天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)

  • 404人登録
  • 4.10評価
    • (36)
    • (49)
    • (25)
    • (0)
    • (0)
  • 49レビュー
著者 : 磯田道史
  • 中央公論新社 (2014年11月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022950

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 歴史学者の磯田道史氏が朝日新聞に連載した、「磯田道史の備える歴史学」(2013年4月~2014年9月)をまとめたもの。2015年の日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。
    著者は、東日本大震災後、理系の研究者が地震や津波の実態を明らかにした数多くの本が出版されたとしながら、本書の狙いを、「本書は、地震や津波ではなく、人間を主人公として書かれた防災史の書物である。防災の知恵を先人に学ぶとともに、災害とつきあい、災害によって変化していく人間の歴史を読みとっていただけたなら、幸いである」と語っている。
    本書では、豊臣秀吉を襲った1586年の天正地震と1596年の伏見地震(これらの地震がなければ、徳川家康の天下にはならなかったと言われる)、1707年の宝永地震とそれが招いた大津波及び富士山の宝永噴火、1828年のシーボルト台風(これにより、佐賀藩は軍事大国となり幕末史にも影響を与えたと言われる)ほか、様々な地震、津波、台風と土砂崩れ・高潮などの災害について、古文書を丁寧に読み解いて、その様子やそこから得られるものを示している。
    また、著者は、災害史に興味を持った大きな理由として、著者の実母が1946年に徳島県で昭和南海地震・津波に遭い、九死に一生を得たことと語っており、そのときの実母の経験とそこから得られる知恵についても、詳しく述べている。
    そして最後に、東日本大震災の教訓として、津波被災地の古い神社の多くでは、津波は神社の石段を上った鳥居までは来たものの、神社の社屋は被害を免れたことを紹介し、歴史や先人の知恵に学ぶことの大切さを強調している。
    英国の歴史家E.H.カーは、名著『歴史とは何か』の中で「歴史とは現在と過去との対話である」と述べ、現在を生きる人間がどのように捉えるかによって、過去の事実のもつ意味は変わってくると言っているが、災害がその時代にどのような影響を及ぼしたのか、及びその災害から現在の我々は何を学べるのかについて知る上で、有益な書と思う。
    (2015年12月了)

  • 地震、台風、津波、土砂崩れ……。
    史料から読み解く、かつての天災の光景。
    そこから考える、日本のこれから。

    思えば、日本というのはこういった史料に恵まれた国だ。
    早くから紙が普及し、識字率も性別に関わらず高かったことから、伝え遺す情報が多いことは本当に幸運なのではないかと思う。

    しかし、どれほど貴重な教訓が遺されていても、それを重用しなければ意味がない。
    この新書の中でも、地名から想像出来る被害を考えずして、重要な施設を建てていたりする。
    財政的に、そうするしかない場合もあるのだろうけれど、いつ起こるか分からない恐怖より、いつ起こるか分からない無謀に走ることが人間は多い気がする。いや。科学技術の進歩が、人間に全能感を与えているのかもしれないなぁ。

    耐震、防火、防潮。100年も前とは比べものにならない技術力を我々は手にした。
    けれど、その代わりに起こる人災もある。
    知らないことを他者のせいにせず、自ら生き延びる情報を得ようとする姿勢が必要なのではないか。

    こうした文献を、蔑ろにしてはいけないと強く思わされた。

  • ご存じ「武士の家計簿」の著者が朝日新聞に連載したエッセイを新書にまとめたもの。2015年の日本エッセイスト・クラブ賞受賞作。

    以下内容の面白いエッセンスです。
    豊臣政権を揺るがした天正地震(1586年)と伏見地震(1596年)の2度におよぶ大地震が豊臣政権崩壊の引き金になったという。
    特に後者の地震後、秀吉が伏見城の再建と、朝鮮再出兵を疲弊に苦しむ諸国の大名に命じたことが、豊臣から徳川へ人心が移り始めるきっかけとなり、政治の潮目が変わった。
    伏見地震の直後、秀吉は小屋に蟄居していたので、徳川家康と家臣は防御が手薄な秀吉を急襲する計画を謀議した資料が国立公文書館の中で見つけた時は、著者は鳥肌がたったという。ただ家康は明智光秀の末路を見ていたので、実行はしなかった。

    1828年のシーボルト台風の被害から立ち直るために、佐賀藩では西洋文明を重視する改革派が登場し、以後軍事大国となり幕末史にも影響を与えたと言われる。
    余談だが、シーボルト台風に先立ち、1808年にイギリスの軍艦が侵入する事件が起き、佐賀藩は長崎湾を守りきれなかった。この後佐賀藩では西洋帆船との戦いを念頭に置くようになった。とてもかなわぬ西洋軍艦と戦うために、この時に考え出されたのが「捨て足軽」という自爆部隊である。
    西洋の圧倒的な軍事力への対抗手段として、非西洋は、しばしば「自爆攻撃」という無茶をやってきた。太平洋戦争での日本の特攻隊がそうであり、イスラム過激派の自爆攻撃がそれである。それらの西洋への自爆攻撃を組織的に準備した最古の歴史的事例がここにあるという。

