ヒトラー演説 - 熱狂の真実 (中公新書)

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著者 : 高田博行
  • 中央公論新社 (2014年6月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022721

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ヒトラー演説 - 熱狂の真実 (中公新書)の感想・レビュー・書評

  • ちょっと不謹慎な感想だが、ヒトラーの演説って一世を風靡した一発屋芸人のネタみたいなものだったんじゃないかって思えた。彼の演説パフォーマンスは大衆に大受けしたものの、政権獲得後、演説会場の熱狂的な雰囲気をラジオを通じて全国に広めようとした時期には既にドイツ国民はその演説に飽き始めていた。。ナチズムに賛同できるはずもないが、演説パフォーマンスに代わって国民を魅了するネタを作れなかったのもナチスの限界だったのではないか。それは経済発展や国際的地位の回復といったことなのかもしれないが、プロパガンダに頼りすぎると、リアルな成果を上げることは二の次になってしまうのだろう。

  • 張り上げた声、大袈裟なジェスチャー。演説するヒトラーに熱狂する
    会場の人々。何故、人々はこれほどまでにヒトラーに熱狂し、支持を
    したのか。

    ヒトラーが行った節目節目の演説をつぶさに分析しているのかと思って
    購入したのだが、さにあらん。

    1919年10月のミュンヘンのビアホールで行われた初の公開演説から
    地下壕で最期を迎えるまで。ヒトラーが行った演説で使われた言葉や
    表現方法の変遷を年代順に追っている。

    思っていた内容とは違ったけれど、これはこれで興味深かった。ヒトラー
    と言えばやはりユダヤ人への弾圧を思い浮かべるのだけれど、一時期
    の演説では「平和」という言葉が多用されていたなんて知らなかった。

    元々、演説家としての天賦の才はあったのだろうな。それに磨きをかけ
    たのがオペラ歌手による指導。声の出し方、抑揚のつけ方に加えて
    効果的な身振り・手振りを教わって、聴覚ばかりか視覚までを惹きつけ
    る演説に仕上がって行った。

    しかし、熱烈なナチ支持者以外のドイツ国民は結構早い時期にヒトラーの
    演説に飽きていたっていうのも知らなかったわ。

    政権を手にしてラジオ放送を独占できるようになり、「全ドイツ国民は総統
    の演説を聞かねばならぬ」となったのが原因か。会場で響き渡る声を耳に
    し、言葉を印象付けるジェスチャーを目にしながら聞くのは状況が違う
    ものな。

    末期のヒトラーは既に得意だった演説をする気もなく、したとしても以前の
    ように人々を惹きつけることもなくなった。それどころか、将校たちを前に
    しての演説でも将校から皮肉を返される始末。

    演説は天がヒトラーに与えた才能だったのだろうな。でも、それさえも用を
    果たさなくなるのが独裁者の末路なのかも。

    膨大な言葉のデータを集め、分析した著者の根気が凄いわ。巻末にいくつ
    かの演説のドイツ語文で掲載されている。私がドイツ語を理解できれば
    もっと面白く読めたんだろうな。

    語学の才能も「ゼロ」の自分が恨めしい。

  • [妖惑の所以]熱狂的な身振りと扇情的な叫声、そして過激なレトリックに満ちているものと思われがちなヒトラーによる演説。国民を鼓舞し、「狂気」へと駆り立てていったとされる演説の実態はいかなるものであったかを、計量的なデータや音声や映像の記録をもとに検証した作品です。著者は、大阪外国語大学の教授などを歴任され、近現代のドイツ語史を専門とする高田博行。


    ナチスやヒトラーに関する作品は数あれど、弁論術や言語データを利用しながらここまでその本質に迫った研究は珍しいのではないでしょうか。ヒトラーの歩みに合わせたドイツの歴史を縦軸に、言語論的な情報を横軸に据えながら、ヒトラーの演説が解き明かされていく様子は圧巻の一言です。


