アメリカ自動車産業 (中公新書)

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著者 : 篠原健一
  • 中央公論新社 (2014年7月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022752

アメリカ自動車産業 (中公新書)の感想・レビュー・書評

  •  ビッグ3と呼ばれるアメリカの自動車会社は、長い停滞と破綻を経て徐々に回復しつつある。本書は特に復活したGMにスポットをあてている。
     ただし新生GMの生産現場の改革の中でも、「ヒト」がらみの改革は今でも遅れているという。本書の前半は、日本的なカイゼンを取り入れようとしながらうまくいかない理由について、アメリカの労務状況や人事・給与制度の歴史をひもときながら説明しているが、これがなかなか興味深かった。

     能力のある人間が昇進していくと思われがちなアメリカでも、こと自動車産業においてはブルーカラーのみならずホワイトカラーも、中層以下は厳しい能力主義で処遇されている訳ではないという。
     アメリカでは職務ごとに詳細なマニュアルが決められ、マニュアルに書かれた仕事に対して均一な賃金が支払われているという「同一労働・同一賃金」の法則に従っている。つまり、日本のように現場改善によって生産性が上がったり従業員の働きぶりに顕著な差があっても、報酬や処遇には反映されないらしい。そういう意味で、日本の企業の方がはるかに能力主義であるという指摘には思いを新たにした。
     また日本的働き方の代名詞になっている「年功制」についても、他の職場への移動や昇進においてはアメリカでも「先任権」という年功序列に似た制度が働いているという。

     新生GMでは、トヨタのカイゼン活動に学んで先駆的な試みをしている工場もある。例えば、これまで最終工程にしかなかった検査を各工程ごとに増やして品質を上げる試みや、カイゼン専門のチームを立ち上げている。この工場の試みが成功して、GMの他の工場に展開できるかどうかが問われている。
     意外な事実を知ることができたが、欲をいえばもう少し現地の工場現場のリアルな実態が書かれていればよかった。

  • アメリカの自動車産業の職務給のことが良くわかった。アメリカの「平等と規制」の側面を見る必要があることも理解した。

  • アメリカの自動車メーカーがどのようにオペレーションしているか?がわかって参考になった。ブルーワーカーが平等主義であることに驚いた

  • 京都産業大学経営学部教授の篠原健一(1967-)による、労使関係を軸にしたアメリカ自動車業界論。

    【構成】
    第1章 アメリカ自動車産業 国際競争力と労使関係
     1 アメリカ自動車産業復活の足音
     2 世界自動車産業のなかでのアメリカ・ビッグ3
    第2章 アメリカの非能力主義・日本の能力主義
     1 アメリカにおける職務給の実態
     2 アメリカにおける変動給の具体的形態
     3 日本の賃金制度の概要
    第3章 アメリカにも年功制がある? 先任権の及ぶ領域
     1 アメリカにも年功制がある?
     2 先任権の発展史
     3 改革と先任権
    第4章 チーム・コンセプトという日本化 トップダウン経営の限界
     1 チーム・コンセプトという組織改革
     2 能率管理
    第5章 新生GMにおける経営改革の課題 国際競争力・労使関係・職長の役割
     1 アメリカの労働組合と能力主義
     2 職長の役割の変遷
     3 新生GMと労使関係
     4 新生GMにおける現場品質管理体制
    第6章 新生GMと日本への示唆
     1 アメリカ型職務主義の困難
     2 日本への示唆

    リーマン・ショック以後、急激に業績を悪化させ、破綻かその寸前まで落ち込んだアメリカのビッグ3。本書はビッグ3が日本メーカーに対して競争力を失った要因を現場の賃金制度・労使関係に求め、労使協定と現場の品質管理体制の沿革と現状を紹介するものである。

    一般に、「年功序列」(本書では年功制としている)は日本の雇用慣行の中核とされている。またアメリカは年功にとらわれない登用・抜擢が行われ、業務範囲を明確化した職務給であるというのが世間一般の理解ではなかろうか。
    本書の分析対象は製造現場であるから、ブルーカラー労働者の賃金制度についての言及が大半であり、彼らは米国屈指の産別組合であるUAWの組合員である。

    2章・3章で紹介されるアメリカの現場の姿は、上に記した世間一般の理解とは大きく異なる。つまり、アメリカの製造現場にあっては日本以上に年功制が貫徹されており、レイオフ、職場間移動、昇格いずれも「先任権」を有する勤続年数の長い社員が優遇される仕組みとなっている。

