酒場詩人の流儀 (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022905

作品紹介・あらすじ

旅から旅への日々は、はや半世紀に及ぶ。酒と俳句はいつでも良き伴侶だった。大町桂月、種田山頭火、若山牧水らを酒飲み詩人の先達と仰ぐ著者は、日本各地をめぐり、出会った人たちと「酒縁」を結ぶ。大衆酒場ブームの火付け役が、独特の感性で綴った紀行エッセイ。

感想・レビュー・書評

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  • 近年特に時代の流れに乗った酒場詩人。言葉の選び方が凡百の作家と異なる魅力を醸し出す。

    酒と登山、自然保護と愛猫。新聞に連載されたエッセイをまとめたもの。抑制の効いた語り口と俳句。

  •  酒場放浪記で有名な吉田類による紀行エッセイ。とはいっても本書中での話題は酒場における飲食が中心というよりも、むしろ著者が日本中を旅して出会った人や自然、動物などに重きが置かれている。行間からは、その豊かな教養とともに、著者がおおらかな心でもって過去と現在の日本人、そして日本の自然を愛していることがよく伝わってくる。読後に旅をしてきたような気持ちになれる本書は、旅行へ出かけることが憚られるこのご時世にこそ、もっと読まれてもいい本だと思った。
     また、本書を読むまで著者が高知県仁淀川町の出身だとは知らなかった。著者の日本各地への旅の物語もさることながら、その郷里の高知における食文化や平家の落人伝説への言及が個人的には特に興味深かった。詩人である著者が紹介する、次のような酒に関する和歌や俳句も味があっていい。
    「酒を妻妻を妾の花見かな」(宝井其角)
    「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒は静かに飲むべかりけり」(若山牧水)
    「中中に人とあらずば酒壺に成りてしかも酒に染みなむ」(大伴旅人)

  • ふむ

  • 2019.6.4. タケシマ文庫にて購入。

  • エッセイは、書き手の人となりがよくわかるものが多く、時に小説よりも驚かされることもある。
    紀行エッセイとある。日本全国を駆け巡る著者が酒が結んだ縁を大事にする姿が浮かぶ。
    楽しめた一冊。

  • 吉田類は北海道が大好き。

  • エッセイです。

  • 中中【なかなか】に人とあらずば酒壷に成りにてしかも酒に染みなむ
     大伴旅人

     掲出歌を、「なまじっか社会人として生き倦【あぐ】むくらいなら酒壷となって云々…」と現代語訳するのは、「酒場詩人」の吉田類。「生き倦む」という表現が、さすがことば遣いのプロと思う。

     本紙夕刊連載の「酒縁ほっかいどう」も楽しみだが、それらコラムをまとめた新書「酒場詩人の流儀」を、たそがれ時に読み始めた。

     四国、新潟、北海道が、山歩きや昆虫、吟行(俳句会)の話題も交えながら、キレの良い短文でスケッチされている。

     軽妙なフットワーク、また、新鮮な出会いをその鮮度を保ったまま読者に手渡してくれる文章は、一読者として快い。

     けれども内容は、けっして軽いものではないことにも気付かされる。たとえば、少年期に「夢日記」をつけ、同じ夢を何度も見たことがあるという話題。現代社会はストレスを生み続けるが、人間は、「悪夢から自力で目覚められる能力を備えている」という断言に、勇気づけられる。

     吉田類のエッセーが味わい深いのは、現実社会に片足を置きつつ、自然や、松尾芭蕉の時代などと自在に交感し、読者を夢心地=ほろ酔い加減の世界へといざなってくれるからかもしれない。

     日ごろ「生き倦む」生活者たちも、「夢」かもしれない世界に飛ぶことはできる。度を越さず、崩れすぎず、虚と実のあわいを大切にしているような吉田類の俳句。

      グッバイを鞄に詰めて冬の旅

     さて、私も酒場に出かけようか―

    (2015年11月1日掲載)

  • もちろん酒にまつわる話が主となるエッセイ集なのだが、
    旅先での文化や出会った人のエピソード、果ては社会に対して思うところまで綴られており大変興味深い内容だった。

  • 自称「現代の松尾芭蕉」
    本当にうらやましい生き方です。トークショーに行ったときに購入。サイン入りです!
    いいだろー

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著者プロフィール

吉田 類(よしだ・るい)
1949年、高知県生まれ。 画家として主にパリを拠点に活動後、イラストレーターに転身。
90年代からは酒場探訪や旅に関する執筆を始め、BS放送『吉田類の酒場放浪記』で多くのファンを得る。著書に『酒場詩人の美学』など。

「2021年 『つげ忠男コレクション 吉田類と読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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