武士道の名著 - 日本人の精神史 (中公新書 2243)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022431

作品紹介・あらすじ

武士道とは何か。武士はいかに生き、死すべきなのか-。戦乱の世が生み出した軍学書『甲陽軍鑑』『五輪書』から、泰平の時代の倫理書『山鹿語類』『葉隠』へ。そして、幕末維新期の吉田松陰、西郷隆盛へと連なるサムライの思想水脈を経て、武士道を世界に知らしめた新渡戸稲造まで。日本人必読の名著12冊で知る、高潔にして強靱な武士の倫理と美学。章末には、各書から選りすぐった人生指南の「名言」を付す。

感想・レビュー・書評

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  • 山本博文(1957~2020年)氏は、日本近世史専攻の歴史学者。日本エッセイスト・クラブ賞受賞(1992年)を受賞した「江戸お留守居役の日記」ほか、江戸時代の大名や武士をめぐる著書多数。2020年3月に63歳で逝去。
    本書はタイトル通り、江戸時代初期から明治時代にかけて綴られた、「武士道」に関わる名著12冊について、紹介したものである。
    そもそも「武士道」とは何か。。。それを広く世界に知らしめたのは、本書の最後にも取り上げられている、新渡戸稲造が明治時代に著し、世界的なベストセラーになった『武士道』であり、今日の日本においても、武士道のことを知ろうとすれば、まずこれを手に取る人が多いであろう。そして、新渡戸は、『武士道』を書いた理由の一つとして、ベルギーの著名な法学者であるド・ラブレーから「宗教教育がない日本で、どうやって道徳教育が授けられるのか?」と問われて即答できず、武士道こそが自分に道徳の観念を吹き込んでくれた教育精神であったことを示すためであったと言っている。
    武士が発生したのは平安時代中期であるが、武士階級の中には特有の倫理観が育まれ、源平の争乱を経た鎌倉武士に至り、それは概ね完成したという。その後、南北朝の内乱、室町時代、戦国時代にかけては、武士はあくまで武力に優れた者であったが、江戸時代になると、武士は支配階級として政治に関わるようになり、それにふさわしい道徳も必要とされるようになった。それが、武士に求められた厳しい道徳律としての「武士道」である。
    本書に取り上げられているのは、①武士の思想的な裏付けを持つ逸話集で、「武士道」という言葉で武士のあるべき行動を規範化した最も早い文献のひとつといわれる、軍学者・小幡景憲の『甲陽軍鑑』、②武士が身に付けるべき技能を解説した兵法書である、徳川秀忠・家光の兵法指南となった柳生宗矩の『兵法花伝書』と、③宮本武蔵の『五輪書』、④儒学の研究に基づいて武士の役割を述べた、儒学者・山鹿素行の『山鹿語類』、➄赤穂浪士のひとり・堀部安兵衛武庸の『堀部武庸筆記』、⑥「武士道と云は、死ぬ事と見付たり」という一文があまりに有名な、佐賀藩士・山本常朝の『葉隠』、➆「正徳の治」を行った新井白石の自叙伝『折たく柴の記』、⑧信州松代藩家老の恩田木工の言行を記録した『日暮硯』、➈儒学的武士道の完成された姿を示す、儒学者・佐藤一斎の『言志四録』、⑩幕末の激動の中で、その思想を書き留めた代表的な書物、吉田松陰の『留魂録』、⑪幕末の政争に勝って倒幕を実現し、明治新政府を樹立した最大の功労者のひとり・西郷隆盛の『西郷南洲遺訓』、⑫世界に「武士道」を伝えた、新渡戸稲造の『武士道』と、幅広い視点から選ばれており、いずれにも「武士たちの内面に刻み込まれ、強い行動規範として彼らを拘束した」思想が感じられる。
    新渡戸が「日本の精神教育」といった「武士道」を理解するための一助となる一冊と思う。
    (2020年4月了)

  • 武士の心に憧れ、ふれたいと思っている。ちゃんと読むのは難しいが、紹介書で内容に触れ気に入ったものを更に読んでいくと言う、足掛かりにするには良い一冊か。

    【内容】
    小幡景憲「甲陽軍艦」軍学第一
    柳生宗矩「兵法家伝書」柳生新陰流奥義
    宮本武蔵「五輪書」必勝の思想
    山鹿素行「山鹿語類」武士の職分とは
    堀部武庸「堀部武庸筆記」武士の一分を貫く
    山本常朝「葉隠」死狂いの美学
    新井白石「折りたく紫の記」古武士の風格
    恩田木工「日暮硯」成政者の理想の姿
    佐藤一斎「言志四緑」朱子学と陽明学の合体
    吉田松陰「留魂緑」至誠にして動かざる者なし
    西郷隆盛「西郷南洲遺訓」義に生きる
    新渡戸稲造「武士道」理想の日本人論

  • 武士道とは何か、12冊の名著から解き明かす。著者の人生、経験、時代背景から、様々な武士道感があるのだと思った。

  • アート部分の強化のため、まず日本のコアを把握しようと考えた。思想や哲学面からアプローチしようと思うと少しでも馴染みがあるものから入りたかった。そこで選んだのが武士道だった。

    作品選択にあたり、新渡戸氏以外のものは知らなかったので本書を読んでみた。うたってなくとも見えない形で根付いている。それは武士だけに根付くものではない。思想や哲学はそういうものだろうがそれを再認識できた。

    紹介された中では新渡戸氏を除きば、新井白石が一番武士から離れた身分と思う。武士でないからこそ生き様に武士道が表れているという仮説のもと、彼の著作を読んでみたい。

    よくもわるくも達観が武士道を語る上でのキーワードだと考えているところだ。

  • S156-チユ-2243 300315819

  • 今時と言うべきか、それとも今だからと言うことか。どちらにしても「武士道」と言うものを、著者がどうとらえるかと言う視点ではなく、武士の時代からの当時の人がどう「武士道」をとらえていたのかを文献を元に解説していて、興味深い。当然、置かれている立場が違えば、考え方も違うのは当たり前だが、それにしてもその立ち位置の違いが面白い。個人的には著者の解説部分と意見が異なるところもあったが、そういう受け止め方の違いも含めて読むのも面白いかも。

  • 『歴史をつかむ技法』が面白く、並行して読んでいます。
    心の中でこれは手帳に写しておこうという言葉が。いちいち腑に落ちるよな気がします。

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著者プロフィール

1957年、岡山県生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。文学博士。東京大学史料編纂所教授などを勤めた。1992年『江戸お留守居役の日記』で第40回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。著書は『寛永時代』(吉川弘文館)、『日本史の一級史料』(光文社新書)、『歴史をつかむ技法』(新潮新書)、『流れをつかむ日本の歴史』『武士の人事』(角川新書)など多数。NHK Eテレ「知恵泉」を始め、テレビやラジオにも数多く出演した。2020年逝去。

「2022年 『角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 全16巻+別巻4冊定番セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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