    先任権の歴史の本格化は大恐慌の後に制定されたワグナー法である。1937年の時点ですでにビッグ3とUAWの間には、レイオフとリコール(解雇後の再雇用)についての先任権を認める協約が締結されていた。1937年にあっては移動に関する権限は、経営に属するとされていたが、ここから組合側の先任権適用拡大がはじまる。

    1940年には移動にあたって「考慮」されるようになり、1941年には昇進にあたっても同一能力の従業員であれば、先任権を持つ者が優先されるようになった。しかも同年の暮れに出された仲裁基準により、この協約が強化される。そこでは、先任権を持たない者を昇進させようとする際には従業員の能力が他のどの候補者よりも「ずば抜けている」ことを経営側が証明する義務を負うことになった。これで事実上経営側は昇進に関しての権限を組合に奪われる。

    さらに、移動に関しても適用が拡大される。1946年には新規ポジション、空席補充に関しては職務遂行能力のある者が希望すれば、先任権を持つものから順に移動希望が叶えられることになった。移動は他の部門への転出・転入を意味する言葉であるが、製造現場にあっては職場内のローテーションや配置転換が日常的に行われる。労使協定上はそれを「持ち場の変更」と表現していたが、組合側はこれも切り崩しにかかる。
    組合側は、「持ち場の変更」が許容される範囲である「職種」を細分化するという方法で会社管理者の裁量をせばめ、組合員の希望・先任権が適用される「移動」を拡大することに成功した。その結果一つの工場の中に20... 続きを読む

  • 2006年におけるダイムラー・クライセラーの工場労働者が一律時給75.86ドル貰っていたなんて!年間総支給額約1600万円。それでもっていくら頑張っても、怠けてもお給料は変わらない。そりゃあ破綻するわ。職長になるとさらにお給料が跳ね上がるとのこと。いくら貰っているんだ、あいつら。ここのところアメリカ製造業の国内回帰が話題になっているけれど、どのようにして競争力を保っているのかを知りたくて読んだけれど、自動車産業に関してはまだまだ課題が山積していて、日本企業の後塵を拝しているという様相のようだ。

  • 現在のアメリカにおける自動車産業が
    抱える構造的な問題点について、
    工場の製造現場に焦点を当てて解説する。
    日本との比較もあり参考になるが、
    内容の特性上どうしても盛り上がりに欠けるのは確か。
    とはいえあまり馴染みのないアメリカの人事制度や
    改善への取り組みに触れられたのは意義深い。

  • GMを中心に、アメリカ自動車産業の工場現場の改革を人事制度面から解説した本。80年代以降、日本式のカイゼン活動を取り入れる試みが繰り返し失敗したのは、上司による査定を拒み賃金に能力差を反映しない「同一職務同一賃金」制度やアメリカ式年功序列制度「先任権」を重視する労働組合と、労働組合と経営側との間の労使協調の欠如である事を明らかにしている。日本式の、査定により昇進や賃金に差をつける”ゆるい競争”や失業を気にせず工数削減に取り組める長期雇用、労使協調は製造業にとって有効であり評価されるべきと論じている。
    しかし近年製造業の現場では派遣を始めとする非正規労働者の割合が大きくなっており、ブルーカラーの職場の”米国化”が進むのではないか。著者の評価する日本式の人事制度も時代に合わせて変わる必要がある。

  • いろいろと勉強になりました。

  • アメリカの自動車産業がどのような経営改革をしたのか?と言うよりも、ほぼ全編に渡り人事賃金制度や労使関係に焦点が当てられており、個人的には望外に勉強になった。

  • アメリカの年功的側面や平等主義に注目した視点はあまりなく興味を惹かれたが、その視点にこだわるあまり、アメリカの自動車産業それ自体への洞察は深いものではなかった。残念

  • 勉強になりました。

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アメリカ自動車産業 (中公新書)の作品紹介

長期停滞を余儀なくされたアメリカの自動車産業。小型車開発の後れや金融子会社の不振により、2009年にはGMが国有化されるに至った。しかし、新生GMは改革を推し進め、2011年には世界最大の自動車会社に返り咲いた。電気自動車の開発やシェールガス革命も追い風である。この強さは本物なのか。競争力の源泉である工場現場を調査し、品質管理や意識改革の成功と限界を明かす。企業人必読の書。

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