    〜国民を鼓舞できないヒトラー演説、国民が異議を挟むヒトラー演説、そしてヒトラー自身がやる気をなくしたヒトラー演説。このようなヒトラー演説の真実が、われわれの持っているヒトラー演説のイメージと矛盾するとすれば、それはヒトラーをカリスマとして描くナチスドイツのプロパガンダに、八〇年以上も経った今なおわれわれが惑わされている証であろう。現在そして今後とも、われわれが政治家の演説を目にし耳にするときには、膨らまされた「パンの夢」に踊らされ熱狂している自分がいないかどうか、歴史に学んで冷静に判断できるわれわれでありたいと思う。〜

    着眼点の勝利☆5つ

  • 150万語に及ぶ演説原稿を書き起こし、それをコンピュータにかけて単語の出現頻度等々を定量的に分析したものを素材として、「史上最凶の煽動者」ヒトラーに迫る好著。本書の優れているのは、こういったハード面からの分析と、身ぶりや抑揚、聴衆を鼓舞する演出といったソフト面のそれの両方が、ともに高いレベルで達成されている点である。著者は言語学者だということだが、私はてっきりレトリック、あるいは宣伝の専門家だとばかり思っていた。そのくらい、その方面の指摘も鋭いのである。
    こけおどしの「魔術的」なヒトラー(および彼の演説)を、後世の私たちもまた「恐るべき」「悪魔」などとふんわりしたもの言いで大雑把にくくることが多かったが、こうして科学的に丸裸にされた彼は、尾羽うち枯らしてむしろ哀れですらある。21世紀の今、書かれるべきだった良書と言えよう。

    2016/9/15〜9/25読了

  • 「20世紀最大の独裁者」「悪魔」として名高いヒトラーの人の心をつかむ演説を分析・解説された本。ヒトラー自身が言葉を印象をつけ扇動する力、動き、単語の使い方など熱心に研究した形跡は脱帽しました。出てくるタイミングや時代がそうさせたというのもあるかもしれないが、なぜ現代にも彼のような「演説のカリスマ」が出てこないのか疑問でもある。

  • 時間切れ 歴史 伝記として面白い

  • 25年間150万語に及ぶ演説のデータを分析した物。
    意外だったのは政権をとってからのヒトラーは演説を面倒臭がってやらなかったということ。

  • ナチスが権力を掌握するにあたっては、ヒトラーの演説力が大きな役割を果たした。

    大衆の受容能力は非常に限定的で理解力は小さく、その分忘却力は大きい。もっとも単純な概念を1000回繰り返して初めて、大衆はその概念を記憶することができる。
    その時々の聴衆の心に話かける。
    群衆の心を動かす術を心得ている演説家は、感情に訴えるのであって、決して理情に訴えはしない。
    ヒトラーの演説に力があったのは、聴衆からの信頼、聴衆との一体感があったからであった。
    我が闘争、話される言葉の威力、マイクとラウドスピーカー、ラジオと映画、演説者のカリスマ性が刷り込まれた。

  • 帯にあるような、「何が人々を熱狂させたのか」、即ち、ヒトラー演説の技法に関する分析書として、本書を読もうとするとガッカリする。

    確かに、反復、反論を先に持ち出し反駁する先取り法、言葉の表面と意味内容とを正反対にする婉曲語法、対比法、平行法、誇張法などなど、レトリックの使い方から、発見、配列、修辞、記憶、実演、という弁論術のプロセス、序論、陳述、論証、結論、という配列方法、身振りや手振り、声の高さの分析、区分ごとの頻出語の分析などなど、ヒトラー演説の技法分析も行われてはいる。

    しかし、この書の主目的は、第二次世界大戦付近のヒトラーを中心としたドイツ史を追いつつ、ヒトラーを読み解く事にある。
    従って、演説の分析もその一要素でしかなく、その点に期待し過ぎた為に、また歴史が苦手である為に、なかなか読みづらい本であった。

