先進国・韓国の憂鬱 (中公新書 2262)

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著者 : 大西裕
  • 中央公論新社 (2014年4月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022622

先進国・韓国の憂鬱 (中公新書 2262)の感想・レビュー・書評

  • 萎縮した社会民主主義の国、韓国。本書は、金大中、盧武鉉、李明博、三代の大統領の経済・社会福祉政策を辿った書。本書は、社会民主主義を標榜する進歩派の金政権、盧政権が新自由主義的な政策を推進する一方で社会保障制度を充実させることができず、、保守的な李大統領が社会民主主義的政策を継承した、一見矛盾した状況を生じさせた原因を、国内を二分するイデオロギー対立に求めている。
    韓国の雇用流動性が非常に高いこと、知らなかったなあ。

  • 経済政策(とくに通商政策)と福祉政策という、従来は別々に論じられることが多かった2つの軸をセットに論じることで、韓国の過去約20年間の政治過程を説得的に描き出す。私が教育研究者として個人的に興味を持ったのが、以上の議論は韓国の教育政策にどう関係してきたかという点。「経済政策×教育政策」というパッケージとして読み解くこともできるのか、できる(or できない)とすればそれはなぜか、という点。

  •  金大中から李明博までの間、進歩派政権は福祉の充実や反米、保守派政権は経済重視、IMFの押し付けによる経済発展と同時に格差拡大、というような単純な解説に帰しておらず、実は連続性や韓国内のダイナミズムもあったと述べている。
     また、保守派と進歩派の対立により政策が阻害されたのみならず、保守派内でも李明博政権側と朴槿恵派、進歩派内でも労働者の再訓練と新しい分野への移動を目指した両大統領と従来型の弱者保護を重視する伝統派、という対立があったことも分かる。

    金大中政権:新自由主義的改革と社会保障政策を両方進めたが、IMFの要求のみならず、労働組合をも取り込んだ労政使委員会の機能不全により両面の改革は不十分に。
    盧武鉉政権:新自由主義の継続。社会保障政策では、組合や団体が政策過程に参加し、負担を考慮するからこそ福祉に抑制的という逆説的な現象。米韓FTAは零細企業に機会を提供するため進めようとしたが、進歩派から批判を受ける。
    李明博政権:進歩派とは異なる自由主義政策(新自由主義の中でも進歩派が嫌がる財閥規制の緩和等)を目指すも、進歩派の反対や朴槿恵派との対立で結局は進歩派政路線の実質的継承。

  • 著者の大西裕(1965年~)は韓国の政治・行政を専門とする政治学者。
    本書は、サムスン、現代グループなどの製品が世界を席巻し、ビジネス上は存在感を増す韓国が、国内政治において抱える課題を明らかにしたもので、2014年のサントリー学芸賞受賞作。
    本書の主な内容は以下である。
    ◆韓国の政治は従前より、平等重視、反米・親北朝鮮の進歩派と、自由重視、親米・反北朝鮮の保守派のイデオロギー対立が激しい。進歩派の支持基盤は南西部の湖南地方(全羅道)と若年世代、保守派の支持基盤は南東部の嶺南地方(慶尚道)と高齢者世代である。
    ◆金大中政権(進歩派、1998年~)では、1997年の通貨危機で救済資金を提供したIMFの要請の下、新自由主義的改革を進めざるをえなかったが、一方で社会保障制度は整備され、福祉国家化した。しかし、新自由主義的改革も福祉国家化も中途半端に留まった。また、その路線を継承した盧武鉉政権(進歩派、2003年~)でも、米韓FTAを締結するなど貿易自由化を進めて経済の効率性を高める一方で、労働力の再商品化を進めて就業機会を与えるという、北欧諸国型社会民主主義のモデルを目指したが、イデオロギー対立を克服できずに、社会的合意を得ることができなかった。
    ◆進歩派政権のアンチテーゼとして出発した李明博政権(保守派、2008年~)では、経済政策は「実用主義」(成長の果実の配分よりも、全体の成長を押し上げることにより、国民経済を豊かにする)、福祉政策は「能動的福祉」を掲げたが、進歩派はもとより、党内の朴槿恵派からの支持も得られず、大衆的支持も弱かったことから、目指した政策は進まなかった。
    ◆2012年の大統領選挙では、1997年以降深刻化しながらも、イデオロギーの対立により争点となり難かった社会保障問題が遂に争点となり、保守派でありながら生活保障型国家構想を掲げた朴槿恵が勝利した。従来の「委縮した」社会民主主義から、国民が増税などの負担を受け入れる本格的な社会民主主義に移行できるのか、朴槿恵政権の、そして韓国政治の憂鬱はこれを克服しなければならないという点にある。
    韓国は、経済的には大きな成功を収めているものの、歴代大統領がいずれも引退後悲惨な末路を辿るように、政治的にはとても成熟した国には見えず、不思議に思っているのであるが、本書の過去十数年の政治・社会の分析により、国内政治の歪みが小さくないこと、大統領のパフォーマンスもそうした政治権力基盤を踏まえて理解する必要があることが認識できた。(政治的未熟の原因が明確になったわけではないが)
    (2015年1月了)

  • 韓国の政治について なにも知らなかったのがよくわかった.韓国は職業流動性が高くて,職種による既得権があまり問題とならないという点が驚きだった.

