政令指定都市 - 100万都市から都構想へ (中公新書 2224)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022240

作品紹介・あらすじ

かつて政令指定都市といえば、横浜や京都など日本を代表する「華やかな百万都市」を意味した。しかし市町村合併推進のため、従来のイメージからほど遠い都市が次々移行した結果、その数は二〇に達した。一方、近年の経済的停滞により税収は激減し、老朽化した施設や生活保護への対応が重荷となっている。「大阪都構想」などの改革で大都市は甦るのか-。歴史や統計、インタビューから、日本の大都市統治を問い直す。

感想・レビュー・書評

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  • 自治体職員となるにも関わらず、「そういえば政令指定都市制度のことよく知らないなー」ということで、勉強のために手にとった新書。
    とても勉強になりました。

    基礎自治体(市町村のこと)や広域自治体(都道府県のこと)とは何か、そして、横浜や大阪や名古屋といった大都市により強い権限を与える論理は何なのか。
    このあたりの歴史的な経緯や、地方自治の考え方について(一貫してカタいですが…笑)、丁寧な分析のもと解説がなされています。
    日本型大都市制度である政令指定都市制度が、実は杜撰な制度設計で(実は法律的には人口50万人以上という要件しかない)、現代においてそのひずみが露呈していること。
    話題の大阪都構想をはじめとする、このひずみを克服するための近年の提案や論調については、切れ味の鋭い批判的な考察がなされていて、見せ場になっていると思われます。

    横浜は少し違う事情も抱えていますが、基本的に大都市はその市域と社会経済的圏域に著しく差があるため、居住人口以上のための行政サービスを提供する必要があるということ。
    しかしそのために使える財源や権限は、たとえ政令市であっても現行制度では不十分であり、制度の抜本的改革や、新たな試みが必要とされていること。

    日常生活を送る中で、こうしたことはこれまで特に意識することはなく、都市はどこでも円滑にまわっているのが当然と感じていました。
    ただそのことが、「税負担はできるだけ少なく、行政サービスはできるだけ大きく」というような、受動的かつフリーライダー的な国民意識につながってしまうとしたら、それは民主主義国家として危険だなと感じます。

    本書では行政、つまりは「官」側の話に終始していますが、こうした背景だからこそ、下からの、【小さな公共】が重要なのだという主張にもつなげることができるな、と感じながら読みました。

    地方自治制度の入門書(二冊目くらい?)としても、良書でした。

  • 政令指定都市とは何かを明らかにすることで、
    大都市の当時制度や都市の在り方を考える本。

    序 章 大都市をどう活かすか
    第1章 政令指定都市の誕生から膨張まで
    第2章 膨張の理由と現状
    第3章 権能と組織
    第4章 市庁舎の中のプレイヤーたち
    第5章 揺らぐ政令指定都市
    第6章 大阪都構想とは何か
    終 章 政令指定都市を超えて

  • 大都市の抱える問題が分かりやすく解説されており、非常にためになった。大阪市の問題もこの本のように客観的なデータに基づいて説明されると、納得できる理解を得ることができる。新聞報道なども本来こうあるべきでは。あまりにも私的な感情論が幅をきかせる最近の状況が問題を深刻化させていると思えてならない。

  • 政党システムや代表制、税制のもたらす影響に加え、社会経済的な大きな構造の変化に着目して、環境の異なる都市がそれぞれ直面する問題や、都市とそれ以外の地域の葛藤、国と都市との関係を整理したもの。

  • 北村亘『政令指定都市』中公新書 読了。旧五大都市と五大府県の妥協の産物として誕生した指定市制度だが、今や目指すべき高みと位置づけられる。20指定市を主成分分析により分類し特徴づけて、大阪市に焦点を当ててゆく。少なくとも、超百万人規模でなければ指定市を目指すものでないと思えてくる。
    2013/08/25

  • 題名通り、政令指定都市という行政区分についての新書。
    身近かつ重要、しかも、あまり解説書もなく、大阪都構想などにより近年再考されるべきものになっているため、テーマ設定としては素晴らしい。


    内容としても、政令指定都市についての理解が深まり、それこそ公務員を目指す人などにも有効な本だとは思う。
    インタビューなどもしており、論文上だけでない実際の在りように迫ろうとしている。
    加えて、2013年時点ではあるが、大阪都構想の流れについても面白い。


    一方で、新書の割には著者の文章の整理がうまく出来ていないように感じる。
    繰り返しの表現や、(特に三章の「権能と組織」の部分など)話が散らかっている印象を受ける。

    終章「政令指定都市を超えて」というありがちな章題が示すように、どのように政令指定都市の問題点の解決策も具体性を欠いてしまっている。

    テーマ時代が面白かっただけに、そうした点が残念だった。

  • 政令指定都市制度を「妥協の産物」としながら、その成り立ち、増加の経緯、仕組みと権能を解説している。大阪市が比較的多く取り上げられており、税収が減少している要因、支出削減の難しさ、そして合区を推進する難しさが俯瞰できて、大阪市が抱える問題点が把握できる。
    政令指定都市制度に変わる大都市統治制度を具体的に提案するところまでには至ってはいないものの、課題を挙げていて、経済が停滞している現代において、新たな制度設計が必要となってきていることがわかる。

  • Very eye-opening

  • 政令指定都市に焦点をあてて、論じた著書は皆無であり、その意味では貴重な本である。
     政令市の歴史の部分は、とてもおもしろかった。

    しかしどのような政令指定都市像が構築できるのか、筆者自体も検討しているようで、明確ではない。

  • 大都市制度を勉強する為に購入。
    各都市の社会構造の分析が興味深い。

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著者プロフィール

大阪大学教授

「2024年 『地方自治論〔新版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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