    ただ、昨今の日本の政治状況(橋下や安倍)と比べてみることで、現代日本に対する様々な示唆を与えてくれ、色々と考えながら読むことは出来た。
    更には、最後まで読み解くと、アジテーターとして、最強であるかのようなイメージを持たれるヒトラー(実際、この新書の帯の文句も、「最強のアジテーター」としてのヒトラーを描いている)が実は戦中期には既に大衆の求心力を失っていた、ということが明らかになる。

    戦争に対する不満から、ヒトラーに対する不満が民衆の中に溢れていた事が分かってくる。
    そうした、固定のヒトラー像をぶち壊してくれる、という意味でこの本は有益であろう。

    そして、その読後、最強のアジテーターであったはずの、即ち、大衆を意のままに操れていたはずの、ヒトラーが戦中期には大衆をもはや操れていなかったならば、一体何が「大衆」の「気分」を操作するのか、という新たな疑問が生じる。

  • 高校の授業でヒトラー演説を聞いて、言葉がわからないながらも気持ちを持っていかれて…なるほど、こんなにいろいろ考えられていたのか。

  •  アドルフ・ヒトラーの政治活動全期間(ナチス入党直後から大戦末期)にわたる演説とその受容の実態を、主にコーパス分析による統計と同時代の観察者の史料を用いて明らかにしている。政権獲得までは大衆の共感を掴んだ演説が、メディアを自在に駆使できるようになった政権獲得後には早々に飽きられたという指摘は、ナチス政権確立の上で、プロパガンダよりも暴力・テロが決定的な役割を果たしたとみる歴史学の通説とも矛盾しない。極端な仮定によって二者択一に誘導する誇張した対比表現や、生理的嫌悪感・憎悪を喚起する隠喩表現などヒトラーが好んだ修辞法は、現在のポピュリスト(たとえば橋下徹)と共通しており、ヒトラーの演説は現在の政治的ポピュリズムを相対化する上で、依然有効な材料であることが確認できた。

  • 第二次大戦期のドイツ独裁者として有名なヒトラーの生涯を、その演説に焦点を当てて描かれています。ナチス党が勢力を伸ばしていったその背景に、彼の演説がいかに重要な役目を果たしたか。政権掌握のために、それをいかに努力して磨いていったのか。そして戦争突入のあたりから演説は効果を失いはじめ、敗色濃厚の中、力強ささえも失っていく。
    一般的にヒトラーの演説は、その力強さと熱狂的なイメージが強いのですが、その時期は限定的だったということが分かります。読んでみると、そりゃそうだよなと、少し目が覚めたような感じがしました。

  • なぜヒトラーが独裁者になれたのか、なぜドイツはあのような道をたどったのか、ずっと興味を持っているテーマである。
    ヒトラーの演説を様々な視点から見ること、ヒトラーの演説が民衆に効果があったのは政権を奪うころまでだったこと、この2つがわかったことがおもしろかったが、
    もっと演説の内容にも深く突っこんだものを期待していた…。自分のテーマに迫るには物足りなかった。

  • しっかりとした研究に基づいた確かな記述。
    使用語彙だけでなく、ジェスチャーや抑揚など様々な角度から、いつ、どのような演説の変化があり、その特徴が何かを淡々と述べるその内容は、学問の分厚さを感じさせる。
    単に「ヒトラーは演説の天才」とざっくりした理解がいかに雑であったかを思い知らされる良書。

  • ヒトラーの演説を、古典期のギリシャに始まった弁論術(①発見、②配列、③修辞、④記憶、⑤実演)の観点から、表現技法、音調、使用する単語や動詞、主語や目的語の使い方に至るまでを細かく分析し、さらに演説の時刻による差異、大衆心理の利用、アメリカ流の広告術を用いたプロパガンダの手法、ジェスチャーによる聴衆への効果等、論理より感情で訴える演説の裏には緻密なからくりがあり、それをいとも美しくこなすことのできるヒトラーは真の天才的な演説家であったことを物語っている本。
    また、ヒトラーはオペラ歌手によって発声法の指導を受け、それによって演説中の基本周波数(ヘルツ)を変化させていたなど、非常に興味深い裏話もあった。