    以上のような面白い話が満載であるが、やはり3.11の東日本大震災のような被害を最小限に食い止めたいと願う著者が、歴史の教訓を今日に当てはめようとする熱意がひしひしと伝わってくる良書であり、一読をお勧めします。

  • 防災関連で何か一冊読みたくなったので,偶々見つけた本書を選んでみた.『武士の家計簿』の著者ということで文章の質な保証されたようなものだが,分析については前著より1ランク劣るような気がする.また,本書タイトルの大きさから考えると名前倒れな面もある.例えば,日本史における天災がらみの事件では相当重要と思われる平禅門の乱は,本書に一切出てこなかったりする.さらに,『武士の家計簿』でもわずかに感じた著者の自己主張は本書では一切隠す気なし.テーマ的に思い入れがあるのは分かるのだけれども,個人的にはかなりのマイナス.以上より,★3つはとっても妥当な評価だと思う.

  • 地震、津波、高潮、土砂崩れと、多くの災害に見舞われてきた日本には、その克明な記録が残されている。古文書を紐解けば、過去の災害がどのような規模だったか、同じ被害を繰り返さないために何に注意すればよいのか、多くの示唆が得られる。

    地震や津波、富士山の噴火では前兆と考えられる現象が観測されていた。地名や神社の場所には、過去の災害の刻印が隠されていた。悲劇を生き延びた人々が残した戒めが、後の世の人々を救った例も多い。近世の災害や東日本大震災での事例も含め、今後も災害と向き合っていかなければならない日本人が、覚えておくべき多くの教訓が残されている。

  • 第1章 秀吉と二つの地震。 第2章 宝永地震が招いた津波と富士山噴火。 第3章 土砂崩れ・高潮と日本人。 第4章 災害が変えた幕末史。 第5章津波から生きのびる知恵。 第6章 東日本大震災の教訓。

  • 九月一日を前に読了。
    防災については、いくら学んでももういいということはない。
    本書では、噴火、台風、土砂災害、高潮、津波など、過去の大災害の記録から、現代に生かせる教訓を導いている。

    自分の命は、自分で守ること。
    避難しはじめたら、何があってもものを取りに戻らないこと。
    事前に家族で避難のしかたや場所について確認しておくこと。
    よく言われることだけれど、これが大事だと再確認できた。

    松は10メートルを超える津波では根元から抜け、流木となって被害を及ぼすことは知らなかった。
    溜池は大地震で決壊して被害を与えることがあるということも。

    土地で災害を語り継いでいるところもあり、磯田さんはその記録を精力的に集めたようだ。
    ここに家を建ててはいけないという形で伝わっていたり、神社の鳥居の高さで水についた高さを示したり。
    翻ってわが身を見れば、今住む土地のことを知らない。
    恐ろしいことだと思う。

  • 『武士の家計簿』で有名な著者であるが、歴史学者のライフワークとして防災史を研究していることに驚いた。しかし、本書を読むと得心できるが、著者の母という身近な人の出身が徳島県牟岐で、そこは津波常襲地かつ母が津波から難を逃れた被災者だったのだ。地震、津波、富士山噴火、土砂崩れなど古文書に残る災害の記録を集積し防災に役立てる著者の研究は、災害のメカニズムを解く理系分野の研究と並行に行なわれることで、より良い防災につながるものと思う。

  • 歴史への理解が浅く、こういう天災史という切り口があるのかと衝撃を受けた一冊でした。1章の伏見の地震についてはそれだけで1つの小説になりそうな位の内容でした。歴史に影響をを与えた地震などの天災はまだまだあると思うので、是非掘り起こして第二、第三のストーリー語ってほしいです。

  • 特に印象に残ったのは5章昭和南海地震(徳島)と6章東日本大震災の教訓の部分。
    災害の経験は、その地に住む人々の口伝・大昔からの記録によりはるか昔から伝えらえてきている。それを軽んじてはいけない。
    災害の記録を伝えていくこと、風化させないことの大切さを改めて実感する内容だった。

全49件中 1 - 10件を表示

磯田道史の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジャレド・ダイア...
トマ・ピケティ
佐々木 圭一
有効な右矢印 無効な右矢印

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)の作品紹介

豊臣政権を揺るがした二度の大地震、一七〇七年の宝永地震が招いた富士山噴火、佐賀藩を「軍事大国」に変えた台風、森繁久彌が遭遇した大津波-。史料に残された「災い」の記録をひもとくと、「もう一つの日本史」が見えてくる。富士山の火山灰はどれほど降るのか、土砂崩れを知らせる「臭い」、そして津波から助かるための鉄則とは。東日本大震災後に津波常襲地に移住した著者が伝える、災害から命を守る先人の知恵。

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)はこんな本です

天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書)のKindle版

ツイートする