  • 正直に言えば、自分には難しかった。
    90年代以降の韓国の福祉政策を分析した本。
    かつては家族の相互扶助努力によって表面化してこなかった格差が、新自由主義的なものに変わっていったのだが、その間にどのような力が働いていたのかを分析した、ということであろうか。
    社会民主主義的な福祉政策を志向しながら、それが果たせなかった道筋であるようだ。
    そこに、保守派VS進歩派のイデオロギー対立を重ねて分析しているのが眼目であるらしい。
    一般的に言われていることと違うこともあって、はっとすることもあったけれど…。

  • データが豊富で、平易な分かりやすい解説から、普段取り上げられにくいユニークな視点での論考もあり、内容的に多く得るものがありました。

  • 日本とは違って労働流動性が高いことが韓国の政策の背景にあることがわかった。よく理解できた。

  • 韓国へは2回訪れたことがある。
    ソウルマラソンと学会参加が目的。
    いずれも目的がはっきりしていただけに、韓国の様子をのんびり楽しむことなく帰国。
    そんな訪問の仕方をしているだけあって、韓国のことは全く知らないに等しい。

    海外の人からすると、日本には未だに忍者や侍がいるのではと思われているのと同じように、韓国と言えばキムチをはじめとする韓国料理の印象が強い。

    これではいけない。お隣さんのことをここまで知らなくて、仲良くできるはずがない。
    ということで、手に取ったのが本書。

    恥ずかしながら民主化されたのがつい最近の出来事であることもこの本で知った。

    格差が広がり、高齢化社会が深刻化していて・・・というのは日本とそっくり。

    この事態に対応が遅れ、耳障りのいい政策がどんどん幅を利かせるのも日本とそっくり。つけが次の世代へと先送りされ、状況は悪くなる一方。

    結局政治家も、当選しなければ何もできないので、易きに流れ、悪循環を止められない。それでも、やはり問題は国民の側にも多いにあると感じる。人気取りの政策に踊らされて、自分の首をしめてしまうような選択は戒めねばならない。

    直接関係はないが、仕事でも似た状況に出くわす。お客さん相手に何でも要求を受け入れていると、結局お互いの為にならない。OKというのは非常に簡単だが、背景を説明し、納得してもらい、相応の負担をしてもらうことが、国家−国民だけでなく、国民−国民でも重要だということを痛切に感じた。

  • 勉強になりました。

  • 嫌韓の書籍が多い中、金大中、廬武鉉、李明博という3代の大統領の福祉政策と経済政策を中心に、2代の進歩派と1代の保守派の大統領の政策が、当時の大統領がおかれた状況の結果、どのような政策をとらざる得なかったかを多くの資料や論文からまとめている。

    結果として、現在の朴政権が抱える問題もまた歴代政権の置き土産として、最終章で明確になっているのが興味深い。歴史という大きな枠で物事を見ることの大切さを感じさせる本だった。内容が濃いだけに読むのに時間がかかってしまった本だった。

  • 著者もあとがきに書いているが、韓国に対する日本人の評価は、あるときは好調な経済から羨望の的となり、あるときは竹島問題などで嫌悪の的となり、またあるときは、フェリー事故のように蔑視の的となるなど、激しく揺れている。反韓・嫌韓の気持ちと同時に、隣国として実態を知りたいという気持ちも強いのではないだろうか。
    本書は、そういう関心の一助になると思うが、他方、分かりやすい本ではない。というか、表面だけなぞって、分かった気にさせてくれるという本ではない。キムデジュン、ノムヒョン、イミョンバクという3代の大統領の福祉政策と経済政策から、韓国特有の保守・進歩というイデオロギー対立や地域主義といった特徴をあぶりだしている。その意味では、記述の対象は、直接的には狭い分野に限られているし、データに基づき実証主義的ではあるが、福祉政策に関心が低いと、読み通すのがつらいかもしれない。

  • 1970年代から1980年代にかけて官僚主義のもと、日本の制度を参考にして、韓国の社会保障制度は作られた。

    韓国は自国の映画産業を保護するために、国内の映画館で韓国製の映画を一定割合で上映することを義務付けるスクリーンクォーター性をとっていたが、韓国政府はアメリカの要求を受けて、2006年1月に4割から2割に縮小した。

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先進国・韓国の憂鬱 (中公新書 2262)の作品紹介

自国製品が世界を席巻し、経済的に大きく躍進した韓国。しかし、急激な発展によって他の先進国以上に多くの課題を抱え込んだ。少子高齢化、貧困問題、社会保障制度の未整備…。韓国が直面する問題に対して、金大中、盧武鉉、李明博ら革新、保守それぞれの歴代政権は、いかなる結果をもたらしたのか。そして朴槿恵の舵取りによって、この国はどこに向かうのか。指導者と政策を通し、隣国の姿を浮き彫りにする。

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