    まったく関係ないが、ヒトラーとクビツェクの関係はジョブズとウォズニアックのそれと似ているなぁという印象を受けた。

  • 歴史上最も有名であろう独裁者、アドルフ・ヒトラーの演説について、言語学、弁論術、ジェスチャーなどあらゆる方面から分析を試みた力作です。

    ヒトラーの演説が、なぜ当時のドイツ国民を鼓舞できたかについては、そのジェスチャーの巧みさにあるということが一般的に言われてきました。
    しかし、筆者は演説文そのものに着目することで、それが緻密に計算された、弁論術として非常に高度な演説内容であったことを明らかにしてゆきます。
    またジェスチャーの技法についても、ある舞台俳優の指導を受けることによってより洗練されたものとなり、演説の完成度をさらに高まらせたことを指摘しています。

    しかしながら、国民は次第に彼の演説に飽きるようになります。ナチス政権発足から1年半後にはすでにその傾向がみられるという指摘には驚きを隠せません。
    また、人々に演説を聞かせるために、ナチスはラジオを積極的に活用し、聴取を義務化しましたが、それは却って国民に「聴く意欲」を失わせ、ヒトラーと国民の距離を遠ざけてしまう結果となったようです。
    この現象を、筆者は、ヒトラーと国民の関係が、演説の「語り手」と「聴き手」の関係から、単に「管理する者」と「管理される者」に変えてしまった…と表現しています。
    第二次世界大戦勃発後にはその傾向はさらに顕著になりました。ヒトラー自身が敗北のストレスから演説を避けるようになったこともあり、国民の心はますます離れてゆきました。国民から信頼を得られない演説は、どれほど弁論術に長けていようと、かつてのような効果はもたらさなかったのです。
    そして1945年4月30日、ソ連軍が迫る中でヒトラーは自殺し、翌5月初めにドイツも無条件降伏を受け入れ、第三帝国は消滅することとなりました。

    従来のヒトラーのイメージを覆す、興味深い研究です。

  • あそこまで聴衆を魅了して、世の中の流れを変えることができた演説には、どんな仕組みがあるのか、、、職業柄、前々からとても興味があったので、タイトル買いをしてしまいました。

    なのですが、ヒトラーの演説の仕組みというよりも、この時代のことがわかりやすく学べる本だなと思いました。

  • 「強い印象を残す事象」というものは「事実」または「事実の一部」かもしれないが、実は「真実でもない」のかもしれない。或いは、「事実」に真摯に向き合おうとする中でこそ、「真実」に近付くことが出来るのかもしれない。「強い印象を残す事象」の“印象”に引き摺られた「判っている」と言い張ってみる「知ったかぶり」や、何やら“建前論”を振り回して「事実」に向き合うことを避けてしまうようなことからは、「真実」には辿り着くことが出来ない…

    そんなことを思わせるドイツ語学者による労作である。お奨め!!

  • それによって一国を独裁せしめたヒトラー演説の魔力に興味を持たない人はいないのではないか。練り込まれたレトリック、オペラ歌手のノウハウを取り込んだ表現力など、その秘訣をナチの台頭を許した時代背景と絡めて分析。文章は極めて論理的で読み易い。彼の最大の武器がテーマだけにヒトラーの入門書にもなり得る良書。

  • 演説を通して第二次世界大戦の歴史がよくわかりました。ヒトラーの「わが闘争」をいつかは原書で読んでみたいものです。

  • 勉強になりました。

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ヒトラー演説 - 熱狂の真実 (中公新書)の作品紹介

ナチスが権力を掌握するにあたっては、ヒトラーの演説力が大きな役割を果たした。ヒトラーの演説といえば、声を張り上げ、大きな身振りで聴衆を煽り立てるイメージが強いが、実際はどうだったのか。聴衆は演説にいつも熱狂したのか。本書では、ヒトラーの政界登場からドイツ敗戦までの二五年間、一五〇万語に及ぶ演説データを分析。レトリックや表現などの面から煽動政治家の実像を明らかにする。

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