鉄道会社の経営 - ローカル線からエキナカまで (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022455

作品紹介・あらすじ

通勤通学に欠かせない大都市の路線、飛行機と熾烈な競争を繰り広げる新幹線、風光明媚なローカル線…。日本の鉄道はバラエティに富んでいるが、それらの経営はいったいどのようにして成り立っているのだろうか。観光に活路を見出す地方私鉄、エキナカで増収を図るJRなど、身近にありながら知ることの少ない鉄道会社の経営について、歴史と現状を解説。さらに今後の鉄道を、誰が、どうやって維持していくかを提言する。

感想・レビュー・書評

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  • 冒頭で青森のローカル線の細かい話が始まって少しつらいが、各種事例から帰納的に論じていくので進むにつれて理解しやすくなる。
    経営指標の数字を列挙する点が多いが、グラフなり表なりにまとめてあるともっと分かりやすいのに、とは思う。
    日本では新線敷設による収益拡大が望めないので異業種への拡大、という流れは出版当時(2014年?)よりもさらに加速している気がする。

  • 沿線の都市開発、観光地と直結した導線による攻めの経営と
    生活の足でありインフラとしての維持が求められる守りの経営。
    ここ数年はJR北海道での路線廃止が度々ニュースとなっているが
    歴史を紐解いてみるとかなり多くの鉄道が消えていったということに気付かされる。
    民営化による利点(サービス品質向上など)と公共性の両立をなんとか模索できないものか。なんとも考えさせられる。

  • 大学講師が、鉄道会社について書いた本。たぶん鉄道マニアであろう著者が、鉄道を経営する会社に焦点を当て、鉄道事業、観光事業、地域開発、小売り事業などの切り口からその経営について分析している。データが豊富で歴史的考察も深く学術的によくまとめられていると思う。東京地下鉄をはじめとする首都圏交通網の開発経緯も詳しく書かれており、とても興味深く読んだ。写真もいい。
    「JR東日本:新幹線の路線1134.7km(15.1%)収入4920億円(29.3%)。首都圏在来線2536.2km(33.8%)収入1兆1170億円(66.4%)。残りの在来線3841.7km(51.1%)収入723億円(4.3%)。JR東日本が運行する路線網の半分は、会社全体の営業収益にほとんど貢献していない」p31
    「日本の都市鉄道も、建設時期が新しい場合には、建設費用の返済に追われるため、資本費が経営を圧迫している。都市鉄道の多くの路線が建設費用を回収し終わり、いまや果実を収穫する時期に入っているために、良い経営成績を出しているということができる」p40
    「東京の地下鉄網の路線長は、305kmである。世界ランキングでは、北京、上海が1位、2位で、その路線長はそれぞれ442km、423km。続いて百年以上の歴史を持つロンドンとニューヨークが402kmと368kmである。さらにソウルの327km、モスクワ309kmにも抜かれて、東京の地下鉄網は世界7位ということになる」p46
    「日本の鉄道営業キロは、2007年において2万4000kmである。この数字は、イギリス・イタリアの1万6000kmより大きいが、ドイツの3万3000km、フランスの2万9000kmより小さい。アメリカ合衆国は22万6000kmに達する。近年躍進著しい中国とインドがいずれも6万3000kmで並んでいる」p50
    「日本の旅客輸送の分担率は、旅客人キロで28.6%(2009)。イギリスの8%、フランスの11%、ドイツの7%を大きく上回る。日本が鉄道大国と呼ばれる1つの理由である。アメリカの旅客輸送分担率は1%である」p51
    「日本では、これからも市民の鉄道への依存傾向が続くだろう。特に、東京は都市鉄道のネットワークが充実しているゆえに人口が増えてきたという要素が大きい。私鉄のターミナルが山手線上に揃っているのもわかりやすい。ターミナル駅から都心への地下鉄ルートが充実しており、郊外路線と地下鉄が相互直通を行っているのも便利である」p63
    「東京の場合は、山手線の内側が聖域となっていて地下鉄か東京市の路面電車しか作れなかった」p105
    「富山県に黒部峡谷鉄道というトロッコ列車が走っている」p177
    「旅行で鉄道を使う大きな理由は、気の合ったグループで、車内で飲み食いしながら歓談することにある。そうすると、行き着くところは、列車の食堂化である」p202
    「現在、阪急阪神ホールディングスの連結売上高はおよそ7000億円である。このうち鉄道は1200億円である。鉄道事業本体の売上げよりも、それ以外の事業売上げの方がはるかに大きいのである」p213
    「(今後の渋谷駅)いま東急会館の3階に入っている地下鉄銀座線の駅部が東口広場に移動する。東横線の駅施設とそれにつながる高架線が撤去され、山手線ホームから南に大きく離れている埼京線のホームが山手線の並びに移される」p248
    「この地区の最大の特徴は、現在はコンクリートで固められて「どぶ川」として無残なすがたをさらしている渋谷川について、清流を復活させ、川沿いの緑の遊歩道、にぎわいの広場を整備する計画である」p250
    「JR東日本の小売り事業は、営業収益6431億円、営業利益1056億円(2013年3月期)。これを大手小売業と比べると、イオンの2013年2月期決算が営業収益5兆6853億円、営業利益1909億円、セブンアンドアイホールディングスが4兆9916億円、営業利益2956億円である。大雑把に売上高営業利益率を計算すると、イオンが3.3%、セブンアンドアイホールディングスは5.9%である。これに対してJR東日本は16.4%に達する。これは、駅という恵まれた出店環境にあるのに加えて、自社排他的に利用できるスペースであり、グループ外企業との直接競争がないこと、また、最近のエキナカ商業施設のようにJRグループ会社が売場を直営していることも利益率を高めている背景にあるのではないかと推測する」p254
    「かつて、駅ビルは、いわば不動産賃貸業である。国鉄と民間が共同出資で建設した建物は、出店を希望する店舗にスペースを賃貸した」p255
    「かつては、駅に降りた人たちは駅前の商店街に立ち寄って買い物をしていた。また、駅前の飲食店で食事をとった。それがすべて駅構内に吸い上げられたのである。これにより壊滅的なダメージと受けた駅前商店街も多い」p255

  • 津軽鉄道のスタイルとか
    列車そのものを付加価値とする考え方、ストーブ列車

  • 憲法の生存権に絡んで、鉄道への公共投資の必要性を説く。

  • 14/12/22、ブックオフで購入。

  • 上山に疎開した過去のある山之内秀一郎さんが山形のスキー場が閑散していることを憂い山形新幹線の実現に奔走したことが書いてあり、嬉しくなりました。

  • 意外に面白かった!!

  • 一応仕事用。
    鉄道会社がどうやって利益を上げ経営をしているかを解説した本である。
    やたらとJR東日本の経営活動に詳しかった。

  • 面白かったです。

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著者プロフィール

1956年、東京都江戸川区生まれ。亜細亜大学講師、一般社団法人交通環境整備ネットワーク相談役、公益事業学会、日本交通学会会員。専攻・交通政策論、日本産業論。「鉄道ジャーナル」に論考を執筆するほか、著書に『鉄道会社の経営』『新幹線の歴史』『通勤電車のはなし』『鉄道と政治』(中公新書)、『JR北海道の危機』『JR九州の光と影』(イースト新書)、『鉄道会社はどう生き残るか』(PHPビジネス新書)などがある。

「2023年 『日本のローカル線 150年全史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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