す、ということがよく分かります。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
虐待と妥協の繰り返し。黒人差別とは政治的思惑に翻弄され続けて来た歴史なのだととても良く分かった。
国と法を後ろ盾に数百年かけて築かれて来た人種差別の根深さには途方のなさを感じてしまう。
本書を読み始める際には現代ではほとんど安定した状況を得られているものと考えていたが、終盤に書かれた現在の黒人が直面している様々な問題を見て大きな喪失感を覚えた。
特に産獄複合体なんかは奴隷制そのもので、自分の生きている同じ時代、アメリカと言う大国でこのような仕組みが稼働していることに驚きを禁じ得なかったし、とても恐ろしい。
長い歴史をとても簡潔にまとめており、非常に勉強になった。
この問題について初めに手に取る本としては最良の選択だったように思う。 -
本書は、アメリカの歴史のなかでも黒人にスポットライトをあてた書物である。岩波新書から出ている本田創造先生の著作と同じ主題である。それもそのはず、著者は本田先生の門下生だったようだ。1990年以降の社会状況の変化と研究の進展が盛り込まれており、アメリカ黒人の歴史研究の集大成ともいえるだろう。
ラップやレイシャルプロファリングなどが取り上げられているのが印象的だった。政治家は、多くの黒人をとりまく貧困と黒人囚人の増加、薬物中毒に対処するどころか、白人有権者の票を意識して、黒人の貧困層にとってさらに過酷な政策を実施している。
昔とは違って、黒人のなかにも中間層があらわれ始めたが、彼らは貧困層とは決別しており、郊外に居住している。
本書内では、例として黒人の境遇を改善するための施策が紹介されている。ただそれだけでは、真に平等な社会が実現するとは思えない。やはり、アメリカ社会の根底にはびこっている、黒人、とりわけ貧困層の黒人への差別的偏見が拭えないと変革はもたらされないのだろう。 -
BLMが起こる背景の様なものがなんとなく見えてくる一冊でした。
改めて「差別」と言う人間が持つ「癖」の厄介さ、根っこで絡まり合った複雑さ、そしてそれがもたらす恐ろしさの様なものを改めて思いしらされたとも思います。 -
本日はJuneteenthで、出向先のアメリカの会社も急遽休日となりました。(10月のコロンブスデーと入れ替え)
よって、午前中急ぎの業務だけ片付け、読みかけだったこちらを読了。
先日の岩波新書の本田創造さんの著書と同名ですが、こちらの著者・上杉忍さんはその本田さんの教え子なのですね(と言っても上杉さん自身が1945年生まれの既に大御所)。書名が同名なのも、名著と言われる本田さんの著書を、その後の社会変化も加えて引き継ぐつもりで書かれたとのこと。
いえ、「あとがき」を読むまでそれを知らずに読んだのですが、コンパクトな中に出来るだけのことがとても分かりやすく書かれており、とてもお勧めです。
いやー、新書2冊読んだくらいではアメリカにおける人種差別の問題の深さは到底分からないでしょうけれど、大変に勉強になりました。名著と思います。 -
権利の獲得と言っても、決してきれい事ではなかった。常に駆け引きと隣り合わせで、安堵と落胆を繰り返し、進歩した部分もあるが、今もその道のりは見えない。深いところからの視点、感動ものに終わらせない視点、学問的良心に裏打ちされた表現に満ちた読書であった。
・ワシントン行進の際のスピーチは事前検閲されていた。
・権力を握るためには保守化する必要があった。 -
人種差別の歴史の一端を垣間見れた。有意義な読書をした。